ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年4号
物流指標を読む
第40回 荷動きに比例するトラック事故件数 「平成23年中の交通事故の発生状況」警察庁交通局「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書」国土交通省自動車交通局

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む APRIL 2012  74 荷動きに比例するトラック事故件数 第40 回 ●貨物車が第一当事者の交通事故が3.9%減少 ●東日本大震災や景気低迷による物量減少が要因 さとう のぶひろ 1964年 ●荷動きが回復する今年は事故増加の可能性も 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
被災地の交通事故が減少  警察庁交通局の統計によると、昨年(二〇一一 年)一年間における交通事故の発生件数は六九万 一九三六件で、前年(一〇年)より三万三八三七 件減少(四・七%減)した。
発生件数の減少は七 年連続であり、ピークであった〇四年(九五万二 一九一件)と比較して二七・三%の低下となって いる。
また、それに伴い死者数や負傷者数もこの ところ着実に減少しており、一一年の死者数は四 六一一人(前年比五・二%減)、また負傷者数は 八五万四四九三人(同四・七%減)とそれぞれ前 年水準を大きく下回った。
 こうした交通事故の減少には、東日本大震災の 影響が少なからずあったものとみられる。
前年と 比較した減少率を地域別にみると、北海道が九・ 四%減、東北が六・二%減、東京都が六・四%減、 関東・甲信越(注:東京都を除き、静岡県を含む) が五・六%減となっており、中部(四・八%減)、 近畿(三・七%減)、中国(四・四%減)、四国 (四・七%減)、九州・沖縄県(一・五%減)な ど西日本よりも減少率が大きい。
 また、とくに被害の大きかった岩手、宮城、福 島の三県についてみると、減少率はそれぞれ八・ 六%減、五・〇%減、九・八%減で、かつ、夜 間事故に限定すれば、それぞれ一四・四%減、一 〇・九%減、十二・四%減となっている。
全国平 均の減少率が四・七%減、夜間事故の減少率が五・ 一%減であることから、被災三県における交通事 故の減少率、なかでもとくに夜間事故の減少率が 非常に大きいことが分かる。
震災発生に伴う道路 の破損や車両の滅失・損壊などにより、長期間に 亘って人やモノの移動が抑制されたことが、結果 として交通事故の減少につながったとみられる。
 一方、高速道路における交通事故についてみる と、全国数値は減少(前年比四九二件減)してい るのに対し、被災三県においては、岩手県が同四 四件増、宮城県が同一六五件増、福島県が同七七 件増といずれも増加しており、事故類型では追突 事故が多くなっている。
また、高速道路の路線別 事故発生件数をみると、東北縦貫道において前年 比一六三件増(同四〇・八%増)と大幅な増加が みられた。
 手元に事故内容に関する資料がないため、推測 の域を出ないが、震災発生以降、避難などのため 他県へ流出した車両、あるいは救援などのため他 県から流入してきた車両により、混雑が発生した 結果、高速道路上における交通事故が増加した可 能性もある。
 以上のように、わが国全体の交通事故発生件数 が減少しているなかで、貨物車による交通事故も 減少している。
一一年の交通事故発生件数六九万 一九三六件のうち、貨物車が第一当事者となった 交通事故は一二万二九一九件(注:全件数に占め る割合は一七・八%)で、前年より四九四八件減 少(三・九%減)した。
 また、貨物車が第一当事者となった交通事故のう ち、事業用貨物車によるものは二万四八六〇件で、 前年よりも五八七件減少(二・三%減)している。
事業用貨物車による交通事故発生件数は、一昨年 (一〇年)、七年ぶりに増加に転じたが、昨年は 再び減少となった。
事業用貨物車による交通事故 「平成23年中の交通事故の発生状況」警察庁交通局 「自動車運送事業に係る交通事故要因分析報告書」国土交通省自動車交通局 75  APRIL 2012 悪い労働条件が重大事故の引き金に  過去一〇年の推移をみると、中型免許が新設さ れた〇七年以降、高速道路における中型・普通の 事故は減少したものの、大型の事故は減っていな い。
様々なレポートを調べてみたが、高速道路にお ける大型貨物車の交通事故が増加した要因につい てはよく分からなかった。
そこで、国土交通省自 動車交通局「自動車運送事業に係る交通事故要因 分析報告書」を〇八年度から一〇年度までの三年 分調べてみた。
この報告書のなかに、「社会的影響 の大きい重大事故の要因分析」という項目がある。
そこに記載されている高速道路における貨物車の 事故の事例について、その要因をみると、八件の うち五件が「過労状態での運行」であった。
やは り、悪い労働条件が重大事故を引き起こしている ようである。
 ところで、筆者は一年前の本欄で、「一一年に ついては、物流需要はやや減退することが見込ま れるため、事業用貨物車による交通事故は再び減 少に転じるものと予想されるが、労働条件がさら に悪化するならば、走行キロ当たりの交通事故件 数の増加に伴い、交通事故発生件数の減少率は小 幅なものにとどまる可能性もある」と書いた。
 実際、蓋を開けてみると、景気が減速傾向にあ ったところに震災の影響も加わったことから、一 一年の物流需要は減退し、その結果、事業用貨物 車による交通事故は減少することとなり、前半部 分の予想は当たった。
後半部分については、自動 車輸送統計(国土交通省)の公表が遅れているた め検証できていない。
 事業用貨物車による交通事故は、基調としては、 業界団体や事業者などの交通事故撲滅に向けた積 極的な取り組みなどを受けて、減少傾向にある。
し かし、ここ数年は、景気や物流需要の動向にも大 きく左右されている。
昨年末に日通総合研究所が 発表した「二〇一一・二〇一二年度の経済と貨物 輸送の見通し」によると、一二年度の営業用自動 車の輸送量(トン数)は前年度比二・一%増と見 込まれており、この数値を考慮すると、今年(一 二年)の事故件数が増加に転じる可能性も否定で きない。
 しかし、昨年、交通事故が減少したのは震災の 影響によるものであり、今年は景気や物流需要が 持ち直すことから、それに伴い交通事故も増加す るというのではあまりにも悲しい。
 最後に蛇足ではあるが、以前本欄で書いた「自 転車とトラックの事故が増加する?」という拙稿 に対して、何人かの方々から「読みましたよ」と いうご連絡を頂戴した。
自転車の暴走に眉をひそ める向きは少なくないようだ。
昨年一〇月に警察 庁が通達を出してから、何となく車道を走行する 自転車が増えたようにも感じられるが、まだまだ である。
ちなみに、筆者の住まいは三鷹市である が、近所に偏差値だけはべらぼうに高い偏差値バ カ大学とその付属高校があり、そこの学生・生徒 が歩道を無灯・横列で自転車走行している。
三鷹 警察署は取り締まる気配すらなく、住民は歩道の 端を歩いている(と言ったらオーバーか)。
の減少数・減少率を車種別にみると、大型が十二 件減(前年比〇・一%減)、中型が二七件減(同 〇・三%減)とほぼ横ばいで推移しているのに対 し、普通は四四二件減(同十一・一%減)、軽が 一〇六件減(同二・四%減)と減少率がやや大き い。
 ただし、高速道路における貨物車の交通事故は 増加している。
高速道路における交通事故の全国 数値は一万一七〇 八件で、前述のと おり、前年より四九 二件減少したのに対 し、貨物車が第一当 事者となった交通事 故(注:軽を除く) は合計で三八六七 件であり、前年比で 二〇五件増(同五・ 六%増)となってい る。
なかでも大型は 一三一二件で同二 一三件増(同一九・ 四%増)と大幅に増 加した。
なお、高速 道路を利用する頻度 は、事業用の方が自 家用よりも圧倒的に 多いであろうから、 事故の多くが事業用 貨物車によるものと 推測される。
編集部より訂正:先月号の記事の巻末※に「貿易収支統計」と いう記載がありましたが、「国際収支統計」の誤りです。
トラックによる交通事故件数(事業用貨物車が第1 当事者となったケース) 交通事故件数 大型貨物 中型貨物 普通貨物 軽貨物 計 07 年08 年09 年10年11 年増減数増減率(%) (注)増減数および増減率は、10 年と比較した値 6,913 8,969 11,467 4,656 32,005 8,999 9,157 6,061 4,621 28,838 8,003 9,059 3,982 4,403 25,447 7,991 9,032 3,540 4,297 24,860 7,623 8,648 4,405 4,316 24,992 -12 -27 -442 -106 -587 -0.1 -0.3 -11.1 -2.4 -2.3

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