ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年5号
特集
物流力を測る 見える化”したら比較する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

特集 MAY 2006 6 からベンチマーキングが生まれた」と、東京工業大学 の圓川隆夫教授は説明する。
ベンチマークを実施するために、自社の現状を数値 で把握し、ベストプラクティスの情報を入手して比較 する作業には、多大な手間とコストがかかる。
それを 当時の日本企業が行っていたわけではない。
もともと 日本企業は号令一つで、組織が一丸となって改善に 当たる集団主義的カルチャーを持っている。
それに対して欧米企業には、決められたことしかや らないという個人主義的傾向が根強い。
日本を真似 て全社的な改善活動に取り組もうとしても、目標とす るゴールや現状を具体的な数値で示さなければ、現場 が動かない。
そのために欧米企業にはベンチマーキン グが必要だったのだ。
だからといって、日本企業がベンチマーキングを必 要としていない、とするのは早計だ。
ベンチマーキン グはその後、現場オペレーションの改善を超えて、サ プライチェーン改革やITツールの導入にも活用され るようになっている。
オペレーションとは逆に日本企 業が不得手とされる領域だ。
新しいサプライチェーン の仕組みやITツールの効果は、それを利用する組織 能力によって決まる。
しかし組織能力は定量的に把握 することが難しい。
ベンチマーキングを活用すること で、それを客観的に評価できる。
そのツールとなる各 種のスコアカードの開発も進んできた。
それでも「現状では日本企業のベンチマーキングは 社内 の事業部間や拠点間の比較にとどまっていて、競 合のベストプラクティスとの比較となると、あまり普 及していないのが実情だ。
日本企業の多くは現在、サ プライチェーンの?見える化〞に取り組んでいる。
ベ ンチマーキングはその次のステップになりそうだ」と SCC日本支部の中心メンバーの一人、NECの大 第1部“見える化”したら比較する 我が社のロジスティクスはライバルと比べて優れてい るのか、劣っているのか。
ベンチマーキングという手法 を用いることで、数値でそれを判断できる。
無料で手 に入り、誰でも簡単に使える自己分析ツールの開発も 進んでいる。
ITやコンサルティングに投資する前に、 まずは現状をチェックしておこう。
(大矢昌浩) サプライチェーン・マネジメント(SCM)はベン チマーキングからスタートする。
米サプライチェーン カウンシル(SCC)の解説書をはじめ、SCMの教 科書には全てそう書かれている。
しかし日本ではこれ まで、その原則がほとんど踏襲されてこなかった。
ベンチマーキングとは本来、土地測量で地盤の高さ の基準を示す水 準点を意味している。
それがマネジメ ント分野に転用され、自分の会社の現状を測定して、 業界最高のパフォーマンスを挙げている会社と比較し、 そのギャップを埋めていく、という改善アプローチを 示す言葉として使われるようになった。
八〇年代末に構造不況に苦しんでいた当時の米国 産業界が、日本企業の輸出攻勢から身を守るために、 あえて日本的経営に学ぼうとして開発したテクニック だ。
つまり日本企業はベンチマークされる側であり、 業界最高の業績をあげているベストプラクティスとは トヨタ自動車のことだった。
日本企業のジャスト・イン・タイムや全社的改善 活動は、それ以前から欧米でも知ら れていた。
「しか し、それは日本人だからできるのであって欧米人であ る我々には無縁だと彼らは考えていた。
ところがその 後、自動車や半導体、エレクトロニクスの分野で日本 企業が圧倒的な競争力を持ち始めると、欧米も日本 のスタイルを認めざるを得なくなった。
日本にできる ことがなぜできないのかという声が大きくなり、そこ 特集 物流力を測る 7 MAY 2006 石高至ニューソリューション開発事業部企画グループ グループマネージャーはいう。
日本企業の経営陣の多くは、戦略や管理会計に多 少の弱点を抱えていても規模の拡大を享受できた時代 を長く経験してきた。
厳密な数値に基づく管理にはも ともと馴染みが薄い。
社内のセクショナリズムも強く、 部門内の情報を他部門に開示することへの抵抗も大 きい。
これまで日本でベンチマーキングがあまり普及 しなかった理由はいくつも指摘されている。
無料でできるベンチマーキング それだけにベンチマーキングの活用は武器にできる。
そのキッカケとなるツールを本特集では紹介する。
上 に掲載した中小企業庁の「物流ABC(Activity- Based Costing )準拠による物流施設パターン別ベン チマーキング・マニュアル」はその一つだ。
エクセル形式のソフトウエアを無料で同庁のホーム ページ(http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/ shogyo/050711butu_abc_syuueki.htm )からダウン ロードできる。
ソフトウエアには五一項目に及ぶ物流 アクティビティの標準作業時間がまとめられている。
利用者は自社センターの現場で、作業時間を測定し、 そのデータをソフトウエアに入力することで、現状の 処理能力の優劣を簡単に把握することができる。
本号一六頁〜三〇頁には、日本ロジスティクスシス テム協会(JILS)と東京工業大学圓川研究室が 共同開発した「SCMロジスティクススコアカード (LCS)」を紹介した。
本誌に掲載した回答用紙をコ ピーして必要事項を記入し、JILS宛に送付する ことで、自分の会社のSCMの管理レベルを国内約 三五〇社・世界約七〇〇社と比較できる。
これも無 料。
活用しない手はな い。
ピースピッキング 平積み、フォーク、 伝票 ラック、 パレット出入あり、 フォーク、伝票 ラック、 パレット出入なし、 フォーク、伝票 ラック、フォーク、 モニター ロング台車、DPS、 ラック保管 台車、 ハンディ端末 台車、ハンディ端末、 小袋詰めあり 台車、DPS、 ゾーン別 手荷役、 ハンディ端末 手荷役、伝票、 付帯作業なし 手荷役+コンベア、 伝票、梱包あり 種まき式(リスト) 種まき式(DPS) 種まき式(DPS+ 定置スキャン) 平積み、出荷時 パレットサポータ エリア、歩行者なし 出荷時、ラックエリ ア、歩行者なし 出荷時、ラックエリ ア、歩行者なし ロング台車 台車 (ラックエリア) 台車 (ラックエリア) 台車 (DPSエリア) 歩行 (かごをもって) 歩行 (かごをもって) フォークから降りてケースを出荷 用パレットに移す 出荷品のパレットを引き出す・戻 す ケースをラックから手作業で取り 出す ケースをラックから手作業で取り 出す 保管ラックからケースを取り出す 棚からピース商品を取り出して 検数し、確認ボタンを押す 棚からピース商品を取り出す 商品をとって表示ランプを消し、 商品を台車に載せる ピース単位で棚から取り出す ピース単位で棚から取り出す ピース品をリストを見ながら店舗 別コンテナに仕分ける(種まき式) ピース品を、デジタル表示にした がってラックに並んだ店舗別コン テナに仕分ける 伝票に必要事項 を記入する 手作業でケース を出荷用パレット に移す 伝票に必要事項 を記入する 商品をスキャンし 完了ボタンを押 す 箱に詰める 検数し、小袋に詰 めてシールを貼 る オリコンに詰める 伝票に必要事項 を記入する 梱包してシール を貼る ピース品を、デジタル表示にした がってラックに並んだ店舗別コン テナに仕分ける 定置スキャナーで商品コードを スキャン。
表示された数の商品を 包装をはがしながら取り揃える デジタル表示にし たがって棚のオリ コンに配分する 伝票に必要事 項を記入する 商品をスキャ ンし完了ボタ ンを押す 伝票に必要事 項を記入する アクティビティ 移動速度(秒速) 基本作業1 基本作業2 基本作業3 ピッキング作業の標準処理時間(中小企業庁「物流ABC準拠による物流施設パターン別ベンチマーキング・マニュアル」より一部を抜粋して作成) 5.5秒/行 10.7秒/行 5.5秒/行 ケースピッキング 0.9m/秒 0.5m/秒 0.8m/秒 0.8m/秒 1.0m/秒 0.9m/秒 0.9m/秒 1.1m/秒 1.1m/秒 1.1m/秒 23.8秒/ 行 12.6秒/ 行 18.4秒/ 行 6.4秒/ 行 4.4秒/ 行 23.6秒/ 行 5.0秒/ ピース 5.4秒/ 行 29.3秒/ 行 30.1秒/ 行 30.1秒/ 行 10.4秒/ 行 13.0秒/ 行 16.8秒/ 行 5.5秒/ 行 4.8秒/ ケース 5.5秒/ 行 10.7秒/ 行 1.5秒/ ピース 21.8秒/ 行 1.7秒/ ピース 5.5秒/ 行 52.0秒/ 行 16.4秒/ 行

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