ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年6号
特集
最新3PL理論 新たな「元請け」企業の条件

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2002 12 3PLはもう古い? 荷主企業の物流部門が消滅すると同時に、既存の 物流業者が全て?孫請け〞化する――そんな事態が 現実のことになろうとしている。
二〇〇〇年十二月、 米自動車メーカーのGM(ゼネラル・モーターズ)は 調達から販売に至る全世界的なロジスティクス・ネッ トワークの構築と運用の全てを「ベクターSCM」一 社にアウトソーシングすることで契約を結んだ。
GMは現在、世界七〇カ所に最終組立工場を構え、 素材や部品工場など数百カ所に生産拠点を展開して いる。
調達先となるサプライヤーは約一万二〇〇〇。
販売ディーラーは一万二五〇〇を超える。
ベクターS CMはGMに代わって、この膨大なネットワークを行 き来する全ての在庫を一元管理する仕組みを構築する。
これによって受注から納品までのリードタイムを十二 日から四日に短縮、在庫コストを半減させることが期 待されている。
既に両社は二〇〇三年末をメドとして現在、地域 別・機能別に業務移管を進めている。
これが済んだ段 階でGMの年間六〇億ドル(約七五〇〇億円)に上 るロジスティクス関連予算は全てベクターの管理下に 置かれることになる。
日本を含め、これまでGMと直 接取引してきた各国の協力物流業者は、必然的に全 て二次サプライヤー(Tier2)に格下げとなる。
影響はそれだけにとどまらない。
ベクターは米大手 ロジスティクス業者のCNF社が八〇%、GMが二 〇%を出資して設立したジョイントベンチャーだ。
C NFはベクターの他、陸上輸送のコン ―ウェイ・トラ ンスポーテーション・サービス、航空フォワーダーの エメリーワールドワイド、そして3PLのメンロ・ロ ジスティクスなどの有力物流業者を傘下に抱えている。
グローバル企業による協力物流業者の見直しが急を告げている。
これまで地域別・機能別に契約してきた物流業者との関係を改め、 本社の物流スタッフ機能まで含めたロジスティクス・マネジメント を丸ごと1社にアウトソーシングするケースが出始めた。
LLP(Lead Logistics Provider)と呼ばれる。
LLPの台頭により物流市場の勢 力図は、また新たに塗り替えられる。
本誌編集部 GMのオペレーションのかなりの部分は今後、既存の 協力会社から、これらの企業に流れる可能性が高い。
GMと同様、ライバルのフォードも二〇〇〇年にカ ナダを含む北米市場とメキシコのロジスティクス・ネ ットワークの再構築をUPSの子会社、UPSロジス ティクスに一任している。
その後の一年間の活動によ って一〇億ドル(一二五〇億円)の在庫削減と一億二 五〇〇万ドル(約一五六億円)の運用コスト削減を 実現した。
両社は現在、同じ取り組みを欧州市場で も展開する計画だと伝えられている。
このGMとフォードの二つのケースにおいて、ベク ターSCMおよびUPSロジスティクスは、いずれも 自らの役割を「LLP」もしくは「4PL(Fourth Party Logistics: アクセンチュアが商標を所有)」と 呼んでいる。
物流業者でも3PLでもない、全く新し いタイプのロジスティクス業者だと自らを位置づけて いるわけだ。
過去を振り返ると、物流アウトソーシングは輸送や 保管などの物流機能ごとに専門業者に業務を委託す るところから始まった。
その後、物流業の規制緩和を 経て、九〇年代に入ると本業回帰を図る荷主企業の リストラクチャリングの受け皿として、新たに3PL が台頭した。
さらに現在、SCMの普及とグローバル 化の進展が、物流業者にもう一段の進化を迫っている。
LLP/4PLの役割 オフィス用コンピュータメーカー、サン・マイクロ システムズは一九九九年一月に英3PL大手のエク セルと契約を結び、グローバル・ロジスティクスのオ ペレーションを同社に一任した。
ただし、各国内の物 流についてはサンの現地法人が別途、地元の物流業 者と契約している。
日本では日本通運がパートナーだ。
新たな「元請け」企業の条件 解 説 13 JUNE 2002 エクセルが海外工場から成田空港に持ち込んで通関、 空港から一五分ほどの距離にある日通の成田拠点に 納品するまでを担当する。
その後の在庫管理と顧客へ の納品は全て日通が処理している。
日常のオペレーションに関して、サンの日本法人は エクセル、日通のそれぞれと折衝する。
ただし戦略レ ベルのテーマについては、スコットランドにあるサン の上位部門を通じて、エクセルのロンドン本社と相談 する。
サンの寺師正明オペレーション統括本部長は 「本当はグローバルな3PL一社に全てを任せたいの だが、現状ではそういう会社は存在しない。
次善の策 として現在の形になっている」と、アウトソーシング の現状について説明する。
エクセルとグローバル契約を結ぶ前まで、サンの日 本法人では英国工場を荷物が出るところから日通一 社に委託していた。
しかし、米国本社のアウトソーシ ングの方針変更から、モード別に業者を集約すること になった。
このときのグローバル・コンペは十二社で 争われ、日本から唯一日通も参加したが、選ばれたの はエクセル(当時MSAS)だった。
日本法人にとっては、国内での物流管理を任せられ る日通に、グローバルな輸送まで委託したほうが管理 の負担が小さくなる。
そうした地域の事情を押し退け て米国本社がエクセルとグローバル契約を結んだのは、 パートナーをワールドワイドに集約することでコスト 削減を引き出そうという狙いがあったからだ。
もっと も、日本国内の在庫管理と配送までエクセルに委託す るのは無理がある。
その結果が、国際はエクセル、国 内は日通という選択だった。
サンとしては現在の体制に対して課題を感じてはい るものの具体的な突破口が見当たらない状態だ。
一時 は提案力で評価の高いフェデックスとも改革プロジェ クトを組んだが、満足のいくソリューションは得られ なかった。
「当社としては世界中のどこで作っても、世 界中のどこの顧客に対しても、サービスを保証できる サプライチェーンを模索している。
いずれは、それを 真にワールドワイドでサポートしてくれるロジスティ クス・パートナーを選ぶ必要がある」と寺師統括本部 長はいう。
本来、3PLは荷主企業をロジスティクス管理の 負担から解放し、コア・コンピタンスに集中させる役 割を担うはずだった。
ところが現実には、グローバル 化が進み、サプライチェーンの複雑化した大手荷主企 業のロジスティクスを一手に引き受けることのできる 3PLは存在しなかった。
結果として、荷主には複数 の3PLを管理する必要が生じ、外部化は限定的な ものに止まっている。
玩具販売大手のトイザらスは、世界共通のシステム に基づいて各地域のロジスティクスを運用している。
た だし、3PLとの関係は地域によって全く異なっている。
米国本土が自家物流を基本としているのに対して、 日本では逆に広範囲な業務を物流業者に委託している。
日本トイザらスの平塚勝啓ロジスティクス部長は 「私としては日本の物流業者との現在の関係を3PL だと考えている。
これに対して米国内ではほとんどの 物流業務を内製化している。
自分達で人を雇って労 務管理まで直接行っている」と説明する。
数年前に同社のインターナショナル部門では、本格 的な3PLの活用を検討した時期があった。
実際、フ ランスでは3PLの導入を実施したが、期待通り機能 しているとはいえない。
トイザらス側で業務をコント ロールすることができなくなり、コストも増加してし まった。
そこで現在はまた自家物流に戻す方向で検討 を進めているという。
外注形態 戦 略 計画/統制 管 理 処 理 アセット 自家物流型 物流業者型 3PL型 LLP/4PL型 荷 主 荷主/物流業者 物流業者/3PL 物流業者/3PL 協力物流会社 協力物流会社 荷主経営層/ 経営戦略部門 本社物流 スタッフ部門 荷主拠点 管理部門 荷主現場 スタッフ 荷主経営層/ 経営戦略部門 本社物流 スタッフ部門 荷主拠点 管理部門 荷主経営層/ 経営戦略部門 本社物流 スタッフ部門 協力物流会社 3PL LLP/4PL 3PL 荷主経営層/ 経営戦略部門 日本サン・マイクロシステムズの 寺師正明オペレーション統括本部長 JUNE 2002 14 LLP/4PLはこうした3PLの課題を克服す るために開発された新業態だ。
荷主企業はLLPを 利用することで長期的な戦略を立案するスタッフを除 き、社内のロジスティクス業務を全て外部化すること ができる。
実際、GMはベクターSCMとパートナー 契約を結んだことで、既存のロジスティクス部門のス タッフのほとんどを他部門に移している。
従来の3PLがロジスティクス・パートナーだとす れば、LLPにはサプライチェーン・パートナーとし ての役割が求めらる。
必然的にその評価基準も従来の 3PLとは違ったものになる。
GMはベクターSCM(CNF)をLLPのパート ナーに選んだ理由として、?グローバルなプレゼンス、 ?サプライチェーンの専門知識、?自動車産業におけ る経験、?最新技術および将来の技術革新を活用す る能力――を挙げている。
3PLで重視されるコスト 削減や在庫の圧縮はもちろん重要だが、それらはもは や二次的な要素になっている。
現在、米自動車業界では「3Day Car」がS CMで目標とすべきモデルになっている。
消費者が自 分の仕様の自動車を注文してから、三日後に納車す るサプライチェーンだ。
「どこかのメーカーがこれを実 現したら、他のメーカーは生き残れなくなる」という 圧倒的な競争優位のモデルとして業界では認識されて いる(本誌二〇〇二年四月号六八頁参照)。
GMやフ ォードはLLPを活用することで、その実現に挑んで いる。
同時に彼らは現在、開発と生産をコアに据えた従 来のビジネスモデルを改め、ブランド・マネジメント を自らのドメインとして位置付けようとしている。
新 たなモデルにおいて彼らは、サプライチェーン・ネッ トワークの管制塔の役割を果たす。
サプライヤーやデ ィーラーなど、LLPを含めたパートナーたちを、必 要に応じて柔軟に結びつけ、素早く市場のニーズを満 たす。
「ジョイント・オペレーティング・モデル(J OM)」と呼ばれるモデルだ。
日米欧で異なる発展 日本の物流業者も、こうした動きと無縁ではいられ ない。
新しい環境に合わせて業態を変革する必要があ る。
ただし、欧米のやり方をそのまま真似ても機能は しない。
自分の置かれた市場の特性を読み違えると、 先進的な試みも空振りに終わる。
実際、3PLは地域 ごとに異なる発展の仕方を遂げている。
物流業の規制 緩和、そして荷主企業のリストラが3PLを生む土壌 になったのは世界共通だ。
しかし、その時期や中心的 な担い手、提供するソリューションには、それぞれの市 場の特徴を反映した違いがある。
米国市場では八〇年に物流業の規制緩和が実施さ れた。
以降一〇年近くにわたり物流市場は混乱し続 けた。
その後、八〇年代末から九〇年代初頭にかけて、 米国産業界全体にはリストラの嵐が吹き荒れた。
自動 車のビッグ3やIBMなどの基幹産業の代表的企業 が大量のレイオフを断行し、本業回帰を図った。
そこ に3PLのニーズが生まれた。
そのため米国では?大企業病〞に陥っていた老舗 企業が、3PLのメーンのクライアントとなった。
そ こで中心的なテーマにされたのはアウトソーシングに よる荷主企業のスリム化とコスト削減だった。
また3 PLの担い手は、市場の混乱に苦しんでいた既存の物 流業者と、新たなビジネスチャンスを狙ったベンチャ ー企業だった。
これに対して欧州ではEU統一市場の誕生が3P L台頭のキッカケだった。
複雑に国境の入り組んだ欧 3PLは市場ごとに異なった発展を遂げている 規制緩和 3PLの台頭 主なプロバイダー 当初の主なテーマ 現在の主なテーマ 80年 (自動車運送事業者法の施行) 90年代初頭〜 キャリア ノンアセット3PL 荷主物流部門のリストラ グローバル化への対応 93〜94年(EU統合に伴う自由化) *英は68年の規制緩和 90年代中頃〜 *英は80年代後半 フォワーダー EU統合に伴う拠点統合 グローバル化への対応 90年(物流二法の施行) 90年代後半〜 物流子会社 キャリア  新興企業の物流代行 物流子会社のリストラ 米 国 欧 州 日 本 15 JUNE 2002 州では、歴史的に通関を担うフォワーダーが物流市場 の中心的役割を担ってきた。
ところが九三年一月にE U域内の国際間輸送が自由化されたことでフォワーダ ーは最大の収益源を失ってしまった。
同時に欧州市場の荷主企業は、これまで各国別に配 置していた物流拠点を汎欧州という視点から統合する ことができるようになっていた。
生き残り策を探って いたフォワーダーはそこに目を付けた。
荷主の拠点集 約を代行する物流改革屋としての復権を図ったのだ。
こうした背景があるため欧州の3PLは多くが老舗 のフォワーダーを母体としている。
しかも米国とは異 なり欧州では英国を除いて一般に労働組合の力が強 く、荷主企業の人員削減が容易でないことから、拠点 集約と並んでアウトソーシングに伴う労務管理が3P Lの最大テーマの一つとなっている。
翻って日本では九〇年の「物流二法」によって規 制緩和が実施された。
当初はバブル経済の余波が残っ ていたことから、物流業界が米国のような構造不況に 陥ることはなかった。
しかし、その後のバブル崩壊に よって環境は見るみる悪化していった。
気がつけば規 制緩和後の一〇年でトラック運送事業者数は三割以 上増加。
市場ではダンピングが横行し、実勢運賃は下 落し続けていた。
さらに九〇年代の後半になって、荷主産業界のリス トラが本格化したことで、3PLを生む環境は臨界点 に達した。
ところが現在に至るまで欧米の物流市場で 起きたような3PLの台頭が、日本では顕在化してい ない。
日本の産業界に特有の物流子会社の存在がそ こに大きく影響している。
本誌の推計では現在十数兆円と言われる日本の物 流市場のうち四兆円程度を物流子会社の売り上げが 占めている。
これは世界の他の国には見られない現象 だ。
物流子会社はそもそも親会社の物流管理を代行 する役割を担う3PLとして設計されている。
見方に よっては、従来から日本は世界で最も3PL化の進ん だ市場だったいうこともできる。
物流子会社のリストラを軸に ただし、日本の物流子会社と本来の3PLには根 本的な違いがある。
3PLが荷主から評価を受けるこ とで淘汰されるのに対し、物流子会社には市場原理が 全く働かない。
新たな付加価値を生む仕組みを持たな くても、日本の物流子会社は生存を許されてきた。
大 部分の子会社が実際には単に法人格を親会社と分け ただけに過ぎない存在だった。
しかし、もはや親会社 に付加価値のない子会社を抱えておく余裕はない。
米国では大企業のリストラ、欧州では拠点集約が 3PLのテーマになったのに対し今後、日本では物流 子会社の解体と再生を軸に、3PL市場が形成され ていく。
親会社から子会社を買収して解体。
そこから 必要なリソースを取り出し、全く新しいビジネスモデルを作り上げることで再生を果たすというスキームが 有力だ。
そこでは3PLを飛び越え一気にLLPの 実現が目指されることになるだろう。
既にその担い手として?有力物流子会社や、日本進 出を狙う?外資系物流会社、株式公開で得た利益を 子会社の買収に充てようと目論む?ベンチャー企業な どが名乗りを上げている。
それを総合商社や投資信託 会社などが資金面、信用面で支援するという構図だ。
そこでは3PLに必要とされる一般的な機能に加え、 M&Aや資金調達を有利に展開するための財務能力、 荷主企業の従業員や労働組合と折衝するための労務 管理能力が求められる。
いずれも日本の地域性に根ざ したテーマだけに欧米にお手本はない。
3PLを目指 す経営者自身の手腕が問われている。
米国の3PL/コントラスト・ロジスティクス市場の規模 国内輸送管理―アセットベース 国内輸送管理―ノンアセットベース 国際輸送管理 付加価値倉庫/配送 ソフトウエア 合  計 2001年 総売上げ 83 175 157 153 40 608 成長率 2.5% 3.6% 7.5% 13.3% 7.4% 3PLセグメント (単位:億ドル) 米Armstrong & Associates社調べ 日本トイザらスの平塚勝啓 ロジスティクス部長

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