ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年11号
物流指標を読む
第23回 貨物輸送の回復基調にブレーキ「2010年度の経済と貨物輸送の見通し」日通総合研究所

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む NOVEMBER 2010  76 貨物輸送の回復基調にブレーキ 第23 回 ●国内貨物輸送量は11年連続のマイナス必至 ●国際貨物輸送量の増加率も下期は鈍下 さとう のぶひろ 1964年 ●10─12月の「荷動き指数」は急落の見通し 生まれ。
早稲田大学大学院修 了。
89年に日通総合研究所 入社。
現在、経済研究部担当 部長。
「経済と貨物輸送量の見 通し」、「日通総研短観」など を担当。
貨物輸送の将来展望 に関する著書、講演多数。
先行き不透明の日本経済  日通総合研究所は、九月下旬に「二〇一〇年度 の経済と貨物輸送の見通し」を発表した。
分析・ 予測結果を総括すると、足元においては、経済、 貨物輸送とも回復基調にややブレーキがかかりつ つある。
これまで景気を下支えしてきた政策効果 の一巡に加え、夏場以降に急激に進んだ円高が輸 出企業を中心に収益を圧迫していることなどがそ の要因である。
景気の底割れはないと予測するが、 政治の混迷も加わって、先行き不透明感は強まり そうだ。
国内貨物輸送量については、〇八、〇九 年度と大きく落ち込んだあと、一〇年度も引き続 き減少が予測される。
一方、国際貨物輸送量につ いては、外貿コンテナ、国際航空ともプラスへの 転換が期待できる。
ただし、それは〇八、〇九年 度における減少に対する反動による部分が大きく、 反動増が一巡する下期には増勢は鈍化しよう。
?日本経済  一〇年四〜六月期の国内総生産(GDP)は、 物価変動の影響を除いた実質で前期比〇・四%増、 年率換算では一・五%増となった。
年率換算の実質 成長率は3四半期連続のプラスを維持したものの、 一〜三月期の年率五・〇%増より大幅に鈍化した。
日本経済はこれまでの政策効果が一巡し、拡大テ ンポが弱まっており、さらに秋以降は、世界経済 の回復ペースの鈍化に加え、エコカー補助金の打 ち切りなどもあって、プラス成長は維持するもの の年度後半の拡大テンポが減速に向かう可能性が 大きい。
輸出や生産、企業収益の回復が内需へ波 及していく動きは緩やかなものにとどまっており、 全体でみると輸出と耐久財消費の牽引力が低下す る分だけ成長ペースが弱まることになろう。
世界 経済の拡大基調が崩れない限り、緩やかながらも 回復基調が持続(いわゆる「二番底」は回避)し、 一〇年度の成長率は二・一%増と見込まれる。
 日本経済の先行きにとって当面の大きな懸念材 料は、円高進行と政治の混迷が経済に及ぼす影響 である。
前者については、政府・日銀が円高の阻 止のためにとるべき有効な対策は限られているが、 不透明感が高まっている経済の先行きに対して、し っかりとした政策対応が強く望まれる。
なお、マ イナスの需給ギャップ(デフレギャップ)は徐々に 縮小に向かうものの、円高基調が続くこともあっ て、当面、消費者物価の下落は避けられそうにな い。
?国内貨物輸送  一〇年度の国内貨物総輸送量は、内需に力強 い回復が見込めないなかで、二・四%減と十一年 連続のマイナスが必至である。
総輸送量の水準は 四七・一億トンで、ピークであった九一年度(六 九・二億トン)と比較すると、三二%低い水準に とどまり、この一九年間で約二二億トンが減少す る計算となる。
ただし、総輸送量から若干特殊な 貨物である建設関連貨物を除いて試算してみると、 一・四%増と〇七年度以来三年ぶりにプラスに転 じる見通しである。
 品類別にみると、消費関連貨物は、個人消費の 増勢がいくぶん強まることに加え、夏場の猛暑効 果や前年度における大幅減の反動もあって、一・ 五%増と増加に転じよう。
生産関連貨物は、設備 投資や鉱工業生産がプラスに反転するため、化学 「2010年度の経済と貨物輸送の見通し」日通総合研究所 77  NOVEMBER 2010 増勢が徐々に弱まることは避けられないが、IT 関連貨物などが引き続き好調に推移することから、 下期も底堅い荷動きが期待でき、年度全体では一 六・六%の増加になるものと見込まれる。
輸入は、 好調であった野菜の勢いが衰えたこともあり生鮮貨 物には期待はできないが、IT関連貨物などの機 械機器や食料品など一部の消費財が増勢を弱めな がらも堅調な荷動きとなることから、十二・八% の増加となろう。
?企業物流短期動向調査(速報値)  一〇年七〜九月実績(見込み)の国内向け出荷 量『荷動き指数』はプラス一五と、前期(四〜六 月)実績より僅か一ポイントの上昇にとどまった。
また、一〇〜十二月見通しでは、十四ポイント低 下してプラス一まで下降する見通しであり、荷動 きの回復基調にはブレーキがかかりつつある。
 一〇年七〜九月実績(見込み)の業種別『荷動 き指数』をみると、一五業種中九業種がプラスを 示し、荷動き回復の動きが広範囲の業種に広がっ たが、一〇〜十二月見通しでは、マイナスの業種 が過半の八業種となった。
エコカー補助金の終了に 伴う自動車需要の反動減が見込まれるなかで、大 幅な減産が避けられないことから、輸送用機械は 前期(七〜九月)実績より五〇ポイント低下して マイナス六とマイナスに沈むほか、持ち直しの動き をみせつつあった一般機械もマイナス二と再びマイ ナス水準まで落ち込む見通しである。
 一〇年七〜九月実績(見込み)の輸送機関別 『利用動向指数』をみると、すべての輸送機関で 前期(四〜六月)実績より上昇し、一般トラック、 特別積合せトラック、宅配便ではプラス水準となっ た。
しかし、一〇〜十二月見通しでは、鉄道コン テナを除いて『利用動向指数』が低下し、プラス の輸送機関は皆無となる見込みであり、総じて利 用は減退方向に向かう。
 一〇年七〜九月実績(見込み)の輸出入貨物量 『荷動き指数』をみると、外貿コンテナ、国際航空 とも前期(四〜六月)実績より低下した。
一〇〜 十二月見通しではもう一段の低下が見込まれ、外 貿コンテナでは輸出・輸入ともプラス水準を維持す るものの、国際航空の輸出・輸入ではマイナスへ 反転し、荷動きは減退する見通しである。
製品には比較的堅調な動きが見込まれるほか、前 年度まで不振であった機械類や鉄鋼なども盛り返 すものとみられる。
その一方で、石油製品などは 依然としてマイナスが続くことから、トータルでは 一・三%増にとどまろう。
建設関連貨物は、公共 投資が一割以上落ち込むことに加え、住宅建設も 水面上に浮上するには至らないため、砂利・砂・ 石材や建設廃土などを中心に八・三%減と大幅な 減少になり、輸送量を大きく下押ししよう。
リーマン以降の反動増が一巡 ?国際貨物輸送  回復傾向が鮮明であった外貿コンテナ貨物(主 要九港)の輸出は、一〇年度に入っても一般産業 機械、電気機械、自動車部品などを中心に高い伸 びを維持していたが、夏場以降増勢が鈍化してき ている。
リーマンショック後の落ち込みに対する反 動増は上期で一巡することから、下期にはさらに 伸びがマイルドとなり、年度全体では十一・三% の増加になるものと予想される。
輸入も、上期は 二桁増を堅持する見込みであるが、下期は増加率 が縮小することとなろう。
品目については、設備 投資のプラス成長を受け、機械機器が着実に増加 軌道を辿る一方で、消費財には衣料品などの伸び 悩みが懸念される。
こうしたことから、年度全体 では八・九%の増加になるものとみられる。
 国際航空の輸出は、一〇年四〜六月期には四 〇%を超える伸びを示したが、七月は自動車部品 が失速した影響を受け、三〇%を切る伸び率にと どまった模様だ。
さらに、リーマンショック後の落 ち込みに対する反動増は上期で収束することから、 国内貨物輸送量の見通し単位:百万トン、(  )内は対前年同期比増減率(%) 総輸送量 建設関連貨物 を除く輸送量 鉄道 JR その他 自動車 営業用 自家用 内航海運 国内航空 年度・期 機関 上期下期 2,381.2 2,449.8 2,346.9 2,367.5 5,144.2 4,831.0 4,714.4 (△9.1) (△2.9) (△1.4) (△3.4) (△4.6) (△6.1) (△2.4) 1,448.7 1,494.0 1,480.1 1,503.0 3,050.6 2,942.7 2,983.1 (△6.2) (△0.9) (2.2) (0.6) (△4.1) (△3.5) (1.4) 20.2 23.1 20.9 23.0 46.2 43.3 43.9 (△13.0) (0.2) (3.6) (△0.2) (△9.1) (△6.4) (1.5) 14.4 16.5 14.9 16.7 32.9 30.9 31.6 (△12.7) (0.6) (3.9) (1.2) (△8.6) (△6.1) (2.4) 5.8 6.6 6.0 6.4 13.4 12.4 12.3 (△13.6) (△0.9) (2.8) (△3.8) (△10.2) (△7.3) (△0.7) 2,202.1 2,252.5 2,155.1 2,176.1 4,718.3 4,454.6 4,331.2 (△8.2) (△2.9) (△2.1) (△3.4) (△4.3) (△5.6) (△2.8) 1,317.1 1,369.6 1,330.7 1,378.5 2,808.7 2,686.8 2,709.2 (△7.9) (△0.7) (1.0) (0.6) (△4.1) (△4.3) (0.8) 885.0 882.9 824.4 797.6 1,909.7 1,767.9 1,622.0 (△8.7) (△6.2) (△6.8) (△9.7) (△4.7) (△7.4) (△8.3) 158.5 173.7 170.4 167.9 378.7 332.2 338.4 (△20.0) (△3.8) (7.6) (△3.3) (△7.6) (△12.3) (1.9) 0.464 0.490 0.473 0.489 0.996 0.954 0.962 (△8.1) (△0.1) (1.9) (△0.3) (4.7) (△4.2) (0.8) 2009 年度 上期下期 2010 年度2008 年度 2009 年度 2010 年度 注)1. 原系列。
2. 2009 年度まで実績値。
3. 実績値は国土交通省の各種統計・資料による。
4. 端数の関係で合計が合わない場合がある。

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