ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年12号
特集
第2部 政権交代で組合運動はどこに向かう 【建交労】同一労働・同一賃金に向け団結を

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

【建交労】同一労働・同一賃金に向け団結を DECEMBER 2009   18 事後チェックでは機能しない ──政権交代で規制緩和の見直しが始まりました。
労 働規制の強化も進みそうです。
 「本当にそうなるか、しばらくは様子を見る必要が あります。
人材派遣業の規制については選挙が終わっ てから、民主党のトーンもだいぶ変わってきました。
最低時給の引き上げも、どこまで本気なのか確かめ る必要がある」 ──建交労は時給引き上げに賛成ですね。
 「一刻も早く引き上げる必要があります。
今や年収 二〇〇万円以下の労働者が国内に一〇〇〇万人以上 もいるわけですから。
これで内需拡大なんてできる わけがない。
時給一〇〇〇円といったら年収で一八 〇万円ですよ。
決して高くない。
中小が保たないと、 よく口実にされますが、それは彼らを下請けに使う大 企業が、時給一〇〇〇円も払えないような料金しか 払わないからです。
大企業の社員で年収一八〇万円 なんて人はいません」 ──人材派遣も禁止すべきですか。
雇用の流動化や 働き方の多様性は必要だと思いますが。
 「流動化そのものに反対しているわけではありませ ん。
労働者が自分の生活実態に合わせて、正規では なくパートという雇用スタイルを選ぶということは当 然ありうる。
しかしその時には、正規であろうが非 正規であろうが、同一価値労働・同一賃金が徹底さ れていなければならない。
ところが日本の場合、非 正規になると即、賃金が低下する。
労働諸法制の緩 和が即、賃金低下につながっているんです。
これを 放置するわけにはいかない」 ──同一価値労働・同一賃金は、日本の年功序列賃 金と馴染みません。
 「だから、連合の中でも大手の労働組合は総じて抜 本改正賛成とは言わない。
結局自分たちのところに 跳ね返ってくるわけですから」 ──それでも連合を支持母体とする民主党が政権を とったことで、労働組合側に立った政策が以前よりも 通りやすくなるのでは。
 「連合は、その成り立ちからして大企業の言いなり ですからね。
ユニオンショップ制を敷いているような 大企業の企業別労組の集まりですから組合員数は多 いけれども、組合員と一緒になって闘うというスタン スはとらない。
賃金が下がってもストライキもしない。
規制緩和にも全く反対してこなかった」  「それでも世論が今や規制の強化に向かっているの は確かです。
規制緩和が華やかりしころは、我々が 霞ヶ関に出向いて規制緩和の問題をいくら指摘して も、それこそハナも引っ掛けてもらえなかった。
と ころが世論がこれだけ盛り上がってくると、態度も がらっと変わってくる。
現在の規制緩和に対する認 識は、業界も行政も、労働組合もほとんど変わらな くなってきています」 ──規制緩和にはプラスの面もあったのでは。
 「我々は当初から反対でした。
ストライキも打った。
物流二法にしても、それ以前から運送市場では実態 として値崩れが広がっていた。
このうえ規制を緩和す れば業界が相当に混乱するだろうことは目に見えてい ました。
実際に規制が緩和された後は、かなり早い 段階から行き過ぎの影響が出ていました」 ──物流二法前から実質的には自由競争だったのだ から規制緩和しても悪影響は出ないという意見が当 時は主流でした。
 「私たちは危険だと考えていました。
実際、トラッ ク運送業は違法行為が当たり前の産業になってしまっ  産業別労働組合の運輸一般が1999年に、建設一般、 全動労と合体して誕生した。
大企業の正社員組合で 構成する連合とは対照的に、中小零細運送会社で働 く労働者を直接組織化している。
物流業の規制緩和 政策には一貫して反対し、ストライキも打ってきた。
 (聞き手・大矢昌浩) 赤羽数幸 書記長 第 2 部 政権交代で組合運動はどこに向かう 建交労の概要 正式名称 全日本建設交運一般労働組合 組合員数 3万5000人 上部団体 全労連 特徴 共産党と協力することが多かった産業別労 働組合の運輸一般、建設一般、全動労が 1999年に合同して誕生した。
うちトラック 部会は全国約1000社で活動を展開している。
中小企業が中心だが、近物レックス、カンダ コーポレーション、大宝運輸などの中堅企業 にも支部を持つ。
19  DECEMBER 2009 た。
厚生労働省の統計によると労働基準法に違反し ている業者が毎年七割もいる。
ドライバー労働時間の 改善告示、いわゆる?七号告示?の違反も五〇%を 超えている。
法律を守るという最低のことさえでき ない業者が増えてしまった」 ──確かに社会的規制の強化は放置されました。
 「事実上、野放しにしました。
それによって問題が 表面化すると今度は?事後チェック?しますと言いだ した。
しかし、事後チェックというのは膨大な費用が かかるんです。
参入する時点で規制をかければ、窓 口で振り分けることができるけれど、いったん入って しまった後、それをひとつひとつチェックしていくの は大変な労力です」  「事後チェックのためにトラック協会の傘下に適正化 実施機関を設けてはみたものの、彼らは大した権限 を与えられていない。
事業者もトラック協会の下請け のような感覚で接していて、適正化指導員がいくら 指導してもまともに取り合わない。
実際には?尻抜 け?ですよ。
本来は国土交通省、当時で言えば運輸 省がやるべき仕事なのに、自分たちではやりきれな いからと丸投げしてしまった結果です」 ──規制緩和は労働組合の組織率低下にも影響した のでは?  「そこは分かりませんが、そもそも中小零細のトラッ ク運送事業者の組合組織率など五%程度だと思いま すよ。
トラック運送業界は九九・九%が中小零細な のに、労働組合のない職場が圧倒的多数であるため に、ドライバーに不満があっても、その持って行き場 がない。
また非正規労働者も企業別労働組合からは ずっと無視されてきた」 ──それは労働組合にとってチャンスじゃないですか。
 「もちろん我々も建交労を結成してから今日までの 一〇年間で述べ三〇〇近い運送会社に組合を作って きました。
ところが、そのうち今も残っているのは半 分以下です。
労働組合を歓迎する経営者というのは 少数派ですから、労働組合を作ろうとする動きが分 かると、露骨な不当労働行為で組合潰しを図る。
最 近、山崎豊子の『沈まぬ太陽』が映画でリメイクされ ましたが、あれと同じことがいまだに行われている」 悪質な組合潰しが今も続いている ──建交労や以前の運輸一般は、共産党との結びつ きが強く、戦闘的なイメージがあります。
 「それはプロパガンダではないですか。
我々は決し て対決路線ではありません。
会社を潰してしまうよ うなことはしない。
ただし法律を守らないのは黙認で きない。
ところが実際には?法律なんか守っていた ら経営なんか成り立たない?と経営者が言い放つ。
中 小企業では社長の腹一つで気に入らない社員に冷や飯 を食わしたり、いくらでもできてしまう。
飴とムチを 使って様々な手口で組合潰しに動く。
なかでも一番の 手口というのがやはり反共攻撃なんです。
これに耐 えきれなくて諦めてしまう」  「我々の要求が共産党の政策と近いことが多いのは 事実です。
しかし、要求の中身によっては自民党や民 主党に協力してもらうこともある。
労働組合という のは、あらゆる人たちが集まる最も大衆的な組織です。
目的がはっきりしているから結束ができるのであって、 労働組合が組合員に特定の思想や特定政党の支持を 押しつけたりするのは自殺行為です。
ところが連合 はいまだに特定政党の支持と特定政党の排除を続け ている。
本来の組合活動から逸脱しています。
あれ で本当に組合員の支持が得られるか。
団結が維持で きるのか私には疑問です」 建交労トラック部会の組織拡大推移 99 年度 00 年度 01 年度 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 07 年度 合計 40 組織 24 組織 19 組織 24 組織 18 組織 22 組織 27 組織 ─ 38 組織 192 組織 新結成企業・組織内拡大拡大総数 / 435 人 / 292 人 / 211 人 / 285 人 / 386 人 / 282 人 / 337 人 /─ / 317 人 / 2,545 人 / 258 人 / 240 人 / 288 人 / 145 人 / 95 人 / 102 人 / 138 人 /─ / 396 人 / 1,662 人 22 組織 42 組織 19 組織 5 組織 3 組織 ─ 22 組織 ─ 44 組織 ─ / 693人 / 532人 / 499人 / 430人 / 481人 / 384人 / 745人 /─ / 731人 / 4,226 人 62 組織 62 組織 38 組織 ─ ─ ─ 48 組織 ─ ─ ─ 特集 新しい物流労務管理

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