ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年10号
ケース
三菱電機―― エコ物流

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2003 38 「MET(めっと)の花を咲かせよう」を 合言葉に、三菱電機は九三年度から環境負荷 を低減する活動に取り組んできた。
「MET」 とは「Material =資源の有効活用」、「Energy =エネルギーの効率利用」、「Toxicity =環境 リスク物質の排出回避」という三つの標語の 頭文字をあわせたもの。
それぞれの視点から 事業活動を見直し、最小限の資源やエネルギ ーを使って、最大限の付加価値を生み出そう という活動だ。
この活動を進めるために、事業活動や製品 が環境に与える影響を評価して、環境に配慮 した技術やプロセスを開発・導入してきた。
循環型社会システムを実現するリサイクルも 推進中だ。
さらには、事業所ごとに環境マネ ジメントシステムを確立して自主運用する、 といった活動にも取り組んでいる。
コスト削減と環境対応の両立 三菱電機ではこうした活動を、中長期的な 「環境計画」として体系化し、達成目標を設 定しながら進めてきた。
あらかじめ目的とそ れを達成するための基本課題、具体的な項目 を定めて、各事業本部が計画を実施。
これを、 グループ全体を見据えながら環境推進本部が 横断的に支援するかたちだ。
この計画には、 三菱電機の国内外の関係会社など八〇社を超 える企業が参画している。
九三年度にスタートした第一次環境計画で は、まず工場の環境対策に取り組んだ。
続く 環境を切り口に物流改善を本格化 目標は3年間でCO2排出量2割減 三菱電機が、今後3年間で製品輸送用車両 のCO2排出量を20%削減し、包装材使用量を 10%削減するという環境負荷低減に取り組ん でいる。
目標の達成に向けて、車両台数の削 減を図るべく主要物流拠点でのクロスドッキ ングを強化し、家電と重電など物流特性の異 なる製品の輸配送を一本化していく。
またリ ターナブル容器の利用拡大にも取り組む。
三菱電機 ―― エコ物流 39 OCTOBER 2003 第二次計画では製品の環境対策を進め、IS O14001の導入も推進した。
昨年までの 第三次計画では、「資源有効利用促進法」や 「容器包装リサイクル法」など環境関連法案 の遵守に力点を置いて目標を設定。
廃棄物処 理の委託量を九八年度比で六六%削減、包 装材使用量を同一九・六%削減、家電製品 の七〇%(重量比)を再商品化するなどの成 果を上げた。
今年度からスタートしている第四次計画で は、工場を対象とする「エコファクトリー」、 製品の「エコプロダクツ」と並んで、物流に 関する「エコロジスティクス」を取り組みの 柱に据えた。
同社はエコロジスティクスを、 エコノミーとエコロジーを組み合わせた、コ ストミニマムかつ環境対応型のロジスティク ス活動と定義している。
環境負荷の低減を進めると同時に、物流コストの削減も図るのが この活動の目的だ。
三菱電機グループ(国内の関係会社も含 む)の物流費の内訳(二〇〇二年度実績)を 見ると、輸送費が総額の五〇%で、包装費も 二四%と大きな割合を占めている。
そこで同 社はエコロジスティクスのメーンターゲット を「輸送」と「包装」に設定。
「輸送の効率 化」と「包装資材の使用量削減」による、コ スト削減と環境負荷低減を骨子としながら第 四次環境計画を策定した。
計画では、二〇〇五年度までの三年間で、 製品輸送用車両のCO 2 排出量を二〇〇二年 度比で二〇%削減する。
さらに包装材の使用 量も、二〇〇一年度比で一〇%削減するとい う目標を掲げている。
二年がかりの輸送実態調査 エコロジスティクスの目標設定と、そのた めの施策立案は、三菱電機のロジスティクス 部が行った。
同部が物流子会社の三菱電機ロ ジスティクス(MDL)と共同で施策を遂行 し、目標達成の責任を負う。
包装改善は第三次環境計画から取り組んで きたテーマだが、環境負荷低減を切り口に輸 送に関して具体的な目標値を定めたのは今回 が初めてだ。
こうした目標作りには、まず現 状の把握が欠かせなかった。
このためロジス ティクス部は、二〇〇一年から二年がかりで、 関係会社も含めた全事業所を対象にCO 2 排 出量を算定し、輸送コストを把握するための 輸送実態調査を実施した。
かなり大掛かりな調査だった。
CO 2 の排 出量は、環境省の定めたガイドラインに則っ てガソリン・軽油などの燃料使用量に「単位 発熱量」と「排出係数」を乗じて算定する必 要があった。
定量的にデータを把握するため には、各事業所のデータを特定のフォーマッ トで電子データとして収集できるシステムが 必要だった。
だが各事業所や関係会社が取り引きしてい る運送会社のなかには、紙ベースでしかデー タを蓄積できず、電子データ化の進んでいな い事業者が少なくなかった。
このため、事業 所が個別に送り先・個数・運賃などのデータ を把握して輸送費を管理することはできても、 全社で体系的に把握するのは不可能だった。
ロジスティクス部では、まず運送会社向けの 勉強会を開催してEDI化をサポートするな どしながら、データ把握のための環境整備を 進める必要があった。
二年間を費やした実態調査によって、三菱 電機が直接的に管理に関与している輸送業務 については、CO 2 排出量や輸送コストを算 定できる仕組みが整った。
製品輸送用車両の うち、MDLおよび同社の配送子会社や傭車 先の車両や、三菱電機グループの各事業所 (工場)から直接、製品を出荷するための輸 送車両がここに含まれる。
図1 05年までのCO2(二酸化炭素)排出量削減計画(案) 100% 93% 86% 80% 100 80 60 40 20 0 100% 80% 60% 40% 20% 0% 千トン―CO2 CO2排出量 率 02年度 03年度 04年度 05年度 % 年間平均CO2排出削減量 
掘鵝診 OCTOBER 2003 40 ただし、家電製品などの顧客向け配送につ いては、物流拠点での中継方式をとっていて、 末端では他社と共同配送を行っているケース が多い。
このためデータの正確な把握が難し く、今回の調査対象からは外した。
このときの調査によると、トラック、鉄道、 内航海運、航空機の四つの輸送モードを合わ せた二〇〇二年度の製品輸送の総トンキロは 五億五〇〇〇万トンキロだった。
このうちト ラック輸送が九〇・二%を占める。
環境省の ガイドラインに基づいて算出したCO 2 排出 量は九万三〇〇〇トンで、このうち九六・ 五%はトラックによる排出だ。
つまり三菱電機が前述した第四次環境計画 の目標を達成するためには、三年間で一万八 六〇〇トンを削減しなければならない計算に なる。
現在、同社は毎年七%ずつ削減を進め ることで目標を達成しようとしている。
「二 割削減というハードルは高いが、(業界で)ト ップを走るつもりで高い目標値を設定した」 と村松秀俊ロジスティクス部長は言う。
幹線・集配一貫システムを構築 目標達成のために、主に次の三通りの施策 を想定している。
?共同化による車両台数の 削減、?モーダルシフトや直送の拡大による 輸送距離の短縮、?大型車への切り替えなど による積載率の向上、である。
なかでも最も 効果を期待しているのが、三番目の施策の具 体策としてグループ内で「往復荷輸送」を推 進することだ。
関係会社を含めて考えると、同社の事業所 は東日本と西日本の両方に広く分布している。
事業所間で幹線ルートの往復輸送を実現する うえで比較的条件がいい。
関東・中部・関 西・九州の四つの地域で、二〇〇二年度に一 〇トン車以上の大型車の方面別台数比率がど うなっていたかを調べた。
結果は、関東発の 中部向けが全体の九%、関西向けが一八%、 九州向けが五%。
この復路となる中部・関 西・九州発の関東向けがそれぞれ四%、一 九%、四五%だった。
つまり東日本から西日本への往路が三二% だったのに対して、その復路は六八%という 構成比になっていた。
単純に考えれば、西日 本から関東地区に向かう車両の二台に一台は、 グループの貨物を復荷にあてることができる ということになる。
ただし、車両の積載効率が悪い状況で、単 に往復の車両をマッチングするだけではコス ト削減効果も小さい。
このため同社は現在、 物流拠点にいったん貨物を集約して方面別に 積みあわせることで、積載率の高い往復荷輸 送を実現できるシステムの構築を目指してい る。
MDLが関東・中部・関西・九州地区 に設けているロジスティクス・センター(L C)を基地としながら、幹線輸送と集荷・配 送を一元的に管理する仕組みである。
LCとは保管機能とハブ機能を持った拠点 で、二四時間三六五日体制で運営されている。
これまでMDLは、このLCを核に、三菱電 機グループ以外の荷主も視野に入れながら輸 送ネットワークを構築してきた。
各地のLC 間は幹線ルートで結ばれており、ハブ&スポ ーク方式でLCからエリア内の拠点へ輸送網 が延びている。
従来、この輸送ネットワーク は、家電製品など在庫型の量販品を中心に活 用してきた。
これに対して、新たに構築しようとしてい 幹線輸送と集荷・配送の一貫輸送システム推進 事業所/関東LC 集荷先 配送先 事業所/中部LC 集荷先 配送先 事業所/関西LC 集荷先 配送先 事業所/九州LC 集荷先 配送先 集荷配送 幹線 550? 600? 350? 200? 半径50?圏内 半径50?圏内 半径50?圏内 半径50?圏内 41 OCTOBER 2003 る「幹線輸送・集配一貫輸送システム」では、 この輸送ネットワークに量販品以外の製品群 を取り込もうとしている。
LCの半径五〇キ ロ圏内にあるグループ内の事業所から集荷を 行い、LCで方面別の大型車両に積み合わせ て、高い積載率でLC間の幹線輸送を実施。
さらに着荷側のLCでも、そこから五〇キロ 圏内の貨物を積み合わせて配送する。
この仕組みを構築するため、家電製品の在 庫削減を進めてLC内に作業スペースを確保 し、MDLと協力しながらLCのクロスドッ キング機能を強化しようとしている。
これま では在庫型の比重が高かったLCの機能を、 通過型(スルー型)へと移していく考えだ。
事業部間の利害を初めて超越 三菱電機では、ロジスティクス部が全社的 な物流施策を実行し責任を負う立場にある。
しかし、その一方で、各事業部がそれぞれの 事業活動の一環として物流管理業務を行い、 物流コストを含めた損益管理まで実施している。
このため物流管理の実態も事業部ごとの 縦割りになっており、事業部をまたいでネッ トワークを一本化するという発想はこれまで なかった。
事業部によって物流特性が大きく異なるこ とが、その一因になってきた。
三菱電機は家 電のほかに、発電機や制御装置などの重電、 FAシステム、産業用ロボット、自動車用電 装品などの産業エレクトロニクス、情報通信 システム、電子デバイスまで、極めて幅広い 事業部門を抱えている。
なかでも重電などは受注生産が中心で、納 期に合わせて製造事業所から据え付け現場に 直接納めるといった個別対応型の物流形態を とっている。
量産品の物流とは特性が異なり、 物流管理も別々に行ってきた。
例えば、船橋市にある関係会社の日本建鉄 では、三菱電機の洗濯機と店舗用の冷凍冷蔵 ショーケースを製造している。
家電製品の洗 濯機は量産品で、一方のショーケースは受注 生産だ。
このため、同じ工場で作っている製 品にもかかわらず、それぞれの物流管理体制 が独立しており、同じ方面に運ぶときにも 別々に車両を仕立てている。
顧客の注文が小 口の時には、四トン車にショーケースを一台 だけ積んで九州の顧客に運ぶということもあ る。
こうしたケースの復路はほとんど空車に なってしまい、輸送効率は悪い。
洗濯機とショーケースを大型トラックに積 み合わせて九州LCまで幹線輸送し、LCで 四トン車に積み替えてユーザーに配送するよ うにすれば、はるかに効率を高めることが可 能だ。
車両台数は減り、輸送コストの削減も 望める。
「これまでなら、(事業本部制の縦割りの中で) こんな発想はなかなか出てこなかった」と村 松部長はいう。
「環境への負荷低減を掲げた エコロジスティクスという活動を通じて、初 めてそれができるようになった。
この意味は 大きい。
コスト削減のために従来のやり方に 徹底してメスを入れられる、またとないチャ ンスの到来だ」 一貫輸送システムでは、既存の積載率が一 〇〇%に近いルートについても、LCにいっ たん集約してトータルで配車を組み直すとい う考え方をとる。
現状では、積載率を上げる ためにわざわざ前倒しで在庫補充を行ってい るケースもあるからだ。
輸送コストだけでな く、在庫削減の視点も入れながらシステム構 築を進めていく方針だ。
事業所によっては、LCを経由することで 横持ち輸送が発生して、かえってコスト負担 が増えるケースも出てくる。
損益管理に責任 を負っている立場の事業部から反発がでない とも限らない。
「だが事業部の意識も変わっ てきている」と村松部長は見る。
現に「(環 境保全という目的のもとに)目標を明確にし てもらえれば、かえって目先の利害を超えて 実行しやすい、という声も出ている」という。
三菱電機の村松秀俊ロジスティクス 部長 主要製品の木材使用をゼロに エコロジスティクス活動のもう一つのテー マである「包装資材の使用量削減」には、第 三次計画から製品設計部門との連携によって 取り組んできた。
活動の主な柱として、?強 度を上げることで、密閉箱から透かし箱など へ包装を簡易・軽量化し、?市場にリサイク OCTOBER 2003 42 ルの仕組みが確立していない木材からスチールや段ボールへの代替をはかり、?リターナ ブル容器の利用を拡大する、という三つの方 針を掲げている。
すでに昨年までの三次計画 のなかで、木材の削減に重点を置いて八五〇 〇トン削減という実績を上げている。
今回の四次計画では、さらに?主要製品の 木材包装ゼロ化〞という目標を掲げた。
二〇 〇二年度の包装材使用量はグループ全体で四 万八〇〇〇トン。
内訳は段ボールが五五%、 木材が三〇%、残りがスチール、発泡スチロ ールなどとなっている。
スチールへの代替な どで木材の使用量を毎年二割ずつ減らし、二 〇〇五年度までに二〇〇一年度実績の一万 七〇〇〇トンに対して八割減を目指す。
木材は主に発電機など重量物の梱包に使っ てきた。
これまでは輸出する製品の梱包を、 密閉木箱からスチール製の透かし箱へ切り替 えるなどして成果を上げてきた。
今年からは、 国内向けでもスチール製の通い箱の利用拡大 などに力を入れて脱木材化を進める。
すでに「昇降機」の輸送にはスチール製通 い箱を導入済みで、「制御盤」でもトライア ルを行った。
スライド式でサイズを調整でき るようになっており、使用後は折りたたんで 段積みにして回収する。
繰り返し使用できる ため、メンテナンスや回収費用を入れても、 ワンウエイタイプの木材を使用する場合と比 べてはるかにコストを安くできる。
前任地の工場で実際に環境対策に取り組ん できた経験からも、村松部長は「環境活動に は利益を生む要素がいっぱいある」と確信し ている。
設備や機材を効率よく動かし、材料 の使用を抑制することで環境負荷を低減すれ ば、必ずコストも下がるからだ。
三菱電機のロジスティクス部が自ら設定し た目標値のハードルは高い。
だが「環境活動 は事業再生につながるもの。
しかも社内にア ピールしやすいテーマで、われわれも活動し やすい。
目標達成は決して不可能ではない」 と村松部長は自信を示す。
三菱電機にとっては、環境を切り口にする ことで、グループを横断した物流コスト削減 の取り組みが初めて可能になった。
先導役と なる物流部門の力量が、あらためて三年後に 評価されることになる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 木箱からスチール包装への変更による改善事例(配電盤) 従来 現在 木材の削減計画(案) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 100% 80% 60% 40% 20% 0% 万トン 木材 率 01年度 02年度 03年度 04年度 05年度 % 年間平均木材削減量 
横亜鵝診 100% 81% 60% 40% 20% 改善前 改善後 改善率 包装形態 密閉木箱 スチール透かし箱 総重量(?) 2,780 2,350 15% 外形寸法(?) 316L×205W×244H 316L×205W×244H 容積(􀀀) 15.806 15.806 0% 梱包材重量(?) 800 720 10% 梱包コスト 100% 55% 45%

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