ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2010年7号
特集
第3部 ベストプラクティスの現場に学ぶ【光陽商事】作業日報を元にして簡易ABCを実施

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

儲からない荷物で稼ぐ  大阪府門真市に本社を置く光陽商事は近畿圏の 二府四県(大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋 賀)を地盤とする中堅物流会社だ。
二〇〇九年三 月期の売上高は一三五億円で、ローカルな物流会 社としては比較的規模は大きい。
 ただし、売り上げのおよそ三分の二は食品スー パーなどで使用する発泡スチロール製のトレイやラ ッピングフィルムなどの包装用資材の卸売事業が占 めている。
嵩が張る割に単価が安く、売上高物流 コスト比率の高い商品だ。
しかもオーダーの四割程 度は一ケースに満たないバラ注文で、納品リードタ イムは翌日もしくは当日中。
アイテム数は一万五〇 〇〇近くに上る。
 同社が物流事業で取り扱っている荷物も、ボック スティッシュやロールペーパー、紙おむつなど、紙 製品や日用雑貨品のなかでも重量の割に容積の大 きいいわゆる“ゲテモノ”が多い。
その理由を同 社の創業者一族で現在は経営管理室室長を務める 西野嘉一取締役は次のように説明する。
 「ウチのような地場の中小が大手とまともに競争 しても勝てるはずがない。
そこで大手が嫌がる荷 物、しかも末端物流をターゲットにして、地域に密 着することを生き残りの手段と考えている」  パルタックやあらたなど、日用雑貨品を扱う大手 卸は高度なマテハ ン機器をふんだん に導入した高機能 の物流センターを 全国各地に構えて いる。
しかし、そ こで単価の安いゲテモノを扱えば物流コスト割れし てしまう。
宅配便も一ケースの容量が大きいため 割に合わない。
 もちろん光陽商事にとっても条件は同じだ。
儲 からない荷物で稼ぐため随所に工夫を施している。
その一つが共同化だ。
同社の門真営業所には、延 べ床約五六〇〇坪の倉庫に紙製品の主要なナショ ナルブランド商品が仲良く並んで保管されている。
これらは各製紙メーカーの在庫であり、また同倉 庫を利用する日雑卸十数社の在庫でもある。
 卸から注文が入るとシステム上で所有権だけを メーカーから卸に移す。
メーカーと卸が同じ倉庫を 利用することでメーカー〜卸間の輸送を不要した。
同時に卸から見たときの調達リードタイムはゼロに なり、卸は在庫負担から解放された。
さらに、複 数の卸の荷物を同じ車両に混載して域内約六〇〇 軒のスーパーや量販店に一括納品している。
 「当社は二府四県であれば都市部だけでなく和 歌山の南部や兵庫県の日本海側などの過疎地まで 全域をカバーしている。
このエリアの配送ならコス ト面でも機能面でも、大手にも負けることはない」 と西野取締役。
車両は約二〇〇台を自社で所有・ 運用し、波動分を傭車で仕立てている。
 庫内オペレーションでは「5S」の徹底や「日別 管理」のほか、「ABC(Activity Based Costing: 活動基準原価計算)」を活用している。
といって も、ストップウォッチ片手に作業時間を計測するよ うな手間はかけず、簡易的な手法で顧客別の作業 生産性をチェックしている。
 具体的には各作業ラインのリーダーの日報と現場 スタッフのタイムカードから、その日の荷主別の作 業時間を割り出し、投入した作業員の人数をかけ JULY 2010  28 作業日報を元にして簡易ABCを実施  現場リーダーの日報を元に、庫内オペレーションの 生産性を荷主別に算出。
その変動をチェックするこ とで課題を見つけ、作業改善を進めている。
運賃負 担力のない低価格商品や取り扱いの面倒な“ゲテモ ノ商品”の川下物流をドメインにすることで、大手 との差別化を図っている。
       (大矢昌浩) 西野嘉一取締役 取扱アイテム数 1万5000 注文ロット ケース60 %:バラ40 % 1日当たり平均処理行数 8000行 1日当たり平均総労働時間 150人時 1人1時間当たり平均処理行数 53.3行 設備 WMS(自社開発)、ハンディ端末 管理手法 5S、日別業務管理、ABC 第 3部 ベストプラクティスの現場に学ぶ【光陽商事】 て人時を計算。
それを出荷したピース数やケース数 で割って、一単位当たりの作業費を算出し、その 結果を作業改善に利用している。
 月単位で生産性データの変動を見ることで、普 段は気付かない異常に気付くという。
例えば残業 代。
物流業務は今日の仕事を明日に回すことが許 されない。
忙しい日は管理職も目の前の仕事に追 われてしまうため、一〇分や二〇分の作業の遅れ は見過ごしてしまいがちだ。
 しかし、一日にすればわずかな残業でも一カ月 分まとまるとコストに大きく響いてくる。
作業生 産性の推移をデータで示すことで、異常の発生が 誰の目にもはっきりする。
それが改善のスタートに なる。
 一ピース当たりの作業単価の上昇が、割増料金 の発生する残業の増加によるものなら、残業の発 生原因を分析する。
物量の増加や現場スタッフの 退職が原因であれば、スタッフを増員して残業を 回避する。
時差出勤の組み立ての問題なら、それ を是正する。
事前入荷情報の精度に問題がある場 合には業務プロセスの上流に遡ってその原因を探る といった具体的な手が打てる。
正社員が作業テンポをリード  改善の指揮をとるのは各拠点の所長の役割だ。
毎月の所長会議では、ABC分析の結果を持ち寄 り、お互いのアイデアをぶつけ合う。
仲間同士で 切磋琢磨することで現場運営ノウハウの横展開と 所長のスキルアップを図っている。
 一方、現場では作業ラインの運営管理にあたる 正社員が日々の生産性の維持・向上を担う。
同社 の本社に隣接する延べ床約五〇〇〇坪の倉庫には 現在約一五〇人の現場スタッフが在籍している。
そ のうち正社員は約一〇人。
他は主婦層を中心とす るパート社員もしくは契約社員のフォークマンだ。
 忙しい時はもちろん、作業のペースが落ちてい る時には正社員が直接ピッキング作業やフォークリ フトを運転する。
そして周りにスピーディに処理し て見せることで現場のテンポを変える。
パート主体 の現場では、そうした細かな配慮が生産性に大き く影響してくる。
そのため現場の正社員は作業に 人一倍習熟している必要がある。
 この本社倉庫には〇八年に約三〇〇〇万円を投 じて八〇台のハンディ端末を導入した。
それまでは 細かなピースピッキングの検品まで全て人手で行っ ていた。
精度を上げるために、同じ荷物を複数の 担当者に検品させるなどしていたが、それに限界 を感じて投資に踏み切った。
 しかし、それ以外のマテハン設備はほとんどな い。
西野取締役は「機械を入れれば効率化するの は分かっている。
が、物流は生き物。
荷物の種類 や形状は常に変わる。
今は良くても、五年後に使 えない設備では投資を回収できない」とマテハン投 資には消極的だ。
 ただし、情報システムは重視している。
WMS のパッケージを購入し、社内にSEを抱えて必要に 応じて随時カスタマイズしている。
さらに各現場で も、オペレーションに合わせてパソコンベースで独 自にプログラムを組んでいる。
 業績は順調だ。
リーマンショック後は既存顧客の 物量減少に見舞われているが、それを上回る新規 案件が舞い込んでいる。
不況の影響から物流コスト の削減を重視して物流機能を専用施設から光陽商 事に移管し、共同化に踏み切る荷主が増えている。
 包装資材の卸売事業も物流機能が差別化の武器 になっている。
物流事業と重なる納品先が多いた め、ここでも共同化のメリットを活かせる。
販売価 格にはピッキング作業の生産性を反映させている。
注文ロットや要求されるリードタイムによって、庫 内作業の組み立ては大きく変わる。
それを取引条件 に反映させることで顧客側にも改善を促している。
 「当社が安価な商品に特化しているのは、安価な 商品でも利益を出せる仕組みができれば後は何が来 ても大丈夫だと考えているから。
収益確保は楽で はないが、それだけ今後の開拓余地は大きい」と 西野取締役は自信を持っている。
29  JULY 2010 庫内にはハンディ端末の他ほとん どマテハン設備は入っていない 段ボール箱の表面にカバーを付け て繰り返し利用している。
それだ けでも年間数百万円違ってくる 特集

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