ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年2号
特集
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第21位ロジパートナーズ──現場運営に強い商社系3PL栗原 剛 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2011  28 ロジパートナーズ ──現場運営に強い商社系3PL  丸紅の100 %子会社。
丸紅の物流部門で手がけていた3 PL事業と丸紅物流の国内物流事業を統合し2004年12月に 設立された。
売上高の75 %はグループ外の一般荷主向け。
現場を協力会社任せにせず、自社運営で収支管理を徹底す ることで差別化を図っている。
丸紅グループ外の荷主向けが七五% ──同じ丸紅の一〇〇%子会社として丸紅物流があ りますが、どう棲み分けているのですか。
 「大まかに言うと、丸紅物流は主に輸出入貨物の フォワーディング、当社は国内の3PL事業を行っ ています。
親会社の丸紅は国内の流通分野にチャン スがあると見て、ダイエー株の取得を含め、国内の 流通分野への投資を進めてきました。
これに合わせ て国内物流についても本格的に打って出るために、 丸紅本体と丸紅物流に分散していた事業を統合し、 二〇〇四年に当社を設立しました」  「資本では丸紅に依存しても商売では依存しない。
基本的に外に向かっていくスタンスをとっており、 当社の売上高のおよそ七五%はグループ外の荷主向 け、外販によるものです。
現在はP&Gさんやスポー ツ用品のドームさん、菓子などドライ食品のメーカー さんや卸さんなどの3PL業務を行っています」 ──業績は設立以降、順調に伸びています。
一〇年 三月期には前期に比べて三割も売り上げが増えた。
 「一〇年三月期は新規案件を複数成約することが できました。
グループ内の大型案件もありましたが、 ほとんどはグループ外からの受注です。
既存荷主の 物量減少や値下げ要請が強まるなど、事業環境は非 常に厳しい。
当社もいつも泣かされています(苦笑)。
その一方で、こういう時期だからこそビジネスチャ ンスもある。
既存のお客さまからの受託範囲を拡大 したり、新規案件を提案する機会が増えています」  「現在は新規案件の相談を常に五〇件近く抱えて いる状態です。
案件の規模としては一〇億円規模か ら一〇〇〇万円、二〇〇〇万円規模のものまでまち まちですが、当社自身、営業の人数を増やしている こともあって、商談件数は格段に増えている。
拠点 網も広がってきたことで荷主との距離も近くなって います」 ── 営業アプローチは。
 「“テレアポ”(電話勧誘)もやっていますが、本 当に成約につながるのはお客様からの紹介や丸紅の 商流を通じた紹介ですね。
物流が経営マターになっ てきたことで、物流について判断を下す決定権者も、 より経営層に近くなってきています。
荷主企業の経 営層にアクセスするうえでは、総合商社の力も大い に利用させてもらっています」  「当社が強みとするのも商社系ならではの企画力 です。
ただし、いくら綺麗な絵を描いても、その通 りに現場を回せなければ意味がない。
荷主にしても 提案書や見積書に示した料金だけを見ているわけで はありません。
その裏付けとなるコストの蓋然性を 見ている」  「そのために我々は現場を協力会社任せにせず、 自社で社員を雇用して自分たち自身で運営していま す。
これは他の商社系物流会社にはない特色だと自 負しています。
当社は総合商社の持つ経営的な視点 と物流会社の持つ現場実務の視点の両方を押さえた うえで荷主に物流の最適化を提案できる。
このことは、 お客様にも一定の評価をいただいていると思ってい ます」 ── しかし商社のスタッフは物流専業者と比べて人 件費が高い。
現場まで自社で運営するとなれば、利 益を出すのは難しいのでは。
 「3PLの収益性は人件費の水準ではなく、どれ だけ工夫できるかにかかっています。
現場を自社で 運営するのも、そうしないと真の原価が追求できな いからです。
3PLの収益管理ではハマキョウレッ 栗原 剛 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第21位 29  FEBRUARY 2011 特 集 物流企業番付《平成 23 年版》 クスさんの“日々決算”が有名ですが、当社もまた 当社なりのやり方で収支管理を徹底しています」  「センター単位、案件単位でトータルに収支を管理 するだけでなく、一つの案件を保管、倉庫作業、配 送といったセグメントに分解して、個別に収支を見 ていく。
そのセグメントが赤字であれば、どうすれ ば黒字化できるのか。
どうすれば固定費を変動費に できるのか。
変動費はどうすれば極小化できるのか。
いつまでにそうするのか。
とにかく考える。
考えさ せる。
現場担当者にまで数字に対する意識を浸透さ せています」  「そうした地道な改善を繰り返し、そのサイクルを 早めていく。
手間も時間もかかる作業ですが、それ によって数字は良くなっていく。
そうしなければ赤 字を漫然と垂れ流し続けることになってしまう」 ── 日本の3PL市場も徐々に淘汰が進んできまし た。
勝ち負けがはっきりしてきた。
 「当社は歴史の浅い会社ですから、大手の3PL には実績も経験も敵いません。
しかし、それを言い 訳にしたら永久に実績などつかない。
そこを突破で きたのは丸紅という商社の総合力もあったと思いま すが、やはり個人の力も大きかった。
一つひとつの 案件に担当者が能力と情熱を注いで工夫を重ねるこ とで、時には大手以上の競争力を発揮することもあ る。
3PLはそうした商売だと思います」 一三年三月期に売上高一五〇億円目指す ── 中長期の目標は。
 「一一年三月期は一〇年三月期が急激に伸びたこ ともあって、足場を固めることに力を注いでいます。
売り上げは横ばい程度になりそうです。
しかし、一 三年三月期には売上高を一五〇億円に引き上げたい と考えています。
伸びている会社には人材も仕事も 集まってくる。
常に新しいことにチャレンジしてい かなければ人材を育てることもできません。
仕事は きついけれど面白い。
そこに魅力を感じられる人が 3PL事業には必要です」 ── しかし、一〇〇億円を実質二年で一五〇億円 にするというのは、ずいぶん高いハードルです。
 「そのために買収も視野に入れています。
事業規 模が一定のレベルに達してきたので今後は事業投資 を積極的に活用します。
当社は丸紅物流から一部の 資産の移管を受けていますが、これまではほぼノン アセット型でした。
しかし今後は車両や倉庫を持つ ことも検討します」 ── 事業エリアは今のところ日本国内に限られてい ます。
 「これまで培った3PLのノウハウを、今後は中国 やアセアンなどの海外にも展開したいと考えています。
現在、中国では丸紅が北京と上海の物流事業会社二 社を軸に展開しており、このうち上海法人は〇九年 に上海市政府系の上海交運集団傘下の物流会社へ三 四%の資本参加をしたものです。
約二五〇〇台のト ラックと七万平方メートルの倉庫など、上海を中心 とした物流インフラを持っています。
そこに当社の ノウハウを移植して改善を進めながら、現地の3P L事業を伸ばしていく」  「現状、海外の3PLは丸紅から直接投資し、丸 紅ブランドで展開しています。
そこをロジパートナー ズにしていくのかどうかについてはこれから議論し なければなりませんが、丸紅グループとして中国、 アセアンの市場で事業を拡大することにも当社は貢 献していきたいし、それができる能力を備えている と考えています」 100億円の次のステップはM&A  設立からわずか6年で売り上げを60億円程度から100 億円規模にまで拡大し、業績を順調に伸ばしてきた。
商 社系物流会社でありながら、自社雇用したスタッフで現 場を直接運営しているのが特徴だ。
 現在は関東、近畿のほか、中部、四国に計19センター を展開している。
人員も当初は丸紅からの出向者と丸紅 物流からの人員、パート社員など約40人で出発したが、 現在の従業員数は700人以上に達している。
中途採用を 積極的に行い、自社流に育成している。
 13年3月期に売上高150億円という目標を掲げる。
新 規案件の獲得や既存顧客の深耕だけでは達成は難しい。
M&Aが不可欠で今後の動向が注目される。
本誌解説 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3(月期) 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 350 300 250 200 150 100 50 0 単位:百万円 過去5年間の単体業績の推移 当期利益(右軸) 売上高(左軸)

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