ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年12号
CLM報告
物流コストとサービスの実態調査

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2004 68 いまからちょうど三〇年前の一九七四年に、 当社は米国でロジスティクスのコストとサービ スに関する調査を始めた。
製造業を中心に幅広 い業界で活躍する企業にアンケート用紙を送付。
ロジスティクスに関連する様々な設問に答えて もらってきた。
調査結果は毎年必ずレポートに まとめ、CLMの会合などで発表している。
ス タート当初は北米エリアだけを対象とした調査 だったが、近年は欧州やアジアの企業からも回 答が寄せられるようになるなど中身の充実度が 増している。
二〇〇四年度の調査は例年通り、郵送やフ ァクス、インターネットなどを通じて実施した。
各企業にA4サイズで数枚程度のアンケート用 紙を送り、五.一〇日以内に回答を戻してもら うかたちでデータを収集した。
アンケート用紙 には?業種、?取扱製品・サービス、?売上高 など企業規模、?年間出荷量、?物流コストの 総額とその内訳――など基礎データについての質 問項目のほかに、「現在ロジスティクスの管理で どのような問題点を抱えているか」といった内容 を尋ねる自由回答欄も設けた。
今回、調査に協力してくれた企業の具体名を 公表することはできない。
せめて業種だけでも挙 げておこう。
回答があったのはグロサリー、飲料、 医薬品、家電、化学品、出版、コンピュータ、小 売りなど三〇.四〇業種に及んでいる。
売上高物流費比率は横這い 最初に毎年アンケートに協力してくれる数十社 のデータを基に測定している売上高物流費比率 の推移について報告しておこう。
二〇〇四年度 物流コストとサービスの実態調査 ハーバート・W・デービス・アンド・カンパニー ハーバート・W・デービス CEO ここ数年、ロジスティクスコストの水準はどのように推移してきたのか。
い ま企業はロジスティクスのオペレーションでどのような問題に直面している のか。
過去三〇年にわたってロジスティクスのコストとサービスの実態につ いて研究を続けてきた調査会社が二〇〇四年度版のレポートを発表した。
アンケートの用紙のサンプル 2004年度 69 DECEMBER 2004 の売上高物流費比率の平均値は七・四%で前年 比横這いという結果に終わった。
売上高物流費 比率が横這いとなったのは九二.九五年以来の ことである。
二〇〇一年度から二〇〇三年度に かけて僅かではあるが、売上高物流費比率の低 下が続いていたにもかかわらず、ここにきて下げ 止まりとなったのは定点観測の対象となっている 企業では物流改革が進み、コスト削減の余地が なくなってきたためではないか、と分析している。
アンケートに回答してくれた企業すべてを対象 に売上高物流費比率の平均値を算出しても、同 じような傾向が確認できた。
二〇〇四年度の売 上高物流費比率は八・三七%で、前年比〇・四 ポイントの低下にとどまった。
「前年よりも売上 高物流費比率を引き下げることに成功した」と 回答したのは全体の四六%にすぎず、その割合は前年よりも七・四ポイント減少している。
このこ とからも、コスト削減が難しくなってきている様 子が窺える。
製品やサービスの付加価値が高まったことで製 品やサービスの販売価格が上昇している。
これに 対して出荷量そのものは減少傾向にある。
こうし た背景から当社では相対的に売上高物流費比率 は低下していくと予想していた。
しかし実際には 賃金の上昇や燃料費の高騰といったコストアップ 要因があり、売上高物流費比率の大幅な引き下 げには結びつかなかったようだ。
産業別では消費財を扱う企業が売上高物流費 比率の上昇を抑えることに成功しているのに対し て、生産財を扱う企業は苦戦を強いられているの が実情だ。
生産財を扱う企業は売り上げの伸び 悩みが影響して物流コストが僅かではあるが、増 加する傾向にある。
前述した通り、アンケートに回答してくれた全 企業の売上高物流費比率の平均値は八・三七% だった。
その内訳は「配送費」三・二八%、「倉 庫費(賃借料など)」一・九三%、「受発注処理 費」〇・四七%「倉庫運営費」〇・三八%、「在 庫費」二・三〇%だった。
対前年比では「配送 費」が二・六ポイント減、「倉庫費(賃借料な ど)」が〇・七ポイント増、「受発注処理費」が 九・〇ポイント減、「倉庫運営費」が五・〇ポイ ント減、「在庫費」 が〇・二ポイント 増という結果にな った。
このうち 「受発注手続きの 費用」が前年比で 大幅減となったの は、情報システム の活用で受発注処理の電子化が進み、作業の効 率性が高まったため、と見ている。
売上高物流費比率は企業の売上規模や取扱製 品の価格と反比例している。
つまり売上規模が 大きな企業、取扱製品の価格が高い企業ほど売 上高物流費比率は小さい。
今回の調査でもそう した事態が浮き彫りとなっており、例えば、価格 が一ポンド当たり一・五ドル以下の製品を扱う 企業は売上高物流費比率が一〇・七五%であったのに対し、同一五ドル以上の企業では四・五 九%だった。
付加価値の低い製品を扱っている 企業ほど収益を圧迫する物流コストの高さに頭 を悩ませている。
「顧客に対するサービスレベル」は改善が進ま なかった。
昨年度の調査では顧客から注文を受 けて商品の配送を終えるまでのリードタイム(生 産リードタイムなどを含む)は平均で六・七日だ った。
これが今年度は八・四日となってしまった。
九七年度以降、リードタイムは七.八日のあい だで毎年推移している。
今後も劇的な改善は期 待できないだろう。
図1 売上高物流費比率の推移 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 1962 1966 1970 1974 1978 1982 1986 1990 1994 1998 2002 2006 配送費 3.28% 倉庫費 1.93% 受発注処理費 0.47% 倉庫運営費 0.38% 在庫費 2.30% 合計 8.37% 図2 売上高物流費比率の内訳 DECEMBER 2004 70 情報投資はTMSに集中 アンケートでは定性的な質問も用意した。
設問 は、?ロジスティクスやサプライチェーンマネジ メントの取り組みを進めていくうえで最も重視し ていることは何か、?ロジスティクスやサプライ チェーンのマネジメントで現在直面している問題 とは何か、?ロジスティクスやサプライチェーン のオペレーションの部分で現在抱えている問題と は何か、?もっとも苦慮している顧客企業からの 要請とはどんな内容か、?最近、ロジスティクス のネットワークに見直しに取り組んだか、?最近、 ロジスティクスを支援するための情報システムの 投資などに取り組んだか――六つである。
設問?の回答でもっとも多かったのは「サービ ス」だった。
その割合は僅差ではあるが、「コス ト」という回答を上回っている。
昨年のアンケー トでは「コスト」という回答がもっとも多く、次 いで「サービス」という結果だった。
今回の逆転 現象はロジスティクスやサプライチェーンの担当 者たちがすでに現状の物流コスト水準には満足し ており、次のステップとしてサービスレベルの向 上に徐々に軸足を移しつつあることを如実に物語 っている。
設問?の回答にも大きな変化が見られた。
昨 年の調査では「トータルサプライチェーンの見直 し・再構築」、「経済的・社会的規制」、「3PL へのアウトソーシング」といった回答が多かった。
これに対して二〇〇四年度は「可視性を高める % of Responses % of Responses Costs Service Costs and Service Declining Demand Process Simplification Technology Other 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 Service Costs Costs and Service hours of Service Scaling for Future Growth Supply Chain Strategy Other 50 40 30 20 10 0 2003年 2004年 図3 コストよりもサービスを重視する企業が増えている(設問?への回答) % of Responses % of Responses Other 50 40 30 20 10 0 ERP WMS Forecasting Visibility TMS Other TMS WMS ERP Planning None Visibility 50 40 30 20 10 0 2003年 2004年 図4 情報システムではTMSの注目度が高まっている(設問?への回答) 71 DECEMBER 2004 こと」、「サプライチェーン全体の高度化」といっ た声が寄せられた。
グローバル化するサプライチ ェーンにどう対応していくかが大きな課題の一つ になっているようだ。
設問?は昨年と同様、「コスト削減」という回 答が大半を占めた。
昨年の調査結果との違いを あえて挙げるとするならば、今年度は新たに「サ プライチェーンのコーディネート能力」や「情報 システムの活用」といった意見が寄せられた点だ ろう。
オペレーションを円滑に行うためには、よ り専門的な知識を持った人材を物流現場に投入 することが不可欠となっている。
設問?では納期遵守に関する回答が多かった。
当日配送や翌日配送、さらにオンタイムデリバリ ー(時間指定配送)を顧客から要請され、それ にどう対応していくかにロジスティクス担当者の多くは神経をとがらせている。
顧客が提示する配 送条件は年を追うごとに厳しくなりつつある。
顧客によってはロジスティクスの面で特別なサ ービスを要求してくるケースも増えているようだ。
それに応えられない場合には取引そのものを打ち 切られることもある。
ロジスティクスの個別対応 は作業の標準化の妨げとなっており、新たなコス トアップ要因となるのではないか、と懸念されて いる。
設問?で「イエス」と答えた企業が具体的に 何に取り組んだのか。
もっとも多かったのは「拠 点の集約化」だった。
全体の二〇%を占めてい る。
次いで「拠点の新設」が十三%。
「3PLへ の外注化の拡大」七%、「海外拠点の新設」七% と続く。
昨年のアンケートでは「拠点の集約化」が実に 四〇%に達した。
それが今年は二〇%まで低下 したのは、企業において「拠点の集約化」が一段 落したことを示している。
設問?の回答は非常に興味深い内容となった。
昨年度の調査とは順位が大きく入れ替わった。
昨 年度は回答の多かった順に「ERP(Enterprise Resource Planning )」、「W M S(Warehouse Management System 」、「Forecasting 」、「Visibility 」、「TMS(Transportation Management System )」だった。
それが今年度は「TMS」、 「WMS」、「ERP」、「Planning 」、「Visibility 」 という順番に変わっている。
すでに「ERP」や 「WMS」への投資を終えている企業は新たに 「TMS」の導入を急いでいる。
ライバル企業とコストを比較 当社ではアンケートに協力してくれた企業に二 つの分析レポートを提供している。
そのうちの一 つは自社のコスト水準と同業他社のコスト水準 を比較分析したレポートである。
これを受け取る ことでアンケートに回答してくれた企業は自社の コスト水準が業界平均を上回っているのか、それ とも下回っているのかを把握することができる。
トータルコストだけではなく、「配送費」や「倉 庫費」など項目別にコストを比較できる。
ライバ ル企業に比べ余計にコストが掛かっているのはど の部分なのかが一目瞭然だ。
ロジスティクス管理の問題箇所を探るうえでの手助けとなるはずだ。
そしてもう一つは「顧客に対するサービスレベ ル」に関するレポートだ。
このレポートでは注文 を受けてから商品を顧客に届けるまでのリードタ イム、さらに出荷ミス率や定時配送の達成率な どを他社と比較することができる。
いずれのレポートも料金は無料だ。
当社では来 年以降もロジスティクスのコストとサービスに関 する調査を続けていく予定だ。
興味のある方は是 非、参加してほしい。
※このレポートは米CLM年次総会での講義内容を本誌編集 部がまとめたものです アンケート回答者にフィードバックする 分析レポートのサンプル

購読案内広告案内