ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年8号
特集
第3部 ポスト日雇い派遣のビジネスモデル 「時間単位のマッチングを実現する」 フルキャストホールディングス 常葉浩之 社長CEO

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2012  26 日雇い派遣からパート管理へ ──日雇い派遣の禁止が二カ月後に迫っています。
フ ルキャストは二〇〇八年に日雇い派遣からの撤退を 表明しましたが、翌〇九年にはそれを覆して、結局 は今日まで続行してきました。
政局に振り回されて、 戦略が二転三転している印象です。
 「確かに日雇い派遣からの撤退を表明した過去はあ りますが、『短期労働市場』からの撤退を表明した ことは一度もありません。
企業の短期的な人材調達 ニーズに応えるというスタンスは、当時も今も一貫し ています。
そこは誤解してほしくない。
結果的に今 日まで続行してきたのは、法改正が宙に浮き、クラ イアントからのニーズも依然として強かったためです。
ただし、その間も『日雇い派遣はいずれ禁止になる』 という前提に立ち、別の方法でサービスを維持する道 を探っていました。
既に一〇年二月の段階で、法改 正が為された場合の具体的な方針は固まっています」 ──その方針とは?  「まずマッチングの部分に関しては日次単位の人材 紹介、いわゆる『日々紹介』で応えていきます。
併 せて、アルバイトの給与関連業務も積極的に提供し ていく。
日雇い派遣の場合は当社と労働者が雇用契 約を結ぶのに対し、日々紹介ではクライアントと労働 者が雇用契約を結ぶことになります。
当然、雇用主 となるクライアントには勤怠管理や給与計算といった 業務が新たに発生しますが、この負担が非常に大き い。
そこまでを含めて当社がサポートしていく。
日々 紹介とアルバイトの給与関連業務を併用してもらうこ とで、従来の日雇い派遣とほぼ同等の機能を提供す ることが可能になります」 ──今回の改正派遣法には例外規定が設けられてい て、全ての日雇い派遣が使えなくなるというわけで はありません。
 「例外規定は考慮していません。
日雇い派遣は全て 使えなくなるという前提で事業を構築し、クライア ントにもそうアナウンスしています。
例外規定は運用 次第で大きく変わるリスクがある。
それに頼っていて は事業の安定性を確保できず、クライアントに迷惑が かかります」 ──メイン事業が大きく変わる。
 「当社にとってはそれほど大きな変化ではありませ ん。
クライアントに必要な時に、必要なだけ人材を供 給するという意味においては、これまでと変わらず 当社の動員力や営業力がそのまま活かせると判断し ています。
アルバイトの給与関連業務にしても、当 社が抱えている派遣スタッフに対して行ってきた従来 の給与関連業務を、外部に対してサービス提供する というだけの話です。
もちろん、システムを新たに 開発したり、現場運営を多少カスタマイズする必要は ありましたが、難しい変更は特にありません」 ──顧客企業からの反応はどうですか。
 「改正法の公布があった今年の四月から五月にかけ て主要クライアントを回って説明をしたのですが、や はり日々紹介だけでなく給与関連までをフルサポート するという点を特に評価をしていただきました。
特 に大手のクライアントは自社で多くのアルバイトを直 接雇用しているので、既に給与関連業務の煩雑さを 知っているためだと思います。
これまでの引き合い も上々です」 ──スタートは改正派遣法が施行される一〇月から 一斉に?  「混乱を避けるためにも、できるだけ前倒しでス タートしたい。
既に八月からは数社のクライアントに 「時間単位のマッチングを実現する」 ポスト日雇い派遣のビジネスモデル  日雇い派遣事業から完全に撤退し、日々紹介に舵を切る。
改正法の枠組みの下で、短時間労働者の人集めから雇用管 理までの機能を一括して提供することで、これまでと同様の サービスを維持する。
さらに1時間単位の需給調整を実現し、 埋もれている労働力を掘り起こす。
  (聞き手・石鍋 圭) フルキャストホールディングス 常葉浩之 社長CEO 3 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 27  AUGUST 2012 提供することが決まっています。
アルバイトの給与 関連業務は給与計算などセンシティブな業務を含むた め、ミスは絶対に許されない。
当社としては慎重の 上に慎重を期す必要があります」 ──新サービスのプライシングは?  「まだ詳細は確定していませんが、基本的に日雇い 派遣の時の料金以上に値上げする考えはありません。
日々紹介とアルバイトの給与関連業務を併せたフルサ ポートの場合で、従来の日雇い派遣の時に収受してい たマージンと同等に設定する方針です。
日々紹介だけ というクライアントが増えれば、それだけ当社の収益 力は低下することになる。
いかに給与関連業務の部分 まで任せてもらえるかが今後のポイントになります」 潜在労働力を掘り起こす ──値上げしないということであれば、事業は良く て横ばい、場合によっては大幅にシュリンクすること も想定されます。
 「そうとは限りません。
実は給与関連業務について は当社が紹介した人材だけでなく、クライアントが 既に抱えているアルバイトの方の分も併せて任せてい ただくことも提案しています。
そうすることでクラ イアントは一切の手間から解放され、当社のビジネス には拡がりが出る。
当社では日雇い派遣の人口を約 六五万人と推計していますが、アルバイトやパートの 人口は一五〇〇万人にのぼります。
仮に半分と見積 もっても、日雇い派遣の一〇倍以上の規模です。
今 後はそこを主戦場にするわけですから、持続的な成 長は十分可能だと確信しています」 ──御社にとって今回の法改正はプラスだと。
 「当社だけでなく、クライアントや労働者、そして 日本全体にとってもプラスに働く面が多いと見ていま す。
まずクライアントにとっては、物流現場の生産性 が向上する可能性がある。
これまでの日雇い派遣で は、発注を受けてから人材を供給するまでに、最短 でも一日のリードタイムがかかっていました。
コンプ ライアンス上、事前に当社の社員が派遣先の現場検査 を行う必要があるためです」  「日々紹介の場合は、職場環境の維持改善は主にク ライアント側の業務になりますので、発注された当日 のうちに人を送り込むことが可能になる。
極端な話、 『一時間後に三時間だけ働ける人が二〇人ほしい』と いう要望にも応えられるようになる。
これまでの日 次単位の需給調整の限界を超えて、時間単位の需給 調整が可能になる。
これがスタンダードになれば、グ ローバル市場で戦う日本企業にとって大きな強みにな るはずです」  「もっともこれを実現するには、然るべきシステム と動員力が必要なので、すぐにというわけにはいか ない。
それでも、当社はその一環として今年四月に 『おてつだいネットワークス』というマッチングサイト の運営会社を買収するなど、既に布石を打ちつつあ る。
時間をかけず実践できるよう務めます」 ──労働者にとってのメリットとは?  「日雇い派遣は基本的に一日中拘束されます。
その ため、例えば主婦の方が急に空いた三時間だけ働き たいと思っても、それを受け入れることが難しかっ た。
日々紹介であれば、先ほど説明したように都合 の良い時間帯に働くことができる。
これまで埋もれ ていた労働力を、顕在化させることができるのです。
これは人口減少に伴って労働力が低下しつつある日 本全体にとってもプラスであることは間違いありませ ん。
そういったことに貢献することが、当社をはじ め人材会社の使命だと認識しています」 フルキャストの改正派遣法への対応 人材調達 雇用管理 人材紹介 アルバイト給与関連業務 労働者派遣

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