ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年1号
やらまいか
温泉付合同勉強会で喝!

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2004 80 株価は会社の通信簿 眠い。
昨夜はついつい話と酒に夢中になりす ぎてしまった。
三次会のラーメン屋から部屋に 戻ってきたのが確か午前一時。
若い頃には何と もなかったが、最近は深酒すると次の日に身体 が重くなる。
しんどい。
さすがに年齢を感じて しまうよ。
しかし今日も一日長くなりそうだ。
朝九時から夕方まで勉強会が続く。
朝メシはし っかりと食べておかないと。
お膳に用意された 焼き魚、とてもうまそうじゃないか。
おい、みんな。
昨日の晩メシと同じようにす べて残さず食べるように。
しかしオレは箸をつ ける前にやっておきたいことがある。
新聞のチ ェックだ。
最近はどうしてもあるページが気に なって仕方ない。
株価の欄だ。
経済面や社会面、 そしてスポーツ面よりも先にこのページを開く 日があるくらいだ。
株式投資で財テク? とんでもない。
新聞で 確認しているのは、よその会社ではなく、ウチ の会社の株価だ。
昨日の終値はいくらだったの か。
取引高は多かったのか、それとも少なかっ たのか。
毎日チェックしているんだ。
とくに二 〇〇三年三月に東証一部上場を果たしてから、 株価が気になるようになった。
株価は会社の通信簿と言われている。
もちろ ん高いほうがいい。
ウチの株価は一時二五〇〇 円という高値をつけていた。
現在は二〇〇〇円 台をうろちょろしているが、それでも物流企業 の中では一番高い。
正直言って嬉しいよ。
だっ て学校のクラスのなかでトップの成績を取って いるようなものだからな。
さて、新聞の残りページはパラパラとめくっ て、さっさと朝メシを済ましてしまおう。
その 後で時間があれば、勉強会に入る前にもう一風 呂浴びたいからな。
熱いお湯につかって汗を出 して昨日の酒を少しでも抜き、シャキッとした 姿で勉強会に臨む。
社長のオレが二日酔い丸出 しではセンター長たちに示しがつかないからな。
落ちこぼれを作るな 勉強会のスタート時間は午前九時。
会場への 集合時間はいつもの通り開始五分前だ。
昨日あ れだけ注意したから、さすがに今日は集合時間 に遅れるセンター長がひとりもいないようだ。
い い心掛けだ。
勉強会を終えて自分たちのセンタ 第10回「 温 泉 付 合 同 勉 強 会 で 喝 ! 」 〜 後 編 〜 センター長や営業所長など管理職を対象にした勉強会もい よいよ二日目に突入した。
午前中は参加者全員にセンターの 現状を説明してもらう。
そして昼食を挟んで午後からはどう やって今後センターを運営していくか。
利益目標はどのくら いか、などを全員の前で公約してもらうんだ。
大須賀正孝ハマキョウレックス社長 ――ハマキョウ流・運送屋繁盛記 《前回までのあらすじ》 本社での勉強会を終えて、車 で向かったのは温泉地の老舗ホテル。
日頃の疲れを温 泉で癒し、その後は酒宴を通じて親睦を深めた。
一次 会は上座を設けない飲み会。
もちろん無礼講だ。
二次 会ではビールで乾杯後、参加者全員に現在の夢につい て熱く語ってもらった。
続く三次会ではラーメンをつ まみに飲み直した。
部屋に戻った時には既に日付が変 わっていた。
昨日の宴会は3次会まで続いた。
最近は深酒 すると翌日がしんどい 81 JANUARY 2004 ーに帰ってからも時間厳守は続けてほしい。
あれっ。
時間通りに席についているのはいい が、今日はボケーっとしている連中が多いな。
ま さか二日酔いじゃないだろうな? 昨日三次会 の後も飲んでいた連中がいる? 親睦を深める のは大いに結構だが、次の日にまで影響するよ うではいかん。
途中退出や居眠りは絶対に許さ ないぞ。
さて、今日の勉強会。
何から始めようか。
実 は昨日の勉強会と同様、何をやるかプログラム なんて用意していない。
まずは収支日計表と日 替わり班長制度が現場にきちんと浸透している かどうかを確認しよう。
最初に日替わり班長制 度をきちんと導入しているセンターは手を挙げ てほしい。
おいおい、待てよ。
おかしいな。
手を挙げて いないセンター長が数人いるじゃないか。
いっ たいどういうことなんだ。
現場で採り入れられ ない特別な理由が何かあるのか。
手を挙げてい ないセンター長たちにはどんな言い分があるの か。
聞いておく必要がありそうだ。
なに。
キミのセンターでは日替わりで班長を 決めるのではなく、特定のリーダーを決めてい るのか。
そのリーダーが中心となって毎日朝礼 を開いている。
リーダーのパートさんは時給も 一〇〇円ほど高い。
そのリーダーに任せておけ ば現場の管理はうまくいく。
センター長は負担 が小さくなり、楽に仕事ができる。
そういうわ けか。
しかしその体制ではダメだ。
なぜかって? 確かにリーダーであるパートさんはたくさん経 験を積めるからどんどんレベルアップしていく。
それはいい。
ところが他のパートさんたちはど うだ。
一向に成長していかない。
分かるか。
オレがパートさん全員に日替わりで班長をや らせるように指示しているのはパートさんひと りひとりの力を底上げするためだ。
誰がリーダ ーをやってもセンターがうまく機能する体制に するんだ。
特定のパートさんへの依存度が高い センターは、その人が病気などで仕事を休むと、 たちまち混乱するぞ。
班長の仕事は誰でもできる。
それほど難しい ものじゃない。
慣れていないパートさんは初め の頃、色々と失敗するかもしれない。
しかし、セ ンター長はそれを非難しちゃダメ。
班長の仕事 を覚えるまで手取り足取りで親切に教えてあげ る。
それこそがセンター長の仕事だ。
できない パートさんは能力が低いわけではない。
班長と して育てることができないセンター長に指導能 力がないだけだ。
物流センターの仕事はチーム単位で行われる ことが多い。
チームの中に落ちこぼれを作って はいけない。
人というのは自分よりもレベルの 低い人がいると安心してしまう。
努力しなくな るんだ。
これに対して、チームのメンバーが同 じくらいの実力だと競争意識が芽生え、チーム 全体がレベルアップしていく。
もう一度言っておく。
どんなセンターであっ ても日替わり班長制度を導入するように。
やり 方は縛らない。
センターの実情に合わせて色々 と工夫してもらっても結構だ。
とにかくパート さんを含めた全員で物流センターを運営する体 制を敷く。
これだけは約束してくれ。
日計表は誰でも作成できる さてもう一つの収支日計表のほうはどうなん だろう? こちらも導入済みのセンターは手を 挙げてほしい。
ありゃ…。
やはりそうか。
ある 程度予想していたが、日計表の現場への浸透は 日替わり班長制度よりもさらに遅れているよう だ。
日計表を採り入れるのは日替わり班長制度 よりも面倒だからな。
導入済みと答えたセンターにもちょっと怪し いところがある。
収支日計表の作成に携わって いるのはセンター長だけ。
細かく聞いていくと、 そんなセンターも少なくないようだ。
しかし、そ れでは意味がないんだ。
オレが理想としている のは現場で働く全員が日計表のメリットを理解 し、さらにメンバーなら誰でも日計表をつけら センター長の仕事はパートさんたちを班長 に育てることだ できる連中ばかり。
口うるさく指示を出すのは 持っている力を十分に発揮できていないからだ。
完璧な仕事を求めているわけではない。
やるだ けやってみて失敗しても、あとで挽回できれば いい。
問題なのは「やるだけやってみる」こと さえしない人。
やる気のない連中が一番困る。
現場ではやる気のないセンター長には誰もつい てこない。
二日間の勉強会を通じてセンター長たちがど んな悩みを抱えているのか。
現場にはどんな問 題が山積しているのか。
だいたい掴むことがで きた。
そして悩みに対しては解決策を提供でき たと思っている。
各自それを持ち帰ってもらい、 現場改善などに役立ててほしい。
最後に一つだけ注文がある。
センターに戻っ たら、この二日間に行ったような勉強会を各セ ンターで開いてもらいたいんだ。
講師はセンタ ー長。
対象は現場の作業員たち。
オレに言われ たことをそのまま伝えるかたちでも、言われた ことを自分流でアレンジするのでもどちらでも 構わない。
とにかく早急に一度勉強会を開いて JANUARY 2004 82 れる体制だ。
自分の手掛けている仕事が儲かっているのか。
それとも赤字なのか。
そのことが分かっている のと、分かっていないのとでは仕事に対する意 気込みが違ってくる。
儲かっていればもっと儲 けようと頑張るようになる。
赤字なら何とか黒 字化しようと知恵を絞る。
数字が分かっていれ ば、現場の社員たちにも自然とそういう意識が 芽生えてくる。
だから日計表は全員でつけるべ きなんだ。
反対に数字を知らせないとどうなるか。
現場 の人間は自分だけ仲間外れにされているような 気分になるんだ。
「どうせ私は会社にとって将棋 の駒の一つにすぎない」と考えるようになり、例 えば現場改善のアイデアを出してくれなくなっ てしまう。
全員で日計表をつけていると答えたセンター でも、全員が日計表をつけることの意味や目的 をきちんと理解しているとは限らないぞ。
上司 からやれと言われたので、仕方なく電卓を叩い て紙に数字を埋めている。
そんな状況では全員 参加とは言えない。
本当は日々の日計表の作成だけではなく、予 算編成の作業にも現場の人間を加えたほうがい い。
センターで働く全員で一年間の収支目標を 立てる。
そうすればセンターとしての目標が個 人としての目標になる。
自分が目標づくりに関 わったら努力しないわけにはいかない。
現場は みんなが目標に向かって仕事に励むような環境 になっていく。
最低でも週に一回、収支日計表を囲んでミー ティングを開いてほしい。
センターで立てた目 標数値に対して実績がどのように推移している のかを確認するためだ。
数値に乖離があれば、 それを埋めるために作業をどう改善していくべ きか。
みんなで話し合うのが目的だ。
作業員同士のコミュニケーションが密なセン ターは現場のムードがいい。
成績もいい。
大袈 裟な会議でなくていいから、ちょっとしたこと でもすぐに人が集まってきて短時間のミーティ ングを開く。
そんな職場にしてほしい。
全センター黒字化で大イベント あっという間に昼メシの時間じゃないか。
午 前中の勉強会はすっかりオレの独壇場となって しまった。
黙ってセンター長たちの話を聞いて いるつもりだったが、五分ともたなかった。
ど うしても細かい部分までアドバイスしたくなる んだ。
ちょっと反省している。
午後の部では口 にチャックをして、聞き役に徹するぞ。
そう思っていたが、やはり無理だった。
午後 の勉強会では参加したセンター長全員が今後の 目標を発表してくれた。
黙って聞いていればよ かったが、その内容に対してついついダメ出し や助言をしてしまった。
昨日と今日の二日間、 オレに怒鳴られっぱなしだった連中はきっと気 分を悪くしているだろうな。
今回の勉強会はセンター長を?イジメ〞るこ とが目的ではない。
オレは参加したセンター長 たちに大いに期待しているんだ。
みんなやれば 何かあればすぐに人が集まってき てミーティングを開く職場にして ほしい 83 JANUARY 2004 みてくれ。
いまは本社が主体となって毎月勉強会を開く スタイルになっている。
しかし本来、こうした 勉強会はセンターごとに開かれるべきなんだ。
セ ンター長の仕事とは現場社員を教育してセンタ ー長に育て上げることだ。
その役目を本社が肩 代わりしているのは、まだまだ自身に学ぶこと の多い未熟なセンター長が多いからだ。
オレからの注文ばかりじゃ、やる気は出ない よな? もちろんご褒美も用意する。
いま赤字 運営を余儀なくされている物流センターが全国 に三カ所ある。
この三カ所の収支改善が進み、 全国の物流センターがすべて黒字化できたら、 何か大きなイベントを開こう。
温泉で芸者をあ げてドンチャン騒ぎがいい? その程度では済 まさないぞ。
もっと大きなことをやろうじゃな いか。
何かいい企画があったらいつでも提案し てくれ。
日替わり?社長〞制度はどうだ さきほど最後と言ったが、もう一つだけ。
実 は近い将来、センター長以上の役職者を対象に 「日替わり社長制度」という仕組みを導入して みたいと思っているんだ。
班長ではなく社長だ ぞ。
このアイデアもなかなか面白そうだろう?  会社のトップである社長という仕事がどうい うものなのか。
多くの人に経験してもらう。
同 じ?長〞がつくけどセンター長と社長とでは仕 事の中身がまったく違うからな。
一度社長を経 験すると収支に対して今まで以上に厳しい眼で 見られるようになる。
その感覚を身につけてか ら現場に戻ると、社長を経験する前とは仕事の 進め方が違ってきて、いい結果が得られるよう になるはずだ。
植木等の言う通りだ。
社長よりもサラリーマ ンのほうが気楽な稼業かもしれない。
社長の仕 事はゴルフに行ったり、酒を飲んだりすること。
遊んでいるイメージが強いが、実際には色々と たいへんなんだぞ。
資金繰りに頭を悩ませたり、 一般の社員にはない苦労がたくさんある。
こんなことを言うと社長業を経験させるのは 同情を得るためではないかと受け止められてし まうかもしれない。
しかし、そうではないんだ。
社長の仕事を経験したあとに「辛いことがあっ ても社長になりたい」という気持ちを社員に持 つようになってほしい。
社長を目指す社員がた くさんいれば、社内は活気に満ち溢れるはずだ。
二日間にわたって実施した勉強会もとうとう 終わりだ。
疲れただろう? オレも真剣になっ て講義というのか、話をしたから疲れちゃった よ。
今回はわざわざ自分たちで宿泊費と交通費 を負担して勉強会に参加してもらった。
何か得 るものはあったか? それをこれからのセンタ ー運営に活かしていってほしい。
勉強会でオレから言われたこと。
そしてみん なの前で宣言したことをきちんと実行に移して いるか。
しばらく経ったら確認する必要がある。
センター長本人に聞いても「頑張っています」 という答えが返ってくるだけ。
やはり現場の人 間に直接確認しないと実態は掴めない。
来月の 現場社員向け勉強会の時にでも参加者に色々と 聞いてみたい。
よろしくな。
(以下、次号に続く) おおすか・まさたか 一九四一年静岡県 浜北市生まれ。
五六年北浜中卒、ヤマハ 発動機入社。
青果仲介業などを経て、七 一年に浜松協同運送を設立。
九二年に現 社名の「ハマキョウレックス」に商号変 更した。
二〇〇三年三月に東証一部上場。
主要顧客はイトーヨーカ堂、平和堂、フ ァミリーマートなど。
流通の川下分野の 物流に強い。
大須賀氏は現在、静岡県ト ラック協会副会長、中堅トラック企業の 全国ネットワーク組織であるJTPロジ スティックスの社長も務めている。
ちな みにタイトルの「やらまいか」とは遠州 弁で「やってやろうぜ」という意味。
全国の物流センターをすべて黒字化 できたら、何か盛大なイベントを開 くつもり

購読案内広告案内