ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2003年4号
メディア批評
日経の社員食堂から親子どんぶりが消えた!? ワンマン経営者が蝕む日本株式会社の社内報

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 59 APRIL 2003 これほど情念のこもった原稿には、そうは お目にかかれない。
『選択』の三月号に載った 『日本経済新聞』批判である。
副題が「『狂っ た老帝』いただく悲劇」。
署名はないが、「半 生の喜びや哀しみをともにした古巣」という 表現から見て、筆者は日経から移った同誌編 集長の阿部重夫と思われる。
「老帝」とは、現 職の部長から「斬奸状」を突きつけられた現 社長、鶴田卓彦である。
日経の子会社の不祥事と女性スキャンダル は、すべて鶴田がワンマンになり、誰もその 首に鈴をつけられないところから来る。
鶴田の「股肱の臣」(日本語に直せば腰巾着) の島田昌幸(常務・社長室長)は、あろうこ とか、鶴田が赤坂のクラブのママと写真を撮 られた、と阿部に電話をよこし、 「誰が撮ったか調べられんか」 と言ったという。
阿部は言葉を失った。
単に行きつけの店のママではないから、あ わてたわけである。
しかし、これは掲載され なかった。
「 半年後の秋、また島田氏から電話が来た。
パパラッチからカネをせびられなかったか、と 質してみた。
言葉は濁したが、買ったらしい」 阿部はまた、鶴田が酔った勢いで、首相や 大臣に電話をしたがる、とも書く。
「かつての橋本龍太郎総理は公邸の枕元の電 話を鳴らされたし、小泉純一郎現首相も厚相 時代に同じ経験がある。
迷惑そっちのけ、政治家の居所を捕まえろ、という秘書室長の無 理難題に、政治部の現場はてんやわんやだっ た」とか。
?夜の役員会〞の場所となるそのクラブの請 求書は「月に五〇〇万円」。
一〇年で六億円に もなるが、「これが鶴田社長のポケットマネー とは言わせない」と阿部は指弾する。
「日経はどこからカネを捻出したのだろう。
社長交際費ではまかなえない。
爪に火を点す リストラに呻吟する世間に顔向けできまい」 三越の岡田茂とか、住友銀行の磯田一郎と か、暴君はこれまでもいた。
そう言えば、その 全盛時に日経は彼らを批判したことはないが、 自社のトップのこんな御乱行を許しておいて、 彼らを追及する記事は書けないだろう。
私は『現代』の一九九一年七月号で『日経』 は「日本株式会社」の?社内報〞となってし まったと書き、以後、同紙からパージされて いる。
日本信販の創業者の山田光成の紹介で知り 合った鶴田が、とりわけ激怒し、 「あれはひどい記事だ」 と言いまくったからだと聞いた。
鶴田の他にも知友の多い同紙なので、私と してはかなり手かげんしたつもりだったが、 鶴田は一切の批判を受けつけなくなっている のだろう。
それから一〇年余り経って、さらに横暴度 の増した「老帝」に対する阿部の筆誅は激しい。
私は解任されてまもない岡田茂に講演の控 え室で会ったことがあるが、同じ講師とはい え、まだ三十代の弱輩だった私に、岡田は 深々とおじぎをした。
これがあのワンマンな のかと首をかしげたくなるほどていねいなも のだった。
それで、結局、暴君は一人ではつ くられない。
腰巾着たちが暴君にするのだな と思ったが、かつての鶴田は、決して、そっ くり返っているような人ではなかった。
それ がここまで増長してしまった責任は、腰巾着 たちにもある。
日経の記者は最近、取材先でこうからかわ れるという。
「日経の社員食堂から、親子どんぶりが消え たって本当ですかね」 鶴田の愛人は最初はそのママの母親で、母 親が病気で入院中に娘に乗り換えたと書かれ たことを指してである。
「母親の急死で口は封じられ、日経は安堵し たろうが、母親の借金返済や口止め料をどう 処理したのか」 日経の社員食堂から親子どんぶりが消えた!? ワンマン経営者が蝕む日本株式会社の社内報

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