ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年2号
特集
物流企業番付 ワンビシアーカイブズ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2009  14 ワンビシアーカイブズ ──脱・倉庫業で新市場を創造  書庫や情報を保管する仕組みを英語で「アーカイブズ」と呼ぶ。
そ のアウトソーシング・サービスを日本に持ち込み、新市場の開拓に挑 んでいる。
1990 年代には経営危機に陥るも、企業再生ファンドの下 で立て直しに成功。
2007 年にはファンドの手を離れ、豊田自動織機 の100%子会社となって業容を拡大している。
  (聞き手・大矢昌浩) リスク管理を事業の柱に ││業績が急拡大しています。
 「この三年間は非常に順調に伸びました。
従来の書 類保管事業に加え、『ビジネス・プロセス・アウトソー シング(BPO)』と呼んでいる文書管理のアウトソー シング事業が拡大しています。
ただし、今期は少し 成長のペースが鈍ります。
サブプライム問題以降、 金融機関のお客様を中心に大型案件の凍結や先送り が出て、その影響を受けています」 ││日本の書類保管市場の規模は?  「公式なデータはないんです。
昨年夏に当社が独自 に弾いた推計で、およそ七〇〇億円。
ただし、これ は書類保管だけで、BPOとなると算定ができませ ん。
現状では文書管理の多くは社内で処理されてい ます。
せいぜい系列の子会社に委託する程度で、二 〇〇〇年頃まではアウトソーシングの市場が日本に は実質的に存在しなかった」 ││欧米では?  「最大手は米国のアイアン・マウンテンで約二七億 ドル(約二五〇〇億円)の年商があります。
アーカ イブズというサービスが世間的にも広く認知されてい る。
私自身、米国で長く仕事をしていたのでよく知っ ています。
欧米企業は何をやるにも全て記録に残す。
労働市場が流動的なので、そうしないと引き継ぎが できないんです。
また、その膨大な資料を家賃の高 いオフィス街で保管するのはムダなので、早くからア ウトソーシング・サービスが定着しました」  「日本はそこまでしなくてもこれまではあまり困ら なかった。
終身雇用で、あの人に聞けば何でも分か るという?生き字引〞的なベテランも社内にいた。
マニュアルはあっても、実際には滅多に見ることはあ りませんでした。
しかし、日本でも業界再編や雇用 の流動化が進み、J│SOX法など内部統制の強化 が進んだことで、これまで通りにはいかなくなってい ます。
アーカイブズに対するニーズは、不況で一時 的に足踏みすることはあっても、中長期的には拡大 していくはずです」 ││アーカイブズ事業とは具体的には?  「当社の場合のアーカイブズ事業は、大きく四つに 分けられます。
一つは書類保管。
二つ目がBPO。
三つ目が災害リスクに備えたコンピューターのバック アップサービス(BS)。
四つ目は、売上規模はまだ 小さいのですが、書類の抹消サービスです。
『データ・ ディストラクション・リサイクル(DDR)』と呼ん でいます」 ││元々は単純な書類の保管事業から始まっている わけですね。
 「二〇〇〇年頃までは箱単位で書類を預かる保管 サービスが主流でした。
それとBSですね。
そこに BPOなどの付加価値を付けていきました。
それ以 前から当社はBPOをコツコツと手がけていたのです が、あまり光が当たっていなかった。
〇四年に作成 した三カ年の中期計画でBPOを書類保管に次ぐ二 本目の柱とする方針を打ち出して体制を整えました。
それが今は成長の原動力になっています」 ││従来型の倉庫業とは、かなり事業形態が違う。
 「今でも当社は世間から倉庫業者と呼ばれることが 多いのですが、我々は自分たちをレコードマネジメン トのトータルソリューションを提供する会社であり、 またリスクマネジメントの会社であると位置付けてい ます。
必要としている人材も倉庫業者とは大きく違 います。
我々が倉庫業者ではないということを訴求 するために、我々の先輩経営者たちは会社設立時の 星川恭治 社長 注目企業トップが語る強さの秘訣総合3位 15  FEBRUARY 2009 ワンビシ倉庫という社名を現在のアーカイブズに変 え、二〇〇〇年頃には倉庫業界の健康保険組合から も脱会しました」 ││とはいえ、現在も倉庫業者と競合はしています。
多くの倉庫業者が文書保管事業に参入しています。
 「その通りです。
現在のような不況になると、倉庫 スペースがガラガラと空いてくる。
それを活用したい ということから、我々からすれば考えられない値段の オファーを出してくる業者も出てきています。
その結 果、値段だけで決める顧客は離れてしまう。
〇五年 頃から、そうした傾向が顕著になっています」 ││競争が激しくなっているにもかかわらず、業績が 拡大している理由は。
 「文書の単純保管だけでは償却し終わった施設を持 つ流通倉庫さんにはかないません。
しかし、薬事法 に対応した保管サービスや情報資産管理や文書管理 プロセスのコンサルティングまで含んだソリューショ ンなど、他所ではできない領域の仕事が増えています。
そもそも、この市場はまだ黎明期にあります。
今は取っ た、取られた、ということより、サービスの存在を 認知してもらい市場規模を大きくしていくことのほう が重要です」 トヨタ生産方式を活かす ││ワンビシの沿革を振り返ると、一九九〇年代に は経営危機に陥り、一時は企業再生ファンドの傘下 に入っています。
 「私自身、企業再生ファンドによって〇四年に当社 に送り込まれた人間です。
ファンドから打診を受け、 事前に機密保持契約を結んで当社のバランスシート を見たところ、確かに負債は抱えていたけれど、そ れはバブル時代に他の事業に手を広げ過ぎて失敗し たためで、本業は痛んでいなかった。
しかも、欧米 を見れば今後は日本でもアーカイブズというサービス が一般化していくことは推察できた。
立て直しは可 能だと即座に思いました」 ││その後、順調に業績が回復し、〇七年五月にファ ンドは豊田自動織機に株式をすべて売却しました。
 「ファンドにとっては売却なりI P Oなりのエグ ジット(出口戦略)が当初から規定路線だったわけ ですが、実はファンドの売却先候補のリストには豊 田自動織機は載っていなかった。
先方から声をかけ ていただいたんです。
なぜ当社に注目してくれたのか 理由を尋ねたところ、豊田自動織機にはトヨタグルー プの源流企業として常に新しい事業を開拓していこ うという遺伝子があるそうです」  「そこで彼らは、まず物流に出て行った。
〇二年に アドバンスト・ロジスティクス事業部という新しい組 織を作って、工場で磨き上げたトヨタ生産方式(T PS)を物流の世界に移植する事業を開始した。
物 流センターにおけるモノ、あるいは小売りの店頭に おける現金の管理にTPSを適用していきました。
そこから情報の管理も同じだろうという発想になっ ていったようです。
具体的には豊田自動織機を中心 として物流の富士物流、現金管理のアサヒセキュリ ティ、そして情報管理の当社という、ユニークな会 社が集まってユニークなソリューションを作ろうとい うのが当時の考えでした。
それは面白そうだと、私 も素直に乗っていけました」 ││ワンビシの業務にもTPSを導入したのですか。
 「豊田自動織機から三人ほど改善活動の専門家に 来ていただいて、一年前から取り組みを始めています。
今はそこに専任の社員を投入して、もっと強力に取 り組みを進めようとしているところです」 星川恭治(ほしかわ・きょうじ)  1970年、横浜市立大卒。
71年4月、ソニー入社。
同社財務部、 SONY Corporation of America 上席副社長等を経て、96年本社財務 企画管理部長。
96年、バクスター入社、常務取締役に就任。
2000年、 同社長。
04年3月、ワンビシアーカイブズ入社。
同4月、社長就任。
現在 に至る。
過去5 年間の売上高推移 2003 年度2004 年度2005 年度2006 年度2007 年度 250 200 150 100 50 0 152 161 165 193 232 (単位:億円) 22 22 22 22 22 130 139 143 171 211 保険サービス部門 総合情報マネジメント部門 計 文書保管市場で圧倒的トップシェア握る  1966年、文書保管をメーンとするワンビシ倉庫として創業。
78年、 ワンビシアーカイブズに社名変更。
90年代には多角化に失敗し巨額の負 債を抱えた。
2003年3月、東京海上キャピタルと野村プリンシパル・ファ イナンスなどが出資する企業再生ファンドが約500億円で買収。
負債を 切り離すと共にアーカイブズと保険代理店以外の事業を整理。
リスクマ ネジメントの専門企業として再出発を切った。
 主力とするアーカイブズ事業は、日本では2000年頃まで地方自治体 や官公庁の利用が中心で市場規模も小さかった。
同社の売上高も100億 円程度にとどまっていた。
しかし、その後、コンプライアンス規制の強 化が進んだことで民間企業にも利用が広がっている。
この分野でトップシェ アを握るワンビシの業績も市場規模拡大の波に乗るかたちで伸びている。
本誌解説 物流企業番付《平成21年版》

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