ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年2号
メディア批評
推進一本槍だった自らの過去には目をつむり原発問題で「中立公正」の旗を掲げるメディア

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 FEBRUARY 2012  78  『週刊現代』の一月二一日号で西部邁と対 談した。
西部とは三年前から「朝日ニュース ター」というCSの番組で「思想家」「本」「映 画」について語ってきているが、その一端は『思 想放談』(朝日新聞出版)、『難局の思想』(角 川oneテーマ21)、そして『ベストセラー炎 上』(平凡社)にまとめられている。
 保守の西部とリベラルの佐高の「対論」と いう形でスタートしたが、嫌いな人間がほと んど一致する。
たとえば、竹中平蔵、伊藤元重、 勝間和代、塩野七生、稲盛和夫、村上春樹等々。
かなり確かなファンのいるこの対論の評判を 知って、『週刊現代』の編集長が改めて誌上 対談を企画した。
 「怖いものなしの二人だから」「世の中、メ ッタ斬り」。
「テレビではとても放送できない」 というキャッチフレーズつきのこの対談は「読 後爽快」とか。
 私が、竹中や伊藤らは「言葉に体重がかか っていない」と批判すると、西部は「顔を見 ると分かる」と答える。
「われわれの顔もた いしたものではないが」と一拍置いて、西部 は続ける。
 「顔が歪んでいたり、過剰に曖昧だったり、 過剰に威張っていたり。
最近はそんな顔がず らっと並んでいる」  つまり、そんな顔の竹中らしか、多数派の テレビには出てこないということだろう。
 私たちは、池上彰のことも批判した。
 彼の解説からは熱や怒り、嬉しさなど喜怒 哀楽が伝わってこないからである。
 「キレイに整理はする。
では、あなたはいっ たい何に怒り、何に喜んでいるのか? それ がまったく伝わらない」  私がこう憤ると、西部は、  「いわゆる指導者だけならともかく、街中 でも、多くの人が定まらない表情をしている」  と応じる。
 そういう風潮はNHK的な「中立公正」を よしとする考え方からくるのだろう。
 しかし、そんなものはあるのか。
 「中立公正の立場というのは、状況に参画 していないのと同義なのです」  と西部は喝破した。
 私はもっと激しく、そんなものがあると思 っている人は、生きていない人だ、と断定した。
すなわち、死んでいる人なのである。
 しかし、ほとんどの日本のメディアはそん な旗を掲げている。
 学生時代に法哲学者の峯村光郎から、「平 等なものは平等に、不平等なものは不平等に 扱うのが平等だ」と教えられた。
これまで不 平等に扱ってきたなら、それを取り戻すには、 一時的に平等に扱ってはダメだろう。
しかし、 そのことがメディアには(あるいは読者にも) まったくわかっていない。
 たとえば昨年末、各メディアに原発問題に ついての推進、反対の両意見を併記する風景 が見られた。
『朝日新聞』をはじめ、疑いも なくそうしたのである。
 しかし、これまで、電力会社の広告によっ て買い占められたメディアには、まったくと 言っていいほど原発反対の意見は載らなかっ た。
いまでも、広瀬隆などは?上映禁止物体? とされて、マスメディアには登場していない。
 ならば、反対意見だけを、たとえば一カ月 連続載せて、はじめて「平等」となるのでは ないか。
東京電力福島原発のあれだけの大事 故が起こっても、賛成、反対の両意見を併記 するメディアには平等ということがまったく わかっていないと言わざるをえない。
 だから、東電の西沢とかいう社長が値上げ は権利だとかいうゴーマンな発言をするのだ。
さすがに、あのバカな発言には批判の声が起 こったが、東電の経営陣を世間の風を知らな いバカ殿にしてしまったのはメディアだとい うことを忘れてはならないだろう。
東電から パーティー券購入等で厚遇されていた経産大 臣の枝野某はそれをどう思っているのか。
推進一本槍だった自らの過去には目をつむり 原発問題で「中立公正」の旗を掲げるメディア

購読案内広告案内