ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年8号
特集
第5部 レイバーマネジメントで差別化する パート作業員の多能工化を推進──ロジパートナーズ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2012  38 作業人件費を約二割削減  丸紅傘下で3PL事業を手掛けるロジパートナ ーズの「足利物流センター」(栃木県足利市)で は、米系スポーツ用品メーカーの全国発送と返品を 処理している。
取扱アイテム数は一シーズンで一万 以上。
その約八割をインナーやTシャツ、スポーツ ウェアなどのアパレル品が占めている。
 夏物や冬物の商品入れ替えシーズンとなる三月や 九月の物量は通常の一・五倍、瞬間的には三〜四 倍に達する。
半面、閑散期は半分程度に落ち込む こともある。
こうした波動をいかに乗り切るかが、 オペレーション上の重要課題となっている。
 このため足利物流センターではパート作業員の多 能工化に取り組んできた。
具体的には、返品処理 担当の約五〇名を、波動に応じて商品発送側のラ インに移動させて、集品や検品、値札付けなどの 作業に従事させている。
発送側の多忙な状況があ る程度収まってくれば、移動していたパート作業 員は元の持ち場に戻る。
 返品は一定数の作業員を確保しておくことが不 可欠なセクションだ。
ただし、商品発送に比べれば メーカー側に送り届けるまでのリードタイムには余 裕があるため、作業員の融通を利かせやすい。
そ こで足利物流センターでは二〇一〇年一月の設立 後、三月以降にアパレル商品発送の繁忙期を経験 した上で、同年の後半ごろには返品担当作業員の 多能工化による人員の融通を展開したいと考えて いた。
 しかし、その運用を安定させるまでには結果的に 約二年かかった。
同社の山根慎治・北関東営業所 長は「他の物流センターでのノウハウ、経験も活用 していく計画だっ たが、センター自 体の規模が従来の ものより大きいこ となどから、各作 業工程の仕事をき ちんと覚えてもら うのに予想以上に 時間をとられた」 とこれまでの苦労 を振り返る。
 ロジパートナー ズが運営している物流センターは、関東圏で一五カ 所。
このうち、足利は「柏第二物流センター」(千 葉県柏市)に次いで二番目に大きく、中核的な存 在の一つに挙げられる。
 建物は現在、トールグループから、延べ床面積約 三万三〇〇〇平方メートルの八割に相当する約二 万七四〇〇平方メートルを借り受けている。
米系 スポーツ用品メーカーの業績が好調で、扱う商品数 も増えているため、それに伴い増床を重ねてきた。
 現場作業員の九割程度は女性だ。
作業員の内訳 は、作業の進捗状況の管理やパートへの指導など に当たる正社員約十人のほか、発送と返品処理が 計約一二〇人。
その大半がパートで一部派遣も含 まれている。
業務の繁忙時には、短期の派遣を三 〇〜四〇名程度採用し、波動をカバーしている。
 労働力を作業工程別に見ていくと、出荷部門は 集品が約四〇名、加工(値札付け)が約十名、検 品・梱包が十五名前後となっている。
出荷部門内 でも状況に応じて、各工程間で作業員を融通し合 っている。
こうした努力が実り、昨年の三〜四月 パート作業員の多能工化を推進 ──ロジパートナーズ  繁忙期に返品担当者を出荷作業に投入するパートの多能 工化に取り組んできた。
その運用が安定したことで、作業 人件費を約二割削減できた。
さらには、年内をメドに、パー ト全員を“オールラウンドプレーヤー”に育て上げる計画だ。
                     (藤原秀行) 山根慎治 北関東営業所長 狩谷敏明 足利物流センター長 5 レイバーマネジメントで差別化する 物流現場のコンプライアンス 特 集 日雇い派遣禁止 39  AUGUST 2012 と比べると、直近の人件費は二割程度抑制できて いるという。
 実績データが積み上がってきたことで、セクショ ン別の作業量の予測精度にも磨きがかかってきた。
山根所長は「幸いにもメーカーの販売量は今後も 伸びることが見込まれており、出荷量も増えるこ とが予想される。
適正な人員配置が今後も運用の カギになる」と語る。
 そのために多能工化を現状よりさらに先に進め ようとしている。
「年内をメドに、パートのすべて が、出荷と返品処理の両分野における各工程をす べてこなせるよう教育したい」と狩谷敏明・足利 物流センター長はいう。
全員が、出荷と返品処理 の間をより自由に行き来できるオールラウンドプレ ーヤーとして活躍してもらい、効率化を一層推し 進めるのが狙いだ。
 これと並行してパートへの権限委譲を進めてい る。
パートの中から出荷と返品対応の両分野で、経 験豊富な計八名をリーダーに任命し、各作業工程 への人員配置変更などの権限を正社員から徐々に リーダーへ委譲している。
正社員の指示を待つだ けでなく、パート作業員が自ら改善策を考え、実 行に移すことで自主性を高めたいとの思惑がある。
 毎日の作業開始前に、リーダーたちが全員集まっ て、その日の人員配置や作業スケジュールなどをお 互いに確認した後、昼に再び集合し、作業の進捗 度合いや、計画と実際の乖離状況などをチェックし て、問題があれば迅速に軌道修正している。
リー ダー間の話し合いを正社員がサポートする体制だ。
モチベーション向上に荷主も協力  荷主からの提案をきっかけに、パート作業員の やる気を引き出せるようなコンテストの開催を現在 準備中だ。
ピッキングなど作業の正確性を競わせる のはもちろん、あいさつが一番よくできた人、休 まずに出勤した人といった項目も設けることを検 討しているという。
商品はこのメーカーの人気アイ テムを充てる予定だ。
 ロジパートナーズはこれまでにも、全国の物流セ ンターを対象とした各種のコンテストを実施してき たが、足利物流センター単独で行うのは初めての 試みという。
山根所長は「作業自体の技能以外の 部分も表彰の対象とすることで、働いている皆さ んが、自分でも頑張ればやれる、チャンスがある と思ってもらえるようにしたい」と、全員が参加 意識を持つことを期待している。
 このほか、米系スポーツ用品メーカーから同セン ターに常駐している社員が、週一回の朝礼の場で、 現在の売れ行きや今後の商品発売予定などを説明 し、作業員とコミュニケーションを取るよう努めて いる。
さらに、足利物流センターの作業員だけに オリジナルデザインのTシャツやシューズを配るな ど、メーカー側は現場が一丸となって働ける雰囲気 作りに積極的に協力してくれているという。
 狩谷センター長は「メーカー側がここまで配慮し てくれるケースはなかなかないかもしれない。
こ うした機会も無駄にせず、ぜひ働く皆さんのモチ ベーションを高められるよう、これからも色々と職 場の環境改善を工夫していきたい」と意気込んで いる。
 ただ、センターでは現状、短期の派遣も利用し ているため、改正労働者派遣法への対応には頭を 悩ませている。
「作業の性質上、工程の一部分だけ を取り出して請負に出すのは非常に困難。
そうな ると全体を請負化しなければならないが、それは 難しいだろう」と山根所長。
現在、契約している 派遣会社と協議を続けている。
 現時点では、品物の物量がピークを迎える時期 をにらみながら、半年程度の期間で派遣を雇うこ となどが代替策として浮上しており、改正法施行 の十月を前に、対応策の詰めを急いでいる。
ロジパートナーズの「足利物流センター」。
米系スポー ツ用品メーカーのインナーやスポーツウェア、サプリ メント、テーピング用テープなどの出荷、返品を担当 している。
足利物流センター内での集品作業。
商品の入れ替えな どで物量が増える際は、返品対応を担当しているパー トが随時加わり、作業が円滑に進むよう支援している。

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