ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年2号
特集
物流企業番付 平成19年版 南日本運輸倉庫

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

価格は当社が決める ――業績好調の理由を教えて下さい。
「金融機関からも、よく同じような質問を受けます。
実際、当社はグループ売り上げの約一八〇億円に対 して一〇億円もの利益が出ている。
銀行に言わせると、 物流業界の他の会社と並べてダントツだそうです。
そ の理由が彼らのようなお金のプロにも分からないらし い。
しかし理由は簡単なんです」 「天下の日通やヤマト、佐川に真似のできないサー ビスを当社はしている。
冷凍・チルドに特化し、お客 の問題を解決する提案力を当社は持っている。
単純な 労働力を売っているのではなく、南日本運輸倉庫とい う価値を当社は売っているわけです。
価格も当社が決 めています」 ――もっと具体的に。
「当社が現在メーンのターゲットにしているのは、居 酒屋やレストランなどの外食チェーンです。
食品メー カーや卸、あるいは全国規模の小売業者ともなれば、 社内に物流子会社や物流管理部門を抱えています。
そ こに当社のような独立系の物流会社が入っていっても 一定の枠内でしか仕事ができない。
既存の協力会社も いるので、大手荷主は動きがとれない」 「それに対して新興や中堅以下の外食チェーン、五 〇店から一〇〇店規模の外食チェーンには物流部門 などありません。
彼らは店舗展開に忙しくて物流など 構っていられない。
そうした荷主に当社は一括請負と 共同物流を提案しています。
専用センターを作るほど の規模がない荷主に対して、当社が共同配送センター を用意し、在庫管理から配送まで請け負う。
共配の 複雑なコスト管理も当社がコントロールする。
そのた め価格競争にはならない」 「そのかわり新規案件の立ち上げには半年近くかか ります。
外食チェーンの調達先は通常一〇〇社にも及 びます。
その調達パターン、店舗配置と店舗別の販売 量をもとにシステムを組んで、ベンダー説明会を開催 し、アイテム別に価格や条件を調整して、全員が納得 できる仕組みを作る。
もちろん、その間に拠点を手当 てして、人材を採用しなければならない。
こうした面 倒な仕事を大手の物流会社がやろうとしても火傷する だけです」 ――共配用の拠点の手当ては? 「二〇〇三年に約一八億円を投じて埼玉県の岩槻に共 配センターを建設しました。
複数の外食チェーンがそ こに入居して共同配送を行っています。
同様の機能を 持った敷地面積六〇〇〇坪、延べ床四〇〇〇坪のセ ンターを現在、もう一棟、岩槻に建設しています。
こ れも総額で二〇億円ぐらいの投資になります。
今後は こうしたセンターを関東圏に一〇カ所ぐらい建設しよ うと考えています。
総額で一〇〇億円規模の投資になるでしょう」 ――既に荷主は決まっているのですか。
「決まっていません。
先行投資です。
もちろんリス クはありますが、そんなことで当社の経営はブレない。
最初の共配センターを建てたときも荷主は決まってい ませんでした。
そのため銀行の融資担当者には不安な 顔をされた。
それでも、仮に一年間センターが空いた ままでも潰れはしないから安心しろと言って説得しま した。
蓋を開けてみれば半年で全て埋まりました」 「今後も荷主の確保は心配していません。
当社と同 じサービスを提供しようとしているライバルは他に見 あたりませんから。
それよりも課題となるのは、オペ レーションで収益の出せるプロの管理者を、センター 長として拠点に配置できるかということです。
一〇〇 FEBRUARY 2007 26 専用物流拠点を持たない新興・中堅の外食チェーンを対 象に、定温物流の共同配送センターを提案。
バックヤード 機能を一括して代行する3PL事業で業績を伸ばしている。
自らの営業エリアは関東圏に特化。
全国規模の荷主には、 各地の中堅定温物流会社を組織化した同業者ネットワーク で対応している。
(聞き手・大矢昌浩) 南日本運輸倉庫 ――外食チェーン向け定温共配で急伸 大園博史南日本運輸倉庫社長 注目企業トップが語る強さの秘訣 〇坪クラスのセンターであれば、Bクラスのセンター 長でも管理できる。
しかし五〇〇〇坪クラスになると Aクラスの人材が必要です。
人材育成は当社の最大 の課題であり、それが当社の成長力を決定します」 ――土地・建物は賃貸ではなく購入しているのですか。
「そうです。
ただし土地の値上がりなどは全く考え ていません。
純粋にリースではなく購入したほうが得 だから購入しているだけです。
月々のコストを比較す ると、購入のほうが格段に安い」 ――しかし資金が固定化されてしまう。
「今だから?買い〞なんです。
物流不動産を自分で 購入して開発すると現在、年率十二%程度の利回り が得られる。
ただし、安く借りられる土地があるなら 別です。
坪五〇〇円程度で借りられる土地がある場 合は、購入せずに借りる。
それを二〇年の定期借地に できれば年率一八%で回る」 ――配送については。
「当社は現在、自社車両を約九〇〇台抱えています。
輸送品質を重視して、これまではほとんど傭車を使っ てこなかった。
しかし今後は傭車率を高めていく。
五 〇%がメドです。
センターは当社で確保するけれど、 配送は協力会社を組織する。
定温車両を導入する運 送会社は増えているので、それを使えばいい」 ――ライバルの車両を使う? 「他の定温物流会社をライバルとは考えていません。
運ぶだけなら、当社でなくてもできる。
そのために定 温車両を導入する物流会社が増えているのでしょう。
しかし当社の仕組みにはどこもついてこられない」 ――営業エリアについては? 「当社自身は東京圏に特化しています。
東京圏以外の 仕事は、当社が中心になって組織した『オールジャパ ンチルドフローズンネットワーク(JFN)』の会員 企業が、各地域で担当しています。
JFNのメンバー は現在三一社。
定温物流会社として各地でトップの 会社ばかりです。
そのうち十二〜十三社は毎年四〇 〇〇万円以上の申告所得を上げています」 「三一社の売上高を合わせると年商は一〇〇〇億円程 度になります。
倉庫面積は七万二〇〇〇坪、車両台 数は五五〇〇台で、北海道から沖縄までをカバーして います。
これは定温分野としてはキユーソー流通シス テムに並ぶネットワークです」 胃袋シェアで圧倒的一位を狙う ――南日本運輸倉庫自身で全国展開しようとは考えな いのですか。
「東京圏を制覇できない業者が他の地域に出て行っ ても成功するとは思えません。
東京圏には四〇〇〇万 人が暮らしています。
その四〇〇〇万人の胃袋に対し て、当社が扱っている食品のシェアは一%にも満たな い。
そこで圧倒的なナンバーワンにならない限り、具体的には関東圏だけで三五〇億円〜四〇〇億円程度 の売上高を確保できない限り、他の地域に出て行こう とは思わない。
資源を分散させることで、逆に足元を すくわれてしまう」 ――シェアを上げるということであれば、同業者の買 収も選択肢では? 「そのつもりはありません。
文化の違う会社を買収 して当社の色に染め上げるのは容易なことではありま せん。
また売上高で五〇億円以下の運送会社は下請 け仕事しか持っていない。
それを買っても意味はない。
既にいつでも株式公開できる状態ですが、上場するつ もりもない。
資金調達に困っていないからです。
当面 は自己資金で関東圏のネットワークを密にすることに 専念します」 27 FEBRUARY 2007

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