ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年1号
物流産業論
フォワーダーのビジネスモデル

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

31 JANUARY 2007 フォワーダーの機能とは? 航空貨物輸送や海上貨物輸送におい てフォワーダーの存在が注目されてい ます。
日本ではまだ歴史の浅いフォワ ーダーですが、欧州では昔から活躍し、 物流業界で大きな存在感を示してきま した。
欧州には数多くの国があり、か つては国境通関で煩雑な手続きが必要 であったという歴史的、地理的な背景 がありました。
その時代に誕生したフ ォワーダーがスイス系のパナルピナや キューネ・アンド・ナーゲル、ダンザ スやシェンカーといった日本でも馴染 みのある有力物流企業です。
そして、 こうした企業は現在、フォワーダーか ら3PLへと進化を遂げています。
フォワーダーとは荷主企業と実運送 会社の間に入って貨物の運送取扱や利 用運送、さらにこれらに付帯する業務 の提供者を指します。
具体的には、自 動車運送取扱業、通運事業、利用航空 運送事業、航空運送取扱業、内航運送 取扱業などがあります。
利用運送とは、 荷主から貨物の運送を引き受けるもの の、自らは運送手段を持たず、実際の 運送を手掛ける運送事業者である「実 運送人」の運送を利用して、荷主との 運送契約を履行する事業者のことを言 います。
一般には単にフォワーダーというと 利用航空運送事業を意味します。
この 利用運送事業は、商社やメーカーなど 複数の荷主から集荷した貨物を仕向地 ごとに仕分けし、一つの大口貨物に仕 立てて、自らが荷主として航空会社に 運送を依頼する業務です。
航空運賃は 重量逓減制であることから、荷主とフ ォワーダーの双方がメリットを享受で きます。
一方、外航海運のフォワーダーはN VOCC(Non Vessel Operating Common Carrier=非一般船舶運航事 業者)と呼ばれます。
航空や海運のフ ォワーダーは、そのほとんどがフォワ ーディングビジネスだけでなく、他の 事業も兼業している点が特徴の一つと 言えるでしょう。
フォワーダーの機能は基本的機能と、 付帯的機能に二分できます。
このうち 基本的機能としては、まず「運送取扱」 があります。
これは自己の名をもって 行う運送の取次です。
媒介または代弁 をなすもので、荷主に対し取次等の限 度で責任を負います。
もう一つは「利 用運送」です。
荷主から貨物運送を引 き受け、運送責任を負いますが、自ら は輸送手段を持たないため、輸送手段 を持つ実運送人を利用して輸送を行い ます。
一方、付帯的機能としては、?運送 関係書類の作成、?輸送の調整・組み 合わせ、スペースの手配、?情報の処 理、?保管、?通関、?仕分け・梱包、 ?コンテナ積み込み等、?保険代理業 務および金融補助サービス、?その他 諸手続き――といった業務が挙げられ ます。
フォワーダー対象の規制緩和策 日本におけるフォワーダーは自動車 (トラック)では道路運送事業法、鉄 第10回 荷主企業と実運送会社の間に入って輸送を手配する物流企業をフォ ワーダーと言います。
航空貨物の分野では近鉄エクスプレスや郵船航 空サービス、外航海運の分野ではNVOCCと呼ばれる企業がフォワ ーダーに相当します。
今回はフォワーダーの役割や事業展開の現状に ついて解説していきます。
フォワーダーのビジネスモデル もり・たかゆき流通科学大学商学 部教授。
1975年、大阪商船三井 船舶に入社。
97年、MOL Di stribution GmbH 社長。
2006年4月より現職。
著書 は、「外航海運概論」(成山堂)、「外 航海運のABC」(成山堂)、「外航 海運とコンテナ輸送」(鳥影社)、 「豪華客船を愉しむ」(PHP新書)、 「戦後日本客船史」(海事プレス社) など。
日本海運経済学会、日本物流 学会、日本港湾経済学会、日本貿易 学会CSCMP(米)等会員。
JANUARY 2007 32 道では通運事業法、航空では航空法、 海運では海上運送法および内航海運業 法といった具合に、輸送モード別の法 規制の中で育ってきました。
物流に対 する顧客ニーズが多様化・高度化する 中で、フォワーダーは荷主と実運送事 業者を結びつけるコーディネーターと して重要な役割を期待されるようにな りました。
物流業界では一九八九年に貨物運送 事業法と貨物自動車運送事業法が制定 され、翌年に施行されて以降、規制緩 和が加速しました。
この法律に基づい て、フォワーダーの業務は各輸送機関 にまたがり、独立した機能を果たす事 業として位置づけられることになりま した。
二〇〇三年にはさらなる規制緩和策 として貨物運送取扱事業法が貨物利用 運送事業法に改正されました。
同じタ イミングで改正された鉄道事業法と貨 物自動車運送事業法、そして貨物利用 運送事業法はまとめて「物流三法」と 呼ばれています。
以下では、貨物運送 取扱事業法と貨物利用運送事業法にお けるフォワーダーに関連する事柄につ いて解説していきます。
■貨物運送取扱事業法 一九九〇年に施行された「物流二 法」の一つである貨物運送取扱事業法 では、利用運送事業と運送取扱事業を 区別しています。
利用運送事業は船舶 や航空機を利用して貨物を運送するこ とです。
これに対して運送取次事業は 他人の需要に応じて自己名義もしくは 他人名義で実運送事業者や利用運送事 業者に貨物を取り次いだり、受け取っ たりする業務を有償で行うものです。
さらに利用運送事業は第一種利用運 送業と第二種利用運送業に分類できま す。
このうち第一種利用運送業は外 航・内航・トラックおよび集配を伴わ ない航空・鉄道の利用運送事業です。
一方、第二種利用運送業は航空運送、 鉄道運送などを利用して、その前後の トラック(軽自動車を除く)による集 配送を含めてドア・ツー・ドアの運送 サービスを提供する事業を指します。
九〇年の物流二法で利用運送事業は 許可制になりました。
また、鉄道に関 係する貨物運送取扱事業と利用航空運 送事業も許可制へと移行しました。
さ らに運送取次事業は登録制へ、料金お よび運賃については事前届出制へと規 制緩和は大きく前進しました。
■貨物利用運送事業法 二〇〇三年に施行された物流三法の 一つである貨物利用運送事業法では、 利用運送事業への参入規制が緩和され ました。
具体的には、貨物運送取扱事 業法では許可制であった第一種利用運 送事業が登録制へと移行しました。
ま た、従来は第二 種利用運送事業 の幹線輸送対象 が鉄道と航空に 限定されていまし たが、これに海運 が新たに加わりま した。
さらに、そ れまで登録制だっ た運送取次事業が廃止となったほ か、利用運送事 業における運賃・ 料金の事前届出 制も廃止されるな ど規制緩和が進 みました。
航空フォワーダーの守備範囲 続いて航空フォワーダーと海運フォ ワーダーについて詳しく解説していき ましょう。
まず航空フォワーダーです が、我が国においては利用航空運送事 業者あるいは航空貨物混載業者などの 名称で呼ばれています。
航空フォワー ダーはもともと、鉄道の地上輸送にな らったもので、航空分野への出現は一 九四五〜四六年頃とされています。
航空フォワーダーは通常、?運送取 扱、?運送代弁、?貨物の集配、?利 用運送――などの機能を有しています。
航空フォワーダーは航空会社と運送契 約を結び、自己の名前で荷主の貨物を 託送し、目的地でその貨物を航空会社 から受け取ります。
これが、?運送取 扱です。
一方、?運送代弁は荷主の名前で航空会社へ貨物を託送し、その貨物を目 的地で航空会社から受け取るというも のです。
そして航空会社によって輸送 される貨物を発送地において荷主から 集荷し、到着地において荷受人に配達 するのが、?貨物の集配。
さらに航空 会社を運送人として利用し、貨物を輸 送するのが?利用運送となります。
航空フォワーダーが請け負う代表的 な業務は、貨物を航空輸送する際に戸 33 JANUARY 2007 口から空港まで、空港から戸口までの 輸送を担当するもので、いわば航空会 社と表裏一体となって戸口から戸口ま でを一貫輸送することになります。
こ の場合、航空フォワーダーは多数の小 口貨物をまとめて大口の貨物として仕 立てて、これを航空会社に委託し、航 空会社には低廉な高重量運賃を支払い ます。
そして荷主からは小口運賃(航 空会社に支払った運賃よりも重量当た りの単価が高い運賃)を徴収し、その 差額を利益として収受する仕組みにな っています。
航空フォワーダーの多くは混載業を はじめ貨物代理店業、輸出入通関業、 クーリエ・スモールパッケージ、陸上 配送など航空貨物輸送に関連する様々 なサービスを提供できる体制を整えて います。
荷主は貨物の梱包から輸出入 に必要な各種書類の作成に至るまでの 物流業務をトータルで航空フォワーダ ーに委託することができます。
日本では、航空貨物輸送を利用する 方法が三つあります。
?直接航空会社 に貨物を持ち込む、?航空貨物代理店 を利用する、?利用航空運送事業者を 利用する││方法になります。
このうち?は稀なケースです。
大半 は?もしくは?となります。
当初は航 空会社も自ら貨物を集荷していました が、航空機の大型化や高速化に伴い大 量の貨物を集荷する必要性が出てきた ため、集荷は代理店や利用運送事業者 に任せ、自らはキャリア(輸送)に徹 するという「輸送」と「販売」の分離 が起こり、現在に至っています。
この ことが自ら輸送と販売を手掛ける海運 会社のビジネスモデルとの相違点であ ると言えるでしょう。
NVOCCの役割とは? 外航海運フォワーダー、すなわちN VOCCは不特定多数の荷主から貨物 の輸送を引き受けると同時に、輸送に 責任を負いますが、自らは船舶を保 有・運航せずに船会社の輸送手段を利 用します。
この場合、NVOCCは自 らが荷主の立場で船腹を利用します。
NVOCCという言葉は、米国の「一 九八四年新海事法」(Shipping Act of 1984) によって認可されて以来、米国 以外でも広く海運業界で使用されるよ うになりました。
NVOCCは荷主からのブッキング (船腹予約)に基づいて、自らが荷主 となって船会社や、場合によっては他 のNVOCCにブッキングを行います。
他のNVOCCに輸送を委託すること をコローディング(Co-Loading)とい います。
NVOCCは船会社にとって荷主(Shipper)であり、荷受人 (Consignee)でもあります。
一方、船 会社は運送人です。
貨物の本来の荷主 との関係では、NVOCCが運送人で あり、貨物の輸送、受け渡しなど一切 の責任を持ちます。
荷渡しは通常、現 地で代理店を使います。
その代理店へ の指示もNVOCCの重要な仕事の一 つです。
また、小口貨物の場合はコン テナ詰めの後、船会社指定のコンテナ ヤードへコンテナを持ち込む作業も担 当します。
日本では物流事業者を中心に様々な 分野からNVOCCへの参入がありま す。
主として、大手メーカー系、輸送 業者(トラック)系、倉庫系、鉄道会 社系、船会社系、商社系の六つに分類 されます。
もっとも、フォワーダー業 は経験とネットワークさえあれば、電 話一本で事業を始めることも可能です。
そのため、先にあげた大手以外にも個 人事業主的なNVOCCも存在します。
フォワーダーの意義 繰り返しになりますが、フォワーダ ーは利用運送人を指します。
同時に、 実務的には混載運送事業者です。
一般 的に混載運送事業者は運送に付随する 運送取扱事業、運送代理業、運送仲立 業、上屋業、通関業、梱包業、保険代 理店業などを兼業しているケースがほ とんどです。
混載運送事業者の中には、 総合物流サービスを提供している企業 も少なくありません。
このようにフォワーダーは自ら実運 送手段や資産を必ずしも持たなくても、 他社の機能を利用することで、あらゆ る物流ニーズに対応できます。
つまり フォワーダーを窓口にすることによっ て、物流のワンストップサービスの利 用が可能になります。
フォワーダーは 陸海空の多様な輸送手段を組み合わせ た国際複合一貫輸送の担い手としても機能します。
また、出荷ロットが小さく輸送会社 に対して影響力がなく、輸出入貨物の 扱いに不慣れな中小クラスの荷主企業 にとって、輸送の手配から物流業務全 般を代行してくれるフォワーダーは便 利な存在と言えます。
不特定多数の貨 物を集めることで享受するスケールメ リットを活かして航空会社や船会社か ら割安な運賃を引き出し、荷主企業に 還元してくれるケースもあります。

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