ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年3号
特集
中国の第三者物流 ウチの仕組みはどこにも真似できない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

19 MARCH 2004 た。
フォワーディングだけでは他社と差別化できない と考えたからだ。
日本と同様、中国でも電子部品にターゲットを絞り、 トラック運送や庫内作業などを組み合わせた総合物流 サービスの一つとしてVMIを売り出した。
もっとも 当初は苦戦した。
日本ではすでに広く浸透していたV MIが中国で本格的に導入されるようになったのは二 〇〇一年頃からのこと。
ちょうど日系メーカーが上海 を中心とした華東地区に生産拠点を移管させ始めた時 期だ。
これ以来、中国ではVMIブームが続いている。
月次生産から週次生産へ。
さらに日次生産へと日 系メーカーの中国での生産体制は日を追うごとにタイ トになっている。
それに伴い、メーカーが部品ベンダ ーに求める納品精度もますます高まっている。
具体的 には多頻度小口納品、オーダーから納品までのリード タイムの短縮化などが加速度的に進んでいる。
こうした傾向がアルプス物流にとっては追い風にな る。
「納品条件が厳しくなると部品ベンダーはメーカーの生産拠点により近い場所に在庫を確保しておかな ければならない。
もともとは日本や東南アジア各国か ら直送していた部品も中国で在庫するようになる。
そ れだけVMI倉庫の出番も増えていくはずだ」とアル プス物流上海の大草総経理は期待を寄せる。
家電やハイテクに続いて自動車メーカーが中国進出 を加速させていることもアルプス物流にはプラス材料 となりそうだ。
自動車メーカーにとって、アルプス物 流が荷主とする電子部品メーカーは今や主要ベンダー の一角を占めるようになっている。
コスト管理に厳し い日系自動車メーカーが日本と同様に中国でもVM Iを展開するのは確実だ。
そこで生まれる物流市場で もアルプス物流は優位な立場で競争を進めていくこと ができそうだ。
――日系メーカーの電子部品のVMIでは中国 でも圧倒的な強さです。
なぜ仕事が集中してい るのでしょうか? 「電子部品のVMIは特殊です。
何千点、何万 点という部品をピッキング・仕分けして、しか もジャスト・イン・タイムで組み立てメーカーに 納品しなければならない。
こんな手間の掛かる 複雑な仕事は誰もやりたがりません。
しかし当 社は真面目に取り組んできた。
コツコツと実績 を積んでいき、ノウハウを蓄えていった。
それが 中国でようやく花開いた格好です」 「儲かりそうだからといって中国でVMIを始 めた物流会社が結構あります。
ところが、ほと んどうまくいっていないようです。
安い料金に惹 かれていったん離れていったお客さんも結局はウ チじゃないとダメだと言って戻ってくるケースが 少なくない。
ウチの仕組みはどこにも真似できな いんです。
VMIは今日始めて明日できるよう になる、そんな簡単な仕事ではありません」 ――中国でも初めからVMIに特化するつもりだ ったのですか。
「中国に進出した物流企業の多くはフォワーディ ング業務から出 発しました。
フ ォワーディング は初期の頃には 儲かりますが、 競争相手が増え てくると料金の ダンピングに巻き込まれて段々と利幅が小さく なってくるビジネスなんです。
当社は早い段階で フォワーディングビジネスの限界に気づいた。
フ ォワーディングだけじゃなくて、トラック運送や 庫内作業といった仕事も組み合わせて総合物流 サービスとして売り出して、各業務から少しず つ利益を集める方向に切り替えた。
しかも電子 部品に的を絞ったのが正解でした」 ――中国で倉庫の増床が続いています。
「当社は日本国内で毎年一〇億円くらい投資 してきた。
それが数年前に落ち着いたのを受け て、今度は中国に投資を回すようにしました。
金 額は同じくらい。
中国への投資は身の丈に応じ たレベルで、決して無理はしていません」 ――中国における今後の拠点計画は? 「部品の納品先である組み立てメーカーの進出状 況を見るかぎり、今後も投資の矛先は広東省の ある華南地区、そして上海を中心とした華東地 区となりそうですね。
ただし、無錫など長江流 域の内陸部の都市に進出するメーカーも増えて いますので、そうした地域にも倉庫を展開する 可能性は十分あります」 ――中国事業収入の比率は年々高まっています。
「二〇〇二年度の中国収入は三七億円でした。
これが二〇〇三年度には五〇億円弱になりそう。
だいたい年に一〇億円ずつ上積みしています。
売 り上げ全体に占める割合は一〇%くらい。
日本 でのビジネスは減る一方ですから、これからはも う少し中国の比率が高まるでしょうね」 Interview 「ウチの仕組みはどこにも真似できない」 長迫令爾 アルプス物流会長 特 集 MARCH 2004 18 アルプス物流 ――電子部品のVMIで独占狙う 中国各地に生産拠点を構える日系の組み立てメーカーにジ ャスト・イン・タイムで電子部品を供給している。
日本で得 意とするVMIサービスに特化することで中国でも成功を収め た。
荷主企業の海外シフトによる国内物流の空洞化を、中国 ビジネスでカバーしている。
上海のVMI倉庫を増床 昨年八月、アルプス物流の中国現地法人である「阿 爾卑斯物流(上海)有限公司」は上海の外高橋保税 区内に二つ目となる倉庫を新たに稼働させた。
既存の 倉庫に隣接するかたちで建設された新倉庫は、延べ床 面積一万四〇〇〇平方メートルの四階建て。
これに よって同社の上海の倉庫保管能力は従来の約三倍に まで引き上げられた。
二〇〇〇年十一月に稼働した一つ目の倉庫は延べ 床面積が七〇〇〇平方メートル。
決して小さな規模 ではなかったが、稼働二年後の二〇〇三年二月には 満杯になっていた。
今回、新倉庫の建設に踏み切った のは慢性的なスペース不足を一気に解消するのが狙い だった。
その新倉庫も既にスペースの半分が埋まっている。
余裕を持たせたはずだったが、早ければ半年後には満 庫になりそうだ。
顧客である部品メーカーからの入居 の依頼が相次いでいる。
「要望に応えきれないほどの 注文がある」とアルプス物流上海の大草浩総経理はい う。
アルプス物流が中 国で展開しているの は電子部品に特化し たVMI(Vender Managed Inventory: ベンダー主導型 在庫管理方式)と呼 ばれるサービスだ。
現地に生産拠点を構 える日系の組み立て メーカーに、主に日 本や東南アジアで生産された電子部品を、ベンダーに 代わってジャスト・イン・タイムで供給する。
具体的にはアルプス物流のベンダー用共同VMI 倉庫で保税状態で在庫している各ベンダーの部品を、 組み立て工場の生産状況に応じてピッキング・仕分け して、トラックで生産ラインに納品するまでの一連の オペレーションを請け負っている。
JIT納品に対応するため、わざわざ中国にそれ専 用の倉庫を設けるわけにはいかない。
しかし、顧客で ある組み立てメーカーの要求を無視するわけにもいか ない――。
こうした悩みを抱えている部品ベンダーの ニーズに応えて、組み立てメーカーの生産拠点の近く に複数のベンダーが共同で利用する倉庫を用意した。
現在、中国の天津、大連、上海、広東、香港の計 五カ所に倉庫を保有し、その全てでVMIサービスを 展開している。
業績は堅調だ。
二〇〇三年度の中国 事業の収入は約五〇億円になる見通し。
中国の物流 事業は日本を含めた同社の総売上の一〇%を占める までに成長した。
家電メーカーや精密機械メーカーの海外シフトに引 きずられる形で、アルプス物流が主力荷主とする電子 部品メーカーも、日本国内にあった生産拠点を相次い で中国本土や他の東南アジア諸国に移している。
これ に伴い国内の電子部品物流のパイは縮小する傾向に ある。
アルプス物流は自らも海外に乗り出して事業を 展開することで、国内の空洞化に対応する必要に迫ら れた。
九五年に中国進出を果たした当初は、親会社のア ルプス電気が中国の拠点で生産した製品を日本などに 輸出する国際輸送が海外事業の中心だった。
いわゆる フォワーディング業務だ。
しかし、早い段階でこのビ ジネスに見切りをつけ、VMIサービスに矛先を変え 第2部独自モデルでニッチ市場を開拓 昨年8月に稼働した上海のVMI倉庫

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