ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年1号
特集
第2部 公的助成金・支援制度活用ガイド 解説 賢く使わないともったいない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 事業費用の3分の1、最大5億円をもらえる補助金など、 環境物流の推進に対する政府の支援制度は充実している。
同じ取り組みで複数の支援制度を利用することもできる。
それによって効率化が進めば、競合他社と大きく差別化で きる。
使わない手はない。
         (梶原幸絵) JANUARY 2010  18 賢く使わないともったいない どの支援制度が狙い目か  新エネルギー・産業技術総合開発機構、略称NE DO。
エネルギー対策特別会計(エネ特会)と一般 会計から運営交付金を受け、各種の研究開発・支援 事業を実施する経済産業省の外郭団体だ。
国土交通 省の管轄する環境物流関連の補助金もNEDOが直 接の窓口となる場合が少なくない。
 国交省の認定を受けた上で、NEDOの審査を通 れば、トラック用省エネ機器や倉庫の垂直搬送機、冷 却関連設備、照明器具、フォークリフトなど、必要 な設備の導入経費総額の三分の一以内・上限五億円 の範囲で補助金の交付を受けることができる。
事業 者にとっては返済する必要のない純粋な収入だ。
 今回、本誌は荷主や物流企業が利用できる公的支 援制度をピックアップして整理した。
主だったものだ けで一五の制度があった。
そのうち最も利用価値が 高そうな制度は、いずれもNEDOが運営に当たっ ているものだった。
NEDOを味方につけることが できれば、環境物流推進の大きな武器になる。
 まずは基本情報から解説しよう。
 環境物流に使える公的支援制度の予算は、基本的 に国交省と経産省が元締めとなっている。
物流分野 に対象を絞った制度は国交省が監督している。
それ に対して経産省の支援は対象が幅広く、物流分野も 含めた環境対策全般に利用することができる制度を 管轄している。
 これら国交省、経産省の管轄する支援制度のうち、 予算がエネ特会から出ているものはNEDOを窓口 とする。
従ってNEDOに申請するにはまず、国交 省や経産省の認定を受けなければならない。
 そうした制度の一つがグリーン物流パートナーシッ プ会議だ。
単一の設備・機器にとどまらず、物流拠 点の集約や共同化、モーダルシフトなど、省エネプロ ジェクト全体にかかる設備導入費が支援対象になる。
 同会議は国交省、経産省、日本ロジスティクスシス テム協会(JILS)、日本物流団体連合会が主催し 経団連が協力している。
荷主と物流業者の連携・協 働の促進を目的に〇四年十二月に発足した。
荷主と 物流業者が協働で提案したプロジェクトが普及事業と して会議から推進を決定されれば、国交省と経産省 から認定を受けてNEDOの省エネ事業者支援を利 用することができる。
 このところグリーン物流パートナーシップ会議の推 進事業件数は大きく減少している(図1)。
二〇〇八 年度の普及事業の推進決定件数は四八件だったのに 対し、〇九年度は一六件に落ち込んだ。
会議への提 案自体が減少しているようだ。
ただし車両の大型化 事業の推進決定は目立っている。
経産省の中村大紀 商務流通グループ流通政策課課長補佐は「昨今の不 況で企業は設備投資をしづらい状況にあるが、車両 の大型化ならば比較的容易なのだろう。
ただ設備・ 機器の導入に対する支援だけでは環境物流の普及に は限界があるのではないか」と指摘する。
 〇九年十二月八日に閣議決定された緊急経済対策 には環境配慮の取り組みへの支援等として、グリー ン物流パートナーシップ会議の取り組みの拡充も盛り 込まれた。
これに先立ち、国交省と経産省は連携し て、地球温暖化・エネルギー対策の強化に向けた合 同のワーキングチームを立ち上げている。
 自動車交通、物流などの部門ごとに検討を進め、 課題や政策を整理する。
このうち、グリーン物流パー トナーシップ会議は物流部門の中で議題に取り上げら れている。
ワーキングチームは年内にも取りまとめを 第2部公的助成金・支援制度活用ガイド 特集 19  JANUARY 2010 行うとしている。
その結果、新しい支援制度の方向 が見える可能性があるので注目しておきたい。
優遇税制や土地利用の特例も  税金の優遇措置も、補助金を直接もらうのと同じ 効果をもたらす。
拠点再編の場合には、物流総合効 率化法(物効法)の活用を検討してみよう。
延べ床 面積一万平方メートル、建物取得費一〇億円の営業 倉庫を新設した場合、所得税、法人税、固定資産税、 都市計画税の減税効果だけで五年間で計約三〇〇〇 万円のメリットがある。
 物効法は、既存または新規の物流拠点施設を中核 として物流コストの削減や環境負荷低減を図る効率 化計画の認定プロセスと、それに対する支援措置など を定めた法律で、〇五年一〇月に施行された。
メー ンとなるのは物流企業だが、荷主も自社倉庫を整備 しようとする場合にはメリットは大きい。
 法施行当初は施設の立地要件、規模要件、設備要 件などから計画認定のハードルが高いと言われてい た。
しかし税制特例というメリットや自治体が同法に 合わせて開発基準の緩和に動いたこともあり、〇九 年一〇月時点の認定件数は一三五件となった。
 国交省政策統括官付参事官(物流施設)室の秋山 岳彦ターミナル係長は「件数でいえば思っていた以上 に認定を受けてもらっている。
認定計画ベースのC O2排出量削減効果(見込みを含む)も約一〇万五〇 〇〇トンになっている。
認定事例をホームページに掲 載するなど情報発信を続け、制度をアピールすること で事業者を支援していきたい」と語る。
 同法では荷主や物流事業者(連名も可能)が策定 した計画が認定されれば、倉庫業、貨物利用運送、 貨物自動車運送などの事業許可・登録の一括取得、 物流施設に対する税制特例、市街化調整区域におけ る施設整備の開発許可への配慮などの支援措置を受 けることができる。
 ただし、計画認定のためには、物流施設が高速道 路インターチェンジ、鉄道の貨物駅、港湾、空港等の 周辺五キロメートルの区域内に立地することのほか、 施設の規模や設備にも要件がある。
 しかも計画が認定されれば自動的にすべての支援を 受けられるというわけではない。
多くは認定を受けた 後、希望する措置によってそれぞれの要件を満たし、 それぞれの窓口で手続きを行う必要がある。
 市街化調整区域における開発許可への配慮につい ても、開発許可が不要になるわけではない。
開発許 可は各地方自治体の判断に任されている。
 そこで、市街化調整区域に物流施設を新設する計 画で認定を受けようとする場合には、認定申請前に 各自治体の開発許可担当部局などに対し、物効法に 合わせて開発基準を改正しているかといった、自治 体側の対応を確認する必要がある。
 これまで国交省は物効法の活用を促進するため、自 治体に開発基準の改正を働きかけてきた。
〇九年九 月末時点で一四七の地方自治体のうち、開発許可基 準を改正した自治体は四割以上になっている。
改正 はしていないが個別に判断するとしている自治体も 一割以上だ。
認定を受けた一三五件のうち、市街化 調整区域の案件は三六件になっている。
 しかし実際には自治体の対応はさまざまだ。
開発 基準を改正している自治体であっても、具体的な対 応方法はそれぞれ違う。
開発基準を物効法にすべて 合わせているケースもあるが、「指定幹線道路の沿道 に限る」、「物流施設ファンドによる開発を認めない」 といった条件を付けていることが多い。
国交省政策統括官付参 事官(物流施設)室の秋 山岳彦ターミナル係長 経産省の中村大紀 商務流通グループ流 通政策課課長補佐 図1 グリーン物流パートナーシップ推進事業の類型別推進決定件数 類 型 05 年度06 年度07 年度08 年度 09 年度 (2 次公募 分まで) 合 計 拠点集約化 共同輸配送 鉄道へのモーダルシフト 海運へのモーダルシフト 車両等の大型化 電子タグ等活用 その他      計 4 4 4 10 14 0 9 0 9 11 1 12 4 4 8 34 1 43 9 9 4 6 10 2 1 3 6 3 4 7 0 0 15 10 7 32 10 10 2 21 23 0 11 1 12 9 2 11 2 2 12 43 3 58 5 5 2 14 16 0 5 1 6 3 0 3 1 1 7 23 1 31 0 0 0 2 2 0 5 0 5 17 0 17 8 8 0 32 0 32 0 0 3 0 3 0 0 0 0 1 0 1 0 0 3 1 0 4 5 5 0 11 11 2 9 2 13 4 6 10 1 1 7 25 8 40 33 33 15 64 79 4 40 7 51 48 13 61 16 16 52 168 20 240 ※モデル事業:先進性のある取り組みを支援 普及事業:モデル事業などの先例をもとに取り組みの普及・拡大を図る  ソフト支援事業:パートナーシップ構築のための問題点や対応を調査することによりプロジェクトの創成を支援 計 計 計 計 計 計 モデル事業 モデル事業 モデル事業 モデル事業 普及事業 普及事業 普及事業 普及事業 普及事業 ソフト支援事業 ソフト支援事業 ソフト支援事業

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