ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年7号
特集
物流会社負け組の処方箋 輸配送網をトヨタ流にダイヤ化する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2002 18 子会社は高い ――昨年四月に社長に就任したわけですが、開発畑の 長かった古勝社長にとって物流はまったく畑違いだっ たのでは? 「七、八年前になりますが、NECはトヨタ生産方 式をベースにした『生産革新』に着手しました。
トヨ タは計画生産ではなくて、売れ行きに合わせた生産で 優れた業績を上げてきた。
その手法をNECでも取り 込もうということになったのです。
トヨタ生産方式は 物流と密接に関係しているので、物流についてもたく さん勉強しなければならなかった。
当時、私はNEC 茨城の社長という立場で、資材調達の物流網や製品 供給の物流網の構築に取り組んだ。
だからまったくの 畑違いというわけではありません」 ――NEC本体からは何を望まれてきたのでしょうか。
「それまで私は工場側から見て、いろいろと物流に 注文を付けていました。
そんなに言うなら自分でやれ、 というのが私流の解釈ですけどね(笑)」 ――工場側でNECロジを利用する立場にいたとき、 この会社に対してどういう印象を持っていましたか。
「物流子会社というのは高いんだろうなという印象 を持っていました。
ロジに限らずNECの名の付くと ころはみんな高いんだろうな、と。
実際にこの認識は 間違っていなかった。
コストが掛かった分だけお金を もらうという仕事のやり方を数年前までやっていまし たからね。
四年前だったと思いますが、市場調査をし てみたら、やはり他社よりも物流に掛かるコストが高 いという結果が出た。
そこで前社長の上村さんが、今 は親会社も大変な時期だし、NECロジが力をつける ためにも市場並みの取引条件にしなければならないと いって、強引に値下げしたんです。
実際、二年間かけ て市場価格並みにまで落としました。
再び昨秋に第三 者を入れて調べたら、市場価格並みになっているとい う結果が出ました」 ――物流品質という面ではどうですか。
「品質はもともと、問題ないんです。
品質と納期に ついては優れたものを持っている。
コストだけですよ。
出荷額に対する物流費というのは、それほど大きくあ りませんから、以前は粗っぽく言うと、とにかくお前 たちはきちんと運べというミッションだった。
掛かっ たコストは支払うからといってね」 「とくに当社は扱っているモノがスーパーコンピュー ターから人工衛星までの幅広い精密機器です。
きちん とした梱包、ハンドリング、輸送という面では、協力 会社の方と一緒になって一生懸命にやってきたのでは ないでしょうか。
少なくても私は品質については、工 場時代から不満の声を聞いたことがありません」 ――上村前社長が行った価格を下げるための工夫とは。
「従来は実費のコスト+αでまとめて渡していたの を、仕事の単価、例えば荷役だったらこれぐらい、輸 配送だったらこれぐらいといった具合に、調査できる 範囲で調べた市場価格の水準に切り下げました」 ――NECロジの側ではコスト割れとなるケースも出 てきたのでは? 「当然、出ます。
しかし、それでいいんです。
コスト 割れしているという事実が、業務を統合したり、IT を使うことで工数を減らしたりすることへの弾みにな る。
上村さんの時代から二年間で現場社員の目つきは ガラリと変わった」 ――現在のNECロジには何が足りないのでしょうか。
「かつては人のマインドの問題がありましたが、これ はだいぶ変わりつつある。
しかし、物流の仕組み自体 にはまだまだ改善の余地が多く残されてます。
現在、 「輸配送網をトヨタ流にダイヤ化する」 親会社への依存度が高かったNECロジスティクスがビジネス モデルの見直しを急いでいる。
親会社からの受託料金を市場価格 並みに値下げしたほか、輸配送のネットワーク化、倉庫の流通型 拠点への転換などに取り組む。
3年後に外販比率を30%に引き上 げることを目標に掲げている。
NECロジスティクス古勝紀誠 社長 Interview 19 JULY 2002 特集 物流子会社 私は主に三つの改革テーマを掲げています。
そのうち の一つは『輸配送網』です。
極端な言い方をすれば、 従来の輸配送網はタクシーやハイヤーと一緒です。
製 品ができて『ハイ、運びなさい』と言われたら、『分 かりました』といってトラックをチャーターしてお客 さんに届けるだけだった」 「チャーター方式ではなく、輸配送をネットワーク化 してダイヤを組む形にしようとしています。
これが完 成すれば、顧客企業はいつ荷物を渡せば、いつどこに 着くのかダイヤをみれば分かるようになる。
我々にも 分かる。
ダイヤ化できればトラックの積載率も上がる」 ――輸配送のプラットフォームを作る。
「そういうことです。
だいたいNECの全体の荷量 は読めますから、これをベースにまずネットワークを 作る。
各工場は自分のところの荷量しか読めませんか ら、彼らに提案をしてプラットフォームに乗せようと しています。
トヨタ生産方式でやっている類の話です よ。
そうしたほうが前工程、後工程、資材工程まで含 めてチェーンが上手くつながっていくという発想です」 「これが動き出せば、相当効率が上がるんじゃない かと見ています。
今までみたいに工場側がおのおのチ ャーター便を用意しているのと比べると、効率もいい し、品質はきちんと確保できるし、リードタイムも安 心できるものになる」 ――二つ目の改革は。
「中継拠点や倉庫の管理の仕方を変えるというもの です。
しかし、この管理の仕方を保管型から流通型に 変えることはオールNECと、NECロジとでは相矛 盾するものがあります。
NECロジは倉庫でたくさん の製品を預かれば、売り上げも増えるし、利益も上が る。
しかし、倉庫に単に停滞しているだけで、いずれ 商品価値がなくなるような商品だとしたら、これはオ ールNECでみたらまずい」 ――保管型の拠点を、流通型に変えていくとなると、 かなり時間が掛かりそうですね。
「あまりモタモタしていられませんから、今年度いっ ぱいぐらいである程度のメドをつけます。
世の中、待 ってはくれません。
自分達のペースで仕事をしている わけにはいきません」 三年メドに外販三〇%目指す ――三つ目は? 「グローバルSCMの構築です。
当社は本社の国際 部門と、そしてそれに関連した現地法人がを持ってい ます。
台湾、上海、香港、マニラ、バンコク、シンガ ポール。
それにこれからオペレーションを始めようと いうことで設立のゴーサインが出たヨーロッパ(アム ステルダム)です。
加えて資本関係はNECの直属で すが、実質的に当社の傘下にあるNECロジスティク ス・アメリカがある。
めぼしいところには一応、すべて現地法人があります」 「いまNEC自身が、東南アジアから資材調達など をするケースが増えています。
また、東南アジアから 第三国へ直接、完成品を輸出するケースもある。
こう したグローバル・ロジスティクスの最適化を事業部も 期待しています。
こうしたことを進めていかなければ、 世界的な輸送網を持っているフェデックスやDHLに 勝てませんからね」 「親会社に甘えることなく、お前のところはいいね と本当に言わせる力をつけることが一番、大事です。
そうすれば外販もついてくるはずです」 ――外販比率の目標値は? 「現状は一五%弱ですが、三年後には三〇%を突破さ せたいと思っています」 ふるかつ・ただのぶ1926年生まれ、63年 神戸大学工学部電気工学科卒業、同年日本電気 入所、93年第一コンピュータ事業本部長、96 年支配人、97年コンピュータストレージ事業 本部長、同年茨城日本電気代表取締役(非常勤)、 同年本社理事、2000年NECソリューション ズコンピュータストレージ事業本部長、同年退 職、茨城日本電気へ移籍し代表取締役社長(常 勤)、2001年退職、NECロジスティクス代表 取締役社長、現在に至る PROFILE JULY 2002 20 横文字嫌いのアナタのための アングロサクソン経営入門《第7回》 「VMIは日本に普及するか」 VMIを導入することで「買い手」側の在庫リスクは「売り 手」側に移る。
その代償として「売り手」は「報酬」を手に 入れる。
それがVMIのルールだ。
「リスク」だけを取引先に押 しつけて、「報酬」を与えないルール無視は結局、長続きし ない。
日本市場にVMIが普及するかどいうかは、そこがポイ ントになる。
入江仁之 キャップジェミニ・アーンスト&ヤング副社長VS 本誌編集部 Columns

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