ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2011年2号
特集
注目企業 トップが語る強さの秘訣 第20位寺田倉庫──事業分野別子会社をグループ展開廣瀬秀徳 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2011  26 寺田倉庫 ──事業分野別子会社をグループ展開  不況期こそチャンスと積極的なM&Aに打って出ている。
倉庫を含む不動産事業を本体で手がけるほか、3PL、文書・デー タ保管のBPO、トランクルームなど事業分野別にグループ会 社を展開している。
各事業分野をそれぞれ100億円規模に育 て上げ、グループとしての成長を目指している。
文書保管のその先を狙う ──リーマンショック後の業績をどう評価していま すか。
 「〇九年度予算で、私は社内の慎重論を押し切っ て前年度比二〇%増という売り上げ目標を掲げまし た。
しかし、結果は横ばいでした。
予想以上にリー マンショックの影響は大きかった。
不動産投資も積 極的に行うつもりだったのですが、相場は下がった もののマーケット自体がクローズしてしまい、良い 出物が見つからなかった。
思い描いたような拡大・ 成長を実現することは適いませんでした」  「それでも世間に倣って縮小均衡路線を採ってい たら横ばいさえ維持できなかったと思います。
攻撃 は最大の防御。
これが私の持論です。
高いところに 目線を置き、それを実現するための努力をすること で全体を浮上させる」 ──この間に不動産投資は不調でしたが、企業買収 は実施しています。
 「菱洋インテリジェンスを〇九年四月に子会社化し ました。
文書のデジタル化に強みを持っており、文 書保管などを行う当社のBPO( Business Process Outsourcing)事業と補完できると判断しました。
この買収により、当社グループでは顧客の重要書類 の整理や保管、配送、廃棄、電子化、消去などをワ ンストップで提供できるようになりました」 ──一般の倉庫会社の事業領域をはみ出しています。
 「コンプライアンス規制の強化などで、文書保管の ニーズは今のところ拡大しています。
しかし全ての 文書はいずれデジタルに置き換わります。
実際、韓 国やアメリカでは文書を残さない方向に急速に進ん でいる。
日本は少し特徴的で、デジタル化が進む一 方で文書も依然として残っている。
しかし、それも 時間の問題で将来的には日本でも文書は無くなって いくだろうと考えています」  「文書の単純保管だけでは生き残れなくなる時が 必ず来る。
そうなった時が当社の飛躍のチャンスです。
我々にはデータセンターを運営するビットアイルとい うジャスダック上場のグループ会社があり、デジタル 化した書類を保存しておく場所もある。
つまり文書 が生まれてから廃棄されるまでのプロセスを一貫し て請け負うことができる」  「その一方で、足下の文書保管に対するニーズに も応えるため一定の設備投資をする必要もある。
世 の中が本格的にデジタル化に振れるタイミングを見極 めながら慎重に経営の舵取りをしていかなくてはな りません」 ──トランクルーム事業はいかがですか。
 「正直苦戦しています。
リーマンショック以降、富 裕層も含めて消費者の財布の紐がかなり締まってき ている。
新規参入も増えて、価格競争が起きています。
これまでトランクルームは主に倉庫会社が供給して きたのですが、最近では不動産業が参入し価格攻勢 をかけている。
当社のトランクルームは空調やセキュ リティがしっかりしているだけに、料金は安くはない。
現在のような経済環境は逆風です」 ──どうテコ入れしますか。
 「低価格化への対応として、〇八年十一月からコ ンテナ型のトランクルームを、寺田倉庫とは別ブラン ドで、関東を中心に二六カ所で展開しています。
最 近は中古の海上コンテナに間仕切りを入れて空き地 に置いただけといったようなトランクルームが増え ていますが、建築基準法違反で撤去指令が出された り、セキュリティや保管品質の面で問題が多い。
当 廣瀬秀徳 社長 注目企業 トップが語る強さの秘訣 第20位 27  FEBRUARY 2011 特 集 物流企業番付《平成 23 年版》 社は専用のコンテナを開発しました。
中国の青島で 生産して輸入しています」  「扉や間仕切り、内装部分などをモジュール化し て、それを日本に運んできて組み立てる。
工期が非 常に短く、建設コストも安く済むので、トランクルー ムの料金を従来に比べて三割ほど下げられる。
また 一〇年四月には岡山で同様のコンテナ型トランクルー ムを展開するアイトランク山陽という企業を買収し ました。
まだまだ先行投資の段階ですが、全国的に 展開していきたい分野です」 ──物流事業は子会社のテラダロジコムが担当して いますが、一〇年三月期の業績は落ち込んでいます。
 「減収は神奈川の長谷地区の拠点付近に新駅がで きることになって営業倉庫として使えなくなったこ とが原因で、その特別要因を除けば本業自体は順調 です。
特にワインの取り扱いが増えている。
温度管 理の難しいワインを保管し、注文があれば一本単位 でホテルやレストランにお届けする。
このサービスが うけて、二〇〇〇坪ほどの埠頭倉庫は既に満庫状態 です。
今後は東京団地倉庫の八〇〇坪をワイン倉庫 に転用し、さらに拡大していく予定です」 青果物の通関業にも進出 ──通関業にも乗り出していると聞きました。
 「〇七年十二月に子会社のハーバー・マネジメント が日本海陸運輸から営業権を譲受し、輸出入通関業 務を開始しました。
羽田や成田に事務所を開き、青 果物などの通関を行っています。
これからは何といっ てもアジアの時代です。
しかし当社のような中堅企 業が現地に出て行って拠点を構え、荷役を行うとい うのは現実的ではない。
しかし、やり方はあります」  「いま中国や台湾では日本のリンゴや桃などが非常 に人気があり、高級品として扱われています。
ベト ナムやインドもすぐにそうなる。
しかも日本はこれ からTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に参 加することになりそうです。
日本からアジアへの農 産物の輸出が一気に拡大するはずです。
ハーバー・ マネジメントでは、そういったニーズを取り込んで いきたい」 ──寺田倉庫が何を目指しているのか、事業分野が 広過ぎてなかなか理解が難しい。
 「確かに当社は多様な事業を展開していますが、 決して本業から逸脱しているとは考えていません。
当社はサービス業であり、アウトソーシングを受ける 会社なんだと私は位置付けています。
BPOはもち ろん、物流やトランクルーム、倉庫だって本来はア ウトソーシング事業です」 ──当面の目標は。
 「今後も拡大路線は貫きます。
不動産事業では良 い案件があれば積極的に投資をしていく。
また物流、 BPO、トランクルームといった当社グループの各 事業を、すべて一〇〇億円規模にまで成長させたい と考えています」  「物流事業ではテラダロジコムとハーバー・マネジ メントを合わせると現状で五〇億円ほどですが、将 来的には合併も視野に入れてシナジーを出していき たい。
BPOも当社と菱洋インテリジェンスを足せ ば約五〇億。
さらに機能を強化しあえる企業が有れ ば、積極的にM&Aや提携を進めていく」  「トランクルームはアイトランク山陽と共に、モ ジュール型の拠点を全国的に拡大させながらボリュー ムを増やしていくつもりです。
数字的にはまだまだ 遠い目標ですが、決して実現不可能ではないと考え ています」 ニッチ市場を狙ってシェアを確保  寺田倉庫本体は倉庫を含む不動産、BPO、トランクルー ムの3事業を柱とする。
物流事業はグループのテラダロジ コムとハーバー・マネジメントが担っている。
2010年3月 期のグループ売上高(単純合計)は263億円で不況下でも 安定した成長を続けている。
高付加価値のニッチ市場を狙っ てシェアをつかむ戦略が奏功している。
 独立資本のオーナー企業だが創業家の現会長が社長にス カウトした西友物流部門出身の廣瀬秀徳氏が現在は経営 に当たっている。
2000年に子会社として設立したデータ センターのビットアイルは06年7月にヘラクレス(現ジャス ダック)に上場している。
同社の寺田航平社長は現会長 の実子。
本誌解説 06/3 07/3 08/3 09/3 10/3(月期) 12000 10000 8000 6000 4000 2000 0 1000 800 600 400 200 0 単位:百万円 寺田倉庫 単体業績推移 当期利益(右軸) 売上高(左軸)

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