ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年5号
メディア批評
危険な状態を「安全」と言いつづける?専門家?御用学者=無用学者だけしか出演しないTV

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 MAY 2011  76  「買われた」もしくは「飼われた」専門家 なのだろうか。
原発が危険な状態になっても、 「安全」と言いつづける?専門家?しかテレ ビには出てこない。
スポンサーとしての東京 電力や電気事業連合会を意識すれば、メディ アは当然そうなってしまう。
 『週刊現代』は四月一六日号で、「そんな に『安全』と言うのなら、テレビに出るので はなく、原発ムラの科学者たちは現場(フク シマ)へ行け!」という特集を組み、原子 力安全・保安院の西山審議官、斑目原子力 安全委員会委員長、関村東大教授、中島京 大教授、「総合エネルギー調査会」原子力部 会の田中会長、原子力委員会の近藤委員長、 日本原子力開発機構の鈴木理事長らの顔写 真を並べている。
いわば?原発戦犯?である。
 ロシアの科学者、アレクセイ・ヤブロコフ はワシントンで会見して、  「日本政府は、国民に対して放射能被害を 過小評価している」と言ったというが、日 本の?専門家?たちの意見とはまったく違う。
 たとえば「NHKに出ずっぱり」の関村は、  「燃料のごく一部が溶けて漏れ出たと思わ れるが、原子炉はすでに停止しているうえ、 冷やされている状況だ。
冷静な対応を」  と言い、  「冷却水が漏れている可能性は低い」  と繰り返していた。
 『週刊現代』によれば、中部電力浜岡原発 をめぐる訴訟で、二〇〇七年に中電側証人 として出廷した斑目(当時、東大教授)は、  「すべての電源が喪失するようなことを想 定していては、原発はつくれない」  と証言した過去をもつ。
 そして、今度の震災直後、菅首相に呼ばれ、  「爆発するような危険性はないのか」  と問われて、  「大丈夫です。
水素はありますが、爆発す るようなことはありません」と答え、菅に、 「水素があるんなら、爆発するだろ!」  と怒鳴られたとか。
 これではマダラメではなくデタラメだと言 われているらしいが、こんな奴らが?専門 家?なのである。
 関村や斑目が関わる東大大学院工学系研 究科には東電から「寄付講座」の名目でカネ が出ている。
一〇年にわたって合計五億円だ というが、こんなものではないだろう。
 自らも大学教授を経験した奥村宏は、  「日本には御用学者と無用学者しかいない」  と喝破した。
 私は御用学者がすなわち、いざという時 にはまったく役に立たない無用学者なのだ と思うが、前記の『週刊現代』の同じ号で、 ジャーナリストの青木理が、残念ながら日本 では少数派の有用学者を紹介している。
 大阪府熊取町にある研究用の原子炉に集 い、「熊取六人衆」と呼ばれた面々である。
 彼らは原子力を研究しつつも原発の危険性 を訴えたために「原子力ムラ」の御用学者た ちから徹底的に排除されたという。
 その六人は京大や阪大を卒業したエリート 研究者だったが、教授どころか准教授にも なれず、助教(助手)や講師のまま定年を 迎えた。
現在も残っているのは今中哲二と小 出裕章の二人だけ。
 公害を告発した宇井純が東大では助手にと どまり、水俣病を追求しつづけた原田正純 が熊本大学では教授になれなかったのと同じ である。
 「原子力を選ぶか否かは、一人一人がどう 生きるか、どんな地球をつくるのかの問題で、 それぞれに考えていただくしかない。
ただ、 私は科学者の立場から自分の責任を果たした い」  「原子力の専門家という立場から原子力に 警告を発し続ける、そんな人間が必要なんで す」  今中と小出は訥々とこう語ったという。
危険な状態を「安全」と言いつづける?専門家? 御用学者=無用学者だけしか出演しないTV

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