ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年5号
特集
物流IT 先進企業はココが違う 物流情報システムの統合とは?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2002 36 EAIの登場 今日のロジスティクス情報システムには、様々なサ ブカテゴリーがあります。
それを説明するには、まず 企業の情報システム全体の構造を整理する必要がある でしょう。
それが図1です。
この図のなかで上の段が、 いわゆる基幹系と呼ばれるシステムで、販売や経理な どの基本的な業務を処理しています。
ここには「ERP」もしくはその会社が自分の仕様 で開発したシステム(レガシーシステム)が当てはま り ま す 。
ま た 最 近 で は 「 C R M ( C u s t o m e r Relationship Management: 顧客情報の管理)」シス テムを構築している企業も増えていますが、これも基 幹系システムの一つとして位置づけることができます。
これに対して図1の下の段が、ロジスティクス情報 システムの領域です。
実務を担当するので実行系と呼 ばれています。
ロジスティクス情報システムは大別す ると、在庫系と輸配送系の二つから構成されます。
こ のうち在庫系の代表がWMSで、輸配送系がTMS です。
ところで図1には基幹系のシステムとロジスティク ス情報システムを「EAI」が結んでいるように書 いてあります。
EAIとは、Enterprise Application Integration の略語で、システム同士を結合するハブ 機能を果たすプログラムです。
タコ足配線のコンセン トのように、システム同士の情報交換を仲介するわ けです。
有名なのは米国のウェブメソッド、日本では データ・アプリケーションという会社がEAIを提 供しています。
ちなみにEAIのようにプログラムと プログラムの中間にあるソフトをミドルウェアと呼び ます。
EAIが登場するまで、基幹系システムとWMSな ど、システム同士の情報交換はプログラムを直接、繋 ぐしかありませんでした。
しかし、その方法では片方 の仕組みが変わると繋ぎ方も変えなくてはなりません。
しかも、変更は頻繁に起きる。
一つひとつのシステム にはそれぞれの寿命があります。
環境とニーズが変化 することで、手を入れなければならないところが必ず 出てきます。
ところが全体が一つのプログラムになっていると一 部だけ直すということが事実上できません。
そこでE AIという標準的なハブを用意しておくことで、部品 単位の交換ができるようにしたわけです。
全体に手を 入れるのではなく、必要なモジュールだけを変えるこ とができるようになったのです。
モジュールという言葉は最近では広く経済用語とし て使われるようになっていますが、情報システムの世 界ではこれまで、一つのプログラムの中の機能を細分 化したレベルでモジュール化が行われていました。
W MSであれば、マスターファイルを管理する部分、帳 票を印刷する部分といった形でモジュール化が実施さ れていたわけです。
それがEAIの登場によって、一 つ上のレイヤーでのモジュール化が行われるようにな りました。
ERP、CRM、ロジスティクスといった 大括りな単位でのモジュール化です。
実は九〇年代にERPが紹介され始めた当初、E RPは一本のソフトで何でもできるという触れ込みで した。
ところが段々と「餅は餅屋」という形で、プラ ンニングソフトや実行系ソフトなどに分化されていき ました。
実際、ERPを導入した企業であっても、あ る部署ではレガシーを使い、別の部署ではまた別のシ ステムを使うということになっているのが実情です。
結局、統合ソフト一本ではダメだ。
そう皆が気が付い てプログラムを分けていったことで、逆に統合の必要 物流ソフトの素朴な疑問? 物流情報システムの統合とは? Columns 物流管理がロジスティクス、SCMと高度化したのに従って、 関連ソフトウェアの種類もどんどん増えている。
それぞれの ソフトは何と、どうつながっているのか。
また、その統合管 理とは、いったい何を意味しているのか。
田中純夫 フレームワークス社長 37 MAY 2002 先進企業は ココが違う 特 集 が出てきたのです。
その一つ下のレイヤーとなるロジスティクス情報シ ステムの統合も同じ構図になっています。
ロジスティ クス情報システムのバリエーションは今日、WMSや TMSのほかマテハン制御や輸出入管理、さらに受発 注、データウェアハウスやモバイル関連など、どんど ん増えています。
しかも、こうした分野は技術革新が とても激しい。
モジュールの単位がどんどん新しくな ると同時に、意味を失ったものが消えていきます。
こうなるとロジスティクス情報システムの全体を一 つのプログラムで維持していくことは不可能です。
今 後は全てのプログラムがEAIのようなハブを対象に した標準的なアダプタを持つ形になるはずです。
これ によって、プログラムを簡単に差し替えることができ るようになる。
ニーズの変化に対応することが最短か つ安全にできるようになります。
サプライチェーン・ロジスティクス こうしてシステム自体はだんだん繋がって統合され ます。
そこで問題になるのは、システムの統合よりむ しろ運用面での統合です。
図2はSCMの領域を示しています。
SCMもまた 計 画 系 ( C P S : Collaborative Planning & Scheduling )と実 行 系 (S C E : Supply Chain Execution )の二つに分かれます。
このうちSCEに は本来、WMSやTMSだけではなく生産管理も入 れなければなりません。
ロジスティクスだけでなく、生 産も実務の実行ですから当たり前の話です。
従ってWMSを提供してきた当社もSCEのプロバ イダーを名乗るなら生産管理をカバーしていないと嘘 になってしまう。
そこで当社は改めて事業ドメインを 仕切りなおして、「サプライチェーン・ロジスティク ス」というカテゴリーを設定しました。
当社と同様、 物流マンの方が当面のターゲットにすべきなのも、こ のサプライチェーン・ロジスティクスだと思います。
ちなみに、図2の真ん中にあるのはサプライチェー ン・イベント・マネジメントです。
イベントという言 葉が分かりにくいので、図ではサプライチェーン・プ ロセス・マネジメント(SCPM)と表しています。
SCPMでは物流を含めたビジネスの動きをリアルタ イムに制御します。
ここが本来のSCMのテーマの中 心になります。
しかし現在の大部分の企業にはSCPMを司る組 織が存在しません。
最近は物流統括やサプライチェー ン部門といった組織も増えてきましたが、まだ各社と も経験が浅く、またリアルタイムのデータを吸い上げ る仕組みも整っていません。
先進企業でも、その設計 を始めたという段階です。
既にSCPMのソフトウェ アを提供するソフトベンダーも登場してはいますが、 まず足元のロジスティクスを管理できないとSCPM は機能しない。
にも関わらず、現在のサプライチェーン・ロジステ ィクスはWMSとTMSの管理から抜け出ていないの が現状です。
アイテム数が少ないとか、生産の把握が しやすい業種で一部、統合が動き始めている程度で、 これが成功例だと明言できるようなケースは出てきて いません。
そこで当社はまずサプライチェーン・ロジスティク スの分野でリアルタイムの実行を正確に把握し、他の システムに提供できる仕組み作りをクライアントに提 案しています。
そこでは具体的にはWMS、TMS、 マテハン管理(MHCS)と輸出入管理(GLS)の 計四つの要素の統合が当面の課題になっています。
(談) 図2 図1 調達生産管理 販  売 所要量計画 MRP 配置計画 DRP 需給計画 APS 需要予測 CPS(協働計画ソリューション) Collaborative Planning & Scheduling 倉庫管理 WMS 輸配送管理 TMS マテハン管理 MHCS 輸出入管理 GLS Suppy Chain Logistics SCPM Suppy Chain Process Mng. リアルタイム情報収集 警告・ガイダンス 可視性・業績評価指標 強調生産 CPM 製造実行 MES SCE 生産計画 販売計画 基幹系 情報のハブ 実行系 CRM ERP レガシー EAI WMS サプライチェーン・ロジスティクス TMS

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