ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年4号
特集
儲かる現場 できるセンター長の作り方

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

良い現場の条件 物流業は所長・センター長の能力で九〇%が決ま ってしまう。
つまり、物流業とは?所長産業〞、ある いは?センター長産業〞なのだ。
我々日本ロジファク トリー(NLF)はかねてから、そう主張してきた。
実際、これまでに数多くの物流現場を視察してきたが、 良い現場はどこもセンター長がしっかりしている。
そ の逆もまたしかりだ。
良い現場とは何か。
「5S(整理・整頓・清潔・清 掃・躾)」はもちろん重要だが、最終的には利益の出て いる現場こそが良い現場だ。
トータル物流コストに占 める人件費の比率が一つの目安になる。
五〇%以下に 抑えなければ、まず利益は出ない。
それを実現するには ムダの排除や作業の効率化に加え、現場スタッフに占 める非正社員化比率を八〇%以上に高める必要がある。
ただし、それによってオペレーションに支障を来す ようでは元も子もない。
現場の人の使い方には今どの 会社も困っている。
運営コストを下げるために、パー ト・アルバイトを活用する。
しかし人手不足でパート が集まらない。
仕方なく派遣会社を使う。
その結果、 現場は正社員、パート、派遣社員が入り交じる多重 構造になっている。
それだけ管理は難しくなる。
これまで以上にセンター長の手腕が問われている。
通常、センター長は?労務管理、?運行管理、そし て?クレーム対応の三つを主な業務とする。
このうち 最大の役割を一つ選ぶとすれば、やはり労務管理、人 のやり繰りに尽きる。
そして、人のやり繰りには、コ ミュニケーション能力という監督者としての資質が求 められる。
できるセンター長は一日中、机に座っていないもの だ。
常に現場を回って一声かけ、スタッフとのコミュ ニケーションをとっている。
昼食もパートに交じって 同じテーブルを囲む。
繁忙期で現場にムリをさせた時 には自腹で缶ジュースを差し入れる。
そうした小さな 気配りで、現場の空気が違ってくる。
ダメなセンター 長には、それができない。
センター長のタイプは大きく二つに分かれる。
中小 企業の場合、センター長は、ほとんどが現場の叩き上 げだ。
作業スタッフやドライバーを経験したベテラン が、班長からセンター長へと昇格する。
一方、荷主企 業や中堅以上の物流企業では、センター長が事務系 管理職の仕事として位置付けられている。
いずれも一長一短がある。
前者の現業系のセンター 長では、オーバースペックが往々にして問題になる。
もともと中小の現場スタッフには、デスク業務や管理 を苦手とする人が少なくない。
それが嫌で物流現場の 職に就いたのに、いつのまにかセンター長に祭り上げ られ、計数管理などの苦手な仕事を強いられる。
結果 として会社の期待に応えられない。
一方、事務職系のセンター長は、いずれ本社に戻る という考えが常に頭から離れない。
当然、本社には良 い報告をしたい。
しかし現場を敵に回せば、オペレー ションが立ち行かなくなる。
そもそも高学歴の事務系 は現場スタッフとのコミュニケーションを苦手とする 場合が多い。
結果として現場と本社の板挟みに合って しまう。
苦労に反して、待遇面では恵まれていない。
NLF では、物流人材の紹介事業も手がけている。
その募集 実績を見ると、荷主企業・物流企業問わず、センター 長クラスの年俸は三〇代後半から四〇代前半で七〇〇 万円〜七五〇万円程度。
中堅以下の物流企業のセン ター長となると五〇〇万円前後まで落ちる。
年間休日 数が一〇〇日程度で繁忙期には休日出勤も強いられる できるセンター長の作り方 APRIL 2007 32 青木正一日本ロジファクトリー代表 第3部事例で学ぶ現場改善《特別編》 物流業は“センター長産業”だ。
できるセンター長を何 人抱えているかで業績は決まる。
ところが、ほとんどの物 流企業がセンター長を確保・育成する仕組みを備えてい ない。
それどころか、貴重な人材を本社と現場の板挟み に追い込んでいるのが実情だ。
ことを考えると、決して割りの良い仕事とは言えない。
転職市場でセンター長は現在、完全な売り手市場 になっている。
センター長を求める企業は多いが、な かなかマッチングできない。
待遇面に加え、勤務地の 問題も大きい。
物流センターの多くは大都市圏でも郊 外に立地している。
僻地であることも珍しくない。
引 っ越しを伴う就職には多くの人材が二の足を踏む。
物流業はセンター長産業だという認識のもと、人事 戦略を切り替える必要がある。
同じ会社内のセンター 長でも、各人の能力には当然バラツキがある。
しかし、 それ以上に大きいのが会社間の差、会社ごとのセンタ ー長の能力レベルの差だ。
これは、その会社における センター長の「?採用」「?教育」「?キャリアプラ ン」の違いによるものだ。
まず「?採用」について。
繰り返しになるが現状で は外部からの登用は容易ではない。
対策としては遠回 りに見えても社員研修が有効だ。
研修の狙いは教育だ けではない。
社内の人材を発掘することも研修によっ て得られる大きな効用の一つだ。
資質のある人材であ れば、三〇歳以下の若手でもセンター長に登用すべき だ。
ただし、若手の抜擢は経営層の援護が必須である。
任せきりでは、せっかくの人材を年長の社員やベテラ ンのパートに潰されてしまう恐れがある。
これと並行して、センター長を現場のスターにする 必要がある。
センター長になったら予算管理やクレー ム処理など苦労ばかりが増え、休日も見返りも少ない ということでは、手を挙げる者などいなくて当然だ。
班 長や配車係などのセンター長候補者に、昇進したいと いうモチベーションを持たせる必要がある。
必ずしも給料や待遇だけの問題ではない。
金銭的イ ンセンティブには限界がある。
長くは続かない。
それ よりも優れた仕事を表彰するなど、職業人としての誇 りや満足感に訴えかける。
現場のQC活動も同様だ。
小遣い程度の賞金を出すより、額縁に入れた賞状やト ロフィーのほうがよほど効果的だ。
賞状やトロフィー を自宅に持ち帰れば、家族に仕事を理解してもらう良 いきっかけにもなる。
キャリアパスを示せ 「?教育」では、人事ローテーションが鍵になる。
ダ メなセンター長は自分のセンターのことしか知らない。
井の中の蛙なのだ。
板前の修業と同じように、センタ ー長も様々な現場を経験することで初めて引き出しが 増えていく。
実際、人事異動でいろいろな現場を経験 させている会社のセンター長は総じてレベルが高い。
それに対して、センター長の改善能力や意識レベルが 低い会社は、センターの横展開を経験させていない。
社外はもちろん、同じ会社内であっても他のセンター のことを知らないのである。
三つ目が「?キャリアプラン」だ。
多くの会社でセンター長は?上がり〞のポストになってしまっている。
センター長として定年を迎えるケースが大半だ。
定年 間際ともなれば、現場との摩擦を生じる恐れのある改 善活動など進めようとするはずがない。
それどころか センター長自身が改革のブレーキにもなってしまうこ とさえ珍しくない。
センター長を上がりのポストとするのではなく、セ ンター長から本部スタッフに昇格する道を示しておか なければならない。
本人がそれを望むかどうかは別だ。
現場好きのセンター長はむしろ望まないだろう。
その 場合には、現場作業の専門会社を子会社として設置 するという手もある。
子会社経営幹部という道を開く のだ。
センター長の有効なキャリアプラン作りを、重 要な経営戦略と位置付けて取り組む必要がある。
33 APRIL 2007

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