ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年1号
特集
欧州市場の現場 我々が郵便自由化市場の勝者になる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2003 8 「我々が郵便自由化市場の勝者になる」 物流業の規制緩和と郵政事業改革が急ピッチで進むEU市場で、物流業 界再編の中心に立っているのがドイツポストだ。
2000年に株式を公開し て以降、DHLやダンザスなどの有力物流業者を次々に傘下に収め、ドイ ツ国内郵便事業者から国際的な総合物流業者への脱皮を図っている。
ドイツポスト・ワールドネットCFO エドガー・アーンスト博士 郵政改革には時間がかかる ――日本市場における今後の展開については? 「(ドイツポストの傘下にある)DHLやダンザスは、 もともとアジア市場で、とても強い存在です。
DHL は過去二九年間にわたりこの地域でビジネスを行って います。
DHLの売り上げのうちアジア・パシフィッ ク地区におけるシェアは全体の三四%に上っています。
しかし、我々は現状に満足しているというわけではあ りません」 「DHLは今年の一〇月に、日本に敷地面積一万八 〇〇〇平方メートルの新しいロジスティクス・センタ ーを開設しました。
この新しいロジスティクス・セン ターは我々のアジアにおける投資プログラムの一環で す。
DHLの総投資額は三億米ドルで、そのうち一億 二五〇〇万米ドルが、日本におけるDHLのネットワ ークをアップグレードするために使われました。
それ が現在の状況です」 「いま現在、欧州市場は高い成長率が見込めません。
我々は(欧州市場の投資に)とても慎重になっていま す。
一方、アジア市場の成長率は最も高い。
したがっ て、我々はこの地域に投資をしているわけです。
この 興味深い市場には同業他社も参入しています」 ――日本国内の配送ネットワーク構築のためにDHL が日本の物流業者を買収する計画はありますか。
「現時点における答えはノーです。
我々は可能性の あるターゲットを注意深く見極めていますが現在、具 体的なターゲットはいません」 ――ドイツポストは日本の郵政公社のお手本になって います。
日本の郵政公社に対してアドバイスはありま すか。
「我々の会社で何が展開されているかについて説明 しましょう。
ドイツでは郵政事業改革が一九九〇年に 始まりました。
これは東西ドイツ統合の年でもあった わけですが、この時点での我々の売り上げは九五億ユ ーロで、七億ユーロを超える大きな赤字を抱えていま した。
それが現在は約四〇〇億ユーロの売り上げと黒 字を計上するまでに成長しました」 「この間に何が起こったのか。
まず九〇年代の半ば まで、我々はドイツ国内における郵便事業と小包事業 の新しいインフラに巨額の投資をしました。
改善の必 要があったからです。
そして九七年に業績が初めて黒 字転換したときに、我々はドイツポストの将来につい て改めて検討しました」 「今後もドイツの国内郵便事業者であり続けること が我々の決断の一つでした。
同時に、我々は国際的に 活動する顧客の後に続くことも決意しました。
そうし た顧客にとってワールドワイドのネットワークが必要 不可欠なものであるというのが、我々の考えでした。
そして我々は必要な機能を調達する時期に入りました。
二〇〇〇年には株式公開も行いました。
現在、ほとん どの調達は終了しており、ロジスティクス・エクスプ レス業務の大部分をDHLのブランドのもとに統合し ました」 「これが我々の発展の歴史です。
一九九〇年にスタ ートして、今はその十二年後ですから、長い時間がか かったことをお分かり頂けると思います。
これと並行 して我々は、ドイツにおいて大幅な人員削減を行って きました。
三六万人いた従業員を二八万人にまで削 減したのです」 ――その後、新たに七五〇〇人を追加削減しましたね。
「クレイジーでした。
時間もかかりました」 ――元公務員をそう簡単にリストラできたとは思えま せん。
そうでなくてもドイツは労組が強い。
Interview 9 JANUARY 2003 欧州市場の現場 第1特集 「我々はドイツ政府の一部でしたが、従業員を解雇 したわけではないのです。
そうではなく、我々は大胆 な成果報酬制度を導入しました。
その結果、多くは自 発的に会社を辞めていったのです。
成果報酬制度を何 年も続けたことで、徐々にですが多くの人員を削減す ることができました」 ――日本の郵政にも同じことができると思いますか。
「一年ほど前にドイツの雑誌から同じ質問を受けた のですが、(日本の郵政事業の)インフラについて話 すのはとても難しい。
なぜならそれは、政治的問題だ からです。
政治的観点を持たなければならないのです。
我々もかつて同じ状況にいました。
しかし、当時のド イツの郵政大臣は、郵政事業はノーマルな企業である べきだと判断したのです」 「もちろん、労働組合の多くはそれについて好まし くは思いませんでした。
だが、それも今では既に過去 の話になっています。
我々は労働組合と争ったわけで はないのです。
市場ではどんどん規制緩和が進みます。
郵政が古い形にとどまることは、将来的に見て不利に なります。
郵政が民間企業のような管理構造を持てば、 より利益を出すことができるのです」 ――今後、ドイツポストが日本の郵政と何らかの提携 を結ぶ可能性はあるのでしょうか。
もしくは日本の民 間宅配業者との提携は? 「現状では日本の郵便事業との関係や、民間企業との 提携などは決まっていません」 規制緩和はチャンス ――今後予定されているEU内の郵便自由化の影響 と、その対策について説明してください。
「自由化は我々にとってチャンスです。
我々は自由 化のプロセスにおいて安定したポジションを確保して います。
だからこそ欧州全体に広がっている規制緩和 はチャンスなのです。
同業他社がドイツ市場に参入し てくるのと同時に、我々にとっては他の欧州諸国市場 に参入する機会が出てくるからです」 「我々には確固としたノウハウと財政的強みがあり ます。
我々がドイツで失う可能性があるものは、ドイ ツ以外の他の欧州諸国で補うことができるでしょう。
既に第一段階は終了しました。
我々はオランダの郵便 市場に参入しました。
これは他の欧州諸国の郵便市 場に参入するための第一ステップです」 「我々はこれを?外国国内(Foreign Domestic )〞 市場と呼んでいます。
現時点で我々は(外国国内市 場の)ゲームに勝つという確信を持っています。
EU 市場の全規制緩和プロセスにおいて、ドイツポストは 勝者の一人となるでしょう」 ――そこで競合となるのは他国の郵便事業者なのでし ょうか。
それともFedExやUPSなどの民間宅配 業者でしょうか。
「他国の郵便事業の可能性もあるかも知れません。
し かし、彼らはまず自分の宿題を片付ける必要があるで しょうね。
またFedExやUPSは、現時点では郵 便事業への参入には興味がないと思います。
彼らはあ くまでも小包やロジスティクス分野のプレーヤーで郵 便事業は行っていません」 ――オランダの郵便事業から出発したTNTポストグ ループ(TPG)については? 「もちろんTPGは郵便事業を展開しています。
そ して彼らはホームグラウンドのオランダでは強い。
我々 がオランダ市場に進出したように、TPGも我々と同 様のことをしてくるはずです。
すなわち、他のヨーロ ッパの市場で可能性のある業務を模索するということ です」

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