ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年11号
特集
物量減少 変化に対応するマテハン投資──カンダコーポレーション

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2008  34 独り言をつぶやく作業員  カンダコーポレーションの子会社、カンダビジネス サポートの物流センターの作業風景は一風変わってい る。
仕分けスタッフが絶えず独り言をつぶやいている のだ。
その声によく耳を傾けてみると、数字や「は い」「次」「もう一度」といった単語を発しているこ とに気がつく。
 他の物流センターと決定的に異なる点はもう一つあ る。
通常、仕分け業務にはハンディスキャナーや仕分 けリスト表などが用いられることが多いが、彼らは何 も手にしていない。
代わりに頭にヘッドセットを装着 し、腰には小さな端末機を巻いている。
 これは米国に本社を構えるヴォコレクト社が開発し た「ヴォコレクトヴォイス」という庫内作業システム だ。
日本ではまだ馴染みは薄いが、欧米では約五〇 〇社・二五〇〇拠点で導入されている。
ユーザー企業 にはウォルマートやナイキ、ボーイングなど世界に冠 たる大企業も数多く名を連ねる。
日本では昨年一月 から販売が開始され、これまでにカンダビジネスサポ ートを含めて四社が導入している。
 同システムの特徴は「ヴォイス」という製品名が示 す通り、ヘッドセットから音声で作業指示が飛んでく る点にある。
庫内オペレーション全般に適用すること が可能で、ユーザーの要望によりカスタマイズできる。
カンダビジネスサポートでは摘み取りや種まきなど仕 分け作業全般に使用している。
 ヴォコレクト社の日本法人、ヴォコレクトジャパン のシソン・セザール社長は「ハンディスキャナーや仕 分けリストを持つ必要が無いので、スタッフは両手を 自由に使って作業できる。
それによって集中力が増し、 ミスを抑えることができる」と説明する。
 いわゆる「ハンズフリー」の状態で作業できること は、想像以上に大きな意味を持つようだ。
導入を担 当したカンダコーポレーション経営企画室の松尾健太 郎課長は「導入からまだ二カ月弱しか経っていないが、 効果は既に表れ始めている。
リスト表を手に持ちなが らの業務と比べれば、作業効率は五〇%程度上回っ ているのではないか。
運用の仕方によっては、まだ まだ伸びしろはある」と評価している。
システム刷新の舞台裏  カンダビジネスサポートが音声システムを導入したの は今年八月。
物流センターの移転に伴い、それまで使 用していた自動仕分け機を廃棄し、仕分けシステムも 刷新した。
その狙いをカンダビジネスサポートの吉林 正和社長は「今後は新規顧客を複数取り込むことで収 益の柱を増やし、より安定した経営を目指さなければ ならない。
音声システム導入はその一環だ」と語る。
 これに先立つ今年五月、親会社のカンダコーポレー ションは二つの項目で特別損失を計上している。
一つ は「固定資産の減損処理」、もう一つは「業務撤退に 伴う損失」。
計上した二つの特別損失は連結総額で二 億八〇〇〇万円に迫る。
 特別損失の要因を少々乱暴にいえば、カンダグルー プで3PL事業を展開するカンダビジネスサポートが 収益の柱を失ったことにある。
主要顧客から請け負っ ていた物流業務が、他社へと移ってしまったのだ。
そ の対応策として同社が最初に決定したのが、従来の 物流センターの縮小移転と大型設備の切り離しだ。
 それまでは広大なセンターに、四〇〇店舗に自動仕 分けできる大型シューターを導入して作業を行ってい た。
しかし、これは件の主要顧客があって初めて効果 を発揮していた。
主要顧客を失えば当然、荷数が減  カンダコーポレーションは今年8月、物流センターの仕分 けシステムを刷新した。
従来の大型自動仕分け機を廃棄し、 日本ではまだ馴染みの薄い音声対話型の業務システムを新 たに採用。
これを契機に、物量の変動や荷主企業の顔ぶれ の変化に対する柔軟性向上を目指す。
    (石鍋 圭) 変化に対応するマテハン投資 ──カンダコーポレーション 逆風をバネに事業を拡大 35  NOVEMBER 2008 特 集 り稼働率は下がる。
稼働率を確保できなければ、設 備が大型なほど運用コストが重くのしかかってくる。
 大型設備との訣別を決定したのには、他にも理由 がある。
物量波動への柔軟性の問題だ。
前出の松尾 課長はこう指摘する。
 「従来の大型シューター設備は高い生産性を誇る一 方で、物量変化への柔軟性には必ずしも優れないと いう側面があった。
物量が跳ねれば、延べ作業時間を 延長することでしか対応できないし、反対に減少す れば運用コストをペイできなくなる。
我々が主に扱う アパレル商材は季節などによって物量変動が大きいと いう特徴がある。
もともと大きな課題の一つだった」  さらに、莫大なメンテナンス費や、老朽化の問題も あった。
同社にとって、センターと設備のダウンサイ ジングは当然の選択だったともいえる。
柔軟性の高さが採用の決め手に  次に議論の対象となったのは、廃棄した大型設備 に代わる仕分け作業システムだ。
後継のシステムを選 定するに当たって特に重視したのは二点。
コストパフ ォーマンスが高いことと、波動への対応が柔軟である こと。
ここでいう波動とは、物量だけでなく新規で 取り込んだ事業にも即座に対応できることも含む。
 検討に当たり、ヴォコレクト社の音声対話型システ ムのほか、デジタルピッキングシステム(DPS)とピ ッキングカートシステム(PCS)との比較を行った。
 最初に検討対象から外れたのはPCS。
カート一台 の取るスペースが大きいため、ダウンサイズした庫内 ではどうしても作業効率に影響が出てしまう。
また、 コスト面もネックになった。
扱う物量が増えた場合は 新規にカートを導入することになるが、一台当たりの 価格は高額。
安易に増設することはできない。
 音声システムとDPSが最終選考に残ったが、約六 〇〇〇万円の導入コストやランニングコストに差はほ とんどなかった。
明暗を分けたのは波動への柔軟性だ。
DPSは導入に際して倉庫に配線を引く。
後から増 設やレイアウト変更をする場合には工事が必要だ。
音 声システムであれば、導入時に既存の基幹システムに 手を加える他は、ヘッドセットと端末機の補充だけで 済む。
松尾課長は「システム自体の優劣ではなく、あ くまで弊社のオペレーションに最適だと判断したシス テムを選んだ結果」と語る。
 いかに最適と判断したとはいえ、国内では導入事 例の少ないシステムには抵抗感を抱くのが普通だろう。
そこを採用に踏み切ったのは、吉林社長に音声システ ムに関する知識があったことが大きい。
 「一〇年ほど前、興味深いシステムだと思い、他社 の音声システム導入を検討したことがあった。
しかし 音声品質や認識の甘さなどに問題があり、本格導入 には至らなかった。
ヴォコレクト社のシステムはクリ アすべきレベルを超えていた」(吉林社長)  もちろん、懸念がなかったわけではない。
それま で機械依存だった現場に、全く異色のシステムが受け 入れられるのかという意見もあったという。
 「しかし、我々は新たな事業を積極的に獲得してい かなければならない立場にある。
変化は必要だ。
幸 い、現在のところ現場にはうまく馴染んでいる。
今後 さらに作業効率を高めるには、現場だけでなく、シ ステムを運用する我々の成長も不可欠だ。
それが新規 事業の獲得にも繋がると考えている」(松尾課長)  松尾課長の言葉は正鵠を得ているだろう。
ビジネス に「魔法の杖」は存在しない。
運用者の明確なヴィジ ョンと、現場スタッフの理解・体現。
これなくしてマ テハン投資の成功はあり得ない。
カンダビジネスサポート の吉林正和社長 カンダコーポレーション 経営企画室の 松尾健太郎課長 ヴォコレクトジャパンの シソン・セザール社長 ピッキングする商品番号や数量が音 声で聞こえてくる 音声が聞こえなかった場合は「もう一 度」と言うと同じ音声が繰り返される ピッキングしたら「次」と言えば、次 の指示が飛んでくる 作業員が身につけるヘッドセットと 端末機

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