ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年4号
SOLE
ロジスティクス技術書を翻訳LE&Mの有用性を再認識

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2007 78 要約作成の重要な点である。
今回のプロジェクトメンバーは一 六人だ。
まずは日本支部メンバーが 読めること(分かること)、図表と 要約を翻訳すること、一年をめどに 基礎資料作りを終えることを目標と して活動を展開してきた。
インター ネット上に共有フォルダを設け、各 メンバーが担当部分をそのフォルダ に保存する形で作業を進めた。
こうして、なんとか一通りのもの ができあがった。
基礎資料とはいえ、 図表と本文の要約で三五二ページ、 用語で六二ページの計四一四ページ と膨大になった。
三〇年前の感動が甦る 第六版を通じて、ロジスティクス 先進国で培われた知恵の集積を再認 識したいと考えている。
ロジスティクスやオペレーション マネジメントの基盤に対する、米国をはじめとする各国の実業界と学術 界での理解を知ると、日本との違い に驚くばかりだ。
システム分析設計 (システム工学)・ロジスティクス 工学・信頼性管理・保全工学の先 進国の現状を理解することから、我 が国の実業界において補完・補強す べき部分も分かってくるはずである。
ビジネスの価値や強みを常に見直 し、そのしくみをリニューアルする ENGINEERING AND MANAGE MENT』の翻訳は、過去にも改訂 の都度、目標として掲げていた。
し かしながら、諸々の事情から具現 化には至っていなかった。
今回、第六版の発行を機に、R AMS研究会で大型プラントの保 全技術を研究するグループからの 提案を受け、SOLE日本支部の 有志が共同して翻訳・要約を行う ことになった。
こうして、「SOL E・RAMS研究会」として一年 掛かりで作業を進めてきた。
初版の日本語版は一九七九年に、 『ロジスティクス――ライフサイク ル・コストの経済性の追求』(発 行:SOLEロジスティクス学会 日本支部、出版:日本能率協会) として発行された。
石川島播磨重 工業の宮内一郎氏が中心となり翻 訳を行った。
初版発行を機に、米国航空機業 界・航空局を中心に展開されてい たシステム工学・ロジスティクス 工学・信頼性管理を包含する「ロ ジスティクス・エンジニアリング・ SOLE日本支部は毎月「フォ ーラム」を開催し、ロジスティクス 技術およびロジスティクスマネジメ ントに関する活発な意見交換・議 論を行い、会員相互の啓発に努め ている。
フォーラム開催日の午前中には RAMS研究会を開催している。
研 究会では現在、この分野のロジス ティクス技術書として有名な書で ある『LOGISTICS ENGINEER ING AND MANAGEMENT, Sixth Edition』(米バージニア工科大学ベ ンジャミン・S・ブランチャード教 授著)の要約を進めている。
ロジスティクスは統合工学 RAMSとはReliability(信頼 性)、Availability(運用・利用性)、 M a i n t a i n a b i l i t y(保全性)、 Supportability(支援性)の頭文字 をとったものだ。
研究会では長年、 大規模システムのロジスティクス研 究をテーマに、国内外の文献や技術 の調査を行ってきた。
『LOGISTICS SOLE日本支部フォーラムの報告 ロジスティクス技術書を翻訳 LE&Mの有用性を再認識 The International Society of Logistics マネジメント(LE&M)」への認 識が日本でも高まった。
ブランチャード教授はロジスティ クスを、調達・貯蔵・輸送・宿 営・糧食・整備などに関する計画 と実施業務を意味する「兵站学」 にとどめることなく、システム工学、 信頼性工学などを取り入れ、近代 的なロジスティクスの学問体系と してまとめている。
これを「LE& M」として扱い、システム工学→ ロジスティクス工学→オペレーショ ン管理、と段階的に発展してシス テムを具現化する技術的活動の技 法・科学としている。
つまり、ロジスティクスとは「シ ステムの目標・計画・実行を支援 するため、諸資源の追求、設計と 性能維持に関するマネジメント及 びエンジニアリング」であり、?ラ イフサイクル・コストの経済性の 追求、?トータル・システム・ア プローチ、?信頼性・保全性、? 既存の技法――を統合した統合工 学なのだと定義している。
第六版に至る改訂において、シス テムの分析・設計に関する手順化 とツールに関する内容が拡充され ている。
米国を中心とするLE& Mの整備・拡充の足跡を忠実に取 り込み、解説しているのである。
こ うした拡充部分の翻訳も、今回の 79 APRIL 2007 上で、LE&Mは非常に有効な工 学的技法と科学であることが改め て認識できる。
「ロジスティクス工学」と言い換 えれば、LE&Mは、システムの ライフサイクル全体にわたる具現 化のエンジニアリング(工学)手 法と科学だと言える。
つまり、シ ステムを実現、維持、運用するた めのエンジニアリングなのである。
ブランチャード教授は、ロジステ ィクスをシステムの後方支援とし てのみ捉えるのではなく、製品・ サービスを提供するシステムの目 的・仕様を常に見直し、システム を設計・リニューアルするエンジニ アリング・アプローチとして捉えて いる。
システムは、外部環境や条件の 変化に合わせて、そのあり方・内 容・手順・オペレーションを変更 しなければならないことが多い。
シ ステムを変革し続けるエンジニアリ ング活動が、まさにLE&Mであ る。
LE&Mが対象とするシステ ムのライフサイクルは、 図1のとお りである。
図2は、ロジスティクス機能の 基本要素を示している。
システムの要件が変化すると、設計・開発・ 製造・実装・管理のライフサイク ル全体でシステムを構成する要素 が変更される。
複雑に相互関連し ている各要素が、適時に、かつ的 確に変更されなければならない。
我々メンバーが、ナドラー博士 の「ワークデザイン」、ブランチャ ード教授の「LE&M」の考えに 出会ったのは三〇年前のことだ。
製 品・サービスを実現するプロセス としてシステムを設計・分析する ことを学び、当時の我々は本当に 驚いた。
三〇年を経て更に進化し た『LE&M(第六版)』の日本語 化に取り組んでみて、内容の充実 ぶりに再び圧倒された。
ブランチャード教授には、SO LE日本支部の立ち上げから今日 まで懇切に指導して頂いてきた。
今 回の翻訳・要約版がSOLE日本 支部の学習用基礎資料にとどまり、 正式な翻訳・出版まではできない こともご理解いただいている。
一通りできあがった資料を、こ れから半年ほどで再構成する。
ブ ランチャード教授の新たな指導を 受けながら、我が国で活用できる ガイドブックを作り込んでいきたい と考えている。
米国を中心としたビジネス実務 において常識・素養として扱われ ているLE&Mを、まずは「知る」 ことができた。
これから「分かる」 ようにアレンジして、実際に「試 し」、さらに「磨く」ための知恵と して生かしていきたい。

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