ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年1号
ケース
大塚倉庫 物流子会社 グループのインフラを活かし外販強化東西に大型拠点新設しBCPにも対応

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2013  58 全国を網羅する物流インフラ  大塚倉庫は医薬品や機能性飲料・食品など の事業を国内外で展開する大塚グループの物 流会社だ。
徳島県鳴門市で大塚製薬工場が輸 液製剤(点滴注射薬)の製造販売を開始した のがグループの発祥で、大塚倉庫はその運輸 倉庫部門が独立して一九六一年に設立された。
 分社化した当初から、グループ各社はそれ ぞれのコア事業に経営資源を注ぎ、物流に関 しては大塚倉庫が責任と権限を負うという考 え方を共通認識としてきた。
グループ企業が 工場を新設する際には、大塚倉庫が自ら投資 して工場に倉庫を建てる。
拠点政策や在庫配 分の提案、入出庫から在庫管理・輸配送まで のシステム設計も任され、事実上、各社の物 流担当部門の役割を長年果たしてきた。
 その実績からグループが持株会社制に移行 した二〇〇八年以降は、グループの主要な事 業会社として大塚製薬、大塚製薬工場、大鵬 薬品工業、大塚化学の四社と横並びで持株会 社の大塚ホールディングスの傘下に入っている。
 大塚グループは輸液の国内シェアが五割を 超え「オロナミンC」「ポカリスエット」など機 能性飲料・食品の分野でもトップクラスのシ ェアを持つ。
これらの主力商品だけでグルー プの年間物量は七〇〇〇万ケースを超える。
 大塚倉庫はこの二分野を中心に、グループ の商品を全国のユーザーへ届ける物流ネット ワークを構築している。
 医薬品は徳島の 主力工場以外に北 海道( 釧路) と富 山の三カ所にグルー プの工場がある。
そ れぞれの工場に併設 して倉庫を構えてい るほか、札幌・仙 台・東京・大阪・ 徳島・佐賀の六カ所 に医薬品専用の保管 配送拠点を設け、三 工場から各拠点へ製 品を補充しながら卸 へ翌日配送している。
車両は自社では保有せず、各地域の運送会社 とパートナーシップを結んでいる。
 かつては大半の医薬品卸が支店ごとに在庫 を抱えていたこともあり、配送先は一〇〇〇 件近くあった。
近年、卸の統合と拠点集約が 著しく進み、配送先も大型物流センターを中 心に四〇〇〜五〇〇件に集約された。
これに よって、医薬品のなかでも物量の大きな輸液 については、納品先によって一回の配送が大 型車両単位にまとまる規模になった。
 そこで昨今は徳島工場から卸の拠点へ直送 を増やしてきた。
受注の翌日納品を前提に工 場の直送エリアを西は山口県まで、東は山梨 県まで拡大した。
直送を広げるに当たっては、 大阪地区の在庫を徳島に集約し、大阪の拠点  早くから事業会社として独立し、グループの物 流業務を全面的に受託してきた。
自ら構築した医 薬品と飲料のネットワークを活用し外販強化に乗 り出す。
BCP対応で東西に設置した大型拠点と受 注センターを開放して、外部顧客からも一括業務 受託を狙う。
物流子会社 大塚倉庫 グループのインフラを活かし外販強化 東西に大型拠点新設しBCPにも対応 飲料と即席麺の配送を共同化 59  JANUARY 2013 には主に北海道などの工場の製品だけを在庫 する形に切り替えている。
 一方、輸液よりもさらに物量の大きい飲 料・食品については各県に一カ所という高い 密度でストックポイント(SP)を設けてい る。
大塚グループは六〇年代後半に機能性飲 料市場に進出し、八〇年代に「ポカリスエッ ト」のヒットで出荷量が一気に増えた。
この 時期に大塚倉庫は飲料のネットワークづくり を本格的にスタート。
輸液と同じサービス水 準で卸へ受注の翌日に配送することを目標に、 各地域の協力運送会社の営業拠点をSPとし て活用し、全国に配送網を張り巡らした。
 その後、商品のアイテム数の増加に伴って 在庫配分を見直し、現在はSPには「ポカ リスエット」などの主力商品だけを在庫して、 出荷数量や出荷頻度の少ない商品はブロック 単位の「母店」に在庫を集中させている。
オ ーダーが入ると母店に在庫のある商品を各県 のSPまで中継輸送し、SPの在庫商品と積 み合せて翌日配送する。
 大塚倉庫はこのようにして協力会社と構築 した輸配送ネットワークを活用し、一〇年ほ ど前から一般荷主の開拓に力を入れてきた。
 それ以前もグループの調達物流を手掛け、 工場から各地のSPやユーザーへ製品を輸配 送した後に、サプライヤーの工場で缶やペット ボトルなどの資材を引き取り工場へ帰るとい う方法で外部貨物を取り込んでいた。
 一〇年前からはこのラウンド輸送をサプラ イヤーの拠点のない地域にも拡大し、異業種 メーカーの製品を積んで帰るルートを開拓し た。
各地の配送拠点を活用した共同保管・共 同配送にも乗り出し、大手飲料メーカーや清 酒メーカー、切り餅メーカーなどと共同物流 をいくつか実現している。
飲料と即席麺の配送を共同化  大塚倉庫はグループ各社のすべての輸送の 裁量権を握っている。
そのことが外販を進め るに当たって有利に働いている。
グループ各 社の工場の資材調達や物流センター・SPへ の商品補充は、そのタイミングやロットの判 断が大塚倉庫に一任されている。
 例えば飲料・食品の場合、親会社のSCM 担当は工場の倉庫やSPのトータルの在庫率 だけを設定する。
大塚倉庫はこの在庫率を守 れる範囲内でSCM担当が作成した計画を柔 軟に運用する。
 在庫数が一定水準を超えたり割ったりしな い限り、車両の積載効率を優先して商品の補 充計画を立てることができる。
いつどこの拠 点へどれだけ輸送するかを原則として同社側 で決められるため、一般貨物との共同化を考 慮に入れた輸送計画の立案が可能だ。
 大塚倉庫の濱長一彦営業部長は「親会社か らそこまで権限を与えられていないと外販を 進めるのは難しい。
大塚グループには?物流 のことは大塚倉庫が決める?と割り切って考 える伝統が根付いており、もともと外販を積 極的に展開できる土壌があった」と強調する。
 一〇年間で同社の外販は順調に伸びた。
た だしこれまでは、自社のネットワークを活用で きればどんな商品にもチャレンジするというス タンスだったため、利益率の面で課題があっ た。
顧客数の増加とともに物流センターで管 理するSKUの数が増え、オペレーションが煩 雑化して管理費の上昇を招く事態にも陥った。
 そこで同社は従来のやり方を見直し、「選 択と集中」をキーワードとしてより戦略的に 外販を進めることにした。
「何にでも手を広 げるのではなく、グループの商品と組み合わ せたときに最もシナジー効果の上がる商品に ターゲットを絞り、当社の強みを活かした全 国レベルでの業務受託を目指していく」(濱長 部長)という方針を明確にした。
 シナジー効果を上げる条件として、?納品先 の重複率が高いこと、?夏に物量の増えるグ ループの商品(飲料)と繁忙期が重ならない こと、?重量物の飲料とは逆に、容量勝ちの ?かさもの?であることを挙げ、これらの条件 に適う商品をターゲットに営業活動を強化した。
 営業体制も見直し、従来は各支店で行って 濱長一彦営業部長 JANUARY 2013  60 いた外部顧客への営業活動を本社に一本化し た。
その理由を濱長部長は「支店が自分たち の管轄するネットワークの効率化だけ考えて 外部の貨物を獲得する従来の手法とはまった く発想の異なるアプローチが必要になったか ら」と説明する。
 三つの条件をすべて満たす商品として同社 は即席麺に着目した。
即席麺は冬に出荷の繁 忙期を迎え、しかも軽量でかさがある。
納品 先の重複率も高い。
飲料との組み合わせによ る平準化のメリットを大いに期待できる。
 大手の即席麺メーカーに平準化のメリット を説いて共同化を呼び掛け、昨年七月に四国 地区でグループの飲料と即席麺の共同物流を 実現した。
飲料を製造する大塚製薬の徳島工 場から関西地区の拠点へ飲料を輸送した車が、 奈良県内にある即席麺メーカーの工場で製品 を集荷して徳島へ戻り、大塚倉庫の物流セン ターで飲料と即席麺を方面別に仕分けて四国 一円のユーザーへ共同配送する。
 この即席麺メーカーは従来、四国地区のユ ーザーへは工場から路線便で受注の翌々日に 配送していた。
大塚倉庫のネットワークを利 用することで、受注当日に工場の集荷から物 流センターでの仕分けまでを済ませて翌日に ユーザーへ配送できるようになり、リードタ イムが一日短縮した。
医薬品のインフラもオープン化  さらに医薬品物流でも外販の強化を狙う。
 輸液というロット貨物を持つ大塚倉庫は医 薬品の年間取扱量が業界でも最も多い。
品質 管理基準の厳しい医薬品の物流のノウハウを 長年にわたり蓄積してきた自負もある。
しか し、これまでは輸液をベースカーゴに構築した 医薬品の物流ネットワークを外部へ積極的に は開放してこなかった。
それを改めグループ外 の医薬品メーカーのアウトソーシングの受け皿 として提供していく方向へ大きく舵を切る。
 昨年十一月に同社は北関東と関西地区に大 型物流拠点の「ロジスティクスセンター」を開 設した。
これは災害や予期せぬ事故の発生時 に医薬品を安定供給するためのBCP(事業 継続計画)の一環として設けたもの。
 一昨年の東日本大震災をきっかけに、大塚 グループが緊急時に備え、それまで徳島に集 中させていた医薬品の在庫を分散化する方針 を打ち出した。
これを受けて大塚倉庫が東西 の拠点を新設した。
各ロジスティクスセンタ ーにそれぞれフルアイテムに近い在庫を持ち、 従来の六カ所の拠点に補充を行いながらユー ザーへ供給する。
 大塚倉庫はこの二センターを医薬品の外販 拡大も視野に入れて整備した。
BCP対策の 必要な医薬品メーカーに対し二カ所の新セン ターでの分散管理を提案する。
これ以外に既 存の六カ所の拠点も要望に応じて提供してい く。
「当社のネットワークは全国をカバーして おり、顧客のどんな拠点政策にも柔軟に対応 できる」と濱長部長は自信を見せる。
 医薬品業界では近年、メーカーの物流アウ トソーシングが顕著に進んだ。
新薬開発に経 営資源を集中させる必要性から、自前のアセ ットを手放し、物流管理業務の外部委託や物 流子会社の解散に踏み切るメーカーが相次いだ。
 大塚グループも抗精神病薬など治療薬の開 発にしのぎを削っており、医薬品事業の環境 は変わらない。
ただし早い時期に物流部門を 切り離し一つの事業会社として位置付けてき たことが、ほかの医薬品メーカーとは対極の 道を開いた。
受注センター ステップ 1995 年当時コスト重視危機管理 現在 支店受注集約化バックアップ体制 着手:1997 年9月 集約:2002 年8月体制確立:2005 年9月 63カ所1カ所2カ所 受注能力件数 300 万件/年 〈受注件数:150 万件/年〉 16 支店47 営業所 61  JANUARY 2013 同社が業務を受託した。
 その後、ほかのグループ各社の要望に応じ てシステムの改良を行いながら〇二年八月ま でに統合受注システムを構築し、受注センタ ーに一部の会社を除くグループの受注業務を 一本化した。
これにより、同社がグループの 受注業務を代行して在庫引き当てから出荷指 示・納品完了までを同社のシステムで一括処 理し、実績を各社に提供する形が整った。
 〇五年九月には、セキュリティー対策とし て徳島にも受注センターを開設、バックアッ プサーバーを設置した。
NTTコミュニケー ションズのナビダイヤルサービスを利用して発 信地によって受注窓口を振り分け、一方のサ ーバーがダメージを受けた場合にはもう一方 で受注処理できるようにした。
東日本大震災 の発生時には、東京のセンターで社員が出社 困難となり業務がストップしたが、このバッ クアップ体制により徳島で東日本地区の受注 データを処理できた。
地域により多少の納期 遅れはあったものの大きな混乱は避けられた。
 この機能をグループ外の顧客にも提供する ことを想定し、サーバーには余力を持たせて ある。
現在、東西の各サーバーの処理件数は 年間に一五〇万件だが、おのおのが年間に三 〇〇万件を処理できる能力を持っている。
今 後、外部の顧客に対し、業務の効率化や危機 管理への対応のために東西の受注センター機 能の活用を積極的に提案していく考えだ。
 国際物流にも触手を伸ばしている。
大塚グ ループは七〇年代から海外へ進出し、現在は 海外の売り上げが全体の約五割を占めている。
ただし大塚倉庫は最近まで海外物流には関与 してこなかった。
そのことが外販を進める上 で制約条件になっていた。
外販比率五割を目指す  そこで二〇一〇年に国際物流課を設け、グ ループの輸出入貨物の輸送を同社が船社と直 接契約してコントロールし始めた。
当初は輸 送量が四〇フィートコンテナ換算で月間五〇 本程度だったが、昨年夏に北米から輸入する グループ会社のミネラルウオーターを、大塚倉 庫がFOB(本船渡し)で船積み港から一貫 管理する形態に変え、取り扱いが一気に増え た。
今年度は一万本を超える見込みだ。
国際 輸送で実績をつくることで、顧客に対し輸出 入も含めた提案ができる体制を目指している。
 同社にとって、受注業務の代行やBCP対 応の拠点新設、国際輸送への進出は外販を拡 大するうえでの総合力強化の一環だ。
「ター ゲットを決めてさまざまな機能を盛り込んだ プラットフォームをつくり、そこへ顧客のど んなニーズも吸収できるようにしていきたい」 と濱長部長は抱負を語る。
 現在、同社の外販比率は物流事業の売り上 げのおよそ三割。
濱長部長は、二、三年後を めどに比率を五割まで引き上げるという意欲 的な目標を掲げている。
(フリージャーナリスト・内田三知代)  受注処理業務でもインフラのオープン化を 進める。
九〇年代まで大塚グループの受注業 務は各社別々に支店が担当していた。
中核 会社の大塚製薬の場合、全国の六三カ所の支 店・営業所で受注を分散処理していた。
受注 処理が済んだ後で大塚倉庫に出荷指示データ を送る形だった。
 九〇年代の後半にグループは効率化を図る ため受注業務の集約について検討を始めた。
この時、大塚倉庫が受注システムの構築と業 務の受託を提案した。
まず大塚製薬と共同で システム構築を行い、東京・晴海に「受注セ ンター」を開設して支店の受注窓口を集約し、 独自のインフラで全国翌日納品 浦安配送センター 仙台営業所 高崎営業所 高崎第2 倉庫 前橋物流センター 東日本ロジスティクスセンター (2012.11 新設) 袋井営業所 掛川配送センター 富山営業所 九州第一倉庫 藍住物流センター 鷲敷倉庫 鳴門営業所 松茂営業所 滋賀営業所 赤穂営業所 岡山倉庫 西日本ロジスティクスセンター (2012.11 新設) 東京支店 名古屋支店 本社・大阪支店 四国支店 九州支店 北海道支店 札幌営業所

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