ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年7号
特集
ICタグの使い方 ロジックス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

ピッキングのミスをなくすため、ロジックス は二〇〇六年三月にICタグを利用したピッキ ングチェックシステム(PCS)を導入した。
ト ヨタは一つの生産ラインで複数の車種をランダ ムに流している。
誤出荷をすれば、その時点で 生産ラインが止まってしまう。
誤出荷ゼロの達 成は納品業者にとって必達の目標だった。
ロジックスは自動車のホイールやタイヤなど、 自動車用部品を専門に扱う物流会社だ。
二〇〇 五年一月に同社は愛知県豊田市に豊田パーツセ ンターを立ち上げ、トヨタ自動車向けに自動車 部品の納入を始めた。
トヨタは自動車部品納入業者に対して「順序 建て納品」と呼ばれるかたちでの納品を求めて いる。
自動車の生産順序通りに部品を出荷パレ ットに並べて納入する、最も難しいとされる納 品方法だ。
順番通りに間違いなくピッキングす るためには、長時間に渡って細心の注意を払い 続けなければならない。
熟練した作業員でも苦 労が絶えなかった。
誤出荷も多かった。
トヨタに部品を納入し始 めた二〇〇五年一月は約十一万個の部品出荷総 数に対して、誤出荷が四三件も発生していた。
出荷検品の段階で一人配置していた最終検査員 を二人に増員することで、誤出荷の件数を一桁 台まで減らすことには成功したが、完全にゼロ にすることはできなかった。
「誤出荷を減らすだけではダメだ。
誤出荷を完 全にゼロにする。
それを部品納入業者としての絶対的な目標に置いた」と矢神力豊田物流セン ター部長は語気を強める。
しかし目視と手作業 という、従来行っていたマンパワーによるピッ キングと検品で誤出荷ゼロを達成するには限界 があった。
PCSの導入でそれが可能になった。
オペレーションはとてもシンプルだ。
順序建 て納品の指示書であるテレメールの指示通りに 入荷パレットからピッキングしていく。
入荷パ レットのICタグを作業員が身に付けたリスト バンド型リーダーで読み取ってから、部品をピ ッキング。
次に出荷パレットのICタグを同リ ーダーで読み取り、部品を出荷パレットに格納 していく。
その際ピッキングした物や順序建て を間違えると、同リーダーが振動し、ミスが即 座にわかる仕組みだ。
ピッキング時と順序建て 時の二度ICタグを読み取ることで、初心者で もミスのないピッキングと順序建て納品が可能 になった。
効果は絶大だった。
システム導入後から現在 まで、誤出荷ゼロを一五カ月連続で記録してい る。
トヨタの信頼を得たことで取扱部品品目数 はPCS導入以前の七種類から二五種類に増え た。
また、PCS導入以前に配置していた二人 の最終検査員も不要になり、人件費の削減にも つながった。
「話がうまく行き過ぎていて、本当 かと疑われるかもしれない」と矢神部長は顔を ほころばせる。
しかし、問題がないわけではない。
一つはタ グの単価が高すぎること。
同センターで使用し ているICタグは金属対応のパッシブ型で、周 波数は十三・五六メガヘルツに対応する。
単価 は一枚当たり七〇〇円もする。
システムのイニ シャルコストは二〇〇〇万円を超える。
「バーコードに比べるとICタグのコストは確か に高い。
しかしICタグはバーコードに比べ読み取り精度に優れ、リユースも可能で使い勝手 がいい。
誤出荷ゼロを実現したことで、トヨタ の信頼を得ることが出来た。
コストパフォーマ ンスとして十分見合っている」と、酒井佳孝豊 田パーツセンター係長は説明する。
PCSの活用もまだまだ途上段階だ。
現在ロ ジックスでPCSを導入しているのは、豊田パ ーツセンター内の順序建て納品作業だけだ。
「当 社の主要取扱部品である、タイヤやホイールの 出荷にもPCSが使えるか検討している。
今後 はPCSを全社的に展開していきたい」と矢神 部長は意気込んでいた。
( 柴山高宏) JULY 2007 18 トヨタのカンバン方式に対応 ロジックス15カ月連続で誤出荷ゼロを達成 矢神力豊田物流 センター部長 酒井佳孝豊田パー ツセンター係長 元を取れる活用シナリオ リストバンド型リーダーで出荷パレットの ICタグを読み取る 19 JULY 2007 三越は婦人靴売り場にICタグを利用したリ アルタイム在庫管理システムを導入している。
従 来、販売員は店舗のバックヤードまで行かなけ れば在庫を確認することができず、客を長時間 待たせることが常態化していた。
販売員本来の 仕事である接客に充てる時間よりも、在庫確認 に倉庫へ走る時間の方が長かった。
ICタグを 利用することで販売員の負担を軽減した。
婦人靴は在庫管理の難しい商材だ。
流行性が 強く、シーズン毎に商品が全部入れ替わる。
在 庫が切れた商品の追加発注をしている間に流行 が終わってしまうことすらある。
在庫管理の高 度化は百貨店における婦人靴販売の長年の課題 だった。
ICタグを利用した在庫管理の仕組みは至っ て簡単だ。
客は店頭端末近くの台の上にICタ グの取り付けられた靴を載せるだけで、色・サ イズごとの在庫の有無を瞬時に検索できる。
さ らに販売員はPDAで上記の項目に追加して店 内倉庫・卸・他のICタグ導入店舗の在庫数量 まで調べられる。
POSレジスターの横に併設 した据え置き型リーダーライターにICタグを 読ませることで売り上げを計上し、在庫情報を 更新。
同時にICタグを回収する。
この仕組みによって販売員は在庫確認に手を 煩わされることなく、接客業務に専念できるよ うになった。
二〇〇五年四月に本店で導入を開 始したところ、それまで平均十三分かかってい た客一人当たりの接客時間は六分に短縮された。
客一人当たりの靴の紹介点数は一・七足から 三・一足に増えた。
これによって売上足数は対 前年比で一〇%増加した。
本店での成功を受けて、その後、他の店舗に も横展開を進めている。
現時点で九店舗まで拡 大した。
「接客サービスでICタグを活用してい く事例は、世界的に見てもそう多くない。
物流 効率化だけでは、ICタグの利便性を百貨店に 広めることは難しかっただろう」と、三越の池 浦昭彦百貨店事業本部商品本部MD戦略室商品 企画担当プロジェクトリーダーは説明する。
ただし、課題も残されている。
とりわけ卸の 作業負担増は深刻な問題だ。
三越の主要取引先 として今回の取り組みでパートナーを務めてい る婦人靴卸大手のシンエイでは、?ICタグの 取り付け、?ICタグとバーコードの紐付け、? ICタグのクリーニングという三つの作業が、従 来の出荷プロセスに新たに加わっている。
しかもICタグを導入している納品先は現在、 三越、阪急、高島屋だけで、導入店舗数も一四 と限られている。
ICタグを取り付ける商品数 はシンエイの年間総出荷足数三〇〇万足のうち 一〇%程度に過ぎない。
そのため従来のバーコ ードでのオペレーションと、ICタグを取り付 ける商品とで、二重のオペレーションが生じて しまっている。
その作業フロ ーは以下の通り。
メーカーから入 荷した商品を、 まずはブランド ごとに保管する。
出荷先が決まっ た時点で、ピッ キングした靴箱にビニール製のホルダーを取り 付け、ICタグをその中に差し込む。
次にバー コードとICタグをハンディ型リーダーで読ん で、ICタグと商品の情報を紐付ける。
販売後 に回収されたICタグは、シンエイで汚れを取 り去るクリーニング作業を行い、リユースする。
シンエイでICタグが活用されるのは検品時 だけだ。
検品のスピードアップには貢献してい るが、追加作業の負荷を考えると、バーコード を超えるメリットが得られたとは言い難い。
実 際、作業時間は一足当たり二三秒も延びている。
シンエイの加藤義則営業企画・システム担当ゼネラルマネージャーは「物流の現場ではまだI Cタグ導入によるメリットがはっきりと見えて いない。
ICタグを何とか当社の物流効率化に もつなげたい」という。
将来的にはメーカーから卸に出荷する時点で ICタグを取り付ける?ソースタギング〞が突破 口として期待されている。
しかし「ソースタギ ングが実現した場合には当社で出荷する全ての 靴にICタグを貼らないと、ICタグを導入し ていない店の分が無駄になる」と加藤ゼネラル マネージャー。
流通改革は、まだ始まったばか りだ。
( 柴山高宏) 卸と組んで婦人靴流通を改革 三越課題はセンター作業の負担増 三越の池浦昭彦 百貨店事業本部 プロジェクトリ ーダー シンエイの加藤義 則営業企画・シス テム担当ゼネラル マネージャー 端末で靴の在庫を確認 JULY 2007 20 リコーロジスティクスでは、二〇〇四年から ICタグを導入している。
新技術の開拓が狙い だ。
ベンダーからはツールを買うだけで、頼る ことはしない。
読み取り実験もプログラムの書 き込みも社内の専門部隊が独自で行いノウハウ を蓄積している。
そこで中心的な役割を果たしているのが技術 支援本部だ。
現場におけるIT技術や物流機器 の運用を設計する部門で、課題を洗い出して解 決方法を検討し、ツールの選定から運用のため のシステム構築まで手がける。
同本部の岩澤明 リーダーは「ICタグの技術は何としても習得 したいと考えていた」という。
まずは、周波数帯の特性や価格帯の調査から 始めた。
タグの値段は読み取り専用で二〇円〜 一〇〇円程度、書き換え可能なら五〇円〜一五 〇円程度だった。
実運用を考えれば、ワンウェ イの使い捨てではコスト的に厳しい。
循環型の 利用で何かできないかと考えたときにターゲッ トとなったのが、複写機の輸送に使う循環利用 型の梱包材「エコラック」だった。
環境面への配慮から、段ボールの代替部材と して九九年に導入した。
支柱四本と天板、パレ ットの計六点でワンセットとなる(写真)。
従来 はこれらの部材のすべてにバーコードを貼付し、 一点ずつハンディでスキャンしてステータスを 管理していた。
段階的に行って いた段ボールか らの切り替えが 完了し、複写機 自体の出荷も増 えたことから、〇四年には管理対象の部材が二 十二万点を超え、現場では管理業務が大きな負 担となっていた。
この負荷を、タグを使って軽 くしようと考えた。
同年秋、HF帯(十三・五六MHz)とマイ クロ波帯(二・四五GHz)のタグとリーダー をテスト用に取り寄せた。
UHF帯も試そうと メーカーに問い合わせた。
だが、カタログには 掲載されているのに、どのメーカーの担当者も 解禁はまだ先だろうと言う。
検討は現実的でな いと考え、対象から外した。
実際には数カ月後 の〇五年四月にUHF帯は解禁になった。
「あ れはさすがに参った」と岩澤リーダーは苦笑い で振り返る。
HF帯とマイクロ波帯を比較した結果、小型 対応が可能で通信距離も比較的長い点を評価し てマイクロ波帯を採用した。
リーダーはハンデ ィタイプを使うことにした。
どの拠点に持って 行ってもそのまま使えて融通が利くからだ。
ま ずはハンディタイプの制御のしくみを勉強し、そ れを元にプログラムを構築する狙いもあった。
〇四年十二月から実際に運用を開始した。
こ れにあわせ、メーンの管理拠点である御殿場セ ンターのスタッフが総動員でタグの貼り付け作 業を行った。
使ったのは両面テープ。
なんとも 心許ないようだが、当時は他に方法がなかった という。
タグが外れて落ちてしまうことも珍し くなく、再貼り付けが必要となった。
〇五年春には、ゲート型のリーダーを使った 一括読み取りの実験を始めた。
初めに取り寄せ た市販品は、まるで使えなかった。
事前にタグ の数を入力しておき、その数に達するまで読み 取りを続けるように設定しておくのだが、すべ てを読み取るのに極端に時間がかかる。
アンテ ナを取り寄せては何度も実験を重ね、どうすれ ば読み取り精度が上がるかを研究した。
その研 究結果を反映したアンテナを特注することで課 題を克服した。
時期を同じくして、エコラックを新調する計 画が持ち上がっていた。
タグを付ける前提で設 計を修正した。
専用のスロットを作り、タグが 外れて落ちないようにした。
スロット部分には 穴をあけて電波を読み取りやすくする工夫も施 した。
これで読み取り精度が一気に上がった。
「予想以上だった」と技術支援本部の川口直也 主任は興奮気味に語る。
一括読み取りの実現で、バーコードで管理し ていたときに比べてスキャン作業の時間が大幅 に短縮された。
スキャン待ちのエコラックの滞 溜が減ったことで、スペースが三分の一削減さ れ、より高度なステータス管理も可能になった。
とはいえ、目先の効果はもともと目的ではない。
通常の投資であれば設定される償却期間も、今 回の取り組みに関しては例外扱いされた。
「目指 すのはあくまで技術力の強化。
次はUHF帯を 試したい」と岩澤リーダーは話す。
( 森泉友恵) 開発費の償却には目を瞑り リコーロジスティクス先行投資でノウハウを蓄積 技術支援本部の 岩澤明リーダー 複写機の循環型梱包材 「エコラック」 アンテナを特注して一括読み取 りを実現した 21 JULY 2007 バーコードと徹底比較し 13.56MHzのタグを採用 配送拠点の作業効率化ツールとしてICタ グを導入した。
バーコード、二次元バーコード (QRコード)、HF帯(十三・五六MHz)の ICタグ、UHF帯のICタグを徹底比較し た末に、HF帯タグを選択した。
効果は上々だ。
配送拠点に商品を入荷して からトラックに積むまでの作業時間が二割短縮 した。
人件費の抑制によるコスト削減効果は 年間一五〇〇万円と見積もる。
受注翌々日に 配送していたエリアが翌日対応できるようにな り、顧客満足度の向上にもつながっている。
従来、配送拠点では、在庫拠点から届いた パレットをアイテム別に分けて仮置きしてから、 届け先別に摘み取り式でピッキングするという 二段階で仕分け作業をしていた。
これを、仮置 き作業をなくして、在庫拠点から届いたらその まま届け先別に仕分ける、種まき式のみの一段 階にして効率化を図った。
そのための手段として、バーコード、二次元 バーコード、ICタグの利用を検討した。
とは いえ、「ICタグの知識はゼロに近かった」(物 流システム部の千田悠主任)。
本を読んだり、 外部のセミナーに参加したり、付き合いのある 業者からレクチャーを受けたりしながら、IC タグが何者で、どういう使い方があるのかとい った知識を地道に積み上げた。
種まき式の仕 分けに有効であ ること、投資に 見合った効果 が表れることを 前提に、情報 量、読み取り作業の効率性、投資額、ランニ ングコスト等の視点から比較した。
バーコードは持てる情報量が少ない。
それ自 体には仕分け情報を持たせられないため、デー タベースとネットワークをセットで用意する必 要がある。
その分コストが高くつき、保守や更新といった維持費用もついてまわる。
貼り付け 単位がケースとなるため、読み取りに時間と手 間がかかる。
パレットに貼り付ければ読み取り 作業は効率的に行えるが、パレットは酒類業 界全体で流通しているため、勝手に自社仕様 にはできない。
貼ったラベルをそのつど剥がす 必要がある。
しかも、ラベルは使い捨てである ため、延々と購入し続けなければならない。
評 価は「×」とした。
二次元バーコードは悪くなかった。
それ自体 に仕分け情報を持たせられるため、バックにデ ータベースとネットワークを用意する必要がな い。
だが、貼り付け・読み取りはバーコードと 同じ理由でケース単位になる。
ラベルも使い捨 てになるため、ランニングコストがかかる。
そ れでも評価は「○」とした。
UHF帯のタグは「△」とした。
一括読み 取りは魅力的だったが、検討を進めていた〇六 年の秋時点では、ベンダーのラボ(実験施設) が出てきたレベルで信頼性には疑問があった。
タグ自体が持てる情報量も少なく、データベー スやネットワークを用意しなければならないこ ともネックだった。
また、仕分け作業を行う倉 庫は日によって違ってくる上、場合によっては 屋外で作業をすることもある。
読み取り機器の 調整が必要で融通が利きにくいUHF帯は不 向きだと考えた。
HF帯は「◎」だった。
持てる情報量が多 く、データベースやネットワークを用意する必 要がない。
また、情報の上書きが可能で繰り返 し使えるため、ランニングコストがほとんどか からない。
当時、並行して、荷崩れ防止のスト レッチフィルムを再利用可能な固定バンドに切り替える取り組みを進めていた。
固定バンドに タグのホルダーを取り付けて運用すれば、固定 バンドの回収と同時にタグを回収することがで きる。
パレット単位で取り付け、読み取れるの で、作業も効率的だ。
作業を行う場所の制限 が少なく、ハンディ一つで読み取れるのもポイ ントが高かった。
こうして結論が出た。
モデルケースとした名古屋拠点での成功を受 け、現在は同様の取り組みを他拠点に横展開 する動きを開始している。
来年六月頃には福 島と茨城の配送拠点に導入する計画だという。
( 森泉友恵) アサヒビール 物流システム部の 千田悠主任 タグに届け先別の情報を書き込み、 仕分け作業を効率化した 「それなら自動で読み取るしくみを作ろうとい うことで、響タグの導入が決まった。
狙った訳 ではないが、それが記念すべき実用化第一号と なった」と竹内主任は笑みを浮かべる。
運用のしくみは次の通り。
出荷する商品を積 んだカゴ車がバース上部に取り付けられたリー ダーの下を通ると「どのカゴ車が、いつどの店 舗に行ったか」が記録される。
店舗への納品後、 ドライバーは前回納品分の空いたカゴ車を回収 してセンターに届ける。
出荷時と同様にリーダーの下を通った時点で「どのカゴ車がいつ戻っ てきたか」が記録される。
戻ってこないカゴ車 があれば、当該店舗に確認を促す。
従来は、カ ゴ車が紛失しても確認する手段がなかった。
六月の時点では、所沢センターでのタグ運用 は導入段階の域を出ていない。
一万二〇〇〇 台ある台車のうち、タグの取り付けは五〇〇〇 台しか完了しておらず、管理対象の店舗も三 店舗に限られている。
それでも「運用の効果に は確信を持っている」と林マネジャー。
七月中 にはすべてのカゴ車に取り付け、残りの店舗に も一気に展開する計画だ。
( 森泉友恵) JULY 2007 22 中堅食品スーパーのエコスは、国家プロジェ クトとして日立製作所が開発した「響タグ」の ユーザー第一号だ。
今年二月、所沢物流セン ターの稼働に合わせて導入した。
タグの購入価 格はホルダー込みで一個二五〇円。
一個五円 のインレットを売りにする響タグも、購入量が まとまらなければ単価は下がらない。
「それでも年間一〇〇〇台にも上っていたカ ゴ車流出がなくなるのなら、十分ペイする。
い ずれ、段ボールや通い箱単位でタグを付ける時 代が来る。
そのときに取り残されないように、 というよりむしろ当社が先駆けになるつもりで 試行錯誤を続けている」と、商品部物流セン ター担当マネジャーで所沢・山梨・浜松物流 センター長の林亨氏は意気込みを語る。
エコスは、中小スーパーが共同仕入れや共同 物流をおこなう「協同組合セルコチェーン」の 中心的存在だ。
「さえき」や「たからや」とい ったチェーン加盟店の物流を受託して共同物 流を企画運営し、流通業と並ぶ事業の一つと している。
タグの導入には、物流事業の荷主で もあるチェーン加盟店に対し、先進性をアピー ルする狙いもある。
現在、埼玉、茨城、静岡、山梨の四カ所に 物流センターを構えている。
このうち昨年二月 に稼働した山梨センターで最初にICタグを導 入した。
狙いは カゴ車の管理だ。
カゴ車は一台あ たり一万円以 上する資産だが、 管理するしくみ がなく紛失に悩まされていた。
カゴ車の紛失は 小売業界共通の課題だ。
バーコードを使って 管理している企業もあるが、管理のしくみを持 たない企業が圧倒的に多い。
エコスも例外では なかった。
山梨センターでICタグを使うことは初めから決めていた。
同センターは規模が小さく、保 有するカゴ車は約二〇〇〇台。
一個一〇〇円 としても投資は二〇万円程度で済む。
トライ アルには持ってこいだった。
UHF帯の導入も 検討したが、倉庫の構造上の問題から諦めた。
HF帯のタグを採用し、入出荷時にハンディ で読み取って管理するしくみを作った。
手作業でスキャンを行うため、バーコードと 比較した場合の作業面でのメリットはそれほど ない。
バーコードならハンディをまっすぐ当て なければならないところを、ICタグなら斜め から当てても読めるといった程度だ。
それでも 従来は管理の仕組みがなかっただけにカゴ車の 流出防止には効果があった。
今年二月に稼働が決まっていた所沢センタ ーでも、カゴ車管理にタグを使うことを決めた。
開発を担当した日立製作所産業・流通システ ム営業統轄本部の竹内裕主任は、「山梨の延長 でHF帯になるかなと思いながらも、本音を言 えば『響タグ』を使えないかなという期待があ った」と明かす。
エコスの林マネジャーも、響 タグには強い関心を持っていた。
所沢センターで管理するカゴ車は一万二〇 〇〇台。
一日に三〇〇〇台がセンターに出入 りする。
山梨センターの比ではない。
ハンディ でスキャンするやり方では手間がかかり過ぎる。
「響タグ」導入一番乗りで エコス共配事業の荷主にアピール 商品部の林亨物流セン ター担当マネジャー ICタグを活用してカゴ車の 管理を徹底する 23 JULY 2007 紳士服の絶対単品管理を実現するため、アイ トスはICタグの導入を決めた。
「見た目に差が なくても商品の状態は全て違う。
それを同じよ うに扱うわけにはいかない。
一〇〇着のスーツ があれば、一〇〇通りの管理を行わなければな らない」と、アイトス社長室付担当部長の田村 健氏はいう。
アイトスはホテルの制服や飲食店チェーンの ユニフォームなどの業務用サービスウェアや、紳 士服の企画・製造・販売を手掛けるアパレルメ ーカーだ。
百貨店の催事場で紳士服を直接販売 している。
一万円台というリーズナブルな価格 が武器だ。
百貨店の催事場は常設ではない。
催事が行わ れるたびにスーツをアイトスの物流センターか ら出荷して百貨店に納入する。
移動を繰り返す スーツは徐々に劣化していく。
店頭に出て試着 を繰り返せばなおさらだ。
しかし同社が従来採用していたバーコードに よる商品管理では、型・色・サイズごとに商品 を把握するだけで、個々の商品の移動履歴まで はフォローできなかった。
そのためスーツを購 入した客からのクレームに対し、適切な対応を とることが難しかった。
物流センターから催事場へと商品移動を頻繁 に繰り返す同社にとって、出荷検品の迅速化も 大きな課題だっ た。
他にも百貨 店から物流セン ターに売れ残っ た商品を返品す る際の、百貨店 内における出荷検品、物流センターに商品が戻 された後の商品管理、棚卸など、一連の物流オ ペレーションの改善は急務だった。
ICタグ導入後の作業フローは以下の通り。
商品には工場から入荷した時点で、バーコード の印字された商品タグと、ICタグが取り付け られている。
アイトスに入荷した時点で、バー コードとICタグをハンディ型リーダーで読み、 ICタグと商品情報を紐付ける。
入荷検品は入 荷用ハンガーラックのバーコードを読み、次に 商品のICタグを読むことで完了する。
入荷検品を済ませた商品は、保管用ハンガー ラックに移される。
保管用ハンガーラックのバ ーコードを読んでから、入荷検品を済ませた商 品を移していく。
商品は出荷する催事場が決ま るまで保管される。
出荷時には保管用ハンガー ラックのバーコードを読んでから、商品のIC タグを読むことで出荷検品を行う。
そして出荷 用ハンガーラックのバーコードを読み、出荷検 品の済ませた商品を移し出荷する。
ICタグの導入によって出荷検品をスムーズ に、かつスピーディに行うことが可能になった。
バーコードだとほんの少し折れ曲がったり、隠 れたりするだけで読み取ることが出来なくなっ てしまう。
読み取り範囲が広がったことで、移 動中にスーツの袖の裏にICタグが隠れてしま っても、検品時にいちいちタグケースを整える 必要がなくなった。
ハンガーラック一台当たり五〇着ものスーツ を一〇秒〜一五秒もあれば読み取ることができ るようになった。
従業員の作業時間は大幅に短 縮された。
棚卸の精度も向上した。
従来は同じ バーコードの重 複読みや、読み 飛ばしが生じる ことが多く、膨 大な在庫数を正 確に把握するこ とが困難だった。
もちろん絶対 単品管理も実現 できた。
単品ごとの製造日時・出荷場所の履 歴・出荷回数のカウントが可能になった。
客の クレームに適切な対応がとれるようになっただ けでなく、在庫の問い合わせにも即座に答えら れるようになった。
同社が使用しているICタグは十三・五六M Hzのパッシブ型で、単価は二八〇円。
ICタ グは専用のケースに入れているので、移動中も 店頭に並べても傷むことがほとんどない。
すで に六回近くリユースしているものもある。
同社 はICタグのリユースの目標回数を三〇回と設定している。
「タグの耐久性には驚いた。
壊れさ えしなければ理論上半永久的に使えることはわ かっていたが、実際の耐久性は予想以上だった」 と田村部長は目を丸くする。
アパレル業界ではICタグ導入に向けて、実 証実験が盛んに行われているが、実導入に至っ たケースは稀だ。
「まだどこも取り組んでいない ことを真っ先に行ったと自負している。
これを アパレル業界全体として使うとなると、バーコ ードに匹敵するコストを実現できないと普及し ないのではないか」と、田村担当部長は課題を 指摘している。
( 柴山高宏) 検品・棚卸作業を高度化して アイトス紳士服の移動履歴を追跡 アイトスの田村健社長 室付担当部長 スムーズな出荷検品が可能に

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