ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年2号
物流指標を読む
第26回 2011年度の物流市場を大予想「2010・2011年度の経済と貨物輸送の見通し」日通総合研究所

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む FEBRUARY 2011  92 2011年度の物流市場を大予想 第26 回 ●08年のような燃料価格の大暴騰はない ●国内貨物量は減少、国際貨物量は増加 さとう のぶひろ 1964年 ●トラックの運賃水準はわずかに上昇する 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
実質経済成長率は二%の伸びも  米国の投資ファンド運用会社ブラックストー ン・グループの副会長であるバイロン・ウィーン氏 が、毎年恒例の「一〇大びっくり予想」( Ten of Surprise)を発表した。
今年は一〇項目ではなく、 二〇項目の予想が挙げられている。
 そのうち日本にも関係する六項目を紹介しよう。
? . ブッシュ減税と失業保険給付延長が継続。
貿 易と設備投資に支えられて、二〇一一年の実 質GDP成長率は五%近くに、失業率は九% 以下になる。
? . 連邦政府の財政赤字の増加と公的債務の上昇 の見通しが債券市場に影響を及ぼし始め、一 〇年物国債利回りは、外国人投資家の姿勢 がより厳しくなることから五%に近づく。
? . 経済回復のモメンタムにより、S&P五〇〇 指数は過去最高値の一五〇〇ポイントに近づ く。
しかし、金利の上昇により、年後半に 株式市場は調整する。
? . インフレと過剰な経済成長を懸念して、中国 は人民元高を誘導し、経済成長率を一〇% 以下に、そして消費者物価上昇を四〜五%の 範囲に抑える。
? . 新興国需要の継続や新たな供給源の不足から、 原油価格は一バレル一一五ドルまで上昇。
? . 金利上昇と景気回復により、ドルはユーロと 円に対して強くなる。
緊縮財政や増税により 欧州金融危機は後退し、日本は景気後退入 りを回避する。
 昨年のウィーン氏の予想は残念ながら惨敗であ ったが、今年はどうだろうか。
 さて、別に真似をするわけではないが、筆者も 一一年度の物流市場環境および規模について予想 してみたい。
?国内景気  一一年度の日本経済は、上期いっぱいは足踏み 状態が続くが、年度半ば以降、世界経済の持ち直 しを受けて輸出は増勢を強める一方、国内生産も 前年度を上回る基調を取り戻す。
日通総研は、一 一年度の実質経済成長率を一・一%と予測した が、筆者個人としては、若干上ぶれる可能性があ る(二%近い成長もある)と考えている。
一〇年 度下期が予想以上に堅調に推移し、その結果、成 長率のゲタが高くなるとみられるからだ。
?為替レート(円ドルレート)  主要なシンクタンクやエコノミストの予測レンジ は八〇円から九〇円台半ばとかなり広く、見解が 大きく分かれている。
ポイントは米国経済の見方。
米国経済の回復を見込むグループは緩やかな円安を 予測する一方で、米国経済が弱いとみるグループ は円高(というよりドル安)を予測している。
世 界中からの批判を無視して、米国がさらなる金融 緩和策を打ち出すとみる向きもある。
そうなれば、 七〇円台の円高も起こりうる。
 これに対して、米国の債券価格の大暴落⇨大幅 な金利上昇により、一気に円安に向かうという見 方もある。
今年の秋から冬にかけて、何か大きな 動きがありそうな予感がする。
「2010・2011年度の経済と貨物輸送の見通し」日通総合研究所 93  FEBRUARY 2011 力が高まるとみられるが、原油相場が二年ぶりの 高水準で推移しているため、OPECが供給を増 やす公算は大きいとIEAはみている。
すなわち、 短期的には供給余力は十分あるということだから、 WTIが一時一四七ドル台をつけた〇八年夏のよ うな大暴騰はないだろう。
一一年度にWTIの最 高値が一〇〇ドルを突破する可能性は高いが、〇 八年と比較して、為替が二割以上も円高の水準と なっているので、二年前のように、給油所売りの ガソリン価格が一九〇円台まで急騰するような事 態にはならないだろう。
?国内貨物輸送量  国内貨物輸送量は二・一%減と十二年連続のマ イナスとなり、ピークであった一九九一年度(六 九・二億トン)の約三分の二の水準まで落ち込む。
消費マインドの停滞や、前年度に大きく伸びた季 節商品等の反動減を受けて、消費関連貨物は一・ 二%減に。
生産関連貨物は、家電エコポイント制 度の見直しに伴う家電類の不振、石油製品の需要 減退が見込まれ、鉄鋼や一般機械なども、鉱工業 生産・出荷の伸び悩みから横ばいないしは微増が せいぜいであるため、全体では一・五%減になる。
建設関連貨物は、住宅投資がプラスに反転し、公 共投資の減少幅もいくぶん狭まることから、水面 下の推移ながら三・三%減にとどまる。
?国際貨物輸送量  外貿コンテナ貨物の輸出は、前年度下期から続 く機械機器類などの在庫調整の影響や円高が下押 し要因となり、四〜六月期はほぼ横ばいで推移す るが、七〜九月期からは機械機器類、化学製品 などの需要が持ち直し、年度全体では三・四%増 に。
輸入は、機械機器に着実な荷動きが期待でき るが、前年度好調であった消費財が伸び悩むこと から、二・五%増にとどまる。
 国際航空の輸出は、IT関連貨物等の在庫調整 が四〜六月期まで続くため、アジア線、太平洋線 については、上期は弱含むが、下期は需要の回復 が期待されることから、年度全体では二・四%増 とプラス成長を維持する。
輸入は、下期に機械機 器類が堅調な増加基調を取り戻すものの、消費財 の伸び悩みを受けて、全体では二・二%の小幅な 増加にとどまる。
?トラック運賃水準  トラック運賃の水準を左右する要因は、貨物量、 コスト、物価水準の動向などだ。
貨物量は小幅減 に(注:営業用トラック輸送量は〇・六%減の見 通し)。
原油価格の上昇を受けて、燃料費は一〜二 割程度の上昇が避けられないため、コストは増加 する。
物価水準については、国内企業物価指数は 〇・五%増(注:日通総研見通し)が見込まれて いる。
プラス要因とマイナス要因が混在するなかで、 運賃水準自体に大きな変動はみられないと思うが、 基調としては若干の上昇に向かうのではないか。
 昨年末に国土交通省が発表した〇九年度の貨物 自動車運送事業者数は、前年度比で一八〇者減と 二年連続のマイナスに。
加えて、休眠事業者数は 数千者にのぼると言われており、実質的な事業者 数はすでに六万者を割れている可能性が高い。
供 給力の低下は運賃の上昇要因である。
国内貨物輸送量は十二年連続の下落 ?燃料価格  昨年末から年始にかけて、NYの原油先物価格 (WTI)は一バレル=九〇ドルを挟む展開とな っている。
IEA(国際エネルギー機関)は、昨 年十二月の月報で、一一年の世界石油需要見通し を日量で八八八〇万バレルと発表した。
北米や中 国での石油消費の拡大を背景に、二年連続で過去 最高水準を更新する見通し。
需要の拡大を受けて、 OPEC(石油輸出国機構)に対する供給拡大圧 国内貨物輸送量の見通し単位:百万トン、(  )内は対前年同期比増減率(%) 総輸送量 建設関連貨物 を除く輸送量 鉄道 JR その他 自動車 営業用 自家用 内航海運 国内航空 年度・期 機関 上期下期 2,393.4 2.392.7 2,327.6 2,356.2 4,830.4 4,786.1 4,683.7 (0.5) (△2.3) (△2.8) (△1.5) (△6.1) (△0.9) (△2.1) 1,490.2 1,485.5 1,458.8 1,474.3 2,942.4 2,975.7 2,934.0 (2.9) (△0.5) (△2.1) (△0.8) (△3.5) (1.1) (△1.4) 21.1 22.8 20.6 22.7 43.3 43.8 43.3 (4.4) (△1.3) (△2.1) (△0.4) (△6.4) (1.3) (△1.2) 14.9 16.2 14.8 16.3 30.9 31.1 31.1 (3.7) (△1.4) (△0.6) (0.6) (△6.1) (1.0) (0.0)  6.1 6.5 5.8 6.3 12.4 12.7 12.2 (6.1) (△1.1) (△5.6) (△2.8) (△7.3) (2.3) (△4.2) 2,192.6 2,201.3 2,137.6 2,169.8 4,454.0 4,393.8 4,307.4 (△0.4) (△2.2) (△2.5) (△1.4) (△5.6) (△1.4) (△2.0) 1,338.6 1,370.6 1,324.2 1,368.5 2,686.6 2,709.2 2,692.7 (1.6) (0.1) (△1.1) (△0.2) (△4.3) (0.8) (△0.6) 854.0 830.7 813.3 801.3 1,767.5 1,684.7 1,614.7 (△3.5) (△5.9) (△4.8) (△3.5) (△7.4) (△4.7) (△4.2) 179.3 168.1 168.9 163.2 332.2 347.5 332.1 (13.2) (△3.2) (△5.8) (△2.9) (△12.3) (4.6) (△4.4) 0.474 0.493 0.463 0.492 0.960 0.966 0.955 (2.0) (△0.5) (△2.2) (△0.1) (△3.6) (0.7) (△1.2) 2010 年度 上期下期 2011 年度2009 年度 2010 年度 2011 年度 注)1.原系列。
2.2009 年度まで実績値。
3.実績値は国土交通省の各種統計・資料による。
4.端数の関係で合計が合わない場合がある

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