ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年3号
特集
第3部 3PLが主導する同業種共配化学品メーカー ダイセー倉庫運輸中京地区でトヨタ関連荷主を束ねる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2011  34 納品先にJIT物流を提案  中堅物流会社のダイセー倉庫運輸は現在、本社 を置く愛知県小牧市のほか、大口、衣浦などに七 つのセンターを構え、中京地区をメーンに化学品の 共同物流事業を展開している。
 主要荷主は大手化学品メーカーや商社など約四 三〇社。
納品先企業は大手自動車部品メーカーか ら中小零細工場まで五〇〇〇を数える。
ブランド 名は「ジャスト便」で、トヨタ自動車関連の荷物 が取り扱い全体の約七割を占めている。
 ダイセー倉庫運輸のセンターで保管している化学 品メーカー各社の在庫をオーダーに合わせて出荷す る。
一四時までに翌日分の注文を受け、一七時ま でにピッキング。
二一時までにトラックへの積み込 みを行い、翌朝出荷する。
 最近では在庫保管のない「スルー便」との組み 合わせも増えている。
全国各地から出荷された荷 物を、ダイセー倉庫運輸の拠点の荷捌き場で方面 別に仕分けてジャスト便と混載して納品する。
 共同物流を支える基幹システムは日本ユニシスを パートナーに据えて自社開発した。
入荷・保管・ピ ッキング・流通加工・検品・出荷といった一連の 物流業務を一元管理できることに加え、九〇台の 自社保有車両、四〇台の専属傭車の運行状況をリ アルタイムで把握できる。
 二〇〇七年からは関東でも同じスキームの共同 物流に乗り出している。
茨城県の古河市に物流セ ンターを設置し、荷主約五〇社の商品を約五〇〇 の納品先に届けている。
 業績は堅調だ。
〇五年十二月期に約五七億円だ った売上高が、直近の一〇年度は六七億円にまで 伸びている。
リーマンショックでさすがに〇九年 度は売り上げを落としたが、一年間でほぼ元の水 準に戻した。
売上高の約八割はジャスト便関連で、 地元・愛知においては今や「共同物流のダイセー」 と評されるまでになっている。
 「共同物流を定着させること。
それが私の人生だ った。
とりわけサービス開始から二〇年間は苦難 の連続だった」。
ダイセー倉庫運輸の吉田憲三社長 は、三〇年におよぶ物流マン生活をこう振り返る。
ダイセー倉庫運輸 中京地区でトヨタ関連荷主を束ねる  中京地区をメーンに化学品の共同物流を展開。
荷主は 化学品メーカーを中心に430社、納品先は自動車部品メー カーから地場の町工場まで5000 を数える。
トヨタ自動 車の成長と共に業績を伸ばしてきたが、リーマンショッ クでその方程式が崩壊。
今後は一般消費財分野にまで共 同物流の対象を広げていく。
        (石鍋 圭) 吉田憲三社長 化学品メーカー 個別配送 共同配送 トラック延べ台数 288 台※1 135 台※2 総重量 620,508 ? 620,508? 荷主数 81 社 81 社 配送先数 655 社 655 社 平均積載率※3 57.6% 70.7% 平均積載量※4 2,155 ? 4,596 ? 1配送先あたりの配送量 947 ? 947 ? 共配効果の試算 ※1 2t×204台、4t×36台、7t×21台、10t×27台 ※2 2t×32 台、4t×39 台、7t×34台、10t×30 台 ※3 総重量÷各トラックの最大積載数の合計 ※4 総重量÷トラック延べ台数 試算データ 平成23 年1月18日納入分 小牧地区3センターの合成樹脂、合成ゴムのみ 個別配送は、荷主別及び地区別で重量を算出し、重量に 応じて車型を選定 共同配送については、実際の運行データ 第3部 3PLが主導する同業種共配 35  MARCH 2011  ダイセー倉庫運輸は、低温食品やコンビニのセン ター運営などを行うダイセーエブリー二十四、一般 物流のダイセーエクスプレスシステム、食品主力の ダイセーロジスティクスなどの兄弟会社と共にダイ セーグループを形成している。
グループの総売上高 は約三八〇億円にのぼる。
 ダイセー倉庫運輸はダイセーエクスプレスシステ ム(当時はダイセー陸運)の倉庫部門を分離するか たちで一九七四年に誕生した。
設立当初は吉田社 長の実兄が社長を務め、あらゆる種類の荷物を扱 っていたが、ほどなく合成樹脂や合成ゴム、包装 フィルムといった化学品に特化するようになった。
 「金もヒトも信用力もない小さな会社が、大手の 倉庫会社や物流事業者と渡り合うためには?専門 店化〞するしか道は無かった。
この中京地区は国 内屈指の自動車工場の集積地ということもあり、 化学品で勝負してみようということになった」と 吉田社長は説明する。
 営業ターゲットを絞ることで徐々に荷主を増やし ていき、創業から一〇年ほど経った頃に共同物流 を本格的に開始した。
家電量販店のセンター運営 を受注したことがヒントになったという。
 当時から家電業界では、一括納品センターから 各店舗への共同配送が当たり前のように行われて いた。
その結果、トラックの積載率は上がり、配 送費は削減され、荷受け側の負担も軽減していた。
 当時、営業責任者だった吉田社長は、同じこと が化学品でも可能だと考え、勇み足で化学品メー カーに提案して回った。
しかし反応は散々。
「競合 と同じ車両に商品を載せることなど考えられない」 といった意見が多く、無名の中小業者ということ から相手にもされないことが少なくなかった。
 そこで一計を案じた。
ダイセー倉庫運輸の直接 の荷主は化学品メーカーや商社だが、荷主の顧客、 つまりダイセーにとっては納品先に当たる自動車部 品メーカーなどに一括物流の導入を提案した。
 「自動車部品メーカーの工場には一日に何回もト ラックの搬入があり、現場での対応は煩雑を極め ている。
そこに割いている人員や時間を削減すれ ば大きなメリットになると地道に説いて回った。
加 えてもう一つ。
それまで化学品は大量納品が当た り前だったが、我々に物流を任せてくれれば『欲 しいときに、欲しいものを、欲しいだけ』届ける ことを約束した」(吉田社長)  こうした営業活動を繰り返すうちに、徐々に共 同配送で取り扱う物量は増えていった。
その実績 を見て、ダイセー倉庫運輸に納品を一本化するよ う化学品メーカーに指示する部品メーカーが現れ始 めた。
荷主としても、顧客から指定されれば承服 せざるを得ない。
 とはいえ、ダイセー倉庫運輸の荷主はあくまで 化学品メーカー。
彼らの機嫌を損ねてしまえば、ま とまる話もまとまらなくなる。
吉田社長は納品先 の自動車部品メーカーに営業をかけて手応えを得 ると、その足で荷主の元に向かって事情を事前に 説明するなど細やかな気配りを忘れなかった。
 ダイセー倉庫運輸に物流を任せればコストが下が り、情報漏洩などのトラブルも起きないことが証明 されると、初めは懐疑的だった荷主の態度も徐々 に変化してくる。
積極的に関連会社の物流案件な どを紹介してくれる荷主も出はじめ、取り扱い規 模は雪だるま式に拡大していった。
一般消費財の共同物流事業にも進出  さらに一九九〇年代初頭のバブル崩壊がダイセ ー倉庫運輸にとっては追い風になった。
それ以前 の好況時には話も聞いてくれなかった化学品メーカ ーからの引き合いが増えた。
急激な業績の悪化を 受けて、大幅なコストダウンを迫られたことが原因 だ。
このニーズを取り込むことで、同社の共同物 流は安定軌道に乗った。
 その後はトヨタ自動車の事業拡大に歩調を合わせ るようにダイセー倉庫運輸も売り上げを伸ばしてい った。
しかし、リーマンショックでその方程式が崩 れた。
トヨタが名古屋地区の生産ラインをストップ すると、ダイセー倉庫運輸の仕事も激減した。
ト ヨタ依存のリスクが顕在化した。
 これを受け、ダイセー倉庫運輸では新たな方針を 打ち立てている。
これまで化学品に特化していた 共同物流を、一般消費財にまで広げるという。
既 に昨年にはそのための部隊も立ち上げている。
 吉田社長は「共同物流の知見は充分に蓄積され ている。
一般消費財の方が化学品よりも扱いが容 易なため、横展開は難しくない。
既にいくつかの 案件を受注しているが、向こう三年で十二億円規 模にまで成長させる」と意気込んでいる。
各拠点から半径150kmのエリアを対象に 共配を実施している 特 集

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