ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年10号
SOLE
SOLE報告

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2005 86 逃げが見られたが、今後はいわゆる「揺りかごから墓場まで」の物 資供給システムの全体をカバーする取り組みが求められ、自然科学 や社会科学からの広範な応援を得る必要がある。
ここに「循環型ロジスティクス」へのアプローチが求められるが、 それは量的な側面へのアプローチと質的側面へのアプローチがある。
そしてそこにはこれまでのコスト概念だけでなく、エネルギー、エ ントロピーの概念を持ち込まねばならない。
量的側面からのアプローチとして、エネルギーの効率的な変換を 求める。
循環のレベルを素材、パーツ、部品、製品レベルと階層構 造的に捉えると、レベルが上がるほど循環に要するエネルギーは大 きくなる。
製品レベルでの循環(長寿命化、リユース)が困難であ れば、すぐに素材レベルの循環(回収、リサイクル)に持ち込むの ではなく、部品、パーツのレベルでの循環(リマニュファクチャリ ング)を行いたい。
質的側面からのアプローチとしては、エントロピーの増大抑制を 求める。
すなわち、製品が構造的に元に戻るような仕掛けを予めす ることで、たとえば「写ルンです」、あるいは複写機のレンタル制に 見られる考えである。
勝手気ままに流したものは元には戻らない。
4 CO2削減の取り組み 環境問題の難しさはペットボトルのリサイクルのケースでよくわ かる。
ペットボトルを使い捨て型にするか、リサイクル型にするか、 前者は1本当たり9.2円、後者は18.3円、果たしてどちらが環境に優し いのか。
コスト概念だけでは結論が出せない。
最後に物流部門のCO2削減策として以下を提言したい。
?物流共同化によるシステムの高度化 競争は店頭で行い、システムは共同で運用し、物流そのものでは 競争しない(物流で競争すべき事業は別であるが) ?一定距離を超えるトラック輸送の規制によるモーダルシフトの推進 道路本来の意味は何かを考えるべし 遠距離輸送は鉄道、海運の利用を ?製品のコンパクト化・減容化の推進 パッケージの肥大化はひどい(PCソフトの例) 現場での組立、詰め替え用洗剤の例あり ?新しいモードの開発と導入(パイプライン、河川の活用など) ロンドンの地下郵便物の例、諸外国のパイプラインの例 ?物流業の社会的地位の向上 物流・ロジスティクスのプロフェショナルを育成すべし 以上(文責在事務局) 9月のフォーラムをもって今年度のシリーズは終了した。
10月は SOLE東京支部の総会を開催するためフォーラムは開催しない。
11 月からは新しいフォーラムのシリーズをスタートする。
ご期待いた だきたい。
このフォーラムは年間計画に基づいて運営しているが、単月のみ の参加も可能。
1回の参加費は6,000円。
参加希望などの問い合わせ は事務局まで(sole_consult@jmac.co.jp)。
SOLE報告The International Society of Logistics æ t H [ ¤ m „ æ t H [ ¤ m „ SOLE東京支部では毎月「フォーラム」を開催し、ロジスティク ス技術やロジスティクス・マネジメントに関する活発な意見交換、 議論を行い、会員相互の啓発に努めている。
今回は、7月13日に行われたフォーラム「循環型ロジスティクスの 構造化」について紹介する。
スピーカーは諏訪東京理科大学経営情 報学部経営情報学科の津久井英喜教授。
* * * 1 物流・ロジスティクスとは何か 物流ないしロジスティクスにおける「環境問題」を「循環型ロジ スティクス」の観点から考えたいが、まず物流・ロジスティクスに ついて整理しておきたい。
それは環境問題の焦点である「CO2削減」 は物流・ロジスティクスの構造に関わる本質的な問題だからである。
物資供給システムは、物流→ロジスティクス→SCMと段階的・非 連続的な発展(進化)をしてきた。
しかし、従来型のアプローチで 「CO2削減」が解決可能であるか疑問である。
我々の対象は「システム」である。
システムであるためには「機 能の異なった要素が集合し、共通した目的のために、相互に有機的 な関係を持つことであり、物流→ロジスティクス→SCMはさらに 「循環型ロジスティクス」へと発展していくものと考えられる。
システムの「段階的発展論」(阿保栄司、1996年)からすれば、上 位システムは、根は一緒であってもこれまでとは異なったメルクマ ール・思考方法・基礎理論を必要とする。
システムの在り様も機械系システム、業務系、経営系、社会系と 発展していくと、そのシステムは環境の変化を察知して、システム 自身が変身して生命系システムに向かっていくものと考えられる。
2 環境問題とは何か 環境問題の最たるものは「温室効果ガス」の代表である「CO2」 の排出量とその削減問題である。
『環境白書(平成17年度)』によれ ばCO2排出量の部門別内訳は第1位が産業部門(工場等)で37.9%、 運輸部門(自動車、船舶など)が20.7%で第2位に上げられている。
しかし、この数値のおよそ半分は自家用自動車(マイカー)からの もので、トラックからの排出量はむしろ横這いないし減少している。
運輸部門のCO2削減策としては、自動車燃費の改善、ITSの推進 による渋滞緩和、公共交通機関の利用促進、貨物自動車の積載率の 向上、モーダルシフトなどの取り組みがなされている。
近く「省エネ法」が改正されて運輸部門も対象となり、荷主も運 送事業者もCO2削減が法的に義務付けられることになる。
3 ロジスティクス研究の見直し 環境問題に対する従来のロジスティクス研究は見直す必要がある。
ロジスティクス上の問題は、生産・販売などから来る他律的(後始 末的)要素が多く、複雑で手に余るのが実態である。
また、ロジス ティクスはサービス創出ビジネスであるために仕事の痕跡が残りづ らく、無関心が許されたきらいがあった。
手法的にも経営学(広義)の領域にとどまり、他領域との共同研 究に不慣れであった。
したがって従来の研究は「局所最適化」への

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