ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年4号
keyperson
白土茂雄 アジア・ロジスティクス研究所 代表

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

3  APRIL 2009 ──中国も世界同時不況の影響と無 縁ではいられません。
 「それでも中国は、最もダメージが 軽く済む国になるでしょう。
中国は 国内に膨大な未開拓市場を抱えてい ます。
農村地域で暮らす七億人近く の人たちは、いまだに最低レベルの 生活を強いられている。
一日当たり の収入が二ドルに満たない人たちが 半分以上を占めています。
彼らの所 得水準を上げることを、中国共産党 は現在の最重要テーマとしています」 ──難しい政策課題です。
 「日本人の所得をこれから倍増する のはまず無理でも、二ドルの収入を 一〇ドルにするのはそれほど難しくあ りません。
これまで中国の農村地域 は経済的に外部から遮断されてきま した。
その囲いを解き放ってやるだ けで、もの凄い勢いで商品経済、サ 白土茂雄 アジア・ロジスティクス研究所 代表 ──そうなると今後は現地企業との 付き合い方がポイントですね。
 「その通りです。
実は現地系の大手 物流会社は零細以上にダメなんです。
設備はあってもきちんと訓練ができ ていない。
むしろ、小規模でも、社 長に意欲があって真面目に取り組む 現地企業を使うべきです。
色んな零 細を実際に使ってみて、ダメなとこ ろを切っていく。
そうやって残った 良い会社を大事に育てる」  「日系荷主は今後も日系の物流企 業を使っていくはずです。
彼らは日 本的サービスを中国でも求めている。
日系荷主にとっては現地の物流企業 はもちろん国際インテグレーターでさ え使いにくい。
荷物の積み付け方一 つに至るまで、日本の物流サービスに は優位性があります。
単に現地化を 進めるだけでなく、そうした日本流 のノウハウまで現地化する。
それがで きれば日系だけでなく他の外資系や 現地の有力荷主からも仕事が集まっ てくるはずです」 ービス経済が農村地域になだれ込ん でくる」 ── 輸出型から内需型への転換が、 それほどスムースに進みますか。
 「中国は輸出依存度も高いけれど 輸入依存度も高い。
例え輸出が半 分に減っても、その分だけ輸入も減 る。
設備と加工労働力が余るだけで す。
しかも一連の経済成長を通じて 労働者のスキルは格段に向上してい ます。
つまり中国は大量の外貨を獲 得すると同時に良質の労働力を国内 に蓄えることができた。
それを今度 は内需に向ければいい」 ──外資系企業が中国の国内事業で 利益を上げることは可能でしょうか。
 「ニッチな高級品を日本と同様の 価格で売るというかたちで大きな利 益を上げている日系メーカーが既に いくつもあります」 ──物流企業は?  「物流企業の場合は、日本で受託 した仕事で帳尻を合わせてきました。
中国の国内物流は赤字でも、国際複 合一貫輸送のコストは荷主側にはブ ラックボックスになっている部分が多 いため利益を調整できた」 ──今後は荷主も物流企業も中級以 下のボリュームゾーンで勝負しなけれ ばなりません。
 「そこは是々非々で進めていくしか ない。
現地企業とコストで競争して も絶対に勝てません。
例えば現地の 運送会社は九九・九%が零細企業で す。
タイヤがすり減ってもパンクする まで取り替えないし、事故が起きて も補償もできない。
つまり、かける べきコストをかけていない。
そんな会 社と価格で競争すれば赤字が膨らむ だけです」 「現地の零細経営者を味方に付けろ」  中国の内需は必ず拡大する。
しかし日系企業が国内企業と価 格競争を演じても勝ち目はない。
日系の強みを維持したまま事 業構造の現地化を進める必要がある。
現地の零細経営者がパー トナーになる。
真面目でやる気のある経営者を選び抜き、日本 流に育て上げ、そして囲い込め。
    (聞き手・大矢昌浩) しらど・しげお  1948年生まれ。
早 稲田大学政経学部(中 国現代政治専攻)卒。
72年、三井物産入 社。
物流部門で中国物 流の実務経験を積む。
2002年に同社を退社 し、アジア・ロジスティ クス研究所を設立。
現 在に至る。
中国事業関 連の著書多数。

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