ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年3号
特集
物流不動産ファンド 日本レップ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2009  18 日本レップ ──聖域なき改革で荒波を乗り切る  昨年3月、事業のコアとなる大型ファンドを組成した。
ところが、想定通りに資金が集まらず、09 年3 月期は大 幅な赤字に転落する。
人件費削減、拠点閉鎖、役員報酬カッ トなどを断行し運営コストを半減。
ポートフォリオを整理 し、親会社からの資金援助も取り付けた。
経営基盤を立 て直して生き残りを図る。
 (聞き手・大矢昌浩、石鍋 圭) リーマンショックが海外投資家に打撃 ──〇九年三月期の業績予想を大幅に下方修正しま した。
 「営業収益は前回発表予想よりも四五憶円の減少、 当期純利益も同三六憶円のマイナスで赤字経営にな ります。
要因は大きく二つ。
コアファンドの非連結 化の遅れと、保有物件の売却時期変更です」 ──非連結化の遅れを具体的に説明してください。
 「昨年三月に資産規模一〇〇〇億円を想定した私 募ファンドを組成しました。
シードプロパティ(ファ ンドを組成した時点の資産)は一五物件で金額は約 六五〇億円。
このうち四五〇億円はローンで調達し、 残りの二〇〇憶円はエクイティです。
このエクイティ 部分を当初は我々が全て持っていた。
そのままでは バランスシートに計上されて、ファンドも連結対象 となるため、ファンドからのフィー収入は計上できま せん。
エクイティ部分を国内外の投資家にコミット してもらい連結から外していくことで、初めて我々の 収益として計上できるようになるわけです。
ところが、 投資家によるコミットの取得が計画通りには進まな かった。
結果、ファンドは連結されたままとなり、 見込んでいた収入も計上できなくなったという経緯で す」 ──なぜ投資家の出資が遅れてしまったのでしょうか。
 「やはりリーマンショックを引き金とする経済環境 の変化が大きい。
特に海外では影響が出るのが早かっ た。
今期はちょっと待ってくれ、と。
しかし、年が 明けてからは複数の機関投資家から前向きな言葉を いただいています。
昨年十一月の第一クロージング までにコミットされたエクイティは六一・五億円ほど ですが、今年六月の第二クロージングに向けては二 〇〇億円のコミットを目指します」 ──保有物件の売却時期変更というのは。
 「以前取得した小型の倉庫や古い物件の中には、 コアファンドに合わないものもある。
それらを売却し、 バランスシートを改善する計画を立てていました。
し かし、不動産市場の混乱が続く中での売却は必ずし もベストの選択ではない。
一時的に継続保有し、稼 働中の物件については賃料収入を計上する方が経営 上得策だと判断し、売却を来期以降に行うことを決 定しました」 ──日本レップのこれまでの投資戦略は、立地など の条件が多少悪くても取得し、高いリーシング力で テナントを誘致するというものでした。
他のファンド があまり手を出さない物件のため、その分、取得価 格も低かった。
逆に考えれば、御社でなければ客付 けできない物件ということです。
そのような物件に本 当に買い手が付くのでしょうか。
 「様々なケースがありますが、たとえば我々がリー シングをしてテナントと長期契約を結んでいる物件の 場合、それを欲しがる方は当然いるでしょう。
また、 残りの契約期間が短い物件でも買い手が付くことも ある。
何故なら、その物件を取得することでテナン トとの関係ができ、別のビジネスに発展する可能性 があるからです。
さらに最近ではテナント自身から『買 いたい』という引き合いも増えている。
そもそも、我々 が取得してきたのは証券化に耐えられる物件です。
買い手に関してはそれほど悲観的ではありません」 ──下方修正に伴って、コスト削減のためのリスト ラクチャリング案も発表されています。
その中には人 件費削減も含まれている。
先ほど『経済環境の悪化』 という言葉が出てきましたが、その一言だけで済ま せてよいのでしょうか。
片地格人 社長 Interview 特 集物流不動産ファンド いま何が起きているのか? 19  MARCH 2009  「非常にシンプルな考え方ですが、経営というのは 収入と支出のバランスです。
そのバランスを欠けば、 今回のように赤字経営に陥ってしまう。
人件費の抑 制に対しては、非常に厳しい声が大きいということ は認識しています。
ですが経営者として、収入に対 して大きすぎる支出を放っておくことはできません。
人件費だけでなく、拠点の見直しや経営陣の報酬カッ トなどを断行し、コストを半分に抑える努力をして います」  「あまり使いたくない言葉ですが、現在は一〇〇年 に一度の経済危機。
今回の景気悪化や金融環境の変 化は、多くの人が予測できなかった。
誰も体験した ことのないスピード感です。
今後も何が起こるかわか らない。
そんな中にあって、我々が最重要視しなけ ればならないのは、企業を存続させるということです。
我々は常々ステークホルダーに対し、中長期で安定 した経営というものを約束している。
彼らに迷惑を かけることは許されないのです」 証券化ビジネスの創世期は終わった ──それにしても市場が受けたインパクトは大きい。
資金繰りを危ぶむ声も出ていますが。
 「当社に関しては問題ありません。
現在のキャッシュ ポジションのみでも事業継続に支障はありませんが、 資金繰りをより確実にするため、昨年十一月に親会 社マッコーリー・グッドマン・ジャパンとの間に総額 六五億円のローンに関する契約を結びました。
また、 冒頭に申し上げた私募ファンドへのローンは、四年 間の長期資金として調達しており、当面リファイナ ンスの心配もない。
さらに既存運用中のファンドか ら安定的なフィー収入もあり、キャッシュフローに問 題はありません」 ──ファンド事業者は軒並み逆風下に置かれている ように思いますが、今後はどのような投資戦略を?  「確かに一般的な経済環境は厳しいですが、投資 機会という面から考えると逆風どころかチャンスだと 考えています。
現在は地価が下落傾向にあることに 加え、建築資材も急落している。
つまり、物件の新 規開発には非常に適した局面といえます。
また、既 存物件の取得もしやすい。
これは多額の借入れをベー スにハイレバレッジで不動産事業を行ってきたプレー ヤーが、資金調達のために投げ売りに近い形で物件 を売却したがっているためです」 ──新規開発といっても高機能物流施設へのニーズ は一巡したという見方もありますが。
 「我々はそうは考えません。
物流企業はコスト削減、 拠点の統廃合を迫られている。
一方で3PLの台頭 も著しい。
彼らのニーズを満たすには高機能な物流 施設、我々は『今日的物流施設』と呼んでいますが、 そういった物件がまだまだ足りない。
それを提供して いくのが、我々の社会的存在価値だと認識しています」 ──物流不動産の証券化ビジネスは、今後どのよう な変遷を辿るのでしょう。
 「物流に限らず、不動産証券化ビジネスはまだまだ 拡大していくと思います。
今は一時的にシュリンク していますが、このままマーケットが消えるなどあり 得ない。
その中で、物流不動産の割合も大きくなっ ていくでしょう。
現在は第一次フェーズから第二次 フェーズへの移行期といったところでしょうか。
おそ らく主要プレイヤーの顔ぶれはそんなに変わらないで しょうが、今の荒波をうまく乗り切り、生き残った者 が勝者ということになる。
我々も打つべき手は打ちま した。
来るべき次のフェーズで、独自のポジションを 築いていきたいと考えています」 会社概要 日本レップ  1980年、物流不動産の仲介を行うエイティ・エイ ジとして創業。
99年に日本レップに商号を変更した。
2005年に現在の中核事業となるアセット・マネジメ ント事業を開始し、物流不動産ファンドを組成した。
06年に東京証券取引所マザーズに上場。
07年に世界 有数の物流不動産会社マッコーリー・グッドマングルー プの投資会社マッコーリー・グッドマン・ジャパンと 資本業務提携を結んだ。
08年3月に資産規模1000億 円を想定した私募ファンドを組成したが、資金調達が 難航。
09年3月期は赤字経営に陥ることとなった。
12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 -2,000 -4,000 (百万円) 06年3月期 業績推移(連結) 07年3月期08年3月期09年3月期 (予想) 当期利益 売上高

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