ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年12号
特集
Case study 流通業 マルエツ──独自物流網整備でコンビニに対抗

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2012  32 GMS型の物流から脱却  マルエツは首都圏最大の食品スーパーだ。
全二七 一店のほとんどを東京、神奈川、千葉、埼玉の一 都三県に集中させている。
二〇一二年二月期決算 の連結売上高は三二三一億円、営業利益率は二・ 二%。
創業七〇周年を迎える一五年には、これを 売上高四〇〇〇億円、営業利益率三%にする目標 を掲げている。
 そのために今年度は従来の倍のペースとなる二 〇店をオープンする。
さらに来年度以降は年間三 〇店に出店ペースを加速する。
今年度の新店の半 分、来年度以降に出店する約七割は「マルエツプ チ」という店舗面積一〇〇坪前後の小型店だ。
ス ーパーが進出していない都心の空白地を埋める。
 ライバルはコンビニだ。
立地や長時間営業など、 コンビニに匹敵する利便性を確保すると同時にア イテム数はコンビニよりも多い三〇〇〇〜四〇〇 〇品目を取り扱う。
同社営業統括商品供給部の黒 田完治部長は「コンビニと差別化するため、野菜、 肉、魚の生鮮三品をどんな小さな店でもきちんと 品揃えしていく」と話す。
 この新戦略を実施に移すために、一〇年から約 二年かけて物流インフラを刷新した。
同社は長く ダイエーグループの主力企業だったことから、〇九 年まで物流業務をダイエーグループに全面的に委託 していた。
拠点も マルエツが〇二年 に旧マイカルグル ープから買収した 「ポロロッカ」のセ ンター(埼玉県新 座市)を小型店専用に使っていたほかは、ダイエ ーグループの汎用センターだった。
 しかし、GMSを前提に設計されたセンターは、 店舗面積二〇〇〜八〇〇坪クラスの食品スーパー とはスペックが合わない。
現場では「小分けして もらわないと困る」「いや大ロットで」というせめ ぎ合いが起きていた。
 〇七年にダイエー・丸紅・イオンが資本・業務 提携をしたことによって、ダイエーの所有してい たマルエツ株式の大部分はイオン・丸紅に移った。
これに合わせて新たな筆頭株主となったイオングル ープの物流インフラを利用することも検討したが、 やはり業態が違うため抜本的な解決は期待できな かった。
 マルエツが拡大を図る都心部の小型店はバックヤ ードがほとんどないため、コンビニ並みの小ロッ ト・多頻度で商品を送る必要がある。
中には一日 三〜四回の低温便を必要とする店もある。
新座市 の小型店専用センターの能力は既に限界に来てい た。
改革は待ったなしだった。
 〇九年まで利用していた物流ネットワークは常温 六カ所、低温五カ所、小型店専用一カ所の十二拠 点が神奈川、埼玉、千葉の三県に分散していた。
これをどこまで集約できるか。
集約しすぎれば配 送の足が伸びてしまう。
しかし一定の規模がない と作業効率が落ちる。
その目安を黒田部長は「当 社のような首都圏型のスーパーでは一センターにつ き一〇〇店舗、年間通過額が三〇〇億〜四〇〇億 円が適正規模と判断した」と言う。
それ以上の規 模になると周辺道路の混雑を招いたり、トラック の待機時間を増加させる恐れがある。
 また、低温センターと常温センターは別に設ける マルエツ ──独自物流網整備でコンビニに対抗  コンビニ並みの利便性とスーパーの品揃えを両立させた 小型店を都心部のスーパー空白地に集中出店している。
そ れを支える物流インフラの整備を2010 年から進めてきた。
関東に12 カ所あった拠点を4 カ所に集約。
物流コストを約 3 割下げると同時に新フォーマットに適応した物流サービス を実現した。
               (渡邉一樹) 営業統括商品供給部 の黒田完治部長 Case study 流通業 33  DECEMBER 2012 ことにした。
一緒にすると温度管理の徹底が難し くなると考えた。
常温と定温を一つのセンターで取 り扱っていた拠点では、冷えすぎたワインの瓶に霜 が付いてしまうなどの問題が発生したこともあっ たという。
 最終的に、常温センター二カ所、低温センター二 カ所の計四カ所で首都圏をカバーできるという結論 に至った。
まず一〇年八月、埼玉県八潮市に常温 センターを立ち上げた。
国分の大型汎用拠点「八 潮流通センター」の一部を専用センターとして使用 するかたちだ。
二つ目の常温センターは横浜の大黒 ふ頭に置いた。
運営は三菱食品に任せた。
 低温センターは川崎と埼玉県三郷。
川崎はニチレ イロジグループ。
三郷は国分が新設した四階建ての 「三郷流通センター」の一、二階を専用拠点として 賃借し、運営をダイエーの物流子会社ロジワンに委 託した。
小型店への配送はこの三郷が一括して担 当する。
三郷センターが一二年四月に稼働したこ とで新たな物流網が完成した。
 「四つの拠点を、独立系卸、総合商社、低温物 流会社、小売りの物流子会社にそれぞれ任せるか たちになった。
現場のオペレーションや管理法は各 社によってかなり違う。
各社の優れた点を横展開 することで品質の底上げを図っている」と黒田部 長は説明する。
 また、この拠点整備に合わせて、食品の加工業 務を内製化した。
川崎と三郷の低温センターに自 社設備を導入、ダイエー子会社への委託をやめた。
これによってカット野菜や豚肉の味噌漬けなどの半 加工品や総菜の原料を、生鮮品として販売する分 と一括して調達し、横持ちせずに店舗に納品する ことが可能になった。
物流コストを三割削減  物流網の完成によって、配送コストも含めたセ ンター全体の運営費は従来比で「約三割削減でき た」と黒田部長は胸を張る。
 配送品質も大幅に向上した。
従来の汎用拠点で は不可能だった商品カテゴリー別の納品が実現し た。
豆腐と牛乳などの日配品と、生鮮品が一つの 台車で配送されることがなくなり、店舗における 陳列作業が効率化した。
 温度帯管理の精度も上がった。
チルド帯を〇度、 五度、一五度の三つに分類して管理できるようにな った。
センター内からエリアを分け、配送中も「保 冷シッパー」に入れて温度を保つ仕組みを整えた。
黒田部長は「商品に適した温度を保つことで、味 を大きく向上させることができた」と成果を語る。
 常温センターに保管機能を持たせたことで、P Bへの対応も容易になった。
マルエツは現在、自 社PBの「maruetsu365」とイオンP Bの「トップバリュ」、マルエツ限定販売(留め型 商品)の「おいしいシリーズ」を展開している。
 こうしたPBはメーカー工場のライン稼働率が低 い時期にまとめて生産し、納入も大ロットで行う ことによって、コストを抑えるのが一般的だ。
し かし、従来の拠点はいずれもTCだったため、P B商品を保管するスペースがほとんど無かった。
 次のステップは、各メーカーの工場からセンター まで直送する仕組みを構築することだ。
配送費削 減やリードタイム短縮に繋げる狙いだが、メーカー 側にとっては配送ルートの大幅な変更も伴う。
黒 田部長は「商品流通部で粘り強く交渉していきた い」としている。
勝つのは誰だ 食品SCM 特集 埼玉 東京 神奈川 千葉 埼玉 東京 神奈川 千葉 白岡DC 白岡PC 越谷RDC 大宮RDC 浦和PC 狭山RDC 新座小型店 厚木RDC 横浜RDC 川崎PC 川崎複合 東京PC 八千代RDC 物流センターの配置 〈2009 年〉〈2012 年4月以降〉 三郷複合 横浜常温 八潮常温 種別 常温 低温 小型店 計 棟数 6 5 1 12 種別 常温 低温複合 計 棟数 2 2 4 八潮常温物流センターの外観 八潮常温物流センターの庫内

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