ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年9号
物流不動産市場レポート
三大都市圏 二〇〇九年上半期物流施設賃貸市況分析シービー・リチャードエリス総合研究所 鈴木公二 シニアコンサルタント二

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2009  80 物流不動産市場レポート 部、常磐・東北・関越・中央・東名自動車道 に代表される高速道路インターチェンジ周辺に 物流施設が集積している。
 圏央道では、あきる野IC〜八王子JCT 間が開通。
これにより中央道、関越道が連結 した。
現在のところ圏央道は川島ICまで延 伸しており、沿線において企業進出の動きが 見られている。
行政の公表資料によると、二 〇一二年度までに全線が開通する。
周辺エリア の物流拠点としてのポテンシャルが向上するこ とが期待される。
 近年の建築着工量をみると、一九九一年以 降下落傾向が続いており、九五年頃から若干持 ち直したものの、それ以降は〇三年まで低水準 での推移が続いている。
〇四年から〇七年まで は、不動産投資家等による大型施設の着工等 が影響して増加基調にあった。
しかし直近の〇 八年は、千葉県での大量供給の反動から新規着 工が大きく抑制されたこともあり、首都圏全体 の着工量を押し下げる結果となった(図1)。
 今期の首都圏の中・大型施設の募集賃料水 準については、埼玉県で対前年比マイナス二・ 〇%、千葉県で同マイナス十一・八%、東京都 で同マイナス〇・九%、神奈川県で同マイナス 四・一%という結果となった。
すべての都県 でマイナスを示している(図2)。
 ここ数年の募集賃料をみると比較的底堅く推 移していたが、テナントサイドが要求する賃料 水準のハードルは一段と厳しくなっており、オ ーナーサイドは賃料条件について柔軟に対応す ることで需要を吸引する必要に迫られている。
特別編 三大都市圏 物流施設賃貸市況分析 シービー・リチャードエリス総合研究所 鈴木公二 シニアコンサルタント 二〇〇九年上半期  シービー・リチャードエリスは七月三〇日、「ウェアハウスマーケットレポー ト(2009年上半期)」を発表した。
国内主要都市における物流施設の市 況動向を調査・分析したものだ。
調査対象は主用途が倉庫であり、かつ、一 般募集された施設四二一九棟。
ここでは物流主要エリアである首都圏、中部圏、 関西圏の需給動向を解説する。
国内全般 需給バランスの先行きは不透明  賃貸市況動向としては、企業の拠点統廃合 を背景とした大型施設に対する引き合いは変わ らず見られるが、景気の先行きに対する不安 感から意思決定までに時間を要しており、需 要が顕在化しにくい状況が続いている。
テナン トサイドのコスト削減意識は強く、物流施設の 賃料水準に対する見方も一段と厳しくなってい る。
低廉な賃料を求めて拠点展開における選 択肢を広域で考える企業が増加している。
 大型物流施設の投資マーケットをみると、今 年に入って新規供給に一服感が見られたことも あり、空室率の改善が期待されたが、新規需 要の伸びが鈍化したことで大きな改善には至っ ていない。
首都圏湾岸部等では空室消化に苦 戦する築浅施設がみられており、オーナーサイ ドは需要を吸引するために賃料面で柔軟な対応 を行う必要に迫られている。
 今後年内までに数棟の大型施設の供給が控 えているため、まとまった空室を抱えて竣工を 迎えるようであれば、需給バランスは更に悪化 する可能性もある。
今後の需給動向には不透 明感が漂う。
首都圏 湾岸エリアでも客付けに苦戦  千葉・東京・川崎・横浜へと連なる湾岸部、 国道一六号線・埼玉県南部を中心とする内陸 81  SEPTEMBER 2009     延べ床面積一万坪以上のマルチテナント型施 設の空室率を見ると、新規供給が集中した〇 八年以降は高い水準で推移しており、直近の 〇九年六月期も一六・三%と調査開始以来三 番目に高い水準を示している(図3)。
今期は、 既存施設でまとまった面積の空室消化が見られ た一方で、新たに竣工した二棟の施設が空室を 抱えたこともあり、全体の空室率が上昇する 結果となった。
 大型施設に対する引き合いは引き続き見られ ているため、全体の稼働床面積は変わらず拡 大を続けているが、〇八年と比較すると拡大 スピードは鈍化している。
ここ数年で供給が集 中した湾岸エリアでは、空室消化に時間を要す る築浅の施設も見られている。
 不動産投資家等の動向については、昨年は過 去最大の新規供給が行われ、投資マーケットの 拡大が顕著に見られたが、昨今の不動産市況の 悪化により、開発計画が相次いでストップして いる。
今年の竣工予定は昨年から半減する見込 みで、来年以降は更に大幅に減少する予定とな っている。
特に、近年供給が続いた大型マルチ テナント型施設の開発計画は殆ど見られなくな っており、テナント確保に目処がついた状態で、 大型用地を物色する動きにシフトしている。
中部圏 自動車減産が募集賃料に大きく影響  内陸部の交通の要衝である小牧周辺および、 名古屋港周辺において物流施設の集積がみられ る。
〇五年三月の愛知万博開催に伴い、東海環 状道の豊田東JCT〜美濃関JCT区間が開通 図2 首都圏の中・大型物流施設の平均募集賃料 図1 首都圏の新規着工動向 図3 首都圏のマルチテナント型施設の空室率 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 (千?) 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 埼玉県千葉県 東京都神奈川県 平均募集賃料変動率 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 (円/坪) (%) 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 (円/坪) (%) 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 (円/坪) (%) 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 (円/坪) (%) 11.3 10.1 10.4 5.0 4.6 3.1 11.7 9.5 9.1 7.5 8.6 8.1 5.1 8.4 8.9 7.7 5.3 16.4 14.5 15.0 13.6 16.3 18.0 20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 (%) 03 年1 2月 04 年3月 04 年6月 04 年9月 04 年1 2月 05 年3月 05 年6月 05 年9月 05 年1 2月 06 年3月 06 年6月 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年9月 08 年 12 月 09 年3月 09 年6月 07 年9月 07 年1 2月 -13.8 0.2 -5.3 -2.8 -2.9 -6.3 -2.1 -0.8 -2.0 5,070 4,370 4,380 4.150 4,260 4,140 3,880 3,800 3,770 4,000 4,190 4,070 3,990 6.1 4.8 2.7 埼玉県 -0.2 -22.5 -4.2 1.3 3.9 -2.1 3.5 -6.4 -11.8 4,950 4,940 3,830 3,670 3,780 3,830 3,750 3,880 3,630 3,730 3,850 4,000 3,530 3.0 2.8 3.2 千葉県 2.1 -7.2 -1.0 -3.5 2.3 1.8 -0.4 1.6 -0.9 6,280 6,410 5,950 5,890 5,770 5,570 5,700 5,680 5,770 5,630 5,480 5,580 5,530 -2.0 -2.4 -2.7 東京都 9.2 -1.2 -6.4 -7.9 0.2 -1.6 4.3 3.6 -4.1 4,760 5,200 5,140 4,810 4,670 4,300 4,230 4,410 4,570 4,520 4,620 4,630 4,440 -1.1 2.2 -2.9 神奈川県 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09年 上半期 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09年 上半期 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09年 上半期 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09年 上半期 物流不動産市場レポート SEPTEMBER 2009  82 した。
地域の利便性が向上したこ とで、沿線エリアで工業系施設や 商業施設などの進出が見られるよ うになっている。
また、市街化調 整区域が多いという地域特性から、 物流開発用地が限定される面があ る。
 自動車関連企業を始めとした製 造業の減産による影響が、物流関 連会社にも顕著に見られ始めてい る。
先行きに対する不透明感から、 契約の見送りやキャンセル等の動 きも見られている。
 建築着工動向を見ると、九一年 以降減少傾向を続けていたが、〇四年から〇六 年までは増加傾向を示している。
直近の二年間 は、〇六年を下回る水準での推移となっている が、一二〇万平米の水準は維持している(図 4)。
 愛知県の中・大型施設の平均募集賃料を見る と、〇九年上期は対前年比マイナス一〇・〇%。
景気低迷による荷動きの減少にともない、既存 施設の空き物件が増加した影響から、募集賃料 も下落傾向で推移している(図5)。
 また、これまで比較的安定的な推移を見せて いた不動産投資家等が所有する大型施設の募集 賃料も、需要の減退からテナント誘致に苦戦す る施設も見られ、賃料に関して今後柔軟な対応 が求められる可能性は否定できない。
不動産投 資家等が大型用地を物色する動きは減少傾向に あり、今後の新規供給も限定的といえる。
関西圏 空室率が再び二〇%台に上昇  首都圏に次ぐ消費規模を擁しており、物流施 設に対する潜在的なニーズは高い。
南港、北港 等を中心とする湾岸エリア、内陸では、茨木市、 摂津市、高槻市等の北摂エリア、東大阪市、大 東市、門真市等の東大阪エリア等に物流施設が 集積している。
 物流業界の動向としては、景気低迷を受けて 荷動きは鈍化しており、全般的に撤退や、既存 拠点へ集約する動きが強まっている。
また、輸 出入貨物の荷動きも鈍化しており、物流施設に 対する需要は減退傾向にある。
6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 (円/坪) (%) 4,970 4,820 4,400 3,970 4,200 3,990 4,060 3,790 3,870 3,910 4,050 3,730 3,990 大阪府 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09 年 上半期 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 15 10 5 0 -5 -10 -15 (円/坪) (%) 3,380 3,260 3,370 3,310 3,120 3,220 3,030 2,940 2,900 3,270 3,060 2,890 3,210 愛知県 97年98年99年00年01年02年03年04年05年06年07年08年09 年 上半期 図4 中部圏の新規着工動向図5 愛知県の中・大型施設の平均募集賃料 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 岐阜県静岡県愛知県三重県 (千?) 図6 関西圏の新規着工動向 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 (千?) 図7 大阪府の中・大型施設の平均募集賃料 滋賀県京都府大阪府 兵庫県奈良県和歌山県 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年 07年 08年 -3.0 -8.7 -9.8 -5.0 -1.5 1.8 -6.7 2.1 -6.5 1.0 3.6 5.8 -3.6 3.4 -1.8 3.2 4.9 -5.9 -3.0 -1.4 -10.0 12.8 -6.4 -5.7 図8 関西圏のマルチテナント型施設の空室率 6.4 16.6 15.4 9.4 25.5 26.1 30.6 25.7 21.4 16.5 18.3 21.7 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 (%) 06 年9月 06 年1 2月 07 年3月 07 年6月 08 年3月 08 年6月 08 年3月 08 年6月 09 年3月 09 年6月 07 年9月 07 年1 2月 83  SEPTEMBER 2009  建築着工量は、〇三年以降大阪府、兵庫県 を中心に着工が進んだこともあり、全体の着工 量は伸びを見せていた。
しかし〇七年以降減 速し、直近の〇八年は滋賀県、京都府で着工 が落ち込み、前年に引き続き停滞傾向をみせて いる(図6)。
 大阪府の中・大型施設の賃料動向を見ると、 今期はマイナス六・五%となっている(図7)。
需要の低迷により、規模を問わず空室が目立 っており、オーナーは賃料や契約期間等の賃貸 条件に対して柔軟に対応する必要に迫られてい る。
なかでも、立地や施設の使い勝手に劣る 施設のテナント誘致は困難な状況で、空室が長 期化する施設も見られる。
 空室率をみると、〇九年三月期で一八・三%、 六月期は二一・七%という結果となっている (図8)。
空室率が三〇%を超えた〇八年三月 期から同年十二月期までは、空室消化が順調 に進んだが、今期はテナント未定のまま竣工を 迎えた施設があったことや、賃貸床の縮小・撤 退の動き、短期契約の終了などが重なったこと が空室率の上昇要因となっている。
 今後は、大型施設の新規供給が抑制される ため、投資マーケットの需給バランスが大きく 崩れることは考えにくい。
しかし、需要減退に よるテナント流出が見られるようであれば、空 室率が更に悪化する可能性もある。
今後の需 給動向には注意が必要だ。
 不動産投資家等の動向については、不動産 市況の悪化から開発計画の見直しが相次いで おり、今後当面の供給は限定的となる見通し である。
2009年上半期全国最新市況 平均賃料平均預託金 3,260円3.7カ月 3,550円3.6カ月 北海道 平均賃料平均預託金 3,320円3.7カ月 3,890円4.1カ月 宮城県 平均賃料平均預託金 4,010円3.2カ月 4,540円3.6カ月 埼玉県 平均賃料平均預託金 3,590円3.5カ月 4,490円4.1カ月 千葉県 平均賃料平均預託金 6,120円4.1カ月 6,980円4.9カ月 東京都 平均賃料平均預託金 4,740円3.9カ月 5,240円4.6カ月 神奈川県 平均賃料平均預託金 3,170円3.7カ月 4,090円5.3カ月 愛知県 平均賃料平均預託金 2,760円5.1カ月 4,130円5.4カ月 石川県 平均賃料平均預託金 2,380円5.0カ月 3,370円3.0カ月 滋賀県 平均賃料平均預託金 4,240円6.9カ月 5,170円5.4カ月 京都府 平均賃料平均預託金 4,690円6.7カ月 5,340円7.5カ月 大阪府 平均賃料平均預託金 4,140円7.9カ月 5,790円7.5カ月 兵庫県 平均賃料平均預託金 2,250円3.9カ月 3,630円6.5カ月 香川県 平均賃料平均預託金 3,130円4.6カ月 3,860円6.2カ月 岡山県 平均賃料平均預託金 2,500円6.0カ月 高知県 平均賃料平均預託金 3,620円6.1カ月 4,290円7.6カ月 広島県 平均賃料平均預託金 2,880円6.0カ月 4,620円7.4カ月 福岡県 平均賃料平均預託金 2,830円4.3カ月 3,960円6.8カ月 鹿児島県 ─ ─ ※上段は倉庫・配送センター、下段は事務所兼倉庫 ●対象 主な用途が倉庫・配送センター、事務所 兼倉庫であり、一般募集された施設 ●賃料 2009年1月〜6月までの期間の新規募集 賃料(円/坪)を棟数平均して算出 ●預託金 2009年1月〜6月までの期間の預託金を 棟数平均して算出。
また算出された預託 金を平均賃料(円/坪)で割り、平均預 託金を算出

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