ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年6号
特集
物流コンサルガイド 失敗する理由の多くは使う側にある

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2006 16 「失敗する理由の多くは使う側にある」 「何でもできる」は本当か ――ここ数年、物流やロジスティクス分野を対象にし たコンサルティングのニーズが旺盛なようです。
「確かにこの分野のコンサルティングニーズは拡大 しています。
企業経営におけるロジスティクスの重要 性が広く認識されるようになったことが追い風になっ ています。
とくにSCMやロジスティクスのグローバ ル化にどう対応していくのかが大きなテーマとなって いるのですが、企業の社内にはこれらのテーマにきち んと対処できる人材が育っていません。
そのため誰か に道筋を立ててもらう必要がある。
もしくは自分たち で立てた道筋が間違っていないかどうかを第三者に判 断してもらいたい。
そんな背景からコンサルタントが 重宝されています」 ――物流企業向けのコンサルティングは? 「こちらも拡大 が続いています。
具体的には、単にモ ノを運んだり、倉庫で保管するだけの商売では生き残 っていけないから3PLに活路を見出したい。
しかし、 どうやって業態変革を進めていけばいいのかが分から ないのでアドバイスしてほしい、といった内容です。
事 業戦略の見直しに関する相談が増えつつあります」 ――ソリューションのメニューを見るかぎり、コンサ ル会社の多くは「何でもできる」と謳っています。
ユ ーザーはその中から自分たちの目的に合ったベストな 委託先をどうやって探し出せばいいのでしょうか。
「コンサル会社は商売上、何でもできますとアピー ルします。
しかし、必ず得意不得意の領 域があります。
クライアント側はそれをきちんと見極めなければなら ない。
候補となっているコンサルタントの評判や実力 を、そこを使ったことのある会社に聞いてみる。
まず はそこから始めたほうがいいでしょうね。
ただし、他 社が本音で話してくれるとは限らない。
最終的には自 分たちの眼で判断するしかありません。
現在、コンサ ルティング会社の多くは初期診断サービスを無料で提 供しています。
無料ですので、とにかくできるだけた くさんのコンサルタントに会って初期診断をお願いす る。
それを通じて得た感触から委託先を決めるのが無 難でしょう」 「一般的に言うと外資系のコンサル会社の場合、得 意分野は経 営戦略や事業戦略の立案・構築といった 領域です。
物流現場の改善といった個別機能のソリュ ーションではなく、サプライチェーン全体の最適化と いった経営全体を巻き込むようなテーマの場合には、 外資系など比較的規模の大きいコンサル会社を選んだ ほうがいい。
彼らは組織の中に物流やロジスティクス の専門家だけでなく、人事や情報システム、さらに法 律関係など様々な分野のプロを抱えています。
それだ けにソリューションにバリエーションがある。
これに 対して個人経営に近い小規模なコンサル会社はスタッフの数が少ない分、どうしてもカバーできる領域が限 られてしまう」 ――クライアントのニーズに応えられるソリューショ ン を持ち合わせていないにもかかわらず、仕事を引き 受けてしまうコンサル会社も少なくないようです。
「受注はしたものの、クライアントの要求するソリ ューションのレベルが高すぎて、コンサルタントがプ ロジェクトの途中で『そこまではできません』と両手 を挙げてしまうケースがあるのは事実です。
コンサル タントが持っているスキルの見極めが不十分だったり、 どの領域までをお願いするのかなど契約内容が曖昧だ ったりすると、こうした事態を招くことになります」 ――コンサルタントを使う側、つまりクライアント側 のコンサル会社の選び方や使い方は以前に比べ上手に プロジェクトを成功させるために、適切なコンサルタントを 選ぶことはもちろん重要だ。
しかし、それ以上に大事なことが ある。
何のためにコンサルタントを使うのか。
ゴールはどこに あるのか。
クライアント自身がそれをはっきりと認識していな ければ、どんな優秀なコンサルタントも機能はしない。
(聞き手・刈屋大輔) 東京ロジスティクス研究所 重田靖男 顧問 使えるコンサルの見分け方 17 JUNE 2006 なってきましたか? 「最近は、使い方の要領が分かってきているな、と いう印象を受けています。
とくに上場企業はコンサル 活用の経験をそれなりに積んできているだけに使い方 も上手です。
市場調査なのか、戦略の策定なのか、そ れとも現場の改善なのか。
コンサルに任せるテーマや 具体的な中身が最初からはっきりとしている。
加えて コンサルに任せていい部分、自分たちでやるべき部分 の線引きもしっかりとできている」 「以前は『自社の抱えている課題が何なのかよく分 からないが、とにかく面倒を見てほしい』といった無 茶苦茶な依頼をする会社が少なくありませんでした。
最近はわ れわれのようなコンサルタントにとっても仕 事が進めやすい環境になりつつあると言えるでしょう」 典型的な失敗のパターン ――コンサルの導入で成功を収めるための条件とは? 「何をどう変えたいのか。
最初からゴールがはっき りとしているプロジェクトは成功しますね」 ――しかし、そのゴール自体が間違っているケースだ ってありますよね? 「もちろんあります。
それを軌道修正することもコ ンサルタントの重要な仕事の一つです。
ここで強調し たいのはコンサルティングを依頼する側の意思やゴー ルの設定といったものが明確かどうかということです。
狙いや方向性がしっかりと固まっていないにもかかわ らず、何となく社内に問題点がありそうだから、コン サルティングをお願いするというパターンが一番危険 です」 「過去にこんな話がありました。
ある外資系コンサ ル会社に調査を依頼して報告書を提 出してもらったが、 その報告書の内容が正しいのかどうかが分からないの で、きちんと検証してほしい。
そんな依頼がコンサル 会社である当社に寄せられました。
結局、その仕事は 断りましたが、この会社がただ漠然と目的がないまま コンサルティングを依頼していたことは明らかです」 ――そのほかに失敗するパターンは? 「経営トップが認識している課題と、実際に現場で 働いている人たちが認識している課題にズレが生じて いる場合はうまくいきませんね。
そういう会社のコン サルティングが一番やりにくい。
『俺たちのやり方は 間違っていない』という意識があるため、現場の社員 たちはわれわれに非協力的になりがちです。
インタビ ュー をすれば、平気でウソをつく。
必要な書類やデー タを出してくれない。
その結果、プロジェクトがなか なか前に進んでいかない。
プロジェクトを成功させる ためには、コンサルティングを依頼する前に、経営ト ップと現場の問題意識を摺り合わせて共有しておく必 要があります」 ――最近はプロジェクトがとん挫してしまうリスクをヘッジする意味で、成果報酬型の契約を求めてくるク ライアントが増えているようですね。
「クライアント側からすれば、失敗したプロジェクト にフィーを払うなんてとんでもない、という話なので しょう。
ただし、これまで説明してきた通り、失敗の 原因がクライアント側にある場合も少なくない。
逆に コンサル会社側としては相手側の都合でプロジェクト が 中断・中止されることのリスクを考えて、成果報酬 型の契約をできるだけ避けようとするでしょうね。
し たがって完全な成果報酬型の契約が浸透する可能性 は極めて低い。
今後、成果報酬型が拡がっていくとし ても、人×期間×単価で算出される従来型の料金体 系を基本に、それに成果報酬分が一部プラスされる程 度なのではないでしょうか」 東京ロジスティクス 研究所の重田靖男顧問

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