ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2004年8号
メディア批評
せせこましくなった?大政党〞と竹中平蔵 中立・公正を理由に色を排除するメディア

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 63 AUGUST 2004 六月二八日の選挙演説で、竹中平蔵は、 「この三年間で気付いたのは、この日本には 人の悪口だけ言い、人の批判だけして飯を食 っている人間がたくさんいるということだ」 と吠えたらしい。
竹中から見れば、私も「人の批判だけして 飯をくっている人間」の一人かもしれないが、 竹中というスピッツは逆に「人を持ち上げて 飯を食っている人間」である。
俗にこれをヨ イショ屋という。
いや、竹中の場合は番犬に もならぬ?ヨイショ犬〞である。
これからはITの時代だなどと言ってIT バブルをもたらしたと思ったら、一方では、 ハンバーガーの日本マクドナルドを持ち上げ、 創業社長の藤田田のお気に入り(ペットとも いう)となって、フジタ未来経営研究所とか の理事長におさまった。
そして、同社の未公 開株を「適正な価格で」(本人談)受け取り、 その後上場したので、売れば、かなりの額が 彼のフトコロに入る。
これが問題となったの がリクルート事件だが、さすがに竹中も、い まは売ってはいない。
しかし、これだけでも、 いかにこのヨイショ犬が「人を持ち上げて飯 を食っている人間」であるかわかるだろう。
それで私は、以来、彼を?マック竹中〞と 呼んでいる。
そんな、いわゆる御用学者ばか りを相手にしている自民党は、批判的な学者 が出てくると狼狽してしまうようで、六月二 六日、報道機関に次のような?記念すべき〞文書を送った。
「1 . 最近、一部テレビにおいて、政治的公 平・公正を強く疑われる番組放送がありまし た。
すなわち、『年金の鉄人』と称して高山憲 之・一橋大学教授を数回にわたって番組に出 演させて、年金法に反対する立場から意見を 述べさせる番組です。
2 . 高山教授は、民主党推薦で参考人や公 述人として幾度となく国会で年金等について 意見を述べられてきた方であり、民主党の年 金法案の作成に深く関与したと言われている 方です。
しかるに番組では、民主党推薦の参 考人などを務めた重要な経歴については一切 触れることなく、ただ『大学教授』との肩書 きだけを紹介して、高い学識経験を有する専 門家が客観的な意見を述べられているという 体裁で番組製作が行われました。
3 . わが党としては、選挙期間中でもあり、 多様な意見を番組に反映していただくなど、 公平な放送が行われることを強く望んでおり ます」 竹中平蔵のような「自民党推薦」の?ヨイ ショ犬〞を出演させれば、「政治的公平・公正」 が保たれるというのか。
それにしても、?大政 党〞の自民党がせせこましくなったものであ る。
コンビを組む公明党に助けてもらわなけ れば独り歩きもできなくなって、どこからで も批判せよと、ドーンと構えている余裕をな くしてしまったのだろう。
それに関連して選挙についてのメディアの 対応で、私にとって忘れられない?事件〞が ある。
この連載でも触れたことのある話だが、 かつて大阪府知事選挙で事前にコメントを求 められ、『朝日新聞』と『毎日新聞』にそれを 出した。
ところが、『朝日』が載せられなくな ったと言ってきたのである。
私が候補者の一 人の推薦者となっているかららしい。
『毎日』 はそのまま載ったのに、私は釈然としなかっ た。
別にそのコメントで私がその候補を押し ているわけではない。
もし、『朝日』の?ルー ル〞が一般的となれば、どの候補にも肩入れ していないような、どちらかと言えば?無色〞 の識者しか登場させられないことになる。
あ くまでも、そのコメントの適否を判断するの は読者なのであり、「中立・公正」の名で?色〞 を排除してはならないだろう。
無色というのは果たしてあるのか。
メディ アが「中立」幻想に囚われてそれを追求して いったら、蒸留水のような?おいしくないも の〞になってしまうのではないか。
せせこましくなった?大政党〞と竹中平蔵 中立・公正を理由に色を排除するメディア

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