ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年12号
特集
Case study 物流事業 ニチレイロジグループ──小売りの業態変化をビジネスチャンスに ニチレイロジグループ本社 松田浩 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2012  46 TC事業が業績を牽引 ──二〇一二年三月期は二期連続となる増収増益 を達成し、今期も業績は拡大基調です。
 「当社の事業は大きく『物流ネットワーク』『地域 保管』『海外』という三つの事業で構成されていま すが、その全てがバランス良く伸びています。
三事 業のうち最も売り上げが大きいのは物流ネットワー ク事業ですが、その中でも大手量販店の専用物流 センターの運営を受託する『TC事業』の新規獲 得が増えている」  「昨年度の実績としては、東北を中心にチェーン 展開するスーパーマーケットや九州を地盤とするド ラッグストアチェーンの物流センターなどを受託し ています。
カテゴリー別や温度帯別に分散している 物流センターを集約し、店舗への一括納品を実現 したいというニーズは一貫して強いものがある」 ──川下の物流センターの受託は競争が非常に厳 しい。
案件を獲得できている要因は?  「効率の追求と高品質のオペレーションに加え、こ れまでの実績が買われているのではないでしょう か。
当社はこれまでにイトーヨーカ堂さんやイオン グループさんをはじめ、ヨークベニマルさん、関西 スーパーさんなど名だたる小売業の物流センターを 受託してきました。
その実績が呼び水となり、物 流整備の遅れていたリージョナルチェーンなどから の引き合いが増えているのだと思います」 ──冷凍倉庫の保管事業から出発したニチレイロジ がチルドの分野で強みを発揮できるのはなぜですか。
 「当社がTC事業を開始したのはもう二〇年以上 も前です。
当初は冷凍倉庫が空いた時間をTCと して利用すれば、二四時間フルに稼働させること ができるという発想でしたが、大手量販の物流を 手がけるとなるとやはり専用センターが必要にな る。
そこから長い時間をかけてインフラ整備と経験 を積み重ねてきました」 ──多くの企業が低温物流市場に新規参入を図って います。
温度帯による棲み分けも崩れてきました。
 「確かにこの二〜三年で三温度帯を包括的にコン トロールできる物流企業を志向する荷主が増えて きました。
消費動向の変化に伴い、小売店舗の形 も変わってきていることが関係しています」  「例えばドラッグストアはこれまで薬だけを扱っ てきましたが、今では食品も取り揃えるようにな っている。
あるいはコンビニがスーパーのような品 揃えをしはじめる。
小売りの業態の垣根が崩れて きているんです。
そうなると、物流に求める機能 も変わってくる。
従来のドライだけでなく、チルド やフローズンにも対応できる体制が必要になってく る。
その結果、全ての温度帯を管理できる物流企 業をパートナーに選ぶようになってくる」  「ただし、ドライしか扱ってこなかった物流企業 がチルドやフローズンの領域に入っていくのは非常 にハードルが高い。
特にフローズンは拠点・車両と もに重装備が必要で、多額の投資をしなければい けません。
償却までに時間もかかる。
その点、当 社のように、もともと低温に強みのある物流企業 がドライに進出するのは容易です。
荷物を冷やさ なければ良いだけですから」 ──三温度帯を全て同じ拠点でオペレーションする こともできる。
 「当社の受託している案件では、ドライとチルド は同じ拠点で運営して庫内作業や配送車両の効率 化を実現していますが、フローズンの拠点だけは分 ニチレイロジグループ ──小売りの業態変化をビジネスチャンスに  小売店舗のフォーマットが大きく変わり始めている。
スーパーやドラッグストア、コンビニといった業態の垣 根が崩れ始めた。
物流に求められる機能も三温度帯の 一括管理が前提になってきた。
低温の領域を強みとす る物流企業に大きなビジネスチャンスが訪れている。
(聞き手:大矢昌浩、石鍋 圭) ニチレイロジグループ本社 松田浩 社長 Case study 物流事業 47  DECEMBER 2012 けているケースが多い。
いま言ったように冷蔵倉 庫は重装備なので、特定の企業に特化して投資す ることは難しい。
当社の汎用冷蔵倉庫を活用して います。
とはいえ、当社の冷蔵倉庫は日本全国に 配備されていますから、ドライとチルドの専用セン ターの近くに必ずあります。
実質的にはフローズン に関しても、専用センターと変わらない機能を提供 できています」 メーカー物流にも意欲 ──最近では食品卸も川下のセンター受託に乗り出 しています。
この動きをどう見ますか。
 「物流を卸に任せるか物流企業に任せるかは、荷 主の商品政策によって決まります。
卸が小売りに 売りたい商材と、小売りが店頭で消費者に売りた い商材が一致していれば、商流も物流も一括して 卸に任せたほうが楽でしょう。
しかし、実際には 必ずしもそうではありません。
店頭での差別化を 図るために、商品構成は卸任せではなく、自分で きっちり管理したいと考える小売りが多い。
その 結果として、商流と物流がハッキリ分離される。
そ ういう小売りは、物流センターを物流企業に任せ る。
純粋な物流専業者としての立場からの効率化 を期待するためです」 ──量販店だけでなく外食チェーンのセンター運営 にもこれからチャンスがありそうです。
 「物流を再構築したいと望んでいる外食チェーン が多く存在するのは確かです。
チェーンが一定規 模を超えると、セントラルキッチン機能を備え、必 要な資材を一括して店舗に供給する物流拠点を持 つことが有効になってくる。
取り扱う商材は食品 のほか、包材や箸やナプキンなど様々なので、ここ でも三温度帯の取り扱いが前提になります」  「当社でもKFC(日本ケンタッキー・フライド・ チキン)さんなどの物流を受託するなど、取り組 みを進めています。
KFCさんの案件では当社の 子会社のロジスティクス・プランナー(ロジプラン) という3PL企業が元請けとなり、全国の物流を 任せて頂きました。
ロジプランは我々ニチレイロジ グループのアセットだけでなく、他社のアセットも 活用しながら荷主目線の効率化を提案し、評価を いただいています」 ──川上、つまりメーカー物流への取り組みは?  「全国をカバーしているメーカーに対して、輸配 送事業の提供を中心に展開しています。
当社の全 国ネットワークを活かし、工場から在庫のマザーセ ンターまでの幹線輸送や、さらにその先のフロント センターまでの配送を提案しています。
また近年 ではロジプランが窓口となり、味の素さん、日本水 産さん、ニチレイフーズさんの三社による共同物流 なども実施しています。
メーカー物流の部分にも まだまだ取り組みの余地はあると判断しています」 ──運送自体は傭車が中心ですか。
 「当社は全国で、一日約四〇〇〇運行しているの ですが、その大半は利用運送です。
ただし、子会 社のNKトランスは自社車両を持っている。
従来 から協力運送会社とはコミュニケーションをとって 品質維持活動を続けていますが、やはり自分で車 両を持たなければ実運送の悩みは分からない。
改 善のアイデアも浮かんでこない。
また、食品は物量 の波動が非常に大きい。
月末月初は大きく膨らん で月の中旬はピーク時の半分くらいにまで下がる。
その波動を少しでも吸収するためにも、一定の自 社車両を持つことは必要だという判断です」 売上高の推移 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 (億円) 709 442 224 12 16 224 722 462 20 165 753 452 24 164 437 769 15 188 459 833 16 189 465 866 08年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期 13 年 3月期 (計画) 物流ネットワーク 1,387 1,423 1,390 1,394 1,495 1,536 地域保管海外その他 TC(通過型センター)拠点数 30 25 20 15 10 5 0 (カ所) 02 年 3月期 03 年 3月期 04 年 3月期 05 年 3月期 06 年 3月期 07 年 3月期 08 年 3月期 09 年 3月期 10 年 3月期 11 年 3月期 12 年 3月期 11 12 14 19 21 24 24 25 25 28 23 系列1 勝つのは誰だ 食品SCM 特集

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