ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年6号
海外論文
貨物輸送ロジスティクス(中編)

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MAY 2003 88 衡点に向けた社会経済的改革という課題に取り組ま ねばならない状況に置かれている。
持続可能な発展という趨勢は、ロジスティクス・シ ステムの設計と統制に大きな影響を持つだろう。
経済 活動のグローバル化と環境に優しいグローバル・ロジ スティクス・ネットワークの開発との間で均衡を実現 するために、より優れたハード施設の建設から、ロジ スティクス活動を再組織化し、より持続可能なものと するための情報構造の開発まで、様々な角度から議 論され、検討されている。
また、ロジスティクス活動に新しいコンセプトと技 術を導入することで、持続可能性に資することができ よう。
その典型例として、(外部化を含めて)輸送の 量とコストを削減するための洗練された発送システム および統合配送の導入と、廃棄された製品のリサイク ルを支援する輸送システムの開発がある。
3―2 マルチモーダル輸送の特徴 マルチモーダル輸送に対する需要は、既存の障害が 多く、ほんのわずかの緩やかな増加しか見せてこなか った。
しかし各国政府は持続可能な発展推進のため に、マルチモーダル輸送を刺激、拡大させることに取 り組んできた。
マルチモーダル輸送システムの特徴は、地域間で異 なる。
アジア地域のマルチモーダル輸送システムの特 徴は、伝統的なものと近代的なものとからマルチモー ダル輸送概念が形成されている点にある。
ほとんどの アジア諸国が島や群島からなり、従って域内での国家 間の距離は大きく、海路、航路を使い、マルチモーダ ル輸送を発展させる誘因が働いている。
特に、輸送・ロジスティクス・システムに対する、 結節点とその間を結ぶ輸送の果たす役割は重要であ る。
このシステムの中で改善できるところは改善して 第3章 マルチモーダル輸送と ロジスティクス 3―1 持続可能な輸送の必要性 持続可能性に対する関心が高まるなか、輸送シス テムから一連の環境問題が持ち上がっている。
これは 特に、輸送形態の中でもその輸送シェアを拡大してき た道路輸送について言える。
その問題には、道路の混 雑とCO2等の輸送機関からの排出物の増加に起因 する、騒音と大気汚染を挙げることができる。
特に、 貨物輸送に使われる重量の重い輸送機関が、この問 題の主因であると考えられる。
貨物輸送を左右する規 制と制度の形成の背後には、環境と安全に対する懸 念が深く関わっている。
こうした懸念は、貨物を道路から締めだそうとする 圧力を生んできた。
こうした要求を受けて、OECD 諸国のほとんどが、生態学的要件と、持続可能性目 標に矛盾しない経済成長を支える条件との間での均 アジア太平洋、ヨーロッパ、アメリカ 地域を超えて共有される課題と解決 経済協力開発機構(OECD)TRILOGプロジェクト報告 訳 福山平成大学門田清 助教授 貨物輸送が距離的にも量的にも拡大し、eコ マースが急速な発展をみせるなかで、ただ単に自由競争に委ねるだけでは持続可能な発展は達 成できない。
効率的で環境に優しいグローバ ル・ロジスティクス・ネットワークを確立する には、各国政府がグローバル・ビジョンを共有 し、適切な政策を打ち出す必要がある。
本レポ ートの第3章では、モーダルシフトを中心に、 ロジスティクス分野の環境対策に関して政府が 採るべき政策に焦点が当てられている。
89 MAY 2003 いくことで、サービスも大幅に改善され、移動時間の 短縮も大きく、結局は大幅なコスト削減につながるだ ろう。
今やアジアは産業財の輸出基地化していて、コ ンテナ貨物輸送に対するニーズは拡大し、国によって は大規模なロジスティクス・インフラの開発が進めら れているところもある。
EUではマルチモーダル輸送の効果を上げるうえで、 鉄道貨物輸送の生産性を大きく改善させ、道路輸送 に関しては、安全性の確保、荷積みの効率化、効果 的メンテナンスの実施、有効な規制の確保を実現させ るための、包括的な施策が求められよう(ECMT, 2001 )。
アメリカとカナダを中心とするNAFTA地 域では、効率的な道路・鉄道システムを使った陸路 輸送に対する需要が大きく、国境での書類提出の必 要性は相対的に限られたものとなっているのが特徴で ある。
3―3 ロジスティクスと マルチモーダル輸送 ロジスティクスは将来のマルチモーダル輸送の発展 に影響するであろうし、機会も課題も生じさせるだろ う。
マルチモーダル輸送にとって大きな問題となるの は、サービス面でのいくつかの要求である。
ロジステ ィクスは、さらに厳しいサービス要件を突きつけてこ ようし、マルチモーダル輸送がほとんど完全に失って しまっている市場で配送回数の増大を伴う(トラック 積載量よりは小さい)小規模貨物輸送の拡大をもた らすだろう。
しかしながら、ICT(情報通信技術)を通してロ ジスティクスのプランニングと調整の能力が高まる一 方で、長距離大量輸送が必要となったことは、貨物 の統合輸送を進め、マルチモーダル輸送で利用可能な サービスの競争力向上をもたらすだろう。
要 約 共通の調査結果と推奨政策措置 第1章 グローバル貨物輸送ロジスティクス 1 ― 1 貿易ネットワークの発展 1 ― 2 ロジスティクスにおける趨勢 1 ― 3 推奨政策措置 第2章 ロジスティクスを支援する情報通信技術 (ICT)の開発 2 ― 1 情報社会におけるロジスティクスの進展 2 ― 2 先進の情報技術と技術革新がロジスティクスに及ぼす効果 2 ― 3 推奨政策措置 第3章 マルチモーダル輸送とロジスティクス 3 ― 1 持続可能な輸送の必要性 3 ― 2 マルチモーダルの特徴 3 ― 3 ロジスティクスとモード間輸送 3 ― 4 マルチモーダル輸送に対する障害 3 ― 5 推奨政策措置 第4章 ロジスティクス・インフラの整備 4 ― 1 ロジスティクス・インフラ開発の必要性 4 ― 2 新たな財務・統制計画の必要性 4 ― 3 公共部門と民間部門とのパートナーシップ 4 ― 4 インフラ・プロジェクトにおけるコスト最小化 4 ― 5 コストの配分 4 ― 6 地域的課題 4 ― 7 推奨政策措置 第5章 技能と訓練に対する要件 5―1 ロジスティクス産業における労働市場の特徴 5―2 ロジスティクス産業における変化 5―3 ロジスティクス産業における変化が人的資源に及ぼす影響 5―4 推奨政策措置 第6章 ロジスティクス・システムの評価     ――指標の開発 6―1 ロジスティクス成果指標の開発目的 6―2 新指標の必要性 6―3 新指標開発に向けた推奨措置 後編 中編 前編  お詫びと訂正 前号本欄で本稿を2回にわけて掲載すると告知しましたが、誌面の都合上、3回 に分割することになりました。
本号に続き次号7月号で「後編」を掲載いたします。
お詫びするとともに訂正いたします。
MAY 2003 90 従って、このような厳しいサービス要求を満たし道 路輸送と競合していくためにも、マルチモーダル輸送 には、先進の情報システムを活用した洗練されたロジ スティクス・コンセプトが求められる。
3―4 マルチモーダル輸送に対する障害 短距離でのマルチモーダル輸送を広く活用する際に 障害となる主な要素は、積み換え費の負担が重くなる ことである。
従って、輸送モードを超えて効率性を追 求するときに重要となる一つの側面は結節点での連結 である。
結節点におかれる施設は、効率的なサービス を提供できるように標準化されなければならないし、 各結節点へのアクセスを開発、改善させなければなら ない。
またマルチモーダル輸送の実現には、輸送システム の統合が不可欠となる。
ロジスティクス・ネットワー クを形成する各結節点を結ぶリンクは、シームレスで あるときに、すなわち輸送上の障害や不便性、時間の 無駄が最小化されている場合に、最も効果が高い。
加 盟国内・間での継ぎ目ないマルチモーダル輸送にとっ て、様々な障害が存在する(OECD 、 2001 )。
3―4―1 物的インフラと 情報インフラの欠如 ターミナルがない、リンクがない、あるいはインフ ラ間に相互運用性が欠けるといったことが、輸送サー ビスの制約となることが多い。
マルチモーダル貨物輸送サービスは、主に民間部門 から提供されている。
しかしながら、民間部門は、政 府による基幹的な輸送機関、ITS、通信インフラ 枠組みの整備があって初めて十分にシームレスなマル チモーダル貨物輸送サービスを提供できる。
さらに、マルチモーダルでの輸送フローを追跡、監 視することに関する実験も行われてきたが、両立でき るほどの前進はほとんどみられなかった。
道路輸送分 野では、顧客向けに積み荷されたいかなる貨物の状況 も報告可能なリアルタイム・インフォメーション・シ ステムの導入を進めてきたが、マルチモーダル輸送に 関して実質的に比較可能なものを提供できる状況に ない。
マルチモーダルでの統制主体、究極的には荷主 にとって、遅れのない信頼できる情報は不可欠である。
3―4―2 標準の欠如 積載単位、情報システム、統制規則、手続きに関 する標準がない。
標準的なパレットとコンテナを採用することで、貨 物の輸送と保管を効率化できる。
またこれにより、多 様な輸送モード間での積み換えはさらに経済的、効率 的に行えるようになり、複数の輸送モード間でのサー ビスの調整もよりよく行えるようになるだろう。
トラ ックと鉄道、トラックと船舶、トラックと航空といっ た輸送モード間でのサービスの調整は、成果を最適化 するために各輸送モードの持つ利点を統合することが 目的である。
しかしながら、積載単位の標準化は効率 性改善には重要であるが、インフラ面での制約(トラ ック一台当たりの積み荷基準の変更)、道路輸送業者 の選好、海上輸送のコンテナ・サイズの拡大といった 要因から、実現困難なことが分かっている。
先進のICTの適用により、EDIを活用したシ ームレスなサービスの提供を大きく改善できるように なった。
しかしながら、EDIの成功は、標準化され たデータにのみ依存するものではない。
それは、諸輸 送機関と諸政府との間にEDIシステムを矛盾なく 確立することにも依るのであり、その改善が待たれる。
マルチモーダル輸送に関する、国家間での規制と手 続きの調和はみられない。
例えば、ヨーロッパでは、 重量規制と運転の禁止を免除したり、ある特定の手 数料に関しては徴収しないといった国もあるが、そう でない国も存在する。
また、政府によるマルチモーダ ル輸送への財務的支援のあり方は、国によってかなり 異なっている。
税関手続きは、輸送モード間でのシームレスな積み 換えを実現する際の一つの大きな壁となっている。
接 続点が標準化され、自動化され、ICTによって支 援されることの利点はよく理解されている。
しかしな がら、ICTに基づく税関手続きはまだ普及していな い。
税関手続きをスムーズに行っていくうえで、多様 な国家間で、各国の権限当局が、どれだけ早くどのく らいの範囲でICTを採用するのかは明らかではない。
3―4―3 輸送モード間での サービス情報の欠如 販売およびドア・トゥ・ドア・サービスに関する情 報に欠けている。
荷主は、道路輸送に代替しうるマルチモーダル輸送に関する知識を持たない。
しかしなが ら、各輸送モードシステムは多様であり、必ずしも補 完的ではない。
そこにサードパーティ・ロジスティク ス(3PL)が発展することになり、各輸送モードサ ービスをシームレスなドア・トゥ・ドア・サービス統 制の中に連結させる、一連のサードパーティ・サービ スを提供している。
サードパーティ企業は、間隙を埋 め、各輸送形態システムを連結させる統合体として機 能することにより、マルチモーダル輸送に一つのサー ビスを創出してきた。
これら企業には、需要拡大のみ られる高度なロジスティクスに求められるスキルの開 発に対し最高の機会が与えられている。
3―4―4 鉄道部門での競争の欠如 数多くの国と地域で、鉄道部門では競争力の向上 91 MAY 2003 に併せて、信頼性を含めたサービスの質の改善が求め られている。
これは、マルチモーダル・ベースでの輸 送統制に対して、競争力を持った選択肢を与えてく れることで、マルチモーダル輸送の発展を促すことに なるだろう(ECMT, 2001 )。
3―5 推奨政策措置 マルチモーダル輸送は、その制約が克服されれば、 産業の効率性を大幅に改善するだけでなく、持続可 能性にも貢献しうる。
?物的インフラと情報インフラの改善の必要性 各国政府は、ターミナルへのアクセス道路と港湾チ ャネルを含め、マルチモーダル輸送システムに不可欠 な物的インフラとリンクを開発するための枠組みを提 供する必要がある。
例えば、アクセス改善を求めたコ スト効果的なインフラの開発と、順番待ち問題を解 消するための先進の追跡技術に基づくスケジューリン グ・システムの適用を通して、港での陸地側の混雑を 減らす必要がある。
アメリカのロサンジェルスとシアトルの港には、ア メリカ大統領専用の埠頭鉄道施設(on-dock rail facilitites )がある。
この物的インフラの改善によって、切 り換えターミナルから隣接する鉄道へのトラック輸送 の数を減らすことができるし、常に遅延とコストの原 因となりうるゲートでの障壁を取り除くことができる。
さらに、シアトル港は「Linx 」として知られる電子 データ情報インフラを開発している。
Linx の利点とし ては、取引相手(顧客、荷主、輸送業者等々)を選 ばない定型通信、一度限りのデータ入力、ペーパーワ ークの削減、自動調停、EDIを使っていない競合 相手に対する市場ポジションの改善が考えられる。
港湾当局間の競争は港湾の立地を準最適なものに しかせず、ある程度は統合化して輸送モード間でのサ ービスをコスト効果的なものとする必要があるだろう。
これは、国家レベル(例えば、日本)あるいは国際レ ベル(例えば、EUレベル)での差別化されたターミ ナル立地政策の開発を求めることになろう。
さらに、マルチモーダル輸送システム全体の能力を 最大限引き出せるようにするためにも、情報インフラ に必須のシステム(グローバル・ポジショニング・シ ステムと異なる輸送モード間での情報交換を可能とす る先進の通信システムを含む)の一層の開発が求めら れる。
?シームレスなサービス提供のための 標準化の必要性 マルチモーダル輸送システムは、標準化を通して改 善できる。
ロジスティクス・システム間で標準化を進 めるためにも、施設や輸送機関の物理的標準化と統 制的文書・情報システムの手続きの標準化がさらに 進められなければならない。
また、ロジスティクスと物流システムの標準化には、 制度的ボーダーのないマルチモーダル輸送を促進する ために、通関手続きの標準化が必要となる。
不要かつ 十分な調整のない官僚的な慣行と形式的お役所主義 は、シームレスかつスムーズな貨物の流通を阻害する だろう。
国家間での流れのある通関手続きにはいく通りかあ る。
しかしながら、各国政府は、法律に基づき相も変 わらず通関書類等、伝統的な手続きを求めてくる。
国 連のフォーマットに基づき文書の処理に単一かつ標準 的な書式を採用するのも標準化の一手段である。
またもう一つの標準化手法には、データと文書を到 着前に処理するといった、近代的な手続きと技法が 求められよう。
これには、これまでの履歴から適法性 がはっきりしている輸出入業者は物的検査を免除され る「リスク評価」と関税を支払う必要のないかほとん どない貨物はすぐに通してもらえる「グリーン・チャ ネル」、そして輸出業者から税関当局への自動データ 伝送がある。
ロジスティクス・システム間で標準化を進めようと する場合、ロジスティクスと輸送モード間システムの 制度的側面を技術革新に適応しうるよう改革する必 要がある。
産業界は、技術革新の利益を認識してお り、革新と慣行の趨勢に適応した制度的措置を強く 求める。
革新に適応した規制改革がなければ、ロジス ティクス・システムを改善するいかなる新しいアプロ ーチも無駄なものとなろう。
従って、特に、ITS下で利用できるような新しい 技術とマルチモーダル輸送システムの革新に産業界が 順応できるような制度を通して、制度的措置が導入 されることが求められる。
これによって、グローバル な取引でより良く機会を捉え、競争力を高めることが できるであろう。
輸出入に関わるEDIを一カ所で処理できるよう にすることで、標準化をさらに支援し促すことになる だろう。
フィリピンに代表されるアジア地域の国のい くつかでは、既に一カ所で処理できるようになってお り、貨物手続きに掛かる時間を大幅に削減している。
?技術開発を支援する必要性 道路輸送に対して、マルチモーダル貨物輸送のコス トおよびサービス面での競争優位性を高めるうえで、 常に存在する荷主側からの効率性、信頼性、タイム リー性に対する強い要望に応えるには、新しい技術が 必要とされる。
マルチモーダル輸送は、物理的接点だけでなく、配 送元から仕向け地までの貨物輸送に必要とされる情 MAY 2003 92 報伝送の電子的インターフェースに依っているところ がある。
従って、輸送モード間での貨物積み換えのた めの物理的接点だけでなく、マルチモーダル輸送チェ ーン全体の能力を最大限引き出すためのモード間での 情報交換を可能とする技術に投資することが重要で ある。
シームレスなインターネットに基づく情報シス テムを構築し、輸送モード間での統合ロジスティク ス・ネットワークを通じた貨物輸送を合理化すること は、輸送機関の管理をより改善し、貨物の配送を最 適化することになろう。
技術の開発と活用は産業界のパートナー企業間で の主関心事であるが、政府側としては、標準を作り、 技術面、商業面での検証から得られた経験的知識を 普及させることでしか技術開発を促すことはできない。
この場合、各輸送サービス業社は、一連の検証された 技術の中から、手頃な価格で技術を選択することがで きるし、また他の輸送サービス業者の経験から学ぶこ とができる。
オーストラリアとニュージーランドに代表される国 の中には、規制改革議題の一つとして成果基準の導 入可能性を調査している国がある。
集団、次元、配 置統制に関して、規範的に形成される規制は、国内 においても国家間でも多様であり、必ずしも基礎とな る部分が健全であるとは言えず、実際の活動上の違い を反映しただけになっている。
成果を基準とした規制 を開発することにより、健全かつその有効性を検証可 能な、環境に適合した規制を確立するための枠組みが 与えられる。
成果を基準とした規制は、目標の達成方法を明確 に示すのではなく、安全面、インフラ面、環境面の各 目標を直接管理するように設計される。
成果を基準 とした規制は、輸送機関がどういったものを目指すの か(例えば、その側面として持つ封筒としての機能) ではなく、どういった機能を果たさなければならない のかを明確に示す。
現在の積み換え技法では、短距離のマルチモーダル 輸送は、荷主そしてロジスティクス・サービス・プロ バイダーにとって、商業的に実現不可能な場合が多い。
従って、低コストでの革新的な積み換えシステムを追 求した、産業界を巻き込んでの一層の研究が必要で ある。
今なお情報およびマルチモーダル輸送システムの近 代化過程にある国家に対して、技術的に支援してい けるような仕組みを、先進国側は備えておくべきであ る。
これは、こうした近代化過程にある国家で、3P Lとヴァーチャルなロジスティクス・チェーン・シス テムを開発し、制度化する場合にも当てはまる。
?マルチモーダル輸送需要に作用する必要性 マルチモーダル輸送は、短距離では、道路輸送との 間で厳しい競争に勝ち残れないだろう。
しかしながら、 現在、トラックで扱われている中・長距離の輸送であ れば、代替的サービスとして生き残ることはできるだ ろう。
条件さえ揃えば、マルチモーダル輸送でも高品 質なサービスと競争力ある価格で、柔軟な貨物輸送 需要を満たすことはできよう。
しかしながら、比較優位の点で、マルチモーダル貨 物輸送は、約五〇〇キロメートルを超えたところで制 限を持つ。
将来、道路輸送に対して大きく影響して いくためには、マルチモーダル輸送は、中核となる二 〇〇〜五〇〇キロメートルの中距離輸送で競合でき るようにならなければならない。
しかしながら、政府による政策の大部分が、すべて の統制業者と輸送モードを対象に一定水準の活動の 場を創出することを目的としている。
このようなアプ ローチで道路輸送からマルチモーダル輸送へと大きく シフトが起こるかどうかには疑問が残る。
道路を使った貨物輸送に偏る傾向に大きな変化が 起こることが、環境目標の点から本当に望ましいとす るならば、この変化を起こすために、鉄道に対する規 制を上回るように貨物に対する規制を強化するしかな い。
しかしながら、鉄道市場の自由化が伴わなければ、 効率性改善の見込みは厳しいものとなろう。
これまで の政策では、ネットワーク、ターミナル、技術の点か ら供給サイドに重点が置かれてきたが、もっとマルチ モーダル輸送の需要サイドに作用しうる政策措置に焦 点を当てる必要がある。
ある特定の輸送モードに対しては貨物に十分な規 制が課せられない場合、需要サイドに作用することを 企図したいかなる政策措置も間接的な措置となろう。
税金・租税体系を通じて需要側に影響を与える政策 は、マルチモーダル輸送への一つのインセンティブ・ システムを意味しよう。
また政策を通して、ロジスティクスにマルチモーダル輸送を展開する機会を民間部門に気づかせることを 狙うこともできよう。
企業がその特殊的状況に関連す る機会を識別するのを支援するには、ベストプラクテ ィス・モデルを分析したり、精査手段を開発すること が役立つだろう。
また、ターミナル施設の立地に影響 を与える、マルチモーダル輸送のターミナル施設を荷 積みあるいは発送センターに統合する、荷主/フォワ ーダーと政府との間の契約を成就させる、そして環境 に優しい製品に対する消費者需要を喚起する、といっ たことにより需要を変えることができるだろう。
他方で、地域によっては、特定の輸送モードの選択 に地理的制約が大きく影響する。
この場合、政策は、 モーダルシフトを促すのではなく、輸送の効率性を高 めることを狙うべきである。
マルチモーダル輸送は、 知的で効率的なロジスティクスを追求した結果として 93 MAY 2003 与えられるものであり、それ自体を目的化すべきでは ない。
マルチモーダル輸送に対する公共政策が市場条 件に適わない場合、非効率的となる可能性がある。
?協力と協働の必要性 環境付加を最小化しつつ、効率的なグローバル・ ロジスティクス・ネットワークを確立するといったタ スクは、一企業あるいは一政府で実現しうるものでな いことは明らかである。
例えば、環境付加に関心があ る場合、サプライチェーンから全体でどのくらいの付 加が出るのかが考慮されるべきである。
ある国で他所 にいくつかの活動を移転することで環境が改善する 場合、これは結果として別の国への公害の輸出であ り、その国の環境を悪化させることになるかもしれな い。
高いレベルで組織を最適化するのであれば、ロジス ティクス全般、特にマルチモーダル輸送での調整と技 術が前提となる。
そうした高レベルの組織は、自由 市場、それ自体で必ずしも確立するものではないだろ う。
従って、効率的で環境に優しいロジスティクス・ システムを構築しようと思えば、多くの多様な分野で 民間企業、政府、国際機関が広く協力、協働してい くことが求められる。
特に、このタスク実現に向けて バランスのとれた手法を見出すことがきわめて重要で あり、これが結果として、ハード施設と情報構造およ び体系を確立し、発展途上国には持続可能な経済・ 社会開発の実現を後押しすることになり、先進国に はグローバル競争の基盤を固めることで資することに なる。
APECで進められている研究は、アジア太平洋 地域でのマルチモーダル輸送への取り組みを改善し、 この考え方を普及させることを求めるものである。
例 えば、日本、シンガポール、香港(中国)は、当該地 域の統合マルチモーダル輸送システム確立に向けた政 策をいかに改善し高めるかに対して、洞察を与えるこ とができるだろう。
?政策立案上の マルチモーダル輸送目標の必要性 道路輸送からマルチモーダル輸送へのシフトを政 策的に表明しても、これが必ずしも具体的な行動に 移されない兆候がいくつか見られる。
それは特に、政 策措置によって道路輸送に直接影響するような場合 である。
その一例は、ヨーロッパ各国政府間に見られる鉄道 部門での競争圧力強化への躊躇である。
ヨーロッパで、 道路輸送から他の輸送モードへの転換を促す際、非 道路輸送モードでの文化面、管理面、所有面での問 題に取り組まなければならない。
政府は、マルチモーダル輸送に対する明確な共通目 標を設定し、個々の輸送モードに作用する輸送政策 と、空間的な展開、経済発展、環境問題といった非 輸送政策とを統合する必要がある。
また、目標達成 に向けた進展を監視する必要がある。
さらに、貨物輸送政策を開発する際に、政策立案 者は常に、マルチモーダル輸送の推進に向けた目標を 心に留めておくべきである。
例えば、ICTは、新し いコンセプトを導入する際の効果的手段であると考え られる。
特に、ITSは、運転手の安全をより確かな ものとし、道路だけでなく、鉄道、海上航路、航空路 に対しても貨物輸送の安全性と信頼性を高めるだけ の潜在性を備えている。
貨物輸送にこうした新しいコ ンセプトを導入する将来の政策は、マルチモーダル輸 送に対する目標水準を高めるものであるべきである。
※次号〈後編〉に続く

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