ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2008年10号
特集
共同物流入門 成功と失敗を分けるもの

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2008  14 成功と失敗を分けるもの  物流共同化の取り組みは大部分が失敗に終わってい る。
ロットのまとまらない荷物は一緒に運べば効率がい い。
環境にも優しい。
誰もが総論では賛成しても実施 に移す段階では足並みが崩れる。
共同化を単なるコスト 削減策としてではなく、ロジスティクスの革新として位 置付ける必要がある。
          (大矢昌浩) 解 説 先行事例の教訓  日本物流学会は今年五月、「物流共同化実態調査研 究報告書」をまとめた。
過去四〇年間にわたる我が 国の物流共同化の取り組みを整理したものだ。
そこ には各種の資料や経済ニュースに登場した二三八件の 共同物流の事例がズラリと並んでいる。
ただし、その ほとんどが現在では活動を停止している。
 二三八件のなかには政府の補助金や税制特例など の金融的支援を受けた案件も数多く含まれている。
当 初は都市部の交通渋滞緩和や中小企業支援策として、 現在では環境負荷低減という名目で、物流共同化の 取り組みには毎年継続的に公的資金が投入されてき た。
しかし、その経済効果は検証するまでもない。
 なぜこれほど多くの取り組みが途中で挫折してしま ったのか。
どうすれば失敗を避けることができるのか。
今のところ有効なガイドラインは見当たらない。
海外 にも参考になる関連資料は皆無に近い。
それでも先 行事例が教えてくれることはある。
物流共同化の取 り組みを主導するプレーヤーの業態から、?メーカー 主導型、?流通業主導型、?物流会社主導型の三つ に分類すると、それぞれのスキームと現在の状況は以 下のように整理できる。
?メーカー主導型──競争は店頭で  同じ業界のメーカー同士の共同配送は納品先が重な るだけにコスト削減効果が大きい。
メーカー別縦割り の物流体制が敷かれてきた業界で大手メーカー同士が 手を組めばドラスチックなコストダウンが可能になる。
ただし、それには物流子会社をはじめ既存インフラの リストラが避けられない。
 ライバルと手を結ぶことに対する反発もある。
とり わけ業界最大の物量を持つトップメーカーは、もとも と物流の効率性において競合他社よりも有利な立場 にあり、共同化によるコストメリットが相対的に小さ くなってしまうことから、共同物流への移行が?敵 に塩を送る?結果を招いてしまう。
 そのためこれまでメーカー主導型の共配は、競合関 係にない異業種と、配送データを付き合わせて帰り便 や既存のインフラの空きを融通し合うといった限定的 な取り組みにとどまっていた。
流通チャネルが異なる ため、調整には手間がかかり、いったんマッチングで きても環境変化の影響を受けやすく長続きしないこ とが多かった。
 しかし、国内市場の縮小、流通業の巨大化、さら には環境問題の高まりなどを受けて、ライバルメーカ ー同士のコラボレーションも今やタブーではなくなっ てきている。
今後は同じ業界の物流子会社同士の合 併などを通じて、本格的な物流共同化に乗り出すケー スも出てくることが予想される。
?流通業主導型──川下からの物流再編  チェーンストアが物流センターを設置して店舗納品 を集約する一括物流が、卸売業を経由してメーカー段 階にまで波及している。
卸売業主導で調達先メーカー の在庫を共同保管するセンターを設置。
その倉庫運営 費と卸売業への納品配送費を「センターフィー」の名 称でメーカーから徴収する。
 日本酒類販売は一九九四年に酒類メーカーの共同 物流を事業化。
その後、二〇〇二年には加工食品卸 の国分と菱食が共同出資でフーズ・ロジスティクス・ ネットワークを設立した。
医薬品業界でも〇五年にス ズケンがメーカーの物流共同化を企画・管理するコラ 15  OCTOBER 2008 共同物流入門特集 発売するまで、新たな商品やサービスの開発が全く見 られなかった。
 路線便でカバーできない中ロット混載輸送のニーズ を、業種別の共配サービスが満たしてきた。
そこでは メーカーの物流子会社が活躍している。
親会社の荷 物をベースカーゴに、積み荷を限定した路線便を開発。
業界の商慣行を反映したサービスは、通常の路線便に は真似ができない。
集配先が限定されているため輸 送効率も高い。
共同化がプロセスを革新する  ただし、混載輸送である以上、業種別共配にも制 約はある。
出荷指示の締め時間、納品方法、ユニッ トロード、情報伝達のフォーマットなど、標準化なし には効率的な運用は望めない。
そして標準化は荷主 に物流プロセスの変更を強いる。
先行事例を振り返っ ても、それに成功し、環境変化を先取りしたプロセス 改善を継続している共同化だけが生き残っている。
 音楽映像ソフト業界で圧倒的なシェアを誇る日本レ コードセンターは、小売りの店頭で使用するPOSレ ジを先に普及させることで共配を軌道に乗せた。
電 子部品のアルプス物流も荷主の物流情報システム構築 を差別化の武器としている。
メーカー主導型共配の稀 な成功例とされる日雑業界のプラネット物流にも、先 に業界VAN(付加価値通信網)の普及があった。
 「共同物流は複数の企業の物流を単に寄せ集めたも のとは全く違う。
それは複数の企業が各自のロジステ ィクス・システムを?止揚?して、新しい共同システ ムを作ることでなくてはならない」とロジスティクス・ マネジメント研究所の阿保栄司代表は指摘する。
それ が実現した時、日本発のロジスティクス理論を世界に 発信できるかも知れない。
「物流共同化実態調査研究報告書」(日本物流学会)では 過去40年にわたる238の取り組み事例が整理された 共同出資で共同物流 運営会社を設立して いるケース 19例 共同組合・連合を 作って共同化を 図ったケース 66例 流通業界に見られる 一括物流のケース 18例 物流事業者主導 によるケース 60例 個別企業が複数 集まり共同化を 行うケース 75例 注:同報告書は研究の中間報告であり、上のグラフのうち、とくに流通業界の一括物流については   他にも多数の取り組みが存在している プラネット物流は今年1 月、埼玉に延 べ床約4 万平方メートルの「北関東流 通センター」(写真)を開設し、念願 の首都圏進出を果たした。
事業の開始 から約20 年がかかった。
ボクリエイトと現場を運営するコラボワークスの二社 を設立している。
 通常、メーカーの出荷は工場の稼働に合わせて土 日祝日は休みになる。
一方で小売業を直接相手にす る卸売業は三六五日二四時間稼働を強いられている。
上流と下流の活動のギャップを現在は卸が埋めている。
メーカーの共同保管倉庫を設立して調達を集約するこ とで、卸の在庫負担と荷受けの手間を軽減しようと いう発想だ。
 しかし、メーカーが自社倉庫から共同倉庫に全ての 在庫を移管しない限り、流通段階が一つ増えて、在 庫が分散することになる。
当該エリアに自社施設があ る場合には、その後処理も問題になる。
そのため大 手メーカーほど卸による共同化の提案には乗りにくい。
川下からの物流再編の動きが、メーカー・卸間に軋み を生んでいる格好だ。
?物流業主導型──混載サービスの開発  佐川急便が全国五〇カ所に配置する「SRC(佐 川流通センター)」。
アパレルを中心に一社当たり三〇 〇坪〜五〇〇坪程度のスペースを利用する中堅荷主の 共同物流拠点として機能している。
宅配便ターミナル を併設しているため集配を省けるというメリットがあ る。
多頻度小口化が進んだことで、従来は貸切トラ ックがメーンだった調達物流にも宅配便を使うケース が増えているという。
 宅配便そして中ロット貨物の混載サービスである路 線便(特別積合便)は、物流業主導型の大規模共配 と言える。
このうち宅配便は七六年にヤマト運輸が 「宅急便」を発売して以降、クール便や時間指定など サービスの革新が進んだ。
しかし路線便は〇六年にヤ マトと西濃運輸が「ジットボックスチャーター便」を

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