ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年4号
メディア批評
メディアがほとんど報道しない東電株主総会木で鼻を括ったような回答に終始する経営陣

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 APRIL 2012  68  照屋寛徳著『沖縄から国策の欺瞞を撃つ』 (琉球新報社)によれば、二〇一二年一月八日、 福島市で開かれた「原子力災害からの福島復 興再生協議会」に於いて東京電力福島第一原 発のある双葉町の井戸川町長が、野田首相に、  「私たち双葉町民を日本国民と思っていま すか。
法の下に平等ですか。
憲法で守られて いますか」  と尋ねたという。
 そして照屋は、一九九五年に国会議員にな ってから、たびたび、  「ウチナーンチュは日本人ですか。
いつから 法的に日本人になったんですか。
日本人(国民) として扱われていますか」  と追及してきた、と続ける。
 井戸川発言に触れて、照屋は「基地と原発 で苦しみ、国策に抗いながら生きる思いは同 じだ」と改めて強く感じたのである。
照屋だ けでなく、多くの沖縄県民が井戸川の言葉に 共鳴・共感したのだろう。
 私は東北出身者として、今度の原発震災は 「琉球処分」と同じく「東北処分」だと怒っ ている。
 しかし、「日本国民と思っていますか」と いう問いかけは、野田首相よりもさらに厳しく、 東京電力の経営陣に向けられなければならな いのではないか。
たとえば現会長の勝俣恒久 にであり、前社長の清水正孝にであり、現社 長の西澤俊夫にである。
 『週刊アサヒ芸能』の昨年の七月一四日号 に東電の株主総会のレポートが載っている。
 六月二八日に開かれた株主総会での質問に 立ったある株主は、大声で、  「あんた方全員辞めて、原子炉に入って、 死んでください! 責任を取って死ぬのが、 国民のため‥‥責任を取って死ぬのが、子供 たちの教育にも‥‥とにかく原子炉に入って、 死んでください! 以上」  と叫んだ。
が、議長役の勝俣はまったく動 揺せず、議事を進行させた。
 それに対し、ある株主が動議を出す。
 「勝俣さん、あなたが心から反省している のであれば、今、その席に座って議長は務め られないはずです!」  この動議を簡単に否決し、勝俣は議長を続 ける。
 次に立った株主は、  「今回の決算書はインチキではないですか?  事故の賠償額がきちんと計上されていない。
計上すると、債務超過になるので、計上でき なかったのでしょう!」  と指摘した上で、経営陣に、  「あなたがたの資産を売却して賠償に充て なさい! ただし、あなた方が生活保護を受 けるようになっては、税金のムダです。
だから、 生活できるギリギリまで売却しなさい!」  と要求した。
 しかし、勝俣らは「木で鼻をくくったよう な回答」に終始する。
 柏崎から来たという株主がぶつける。
 「柏崎原発三号機の再稼働を求めている清 水社長の顔なんか本当は見たくもない! お 辞めになったあとは福島に除染に行かれるの でしょうね?」  このレポートには「TV・新聞が報じなか った東電株主総会」と見出しがついているが、 確かに当時もいまも、その模様はほとんど報 じられていない。
 だから東電は増長して、現社長の西澤が「値 上げは権利」などという思い上がった発言を するのである。
 明らかに債務超過なのだから、東電は倒産 させればいいのである。
そうすれば、勝俣や 西澤のクビは飛び、新たな経営陣で再スター トすることになる。
ところが、それをしない から、経済産業省がしゃしゃり出てきて「国 有化」などと言い出す。
 一度フヌケにされたメディアはまともな指 摘はできなくなるということだろうか。
メディアがほとんど報道しない東電株主総会 木で鼻を括ったような回答に終始する経営陣

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