ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年11号
特集
環境物流で差をつけよう 中古品販売業が拡大する静脈流通

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2005 28 いずれは融合する新品・中古販売業 中古品販売業が、小売業界における新しい業態 として成長している。
広範囲にわたる中古品流通 の勃興が、新品を販売する?動脈流通〞とは別に ?静脈流通〞の市場を形成しつつある。
この静脈 流通が資源リサイクルと結びついて、いずれは循 環型システムへと発展していくことになる。
もはや静脈流通は、新品を販売する一次マーケ ットの下層に位置する補完的な存在ではない。
中 古車販売や中古本販売に見られるように、二次マ ーケットを牽引する中核企業が成長してきた結果、 一次マーケットに対して大きな影響力を持ちつつ ある。
中古品販売に乗り出す企業が急増している最大 の理由は、新品販売と違って利益率が高く、ビジ ネスとしての旨みが大きいためだ。
また、たとえ ば和服のような高額商品では、安い中古品を扱う ことが顧客の裾野を広げることに貢献する。
二次 マーケットの隆盛が新たな和服愛好者の開拓につ ながっているのである。
静脈流通が近年になって拡大した背景にはさま ざまな要因が考えられる。
最もわかりやすいのは、 一般家庭の所得が伸び悩み、限られた収入の中で やりくりする必要性が増していることだろう。
中古の子供服店などに足を運ぶと、それが社会 的に意義のある業態であることがわかる。
乳幼児 を抱える若年夫婦やシングルマザーにとって、こ うした店の利用価値は大きい。
公園デビューは新 品で、普段は中古品でと使い分ける人も多いと聞 く。
とにかく安い価格で必要なものを入手できる のが二次マーケットの魅力だ。
所有から利用へと いう消費態度の変化も影響しているはずだ。
他方、中古品の供給(二次マーケットにおける 商品の仕入れ)についても一昔前とは事情が異な ってきている。
現代はどこでもモノ余りで、タン ス在庫ばかりが膨らんでいる家庭が少なくない。
こ こに、資源を大事にするとか、新たな生産に伴う 環境破壊を避けたいといった消費者の環境意識の 高まりも加わって、不用品を二次マーケットに出 す人たちが増えてきた。
インターネットによる中古品売買の拡大も見逃 せない。
こうした二次マーケットは今後、一次マ ーケットと一体となって市場を拡大していくと考 えられる。
それぞれのマーケットを別個に考えて きた従来の常識は、早晩、過去のものへと変わっ ていくことだろう。
現実には、書籍流通のように、再販制度によっ て新刊書店と中古書店との間に溝ができてしまっ ている例もまだ少なくない。
それでも最近では、新刊書店が中古書店を同時に経営する例も出てきた。
二つのマーケットが融合するのはさほど遠い話で はあるまい。
拡がり続ける取扱商品 中古品販売の対象となる商品領域も拡がってい る。
書籍、家電製品、ブランド品、衣料品、雑貨、 ゴルフ用品、家具といった身近な商品に加えて、自 動車、オートバイ、カー用品などの取り扱いが増 えている。
中小飲食店を対象とする業務用の厨房 機器や、オフィス機器などを対象とする二次マー ケットも拡がってきた。
専門事業者の成長によって、静脈流通分野の上 場企業はすでに一〇社を超えた。
書籍などを扱う 中古品販売業が拡大する静脈流通 第6部 プリモ・リサーチ・ジャパン鈴木孝之代表 ブックオフをはじめとする中古品販売事業者の成長が 続いている。
仕入れと販売の両方の価格決定権を握った ことで、新品事業者を凌ぐ高利益率の確保に成功した。
環 境意識の高まりにも後押しされて、こうした二次マーケッ トに対する期待が流通分野で高まりつつある。
日本の流通・進化のゆくえ《特別版》 29 NOVEMBER 2005 ブックオフ、テイツー、フォーユー、まんだらけ。
家電を中心に品揃えするハードオフ、ブランド品 のコメ兵(ひょう)、自動車のガリバーインターナ ショナル、輸出専門のアガスタ、中古オートバイ のアイケイコーポレーション、カー用品のアップ ガレージ、そして厨房機器のテンポスバスターズ。
ほかにも上場予備軍は多いが、衣料品とゴルフ用 品、雑貨の分野では上場企業がまだない。
新品を扱う企業による中古品販売も拡大してい る。
家電分野では、ビックカメラの支援を受けて 経営再建中のソフマップや、家電専門店トップの ヤマダ電機が中古品の取り扱いを増やしている。
メ ーカーとしては、NECが自社製パソコンの中古 品を「リフレッシュ・パソコン」と称して扱って おり、営業利益率段階では初年度から黒字を計上 したという。
衣料品では和服店の進出が目立つし、 ブランド品についてはドンキホーテが積極的だ。
カ ー用品はオートバックス、イエローハット、オー トウェーブが競い合うように中古品の取り扱いを スタートしている。
この分野で上場している企業の業績は多様だ。
成長が最も著しいのは中古車販売のガリバー。
業 績の安定度ではブックオフが群を抜き、ハードオ フがこれに続く。
テンポスバスターズは二〇〇五 年四月期こそ減益だったが、トレンドとしては高 成長が続く。
また、ブランド品のコメ兵は二〇〇 六年三月期には大幅減益になる見込みだ。
見渡してみると、この分野の企業の多くが、経 営的にはベンチャービジネスの性格が色濃く、業 績が不安定なことが分かる。
そこから抜け出しつ つあるのが、ガリバー、ブックオフ、ハードオフと いったプレイヤーだ。
一品単価が低い中古品販売 業の場合、同じ分野で新品を扱っている企業に比 べると売上規模は小さいが、それでもガリバーは すでに売上高一〇〇〇億円を超えている。
サラリーマン的常識を打ち破る創業者 成功している中古品販売業には共通点がある。
主だったところを、いくつか列挙してみよう。
■店舗はたいてい既存店の?居抜き〞(流用)で、 自ら物件を開発し、建築する例はあまりない。
■不振店や不振企業から業態転換した例が多い。
とりわけ紳士服店、家電専門店、玩具店などか らの業態転換が目立つ。
小売りとは無縁の企業 が商売替えする例もある。
■直営店だけでなく、フランチャイズ店との二本 立てで店舗網を拡大している例が多い。
この際 のフランチャイズシステムが、不振店や不振企 業の呼び込みにつながっている。
企業の活性化 に中古品販売業が大きく貢献している格好だ。
■サラリーマン養成所と化した大半の小売業とは 異なり、自立した商人を育成する場となってい る。
企業家精神に溢れた人間を求め、社員に起 業、独立を勧める中古品販売事業者も少なくな い。
この分野の創業者の多くが、中小規模の小 売店経営者として苦しい経験をくぐり抜けてき たことと密接に関係している。
中古品販売というビジネスは、現在において もまだ社会的に正当に評価されているとは言い がたい。
このため創業者は、事業の成長によっ て認めてもらおうとする強いバネを持っている。
このような人たちは、発想や方法論についても 既成観念に囚われないため、独創的でバイタリ ティあふれる経営を行うことが多い。
■創業者の現在に至るまでの経験が、注目すべき 特異なマネジメントとして結実している。
中古 品販売には、汚い、くさいなどの印象がついて まわる。
それだけに働く人々の精神的な強さ、組 織の連帯感などが欠かせず、企業理念の共有が 求められる。
このような事情から、一般企業に は希薄な「人間力」とか「現場力」を備えた企 業が多い。
こうして見ていくと、中古品販売業というのが、 単に中古品を新品のように磨き上げて販売するだ けの存在ではないことが分かる。
新品を扱う小売 NOVEMBER 2005 30 業の経営や人材、考え方などをも活性化する働き を持っている。
人間力とか現場力を重視する経営 についても、その効果が実際に業績として表れて いるだけに説得力がある。
五つの方向性で成長を模索 中古品販売業の成長の方向性としては、次の五 つが考えられる。
?総合化と複合化、?周辺事業 への進出、?インターネットの併用、?海外市場 への進出、?リユース率を高める努力――だ。
?総合化と複合化 中古本の販売からスタートしたブックオフは、現 在では取扱商品をCD、ビデオ、DVDから子供 衣料、婦人衣料、雑貨、スポーツ用品にまで品揃 えを拡大している。
家庭内にある商品でリユース できるものを、どんどん取り込んできた結果だ。
い ずれは商品カテゴリーごとに業態を確立するとい う狙いがある。
新品分野にイオンやイトーヨーカ堂といった総 合量販店があるように、中古品を扱う複合店があ っても不思議はない。
骨董品のように特殊なもの を除けば、中古品は価格が安く、買い得の商品が 多い。
それだけに中古品のショッピングには、新 品にはない魅力がある。
中古品の複合大型店があ れば面白いし、中古品だけを扱う商店街があった らもっと面白いのではないだろうか。
ブックオフは、同社の大型複合店舗を「ブック オフ劇場」と呼んでいる。
品揃えが幅広いため、中 古本だけの店と比べると集客力が大きい。
中古品 販売店にとって集客力は、売り上げの拡大のみな らず、買い取り客(二次マーケットに商品を放出 する客)の増加も期待できることを意味している。
こうなれば「買い取り増→売上増→買い取り増」 という、中古品販売業にとって最も望ましい循環を加速できる。
?周辺事業への進出 中古厨房機器を販売するテンポスバスターズは、 飲食店の内装工事も手掛けはじめた。
飲食店を中 心とする不動産情報も提供しているし、中古機器 のリースも研究中だ。
同社は厨房機器の買い取り に付随して入ってくる情報や、販売先である中小 飲食店の持つニーズを事業化に結びつけようと努 力している。
方向性としては、中小飲食店の問題 解決型ビジネスモデルである「フードビジネス・ プロデューサー」を目指している。
また、中古和服を販売する東京山喜も、低料金 での着付け教室を手掛け、レンタル業の研究もし ている。
このように現在の中古品販売業には、複 合化・総合化に新たなビジネスチャンスを見出し て、周辺事業に進出しているという共通の特徴が ある。
こうした取り組みは一方で来店客の利便性 を高め、支持率を増すことにつながる。
?インターネットの併用 新品を扱う小売店に比べて、中古品販売業にと ってインターネットは身近な存在だ。
ある意味で は、一般の小売店以上にインターネットの研究に 注力すべき業態とすら言える。
その理由は、取り 扱い商品の価格が流動的であることと、商品を探 している人に広く働きかける必要があるためだ。
中古車販売の分野では、インターネットが一般 化する以前から、オークネットという会社がサテ ライト(衛星放送)を使ったテレビオークション を手掛けていた。
ブックオフもネット販売を本格 化しようとしているが、現状ではアマゾンやヤフーなどが先行している。
?海外市場への進出 中古品販売業者の中には、海外に進出している プレイヤーが少なくない。
和服の東京山喜は、ア メリカのロサンゼルスとサンタモニカ地区に合計 三店を展開している。
また、テンポスバスターズ はフィリピンのマニラに進出しているし、家電の ハードオフも海外進出を済ませている。
日本国内で成功した中古品販売の手法は、限定 的ではあるが海外マーケットでも通用すると考え られている。
現にブックオフの海外店舗では、在 留日本人の需要をベースとしながらも、国内と同 じビジネスモデルを着々と実行に移している。
31 NOVEMBER 2005 ブックオフはすでに海外に計八店を出している。
内訳は、アメリカ六店(ニューヨーク地区二店、ロ サンゼルス地区三店、ハワイ一店)と、カナダ(バ ンクーバー)とフランス(パリ)に一店ずつ。
業 績は好調で、新店を除けば黒字だ。
とくにパリ店 については初年度から黒字化している。
好調な業績もさることながら、それ以上に注目 すべきは、現地で買い取った洋書の販売だ。
新店 を開店するときには、日本にある「商品センター」 からコンテナ便で商品を送り込む。
しかし、海外 においても、店舗で買い取った商品を販売するこ とで?自給自足〞をめざす姿勢は同じだ。
このビ ジネスモデルが機能し始めている。
現地での買い取りは、いずれの国でも拡大して いる。
アメリカとカナダでは英語、パリではフラ ンス語の書籍を買い取っており、これら買い取り 書籍の販売比率は、すでにニューヨーク店で九%、 ハワイで八%、パリ四%になった。
この構成比は 上昇傾向にある。
ニューヨーク店のように売り上 げの一割弱を現地調達でまかなうようになると、ブ ックオフのビジネスモデルは世界中で通用するの ではないかという見方につながってくる。
実際、欧米の機関投資家からは、海外でも通用 すると高く評価されている。
ポジティブな評価の 裏付けとして、複数のヨーロッパの機関投資家か ら同社に、「パリに出店したのに、どうしてロンド ンには出店しないのか」といった問い合わせが寄 せられるという。
ブックオフにしてみれば、単に 良質の物件がないというだけの理由であり、条件 さえ整えばロンドンにも出店する方針だ。
ヨーロッパの機関投資家がブックオフに注目し ているのは、株式を上場している中古本販売チェ ーンが他に存在しないためだ。
世界でオンリーワ ンの存在として注目されているのである。
ブックオフとしては、当面は北米大陸を中心に 主要都市に店舗を展開していく計画だ。
海外店舗の拡大と、現地で仕入れる洋書の取扱拡大に向け て、すでに将来の店長候補として現地社員を採用 し、育成する動きも始まっている。
フランス人社 員の中からパリ二号店の店長が誕生するのも時間 の問題だろう。
?リユース率を高める努力 リユース率については、商品の再生率と言った ほうが分かりやすいかもしれない。
これまでに挙 げた成長の方向性はすべて、売上拡大に向けられ たものだ。
しかし中古品販売業を拡大するための 本当のカギは、商品の買い取りにある。
買い取り 力を強固にすることが、売り上げにつながる。
家 庭で死蔵されている物品を中古品市場にどれだけ 引き出せるかが、成長を左右する。
あくまでも店舗での自給自足が原則 次は主にブックオフに焦点を当てながら、中古 品販売のビジネスモデルの特徴を探ってみる。
まずブックオフには、一般の小売業に必ずある 「商品部」が存在しない。
買い取りは各店舗が行う。
店舗は、原則として買い取りによって商品を確保 しなければならないため、これが十分でなければ 売り上げも減少する。
買い取りの値決めについて は社内に統一マニュアルがあり、これに沿って行 う。
つまり店舗の販売員が仕入担当も兼務してい るのである。
商品センターは現在、国内に一カ所あるだけ。
こ こでは「宅本便」と呼ぶ仕組みによって集まって くる本を備蓄し、海外を含む新店などに供給して いる。
これは、本を売りたいという人のところま で宅配業者が出向き、DVDなども含めて五〇点 以上であれば無料で集荷する仕組みだ。
商品セン ターから店舗に商材を供給することもあるが、一 般の小売業のように定期的なものではない。
新品と違ってメーカーや問屋に頼れない中古品 販売業にとって、顧客からの買い取りはビジネス の生命線だ。
どうしても店舗で必要な在庫量を確 保できない場合には、商品センターに供給を要請 できるが、原則はあくまでも自給自足だ。
もっと も、買い取り業務を効率化するため、各エリアの 基幹店舗を「買い取りセンター」と位置づけて、こ こからエリア内の店舗に商品供給を行うといった 工夫はしている。
ブックオフ型のビジネスモデルでは、商品セン ターから店舗には例外的にしかモノが動かないため、商品供給に関する物流費は少ない。
見方を変 えれば、現在のような自給自足を原則としている 限り、物流業務に対する関心も薄いはずだ。
また、一般の小売業は在庫管理に神経を使って いて、在庫水準の抑制を不変のテーマとして追い かけている。
ところがブックオフにとっては、在 庫の意味が一般の小売業とはまったく異なる。
極 端な言い方をすれば、できる限り多くの在庫を持 つことを常に指向している。
いくつかの理由がある。
まず、買い取り価格が 定価の一〇分の一のため、在庫を持っても金額的 な負担が小さい。
こうして買い取ったものを定価 の半額で販売するため、時差はあるものの在庫を 持つことが十分な利益につながる。
ブックオフに NOVEMBER 2005 32 とっては、在庫水準の高さが売上増に直結し、売 り上げを二桁伸ばしたければ、在庫を二割積み増 さなければならないのである。
同社の買い取り手段は三通りある。
?店頭での 買い取り、?客のところに出向く出張買い取り、 ?五〇冊以上であれば宅配業者が無料で集荷する 「宅本便」だ。
このうち客が自ら持ち込んでくる店 頭買い取りの比率が、全体の約九〇%を占める。
買い取りのパイプを太くするためには、店舗の 認知度を高めていく必要がある。
その点、全国に 計八一六店(九月二六日現在)と多くの店舗を展 開していることが、そのまま広告塔として同社に 有利に働いている。
ここに本部によるTVコマー シャルや、ラジオによる宣伝も加わって、すでに ブックオフの知名度はかなり高まっている。
こうしたビジネスモデルにおいては、本部の役 割が非常に限定される。
誰もが理解できる簡潔な マニュアルやルールさえ整えば、店舗に与えられる自由度は高い。
同社の値決めルールは極めてシ ンプルだ。
定価の一〇%で買い取った商品に、定 価の五〇%の売価をつけて店頭に並べる。
三カ月 たっても売れないか、同じ本の在庫数が五冊を超 えたら、六冊目からは一気に一〇〇円に値下げす る。
一〇〇円が最終価格で、ここまで値下げすれ ばほとんど売り切ることができるという。
買値と売値を自ら決定できる強み 新品を販売する一般小売業と比べると、中古品 販売業の売上規模は小さい。
しかし、その割に、本 業の利益をあらわす営業利益や、金融収支などを 加えた経常利益は大きい。
中古品販売業が、新品 を扱う小売業よりも高い利益率を確保しているた めだ。
利益率の大元になる商品粗利益率が高いこ とが、中古品販売業の大きな特徴といえる。
主要なプレーヤーの業績を見てみると、売上総 利益率(粗利率)が最も高いのはブックオフで、単 体では七〇%台、連結では六六%台となっている。
これに次いで高いのがハードオフの六九%台。
続 く第二グループとしては、まんだらけの五一%台、 アップルガレージの五〇%台、そしてアイケイコ ーポレーションの四九%台がある。
第三グループにはテンポスバスターズの三四% 台が位置し、第四グループとしてはガリバーの二 五%台と、コメ兵の二四%台が並んでいる。
売上 規模がダントツで大きい中古車販売のガリバーは、 ブランド品のコメ兵と並んで粗利率は低い。
本業の利益率を示す営業利益率を見ると、最も 高水準なのはハードオフでずっと二〇%台を続け てきたが、二〇〇五年三月期には二〇%を下回っ た。
次に高いのはブックオフ単体の八%弱で、こ こにコメ兵の七%台と、ガリバーの六%台が続い ている。
新品を販売する専門店の営業利益率は優 秀なところでは五%以上あるため、この辺が合格 ラインと言えるだろう。
業績の推移に目を向けると、突出した営業利益 率を持つハードオフと、右肩上がりで利益を改善 する傾向が鮮明なブックオフが目立つ。
ブックオ フの営業利益率は、単体ベースでは一〇年後には 一〇%に達すると見られている。
この二社は粗利 率が接近しているのに、営業利益率の段階では大 きく差がついてしまう。
その理由は、ハードオフ の販管費率が著しく低いからだ。
ブックオフの店 舗は地価の高い地域に多く、一般に高い家賃を負 担している。
TVコマーシャルなどの宣伝費が多 いことも販管費率を高めている。
いずれにせよ、中古品販売業の特徴である高粗 利率に起因する高利益構造を如実に示しているの が、ブックオフとハードオフの二社だ。
それにし ても、小売業全体のなかでも最高水準に位置する 七〇%前後の粗利率を、両社はどのようにして実 現しているのだろうか。
ブックオフとハードオフが高い粗利率を実現で きる最大の理由は、買い取りと、販売の両方の価 格決定権を一手に握っているためだ。
一般の小売 業は、プライベートブランドなど自社開発の商品 でもなければ二〇%台の粗利率までしか確保でき ない。
それ以上に粗利率を確保しようとしたら、販 売価格を引き上げる必要があり、消費者に受け入 れられない可能性が高い。
いかに巨大なバイイン 33 NOVEMBER 2005 グパワーを持っていても、七〇%もの粗利率を実 現する力は一般の小売業にはない。
この点が中古 品販売業とはまったく違う。
前述したように、ブックオフは定価の一〇%で 本を買い取り、五〇%で販売している。
価格一〇 〇〇円の本であれば、一〇〇円で買い取り、五〇 〇円で販売するわけだから、この時点で単純計算 すると利益率は八〇%にも上る。
しかし、その後 の値下げなどがあるため、最終粗利益率は約七 〇%となっている。
定価の一〇分の一という買い取り価格は、競争 が激しくなれば影響を受ける可能性はある。
売り 手は、高く買ってくれるところに商品を持ち込む ためだ。
だが現実には、「♪本を売るならブックオ フ♪」という宣伝文句の浸透もあって、この分野 におけるブックオフの寡占化は進む一方だ。
万一、 再販制度がなくなった場合にも販売価格の低下が 考えられるが、値決めシステムを維持している限 り高利益体質は変わらないはずだ。
こうした点だけを見れば、中古品販売業は非常 に旨みの大きいビジネスということになる。
ただし、ブックオフの高粗利率は、経費率(販 管費率)のところでかなり減殺されてしまう。
そ の要因の一つは「加工」作業の人件費がかさむた めだ。
買い取った書籍の多くは、そのまま棚に並 べられず、ヤスリの機械で磨き、綺麗に拭く作業 が欠かせない。
ここで製造業的な作業が発生する ため、一般の小売業にはない経費が発生している のである。
中古品販売業のポテンシャルと影響力 二〇〇五年三月期のブックオフ単体の書籍売上 高は約一四〇億円あった。
同社の書籍の実売価格 が定価の約五分の一であることから、これを新刊 定価に換算すると、五倍の約七〇〇億円分の書籍 を売り上げた計算になる。
これは紀伊國屋書店の一一八五億円、丸善の一一〇一億円に次ぐ第三位 の売上規模に相当する。
文教堂の売上五六二億円 は既に上回っていて、販売冊数でも文教堂の二 五%増となっている。
こうして新刊定価に換算してみると、ブックオ フの売上規模の大きさと、販売冊数の多さを実感 できるはずだ。
書籍流通における同社の存在感は 着実に高まっている。
ブックオフ、丸善、文教堂 の業績を比較してみると、新刊書籍を販売する丸 善と文教堂の業績が不安定なのとは対照的に、ブ ックオフは安定性、成長性のいずれにおいても二 社を凌いでいる。
経常利益の絶対額では、ブック オフが丸善を上回っている。
ブックオフの利益が新刊書店に比べて大きいの は、中古本には再販制 度のような規制がない からだ。
出版科学研究 所によると、二〇〇四 年の出版物の推定販売 金額は二兆二四二八億 円と八年振りにプラス になった。
このうちど れだけの書籍を中古市 場に引き出せるかによ って、中古本販売業の 成長ポテンシャルは変 わってくる。
ブックオ フとしては、同社がカ バーできる新刊書市場を一兆二〇〇〇億円とやや 保守的に試算している。
中古本の販売は、そろそろ飽和点に達するので はないかという警戒的な見方も一部にはある。
し かし、不要になった本が身の周りにたくさんある 状況は依然として変わっておらず、市場拡大の余 地はまだ十分ありそうだ。
個人や家庭との間に恒 常的な商品供給のパイプを構築できれば、より大々 的にビジネスを展開することが可能だろう。
この分野では、ブックオフのような企業が、店 舗を日常生活になくてはならない「装置」にまで 高められるかどうかが、マーケットの成長に直結 する。
書籍以外の分野についても、革新的な企業 が潜在ニーズをどこまで引き出せるかによって、静 脈流通の今後が左右されることになる。

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