ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年1号
SOLE
SOLE報告

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2004 88 <SCM実現のための改革の視点> SCMを実現するための視点には「システム改革の視点」と「業務 改革の視点」がある。
システム面からは、オペレーションレベルで のビジネスプロセスの統合(情報系)、計画立案システムの高度化・ 高速化(計画系)を狙う必要があり、ここではいわゆるレガシーシ ステムへの対応、ITソリューション(パッケージソフトウエア)の 活用が考えられる。
業務改革の視点としては、供給系の改革として高速化、短サイク ル化に対応するための供給体制の確立を狙い、指示内容の確実な実 施と、変化への柔軟な対応が求められる。
販売系の改革としては高 速化を最大限に活かすため、市場情報の取得、計画への反映を狙い、 環境変化への予測精度の向上が求められる。
わが国の企業の一般的な傾向として、従来は月次(1カ月単位) で計画を立案し、同じく月次で実績を把握し、管理するといった月 単位のスピードレベルであった。
だが、これでは素早い変化への対 応は望めない。
世界的にはウィークリーレベル、つまり1週間単位 での管理が一般的になりつつある。
<SCM改革における主な課題> 最近、生産が追いつかないために生産を中止したというような話 を聞くことがある。
一面では嬉しい悲鳴なのかもしれないが、本来 の姿ではない。
企業としては異常事態が発生した時に、関係部署、 関連機能が連携して対応していく必要がある。
生産能力、物流能力、 調達能力などが連動して動けるかどうかが問われるのである。
この 際の基本原理は「ひきつけての予測、計画、決定」であって、それ に対応できるプロセスを構築し、対応スピードを確保しなければな らない。
<SCM改革が物流(改革)にもたらすもの> SCM改革はサプライチェーンのベースである物流に多大な期待と 深刻な影響をもたらす。
流通過程全体をとらえての物流機能の見直 しが求められ、納入条件の変化(短リードタイム出荷、小ロット多 頻度配送、JIT納入など)による物流の高コスト化、さらにトータル 在庫削減に伴う物流売上の減少などが想定される。
こうした課題に 対して、物流事業者がどのように対処していくかが今後、さらに求 められよう。
フォーラムは新しいシリーズが始まっており、12月のフォーラム ではロジスティクス技術の研究「ロジスティクスとシステム監査」と 銘打って、冠夢堂システムズの代表取締役山田一彦さんに、システ ム監査、セキュリティの観点からロジスティクス、物流改革に対す るアプローチを講演してもらった。
その概要については、次回の本 欄で紹介する。
2004年1月のフォーラムは新春特別研究として、昨年、日本ロジ スティクスシステム協会(JILS)の2003年度ロジスティクス大賞を 受賞したオリンパスのロジスティクス改革について、オリンパスロ ジテックの酒井路朗氏に解説していただく予定。
フォーラム終了後、 ささやかながら恒例の新年会も開催する。
このフォーラムは年間計画に基づいているが、単月のみの参加も可 能。
1回の費用は6,000円となっている。
参加希望の方やSOLE東京支 部の活動内容に関するお問い合わせはsole_consult@jmac.co.jpまで。
SOLE報告 The International Society of Logistics 次回フォーラムのお知らせ SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティクス 技術、マネジメントに関する意見交換を行い、会員相互の啓発に努め ている。
11月は新シリーズの第1回目だったため「オリエンテーシ ョン」を行った。
フォーラムの内容紹介、進め方、諸注意などに続き、松本賢治支 部長が「経営戦略から見たSCM(サプライチェーン・マネジメン ト)」と題する講演をした。
松本支部長は日本能率協会コンサルティ ングのシニアコンサルタントで同社の戦略ロジスティクス事業部長。
以下、講演の概要を紹介する。
<経営環境の変化> 最近の経営環境には三つの大きな変化が見られる。
一つは経営ス ピードの変化で、情報伝達スピードのリアルタイム化が進み、製品 のライフサイクルはますます短縮され、経営変化の諸要素が複雑化 している。
その結果、ビジネススピードが高速化し、意思決定スピ ードの遅れが経営を阻害しかねない。
二つ目は、企業価値の評価、業績評価のあり方の変化。
キャッシ ュフロー経営、連結決算が求められ、売上高(事業規模)至上の見 方から利益・キャッシュフローが重視されるようになった。
そして三つ目はビジネスモデルの変化だ。
eビジネスを始め、グ ローバル化、大団結(合併、提携)、個別化、個客指向へと新しいビ ジネスモデルが求められている。
<SCM視点から見たメーカーにおける問題点> 上記のような経営環境変化の下、製造業者はサプライチェーン上 で次のような問題・課題を抱えることになる。
調達・生産・販売の グローバル化、流通・販売チャネルの多様化・複雑化、製品の短ラ イフサイクル化、短リードタイムへの対応として、在庫が増加し、そ の結果、収益・キャッシュフローは悪化し、開発投資余力が減少す る。
つまり変化に追随できない悪循環が生まれ、SCM改革が不可欠 となる。
<メーカーにおけるSCM構築の狙い> これから製造業が目指すべきSCMは、顧客の「多様で変化の激し いニーズ」をすばやく捉え、顧客の要求する製品を「俊敏に」調達・ 生産できるビジネス・プロセスを構築することにある。
そのためには、 情報の流れの改革と、モノの流れの改革が必要だ。
顧客の要求の変 化をすばやく予測・キャッチし、販売・生産・調達につなげる組織 体と情報システムを構築し、スピーディでフレキシブルな調達・生 産・物流方式を構築しなければならない。
<SCMで何を狙うか> 問題をマトリックスとして整理するといい。
横軸をマテリアルフ ロープロセスとして、たとえば原材料供給業者、工場、事業部、製 造委託先、物流、顧客・ユーザーをとる。
縦軸にはSCMの狙いとし て、たとえば業務効率化、在庫適正化、売上機会損失の低減(欠品 削減、リードタイム短縮)、返品コストの削減、物流コストの削減、 情報インフラ共通化によるIT投資の抑制、遊休資産の有効活用など をとる。
こうして問題を整理すれば、まずコストダウンを狙い、次 にリードタイムの短縮を果たし、顧客満足度向上を果たすことにな るだろう。
SOLE東京支部フォーラムの報告

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