ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年12号
ケース
物流拠点トラスコ中山

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2007  36 物流拠点 トラスコ中山 全国18カ所に保管型センターを配置して “欲しいものをすぐに届ける”体制を構築  住宅メーカーの積水ハウスは業界で初めて、新築 施工現場で発生する廃棄物のゼロエミッションを達 成した。
現場で分別を行い、集荷拠点を経由して 自社のリサイクル施設に回収する仕組みを作ること で、廃棄物の発生量を大幅に削減した。
さらに部 材の設計段階から発生抑制を図るため、回収時に ICタグで廃棄物情報を収集するシステムの構築を めざしている。
受注後半日で納品  機械工具商社のトラスコ中山ではここ数年、 物流センターの新設ラッシュが続いている。
二 〇〇一年には福岡、奈良、仙台、神奈川の 四カ所に新拠点をオープン。
翌〇二年には久 留米、〇四年には札幌と名古屋、〇五年に神 戸、〇六年に松戸、今年六月には群馬の伊勢 崎、来年以降も愛知県岡崎市と滋賀県竜王町 の二カ所に新設を予定している。
 今年六月に稼動した新物流センター「プラ ネット北関東」は、伊勢崎三和工業団地内に ある。
北関東自動車道の伊勢崎インターと国 道一七号上武バイパスに隣接し、関越自動車 道や上信越自動車道へのアクセスもいい好立 地だ。
一万坪の敷地に建つ平屋倉庫の面積は 約四〇〇〇坪。
ここに七万五〇〇〇アイテム もの商品を在庫している。
 同社はこれまでに全国一八カ所に物流セン ターを展開している。
その大半がプラネット 北関東と同規模のスペースに同じアイテム数 の商品在庫を持っている。
業界で群を抜く数 の物流拠点と膨大なアイテム数の在庫が、同 社の物流戦略の要となっている。
 扱っている商品は工場や建築作業現場で使 われるさまざまな道具類。
同社の直接の顧客 となるのは工具店や電材商などの「販売店」 で、ここを経由してエンドユーザーに商品を 供給している。
このほかホームセンターやス ーパーを通じて一般消費者向けの販売も行っ ている。
“顧客が求めるどんな商品も品揃えし、欲し い時にいつでも届ける”ことがモットーだ。
そ れによって機械工具商社としての存在価値を 高める戦略を掲げてきた。
このためにまず品 揃えにおいては、切削工具や測定器、電動機 械などの生産加工用品、油圧工具、電設資材 といった工事用品はもちろん、作業用品、保 護具などの安全用品、保管・荷役用品、オフ ィス住設用品に至るまで、エンドユーザーが 必要とするあらゆるものに対象を広げてきた。
 販売店向けの商品は主に総合商品カタログ 「オレンジブック」を通じて販売している。
そ の掲載商品は年々増え続け、〇七年度版では 十一万五〇〇〇アイテムにも上っている。
し かも、工場や作業現場での工具類の需要は緊 急性が高いことから、できるだけ顧客に近い 場所に商品の在庫を持って地域の需要にこた える形をめざしてきた。
このため全国に物流 センターのほか、一〇〇カ所近い「事業所」 (支店・営業所)を配置し、販売店からの注 文に対応してきた。
 物流センターには、「オレンジブック」掲載 商品のなかで出荷頻度の高いものを中心に七 万五〇〇〇アイテムを在庫している。
受注の 八五%に対応できる。
配送は一日二便。
これ によって物流センターに近いエリアでは、顧 客から注文のあった商品の八五%までを注文 後半日のリードタイムで届けることができる。
 物流センターから遠いエリアへは事業所から 機械工具商社のトラスコ中山は、7万5000アイテ ムもの商品を在庫する物流センターを全国各地に相 次ぎ新設している。
これまでに18カ所整備た。
戦略的に在庫を積み増し、地域特性に合わせた豊富 な品揃えと素早い納品を実施することで他社との差 別化を図っている。
37  DECEMBER 2007 配送する。
ただし事業所に在庫できるのは六 〇〇〇アイテムだけ。
事業所の在庫では受注 の四〇%までしか引き当てることができない。
それ以外は物流センターから補充を行わなけ ればならず、リードタイムが長くなる。
そこ で同社は全国に在庫型の物流センターを展開 してセンター直送エリアを拡大する戦略に出た。
半日のタイムラグを解消  プラネット北関東は、工場立地が進む群馬、 栃木、埼玉北部などの地域での需要増大を見 込んで新設した物流センターだ。
同社では工 場・作業現場ルートとホームセンタールートと で物流拠点やシステムを分けており、プラネ ット北関東は工場・作業現場ルートの商品を、 主に群馬・栃木・新潟・長野の四県に供給し ている。
 従来このエリアへは、千葉県松戸と神奈川 県伊勢原の物流センターから各事業所へ補給 を行い、エリア内にある二千数百の販売店に 対して、すべて事業所を起点に配送していた。
プラネット北関東が稼働してからは、このう ち群馬県内の六〇〇の販売 店へ物流センターから直接配 送できるようになった。
 群馬県の三つの事業所で は在庫を持たなくてもよくな り、そのうえ販売店のオーダ ーに対して物流センターにあ る七万五〇〇〇アイテムの 在庫から直接引き当てて出荷 できるようになった。
午前中 に受注して当日中に届ける即 配対応分を、従来の四〇% から八五%に引き上げること ができた。
 「営業担当者はこれをうた い文句に営業活動ができる。
需要の大きい地域にこれだ けのバックヤードがあること で、競争上かなり有利になっ ているはずだ」とプラネット北関東の狩野保 博センター長は強調する。
 センター直送エリア以外の事業所でも、物 流業務にかかる負荷が大幅に軽減された。
同 社では商品の出荷作業を外注せず、すべて自 社で行っている。
配送や事業所への補充も自 社便が基本だ。
ただし従来は、四県のうち首 都圏のセンターから遠い事業所に届ける分に は路線便を使っていた。
このため着側の事業 所では、社員が早朝に出社して荷受け検品や 仕分け作業を行わなければならなかった。
 センターの稼働を機に路線便の利用を取り やめた。
物流センターで予め方面別に仕分け、 ロールボックスパレットに積んで自社便で事業 所に出荷する。
路線便と違い自社便であるた め、着側は無人でもかまわない。
着荷のたび に検品や仕分け作業を行う必要がなくなった。
 また、これまで同社の「自社便」とは言葉ど おり社員による配送を意味していたが、プラ ネット北関東では配送業務をすべて外部に委 託している。
今後も物流センターからの直配 エリアを拡大することで、事業所の物流関連 業務を軽減していく考えだ。
倉庫管理システムで効率化  プラネット北関東の保管スペースは、出荷 バースに近いエリアと、その奥のエリアとの二 つに分かれる。
七万五〇〇〇アイテムのうち 頻度の高い商品を動線の短い出荷バース側に 配置している。
センターを立ち上げる際に最 プラネット北海道 プラネット東関東 プラネット北関東 プラネット東京 プラネット南関東 プラネットサプライセンター東京 プラネット名古屋 カットデポ中部 プラネット大阪 第1センター プラネット大阪 第2センター プラネットサプライセンター大阪 第1センター プラネットサプライセンター大阪 第2センター プラネット神戸 プラネット山陽 プラネット九州 HC東日本物流センター プラネット東北 HC関東物流センター HC西日本物流センター HC九州物流センター 事業所ネットワーク DECEMBER 2007  38 も苦心したのが、この棚割り作業だった。
出 荷エリア内の二千数百の販売店に対する過去 の出荷実績をもとに、七万五〇〇〇の全アイ テムについて棚のロケーションを決める作業だ。
 同社ではこれまで棚割り作業をそれぞれの 拠点のセンター長に一任してきた。
その方が 現場で運用しやすいと考えたからだ。
だがア イテム数の増加とともに作業の負荷は大きく なってきている。
プラネット北関東の狩野セ ンター長も稼働前の準備期間中、棚割り作業 に五カ月近くを費やした。
 毎年同じカオ(在庫アイテム)の物流セン ターを新設するたびにこうした作業を行うの はいかにも非効率だ。
そこで次の拠点からは 今回のプラネット北関東の棚割りをできる限 りコピーする方法をとることにした。
そのた めに、従来はセンターごとにまちまちだった 棚間口のサイズを統一するなど、標準化を進 める考えだ。
これでよりスムーズな拠点展開 が可能になる。
 プラネット北関東では現在、九人の社員と 二三人のパートで日に一二〇〇件の入荷と三 これに合わせて「ココナッツ」「フェニックス」 と新基幹システムとのインターフェイスが実現 し、基幹システムに蓄積したデータを容易に 取得できるようになった。
この「R3」の機 能を使って今後さらに、物流センター業務の 効率化を進める。
その一つが発注の自動化だ。
 物流センターにとっては、販売店からの注 文に対し欠品を起こさずに商品を届けること が最優先の使命だ。
販売店が発注に使う「オ レンジブック」には物流センターに在庫のある アイテムが色分け表示され、“即時出荷可能” と明記されている。
このため原則として欠品 は許されない。
 物流センターでは欠品を避けるために、セ ンターに在庫している八〇〇社を超えるメー カーの全アイテムについて、発注点管理を実 施している。
工場・作業現場向け商品の場合、 品目にもよるが基本的には最大で三カ月分の 在庫を持ち、在庫が一・五カ月分を割った時 点でメーカーに発注を行う決まりだ。
 ただしこれを全商品一律で実行するのは必 ずしも得策とはいえない。
なかには一年に一 度しか注文の入らない商品もある。
そうした 商品まで常に一・五カ月分も在庫を持つ必要 はない。
 その一方、毎日コンスタントに注文の入る 商品を出荷のたびに毎日補充発注していては、 いたずらに入荷作業を増やすことになる。
同 社のように扱いアイテム数が多く、入荷作業 の負荷が大きいセンターでは「むしろ発注点 五〇〇件の出荷を行っている。
庫内作業はす べて「ココナッツ」と呼ぶ倉庫管理システム で管理している。
 同社は〇五年一〇月に、既存のパッケージ ソフトを自社仕様にカスタマイズして、物流 センターの入出庫・ピッキング作業を管理す る倉庫管理システムを導入した。
工場・作業 現場向け商品を対象にしたシステムを「ココ ナッツ」、ホームセンター向け商品のシステム を「フェニックス」と名付けた。
 以前は入出庫・ピッキング作業を、伝票の 目視で行っていた。
これをシステムの導入と ともにすべてハンディーターミナルでバーコー ドを読み取る作業に切り替えた。
これによっ て商品知識のないパートタイマーでもすぐに 戦力として活用できるようになった。
 作業の省力化も進んだ。
例えば従来は入荷 検品のあとで支払い確定のための納品書デー タの入力が必要だったが、システム化によっ て検品と同時に支払い確定ができるようにな った。
また決算時期には棚卸し作業のために 二日がかりで派遣社員を百人も投入していた ところを、今では通常のピッキング作業など と並行して処理できるようになった。
情報シ ステムの整備が物流センターの運営コスト抑 制と作業の精度向上に大きく寄与している。
発注管理を自動化へ  昨年十一月には、SAP社の「R3」を導 入して基幹システムのリニューアルを行った。
プラネット北関東の狩野 保博センター長 39  DECEMBER 2007 を上げてまとめて発注するほうが、欠品を防 げるし現場の作業効率もよくなる」(狩野セ ンター長)という。
 このように商品の出荷量や頻度に応じて、発 注点のきめ細かなメンテナンスが必要だ。
し かも地域によって販売傾向が異なるため物流 センターごとに行う必要がある。
だが限られ た人手で、七万五〇〇〇ものアイテムをメン テナンスするのは容易ではない。
そこでこの 作業をシステムで支援することにした。
 「R3」に蓄積される日々の販売実績などを もとに、売れ行きの伸びている商品や鈍くな った商品について、発注点の見直しを警告す るシステムを来年の春をめどに導入する。
ケ ースの入り数などをもとに補充発注の数量も 正確に算出できるようにする。
物流センター だけでなく、事業所が持つ在庫アイテムにつ いても、システムによってメンテナンスをサポ ートしていく計画だ。
 物流センターに在庫するアイテムは「オレン ジブック」の掲載商品のなかから商品本部が全 国一律で決定している。
これに対して事業所 の在庫アイテムは、六〇〇〇アイテムを各事 業所が自由に選べる。
かつては全国平均で見 たときの売れ筋商品を一律に事業所の在庫ア イテムとし、「オレンジブック」にも明記して いた。
だが地域によって販売傾向が異なるこ とから、事業所が物流センターの在庫アイテ ムのなかから独自にピックアップする方法に 変えた。
 事業所が需要を読み違えるケースは当然出 てくる。
しかも事業所は営業活動に追われて 在庫のチェックが後回しになりがちだ。
その ため死に筋になるまでそのまま放置されてし まうことがこれまでしばしばあった。
システ ム化が進めばこうした状況が改善され事業所 は営業活動に専念できるようになる。
在庫を積み増し営業強化  同社は今後も在庫拡充政策を積極的に進め る方針で、現在「在庫二〇〇億&置く計画」 を進めている。
事業所がユーザーから収集す る「扱って欲しい商品」の情報をもとに、現 在の一七五億円の棚卸資産を当面二〇〇億円 まで増やし、品揃えをさらに強化しようとい う計画だ。
 毎年十二月には「オレンジブック」の改訂 が行われる。
これに合わせて物流センターの 在庫アイテムも変わる。
三年間まったく注文 のなかった商品は在庫アイテムから外され、新 製品などが新たに加わる。
来年の在庫アイテ ムは八万アイテムを優に超える見込みだ。
 プラネット北関東では今回、「オレンジブッ ク」の在庫アイテムに加えて、一メーカーだ け独自に開拓した仕入先の商品を置く。
初め ての試みだ。
「これからは地域特性をより重 視した在庫政策が必要」(狩野センター長)と 見て品揃えを強化する。
 六月のオープン以来、プラネット北関東で は毎週のように、販売店やエンドユーザー向 けに見学会を実施している。
「近くにこれだ けの在庫があるのを実際に見れば安心感を持 ってもらえる」と考えるからだ。
 物流センターは土地・建物や在庫、人に至 るまですべて一から手配した。
投資額は四〇 億円を超える。
それに見合うだけの売り上げ 拡大に貢献することが、センター運営の最大 の課題だ。
「新しく事業所を設ける際にはな るべくここから直配できるようにしたい。
も っと利便性を高めて、事業所の先の販売店や エンドユーザーにも満足してもらえれば売り 上げ拡大につながるはず」と狩野センター長 は確信している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) 目を引くデザインの外観細かく棚割された間口 午後から当日受注文を出荷1人1台ハンディ端末を配備

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