ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年3号
特集
第3部 3PLが主導する同業種共配冷食メーカー ニチレイロジグループ荷主各社の系列物流会社を巻き込む

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2011  36 業務の委託方法に課題  ニチレイロジグループのノンアセット型3PL業 者、ロジスティクス・プランナー(以下、ロジプラ ン)は二〇〇七年三月に四国で味の素冷凍食品、 ニチレイフーズ、日本水産の共同物流をスタートさ せた。
〇九年六月からは、中四国全体に対象エリ アを拡大している。
 荷主の三社は、いずれも冷凍食品市場でしのぎ を削るライバル同士。
しかも各社とも物流子会社や 系列物流会社をグループに抱えている。
共同物流 の実施には利害の調整が課題だった。
ロジプランが 中立的な立場から取り組みに介在し、共同物流全 体を企画・運営するコーディネーターの役割を担っ ている。
 配送ではロジプランが元請けとなって配車をコン トロールし、荷主三社の系列物流会社をうまく組 み合わせて仕事を割り振っている。
使用する車両 台数を公平に分けているわけではない。
各社の系 列物流会社を対象に入札を行い、その結果と荷主 三社の要望、系列物流会社各社の強みなどを考慮 して棲み分けを決めている。
 ロジプランの盛合洋行ソリューション開発部部長 は「荷主と系列各社の?ここだけは譲れない〞と いう一線を守った上で、合理的な裁量を上乗せし てバランスを取っている」と説明する。
 三社はもともと共同化に積極的だった。
中四国 に先立ち、二〇〇〇年前後に北海道、南九州、岐 阜・三重で共同配送を始めている。
配送は三社の 系列物流会社や既存の物流業者を対象にエリアご とに入札を実施。
輸送業者を一社に決め、荷主三 社がそれぞれ直接契約を結んでいる。
 しかし、このやり方には多くの課題があった。
配 送の委託を受けた一社以外は、そのエリアでは全く 仕事を失ってしまうことになる。
そのエリアにスタ ッフや車両を抱える既存の系列物流会社にとって は深刻な問題だった。
 また共配の導入によって、いったん配送費が下 がっても、そこで効率化がストップしてしまう。
三 社の在庫拠点を車両が集荷に回る単純な共配から 踏み出せない。
 配送スキームや運用ルールを検討・修正する場合 には、そのたびに荷主三社が集まらなければなら ない。
やり取りが煩雑で、荷主同士の利害がぶつ かる場合は調整が難しかった。
結局、物流業者に 丸投げに近いかたちになり、積載率やコスト構造 がブラックボックス化していた。
 荷主三社は先行して共同化した三地域に続き、中 四国の共同化でも合意していたが、その実施に当た っては、これまでのスキームを見直す必要があると 判断した。
そこでノンアセット型を打ち出し、グル ープにとらわれず幅広いアセットを活用して3PL 事業を行っていたロジプランに相談を持ちかけた。
 荷主三社とロジプランは〇六年、中四国地域の共 同化を検討するプロジェクトチームを組織した。
そ して毎月一回の定例会議と必要に応じて開催する 臨時会議のほかに、参加メンバーを限定した各種 の会議体を設定した。
 定例会議と臨時会議は全員参加。
情報共有と合 意形成の場として機能させる。
荷主三社に大きな 意見の相違がないテーマについては、定例会議と 臨時会議が検討の場にもなる。
 荷主によって要望や意見が異なる可能性のある テーマについては、ロジプランが各社と個別に事前 ニチレイロジグループ 荷主各社の系列物流会社を巻き込む  味の素冷凍食品、ニチレイフーズ、日本水産の3社が 中四国エリアで共同物流を実施している。
ニチレイロジグ ループのノンアセット型3PL会社、ロジスティクス・プラ ンナーが共同化プロジェクト全体のコーディネーターとして 荷主の利害を調整。
配送では各社の系列物流会社をう まく活用している。
           (梶原幸絵) 冷食メーカー 第3部 3PLが主導する同業種共配 37  MARCH 2011 協議を行う。
そこで各荷主のニーズを汲み上げ、合 意できる範囲を探ったうえで、正式に会議の俎上 に乗せる。
また、ロジプラン抜きで荷主三社だけが 参加する会議体も設置した。
多様な会議体を設定 することで合意形成を促した。
 具体的には第一ステップとして、四国の共同化 から検討を開始した。
味の素冷凍食品とニチレイフ ーズは共に四国向けの在庫拠点を大阪に置いてい た。
一方、日本水産は岡山に中四国全体の在庫拠 点を置いていた。
配送は各社ともそれぞれ系列物 流会社に委託し、四国の中継拠点を経由して納品 していた(図1)。
 そこから荷主三社の在庫と配送コストを最適化す るための様々なシミュレーションを行い、最終的に 図2のスキームを採用した。
中国向けの三社の在庫 を大阪一カ所に集約。
大口納品先にはそこから直 送。
小口配送の中継拠点 も一カ所に統合するとい うものだ。
三社の在庫を 集約すれば集荷に回る時 間が不要になり、発注か ら納品までのリードタイ ムを最大限活用して配 送コースを設計でき、直 送車両を増やすことがで きた。
 大阪の在庫拠点には ニチレイグループの冷凍 倉庫、四国の中継拠点 には味の素グループのさ ぬき市の拠点を利用する ことにした。
この選択に は各社に有利・不利が出ていることは否めない。
 それでもロジプランの梅澤一彦執行役員は「純 粋にトータルで効果の上がる仕組みを構築した。
三 社ともにプロジェクト全体で効果を上げるという明 確な意識を持っていたため、各論部分での反発は あっただろうが、最低限の納得はしていただけた と思う」という。
 この共同化によって三社が当該エリアの物流に使 用するエネルギー使用量は二八・四%削減すること ができた。
ゲインシェアリングで改善を継続  第二ステップとして〇九年六月、共同化の対象 地域を中四国全体に拡大した(図3)。
シミュレー ションの結果、中四国を?西中国と四国、?東中 国に分けることにした。
 ?西中国・四国向けは広島に荷主三社の共同保 管拠点を設置した。
在庫搬入の輸送費は増加する が、それ以上に配送費を削減できる。
西中国の納 品先には商品を直送。
四国島内へはこれまでと同 様、中継拠点による積み替えと直送を併用する。
 ?東中国は大阪から出荷する。
ただし三社の共 同保管はいったん解消することになった。
味の素 冷凍食品と日本水産の二社が、ニチレイフーズとは 別の共同倉庫に移ったため、二拠点で集荷して得 意先まで直送する。
 取り組みは現在も進んでいる。
ロジプランと三 社の契約は改善成果に対して報酬を得るゲインシェ アリング方式。
継続的な改善が期待できる。
実際、 四国地区での一〇年度のコストは〇七年度に比べ て一六%低減する見通しだ。
中国地区も〇九年度 に比べて五%の削減を見込んでいる。
特 集 図2 四国エリアでの共同化。
1日平均約50 軒に配送していた図1 3 社の共同化以前の物流形態 3 社共同保管拠点3 社積み替え拠点納品先 納品先 納品先 直送車両(中継兼用含む) 大口納品先に直送 横持ち車両 (直送兼用含む) 保管拠点積み替え拠点納品先 味の素冷凍食品 ニチレイフーズ 日本水産 大阪 大阪 岡山 さぬき 納品先 納品先 納品先 納品先 納品先 納品先 高松 高松 大口納品先に直送 大口納品先に直送 大口納品先に直送 納品先 納品先 納品先 納品先 図3 中四国エリア全体の共同化。
1日平均計165 軒に配送 2 社共同保管拠点 西中国(広島県、島根県浜田地区、下関除く山口県)・四国エリア さぬき 納品先 納品先 大口納品先に直送 納品先 大口納品先に直送 (味の素冷凍食品、日本水産) ニチレイフーズ保管拠点 集荷 大阪 大阪 3 社共同保管拠点3 社積み替え拠点 広島 納品先 納品先 納品先 納品先 さぬき島内配送車両 大阪

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