ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年9号
特集
Top Interview 「現場育ちの佐川マンをアジアに展開」 佐川グローバルロジスティクス 上岡亨 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2012  26 来年にかけて三万坪を増床 ──グループにおける佐川グローバルロジスティクス (SGL)の位置付けは?  「SGホールディングスグループにとって宅配便事 業に続く第二の柱がロジスティクス事業であり、それ をわれわれが担っています。
従来は佐川急便では対 応できないサービスをSGLが補完するという役割 でした。
そのためSGLの取り扱いのほとんどが急 便のお客様でした。
しかし現在はSGLで独自に開 拓したお客様が増えています」  「実際、SGLが全国六一カ所に約二五万坪を展 開しているSRC(佐川流通センター)を始めとす る物流拠点も、佐川急便のターミナルとの並列型は 全体の三分の一程度まで比率が下がっています。
来 年にかけてSGLは国内で約三万坪を増床しますが、 それもほとんどが独自施設です」 ──現在の主な荷主層としては?  「当社は伝統的に糸偏のお客様、アパレル関係の荷 主をメーンとしてきました。
今もそれが強みとして 残っていますが、近年は電子部品、化粧品、医療機 器などのお客様が増えています。
また足下では輸入 食品に力を入れていく計画です。
そのために必要な 三温度帯倉庫などの設備も強化していきます」 ──アセット戦略は?  「例外的に所有している一カ所を除けば、完全なノ ンアセットです。
不動産管理はグループのSGリアル ティの役割で、そこからの賃貸のほか、必要に応じ て外部の不動産会社からも多くの拠点を借りていま す。
そのほとんどを汎用倉庫として運用しています。
オペレーションは正社員約一〇〇〇人、直接雇用の パート社員三七〇〇人の自社戦力を中心に回してい ます」 ──海外の宅配便事業もSGLの管轄です。
ロジス ティクス事業と海外の宅配便事業はどう結びつくの でしょうか。
 「当社の売りの一つは、佐川急便との連携による、 海外拠点から日本の販売拠点までのワンストップ・ サービスです。
海外においては、倉庫事業、フォワー ディング、クーリエが核になりますが、顧客のニーズ に応じて現地のデリバリーにもワンストップで対応し ます。
そのために上海、広州、ベトナムでは自社宅 配網を敷いています」 ──海外の宅配便事業展開で佐川急便はライバルの ヤマト運輸に先行し、二〇〇三年に上海と北京に進 出しています。
うち上海では定着したものの、北京 は〇七年に撤退しました。
それに対してヤマトは一〇 年以降、「宅急便」の海外移植を急ピッチで進めてい ます。
 「日本で三〇年近くかけて培った3PLのノウハウ をそのままアジア各地に移植することが、海外事業 における当社の基本戦略です。
ただし、デリバリー に関しては日本の宅配便をそのまま海外に移植する ことが必ずしもベストであるとは限りません。
ご存 じの通り、アジア市場は目まぐるしく環境が変化し ます。
そのためサービスを立ち上げるスピードが重要 になるし、コスト面での制約もあります」  「今後もエリアによっては自社で宅配事業を構築す ることもあるでしょう。
実際、各地でリサーチを進 めてタイミングを見ています。
ただし、現地ではわれ われが外資系であることを考慮に入れないわけには いきません。
その地域のニーズや状況に応じて、当 社が自ら展開するべきなのか、それともローカル企業 と手を組んだほうがいいのか、ケース・バイ・ケー 「現場育ちの佐川マンをアジアに展開」  日本で培ったアパレル物流をアジア全域で展開する。
庫内作業はもちろん配送サービスも、その国の発展段階 に合わせた最適なスキームを組んで提供する。
宅配網の 海外移植もその選択肢だ。
現場育ちの佐川マンにロジス ティクスのノウハウを叩き込み、アジア全域で荷主の懐に 深く入り込む。
佐川グローバルロジスティクス 上岡亨 社長 Top Interview 27  SEPTEMBER 2012 特 集 スで判断していきます」 ──海外事業の強化策は?  「新たに、中国の華北、華東、華南、そしてAS EANの四つのエリアに、それぞれ『エリアマネー ジャー』を置いて、面での展開に取り組んでいます。
これまでは、例えば上海地区だと、宅配便事業、3 PLを含む倉庫業、検針・検品事業の三つに法人が 分かれていて、機能としては揃っているのですが、連 携が必ずしも十分ではありませんでした。
そうした 現地法人間の敷居を取り払います」  「またASEANでは、一五年にすべての品目で関 税が撤廃されることもあり、今後は国をまたいだ物 の流れが活発化していきます。
しかも生産拠点と消 費地の間はトラック輸送がメーンとなってくる。
それ を国別ではなく一つのエリアとして括ったかたちで サービスを提供していきます」 ──現在のSGLの事業ポートフォリオは、海上フォ ワーディングに物足りなさがあります。
 「否定はしません。
現状では当社の国際貨物の取り 扱いは、航空が七割、海上が三割です。
海上貨物を テコ入れすることで取扱高が大きく拡大する可能性 があります。
そのために必要な機能を手当する準備 を進めています。
まだ詳細を発表できる段階ではあ りませんが、空と海のゲートウェイはしっかりとコン トロールしておかなければなりません」 3PL人材にも佐川の独自色を ──宅配便と3PLでは、求められるスキルや知識 が大きく違います。
3PLに必要な人材をどうやっ て確保・育成しますか。
 「実はそれほど心配していません。
確かに3PL事 業には経営の視点が必要です。
荷物を正確にお届け するというだけではなく、材料の調達から最後の配 送まで、一連の流れを構築・改善・継続するという 視点がないと、物流業務を請け負うことはできませ ん」  「とはいえ、『お客様に好かれてなんぼ』という点 は、どんな商売にも共通しています。
3PLも同じ です。
スキルや知識は学ぶことができますが、人柄 だとか、お客様の懐にスッと入り込み、ニーズを受け とめるというような人間性に関わる部分はなかなか 教育できません。
その点で当社には、SGLのプロ パーのほかにも宅配便の現場で育った豊富な人材が います」  「セールスドライバーとして働くことの良さは、多 くのお客様に『もまれる』ことです。
一人で二〇〇 〜三〇〇の顧客を担当し、毎日、笑顔と元気をお客 様に提供する。
小さなことでも約束を守る。
多少の 失敗があってもすぐに対応して、『この人ならやって くれる』と思ってもらう。
そうやってお客様に好か れることで成長していく」  「さらに店長クラスになれば、経営者としての役 割を求められます。
大きな店だと三〇〇人ぐらいの 従業員を抱える事実上の社長として、決裁権を持ち、 業績に責任を負う。
そこでのし上がってきた人間に、 ロジスティクスの専門知識を叩き込む。
耳学問ではな く、現場を知り、汗をかくことの大切さも理解して いる。
お客様の調子が良い時も悪い時も全部分かっ ている人間ですから、パートナーとして信頼しても らえる」 ──確かにSGLは、海外の駐在員も多くが宅配便 のセールスドライバーの出身者、幹部クラスも店長経 験者ですね。
 「私自身、セールスドライバー出身ですから」 今年3月からベトナムのハノイ・ホーチミンで宅配事業をスタート シンガポール ジャカルタ マレーシア ホーチミン フィリピン バンコク ハノイ ソウル 深圳 台北 上海 青島 天津 大連 香港 広州 北京 佐川グローバルロジスティクスのアジア拠点

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