ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年10号
特集
環境物流の進め方 若松梱包運輸倉庫─グリーン物流で勝ち残る

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

若松梱包運輸倉庫─グリーン物流で勝ち残る  石川県に本社を置く独立系の中堅物流会社。
運送会社 の下請け仕事はしないという方針を堅持して、1985 年に メーカー向け共同配送事業を開始。
北陸三県を網羅する 加工食品の共配ネットワークを築き上げた。
現在、加工食 品メーカーを中心に約80 社が利用している。
環境問題の 高まりを追い風にして順調に事業規模を拡大させている。
荷主の拠点集約を逆手にとる ──二〇年以上も前から、北陸で食品の共同配送事 業を展開されている。
そもそもきっかけは何だったの ですか。
 「最大荷主だった食品メーカーの在庫集約です。
当 社の地元に保管されていた在庫が中央に引き上げら れることになってしまった。
当社としては大打撃です。
しかも、在庫集約の動きはその後、他のメーカーにも 波及していくことが予想されました。
そうであるなら、 むしろ荷主の在庫集約を逆手にとろうと考えたのが きっかけです」  「在庫が中央に移されると我々の地元にはT C (Transfer Center : 在庫を保管しない通過型セン ター)型の『スルー物流』だけが残されることになり ます。
そこで、荷主の在庫集約を恐れてビクビクし ているのではなく、むしろ当社から荷主に在庫集約 を提案して、スルー物流を取り込んでいこうという 発想です」 ──当時の事業規模は?  「年商で八億円程度です。
それでも地場の運送会社 としてはそれなりの規模でしたが、大手特積みとは比 較にならない。
実際、地元の運送会社のほとんどは 特積みの下請けとして生計を立てていた。
ところが当 社は私の父親に当たる先代社長の時代から、運送会 社の下請け仕事はしないという方針をとっていた。
そ のために無謀にも大手の向こうを張ってメーカーと直 接取引のできる共配に進むしかなかった。
しかし結果 として、共配事業を開始して以降はバブル景気も挟 んで、当社は世の中の景気の動きとは全く関係なく 事業規模を伸ばすことができました」 ──具体的には、どういうかたちでスルー物流のイン フラを整えたのですか。
 「金沢にある路線業のトラックターミナルに入居す るかたちで拠点を構えました。
入荷した商品を素早く 仕分けるためには、積み卸しに便利な高床式で、荷 さばき場があり、かつ入荷用と出荷用のトラックバー スを備えている必要があります。
保管していた在庫か ら出荷するように設計された通常の倉庫では対応でき ません。
実際、共配の庫内オペレーションは特積みに 近い。
ただし共配の場合は特積みのような不特定多 数を対象にするのではなく、特定のメーカーの荷物だ けを扱う。
配送先が重なる食品メーカーの荷物だけを 集めていったわけです」 ──結果としてライバルメーカー同士の荷物を混載す ることになりますね。
 「当時、同業者同士の共同配送には、ライバルに 情報が漏れるのではないかとか、ライバルとの混載は 困るといったアレルギーがありました。
そのため荷主 主導の共配はなかなか進まなかった。
それに対して当 社は勝手に混載して先に既成事実を作ってしまった。
それが徐々に荷主側にも認識されるようになってきた という流れです」  「もちろん今では皆さん共配だと分かって当社の仕 組みに乗ってもらっています。
アレルギーはすっかり なくなりました。
コストと品質、安全の問題をクリア できれば誰と混載しようが構わない。
むしろ特積みの ように、どんな商品と混載されているか分からないよ りは、同じ種類の荷物と一緒に運んで欲しいという 考え方になっている」 ──共配はインフラビジネスですので、固定費をペイ できるだけの物量を集めるまでの最初の期間が収益的 には一番苦しかったはずです。
 「その通りです。
しかも当社は納品先と直接顔を合 若松梱包運輸倉庫 若松明夫 社長 OCTOBER 2007  18 第2部規制強化をビジネスチャンスに 19  OCTOBER 2007 特集環境物流の進め方 わせる末端の配送には傭車を使わず全て自社便を充 てるという方針をとったため、先行投資にもなったし、 一社ずつ荷主を増やしていくのは時間もかかりました。
それでも今では配送ネットワークも完成し、北陸三県 ではこれ以上は納品先を増やしようがないというとこ ろまで来た。
さらに石川のほかに富山にも近く拠点進 出します。
来年三月に開通する東海北陸自動車を使っ て輸送を効率化する。
これは今年度の『グリーン物 流パートナーシップ推進事業ソフト支援事業』として 国土交通省の認定も受けています」 名古屋でも共配を提案 ──共配が上手くいった背景として、やはり北陸は 配送密度が低い、そのため配送効率も悪いという事 情があるのでしょうか。
 「もちろんです。
結局、北陸には加工食品の在庫型 の拠点がほとんどなくなってしまいました。
これが東 京や大阪であれば、在庫拠点は必要だし物量もまと まるため共同化をする必要もない。
ただし名古屋は違 います。
東京や大阪から距離がないため、現地に在 庫を置かずに済む。
しかも商圏としては大きい。
それ だけ在庫を集約した時の効果も大きい。
そこで当社 も名古屋には既に進出しています。
メーカーに対して 名古屋の在庫を東西二拠点に撤収しませんかという 提案をしているわけです」 ──ということは、北陸でなくても、在庫を引き上 げることのできるエリアであれば、つまり東京と大阪 以外は、どこでも同じ共配事業が展開できるわけで すか。
 「理屈としてはできます。
ただし、全国展開しよう とは考えていません。
当社は北陸だけでいい。
名古屋 をはじめ、東京や大阪にも基地は持っています。
しか し、それもあくまで北陸の地盤を守るためにそうして いるに過ぎません」 ──なぜ全国展開しないのですか。
 「企業体力の点でも、人材的にも難しい。
そのため に株式を公開しようとも思わない。
そもそも物量の波 動を吸収するには、共配事業単独ではダメなんです。
バランスをとる必要がある」 ──バランスとは?  「一つは荷主のバランスです。
物量のピークが重な らない荷主をバランスよく組み合わせる必要がある。
売り上げのバランスもある。
当社の場合、共同配送 は五〇%、他に3PL、倉庫、運送、国際物流など を、それぞれ一〇%程度の比率で維持している。
こ の比率が崩れると事業がうまく回らなくなる。
例えば 単純な運送事業は利益率が低い。
しかし、それも日 常的に運営していないと、必要な時に輸送力を確保 できなくなってしまう。
幹線輸送を傭車するにも一定 の仕事を常に提供していないとイザというとき逃げら れてしまう」 ──それは共配事業とは直接関係がないのでは。
 「実は当社のような地域共配は荷主の工場や中央在 庫拠点から地場配送の仕分け拠点まで運んでくる部 分の幹線輸送の効率が収益性を大きく左右するのです。
幹線輸送の効率を上げるためには、ボリュームを確保 しなければならない。
そのために共配だけでなく、幹 線輸送を強くする他の仕事を一定の比率で抱えてお く必要があるわけです」 ──当面の課題は。
 「料金の値上げです。
二年ほど頃から、お願いに回っ ています。
そのことで取引を打ち切られた荷主もあり ます。
しかし、それ以上に新しい仕事が入ってきてい るため全体の売り上げとしては伸びています」 若松梱包運輸倉庫・企業プロフィール  創業は1927年(昭和2年)に遡る。
梱包業とし て創業し戦後、地場配送を中心とする小型運送業、 倉庫業、トランクルームと事業領域を拡げた。
現社長 は三代目に当たる。
85 年、金沢トラックターミナル に食品の地域共配を手がける「JIT 物流センター」を 設置。
以降、共同配送事業をメーンとして事業規模 を拡大している。
06年9月、グリーン経営認証を取得。
現在年商は約55億円に上っている。

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