ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年9号
物流不動産市場レポート
特別編二〇一一年上半期三大都市圏物流施設マーケット動向分析シービー・リチャードエリス 鈴木公二 シニアコンサルタント

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート SEPTEMBER 2011  84 室消化が進んでいるため、全般的に大型物件に 品薄感がある。
年内は新規供給予定がないため、 需給の改善が期待されるが、来期では震災需要 の解消が顕在化することが予想されるため、空 室率の低下は限定的といえる。
来年以降は、現 状確認されている供給量を考えると、需給は安 定的な推移を続けると思われるが、大型用地物 色の動きも見られているため、今後発表される 開発計画には注視する必要がある。
近畿圏 今後の空床改善に期待 ■中大型物流施設市況  輸出入貨物の増加やメーカー各社の生産回復 が進んでおり、施設稼働状況は徐々に改善して いる。
東日本大震災の影響により、圏域間の貨 物調整や一部で既存施設の増床対応などの動き も見られた。
震災後のリスク対応として一時的 特別編 三大都市圏 物流施設マーケット動向分析 シービー・リチャードエリス 鈴木公二 シニアコンサルタント 二〇一一年上半期  シービー・リチャードエリスは七月二九日、二〇一一年上半期の全国物流施設市況レポー ト「Industrial Market Report Japan(全国)Q1-Q2 2011」を発行した。
首都圏では震災の 影響で短期需要やリスク分散を志向する動きが見られたものの、沿岸部から撤退する企業はほ とんど見られなかった。
賃料水準は下落基調が続いているが、今後は需給の逼迫が予想される。
反転のタイミングは不透明だが、賃料に底打ち感が出てきていることは間違いない。
首都圏 賃料水準に底打ち感 ■中大型市況  震災後も大型高スペック施設の需要は堅調に 推移している。
今期の動きとしては、全般的 にアパレル、通販会社等の内需系企業による移 転の動きが見受けられた。
通販企業については、 業績拡大による新規開設で大規模なスペースを 賃貸する動きが目立った。
 また、震災による影響で、被害が少なかった 免震構造の物件が再評価されたり、液状化、津 波のリスクを避けようとする企業の動きも見受 けられたが、湾岸エリアから撤退する企業の動 きはほとんど見られなかった。
 今期の首都圏の中大型規模の募集賃料水準に ついては、東京都で対前年比マイナス五・一%、 千葉県で同マイナス七・三%、埼玉県で同プラ ス二・八%、神奈川県で同マイナス二・七%と いう結果となった(図1)。
二〇〇八年以降下 落基調であった埼玉県ではプラスに転じ下落基 調に歯止めがかかった感はあるが、他のエリア では弱含みでの推移を続けている。
 大型の成約賃料に関しては、しばらく借り手 市場であったが、需給逼迫感から状況に変化が 出てきている。
統合需要が中心であることを考 えると賃料上昇のタイミングは不透明だが、少 なくとも底打ち感が見られている。
■大型マルチテナント型物流施設市況  今期の平均空室率は、〇・八ポイント上昇し 七・〇%となった(図2)。
二棟の新規供給に 加えて、震災関連の短期契約の解消等による上 昇懸念があったが、築浅物件を中心に空室消化 が進んだことや、短期契約の解消の動きも限定 的であったことから小幅な上昇に留まった。
 大型高スペック施設に対する需要は底堅く空 85  SEPTEMBER 2011 図2 首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率【空室率算出基準(調査棟数:49 棟)】 既存物件:2010 年7月以前に竣工した物流施設 地域:千葉県・東京都・埼玉県・神奈川県、 延床面積: 10,000 坪以上、 竣工:既竣工物件、 空室確認方法:ヒアリ ングによる、建物形態:原則として、開発当時において複数テ ナント利用を前提として企画・設計された建物であること ※今期首都圏で調査対象となった54 棟については、上記算出 基準により抽出したものであり、必ずしも物流施設ストック全 体の需給バランスを示したものではない (%) 04 年3月 04 年6月 04 年9月 04 年1 2月 05 年3月 05 年6月 05 年9月 05 年1 2月 06 年3月 06 年6月 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年9月 08 年 12 月 09 年 3 月 09 年6月 09 年9月 09 年 12 月 10 年3月 10 年6月 10 年9月 10 年 12 月 11 年3月 11 年6月 07 年9月 07 年1 2月 20 15 10 5 0 図3 首都圏の稼働床面積(指数)( 2004/03=100) 04 年3月 04 年6月 04 年 9 月 04 年1 2月 05 年3月 05 年6月 05 年9月 05 年1 2月 06 年3月 06 年6月 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年9月 08 年 12 月 09 年3月 09 年6月 09 年9月 9年 12 月 10 年3月 11 年3月 11 年6月 10 年6月 10 年9月 10 年 12 月 07 年9月 07 年1 2月 400 350 300 250 200 150 100 平均空室率既存物件空室率 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 -1.0 -2.0 -3.0 -4.0 -5.0 -6.0 2006年 賃料水準 変動率 (円/坪) 2007年2008年2009年2010 年2011年 上期 東京都 図1 首都圏の中大型物流施設の平均募集賃料 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 -2.0 -4.0 -6.0 -8.0 -10.0 2006年 賃料水準 変動率 (%) (円/坪) (%) (%) (%) 2007年2008年2009年2010 年2011 年 上期 千葉県 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 -2.0 -4.0 -6.0 -8.0 -10.0 2006年 賃料水準 変動率 (円/坪) 2007年2008年2009年2010 年2011年 上期 埼玉県 4.0 2.0 0 -2.0 -4.0 -6.0 -8.0 -10.0 2006年 賃料水準 変動率 (円/坪) 2007年2008年2009年2010 年2011 年 上期 神奈川県 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 変動率 賃料水準 5,530 -2.3 5,680 2.7 5,640 -0.7 5,620 -0.4 5,510 -2.0 5,230 -5.1 変動率 賃料水準 3,770 5.9 3,850 2.1 3,990 3.6 3,640 -8.8 3,720 2.2 3,450 -7.3 変動率 賃料水準 4,050 7.7 4,160 2.7 4,070 -2.2 3,850 -5.4 3,570 -7.3 3,670 2.8 変動率 賃料水準 4.590 -4.2 4,620 0.7 4,710 1.9 4,410 -6.4 4,070 -7.7 3,960 -2.7 出所:シービー・リチャードエリス な動きが多く見られたが、今後の拠点リスク分 散など荷主企業の動向が注目される。
 今期の大阪府の平均募集賃料は、前年からプ ラス〇・九%となった(図4)。
市場競争力の ある施設では賃料水準を維持する一方、汎用性 が低く、競争力に劣る施設では、集約撤退等に よる空室発生が引き続き見られ長期化も伺える。
募集賃料ベースでは、優良エリアの大型施設で 改善兆候は見られるが、全般的にはやや弱含み での推移となっている。
■大型マルチテナント型物流施設市況  大型マルチテナントタイプの平均空室率は、昨 物流不動産市場レポート SEPTEMBER 2011  86 年末に大幅減少して以降やや落ち着き、今期は 七・一%となった(図5)。
また、竣工後一年 以上の既存物件の空室率についても同数の七・ 一%であった。
動きとしては、大型新規供給が なく既存物件の高稼働が続く市況の中、一部で 空床消化がさらに進んだ一方、契約満了による 自社物件への移転などが見られた。
 景気回復基調が続き、競争力を有する優良物 件においては満室稼働、稼働率アップが継続し ており、市況改善による需要増を見込んだ新規 開発の動きも窺える。
新規供給としては、開発 物件の竣工が来年春まで見られないため、今後、 更なる空床改善が期待される。
中部圏 自動車生産停止の影響は限定的 ■中大型物流施設市況  震災の影響により自動車関連産業などでは生 産活動の停止も見られたが、近年業況回復が進 み、前向きな物流需要は増加傾向にある。
中大 型施設の募集賃料動向を見ると、前年比プラス 三・三%と若干の増加となっており、概ね横ば いでの推移となっている(図7)。
これまで空室 増加・長期化が見られ、賃料水準は下落傾向で 推移してきたが、景気回復やコスト削減を睨ん だ拠点再編と相俟って大型需要は顕在化してき ており、売買の動きも窺える。
賃料水準は上昇 に転じるまでは至らず、当面は同等水準で推移 するものと思われる。
図5 近畿圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率 【空室率算出基準(調査棟数:12 棟)】 既存物件:2010 年7月以前に竣工した物流施設 地域: 大阪府、兵庫県、延床面積:10,000 坪以上、 竣工:既竣工物件、 空室確認方法:ヒアリングによる、建物形態:原則として、開発当時におい て複数テナント利用を前提として企画・設計された建物であること ※今期関西圏で調査対象となった11 棟については、上記算出基準により抽 出したものであり、必ずしも物流施設ストック全体の需給バランスを示したも のではない (%) (%) 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年9月 08 年 12 月 09 年3月 09 年6月 09 年9月 09 年 12 月 10 年3月 10 年6月 11 年3月 11 年6月 10 年9月 10 年 12 月 07 年9月 07 年1 2月 35 30 25 20 15 10 5 0 図6 近畿圏の稼働床面積(指数)( 2006/9=100) 図7 愛知県の中大型物流施設の平均募集賃料 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年9月 08 年 12 月 09 年3月 09 年6月 09 年9月 09 年 12 月 10 年3月 10 年6月 11 年3月 11 年6月 10 年9月 10 年 12 月 07 年9月 07 年1 2月 400 350 300 250 200 150 100 平均空室率既存物件空室率 2006年 賃料水準 変動率 (円/坪) 2007年2008年2009年2010 年2011 年 上期 図4 大阪府の中大型物流施設の平均募集賃料 20.0 15.0 10.0 5.0 0 -5.0 -10.0 -15.0 -20.0 4.0 2.0 0 -2.0 -4.0 -6.0 -8.0 2006年 賃料水準 変動率 (円/坪) 2007年2008年2009年2010 年2011 年 上期 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 変動率 賃料水準 3,970 1.3 4,060 2.3 3,990 -1.7 3,700 -7.3 3,470 -6.2 3,500 0.9 変動率 賃料水準 3,570 15.5 3,250 -9.0 3,370 3.7 2,890 -14.2 2,700 -6.6 2,790 3.3

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