ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年4号
ケース
在庫削減--サッポロ飲料

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2006 30 ビール社任せのSCM サッポロ飲料は長らくサプライチェーン管 理の大部分をサッポロビールに委ねてきた。
商品の製造委託先であるパッカー各社との生産調整はビール社の飲料事業部が担当。
得意 先からの注文もすべてビール社が処理してい た。
自社で「物流管理部」を用意していたも のの、同部署がカバーしてきたのは首都圏エ リアだけで、しかも酒類を扱わない食品系卸 向けの業務のみ。
他エリアの物流はビール社 が管理する体制になっていた。
飲料社がビール社のサプライチェーン機能 を活用してきたのはほかでもない。
飲料社と ビール社にとってメーンの得意先は酒類卸で 共通しており、両社がバラバラに対応するよ りも 、ビール社に窓口を一本化して受注や物 流を一括で処理したほうが効率的であると判 断したからだ。
実際、飲料社はこの体制を続 けていくことで、ローコストオペレーション を実現してきた。
ところが、近年は?ビール社任せ〞の管理 に限界を感じるようになっていたという。
酒 類卸以外の取引先が増えてきたためだ。
例え ば、食品系卸との取引は現在、全体の半分を 占めるまでに拡大している。
「酒類卸と食品 系卸では納品条件など物流に対するニーズが 大きく異なる。
そのため、ビールの仕組みで 対応していくことが困難になりつつあった。
飲 料のサプライチェーンのあり方をゼロベー スで見直す必要が出てきた」とサプライチェ ーンマネジメント部の加藤貴博副課長は説明 する。
二〇〇三年七月、サッポロビールグループ は純粋持ち株会社制度を導入した。
「サッポ ロホールディングス」の傘下に、「酒類」「飲 料」「外食」「不動産」の四つの事業会社を設 置。
各社が独立採算で事業を展開していく体 制に移行した。
これを受けて、サッポロ飲料 ではSCMを担当する部門を新たに発足。
生産から販売に至るまでのサプライチェーンの 管理を自社でコントロールする体制 に切り替 えた。
DC型とTC型に拠点を再編 同社がSCM改革で最初にメスを入れたの は受注業務だった。
先に触れたように、以前 は得意先からの注文をすべてビール社で受け 付けていたが、これを飲料社が新たに立ち上 げた受注センターで処理することにした。
た だし、受注センターに集約したのは食品系卸 などの酒類卸以外からの注文のみ。
酒類卸か 在庫削減 サッポロ飲料 需給見直しや物流拠点の再編で 10億円のコスト削減を目指す サプライチェーンマネジメント 部の加藤貴博副課長 純粋持ち株会社制への移行を機にSCMプロジェクトを スタート。
受注体制や需給調整業務の刷新などを経て、 昨年6月から物流拠点の集約に乗り出した。
従来は全国 に20カ所あった拠点を、最終的に10カ所まで削減する。
同時にパッカーの絞り込みも進める方針だ。
一連の改革 を通じてトータル10億円のコストダウンを目標に掲げて いる。
31 APRIL 2006 らの注文は、酒類卸側の利便性を考慮して従 来通りビール社がビールと飲料をまとめて処 理する体制を維持した。
続いて、どのエリアにどの商品をどれだけ 供給するか、といった需給調整の権限をビー ル社から飲料社に委譲した。
以前はビール社 の各支社や物流子会社のサッポロ流通システ ムが独自の判断で需給を行っていたため、エ リアごとに在庫量にバラツキがあるなどの問 題が生じていたという。
「受注や需給調整をビール社に任せていた ため、自分たちのところに販売情報などがな かなか伝わってこなかった。
飲料社はどちら かといえば、グループ内では『飲料品の販 売 会社』という位置付けに過ぎなかった」と加 藤副課長。
しかし、権限委譲後は飲料社が市 場での売れ行きを見ながら、各地の物流拠点 に商品を供給するルールになったため、在庫 水準の適正化が図れるようになった。
さらに昨年六月には物流拠点の再編に乗り 出した。
もともとサッポロ飲料ではビール社 の物流センターや外部委託倉庫などを含めて 全国各地に計二〇カ所の物流拠点(DC) を用意していた。
しかし二〇〇六年度中には 一〇カ所にまで集約する計画だという。
二〇 カ所はいずれも在庫型拠点だったが、新体制 では在庫型と通過 型(TC)の拠点を使い分 けることで、全社的な在庫水準の引き下げを 目指している。
物流拠点の集約は北海道地区からスタート した。
従来、同地区ではビール社の北海道工 場(恵庭市)と飲料品専用センターの二カ所 に在庫を置いていたが、これを新たに用意し た「千歳物流センター」一カ所に集約した。
食品系卸など酒類卸以外の得意先向けには千 歳物流センターから商品を出荷。
一方、酒類卸向けの商品は必要な分を千歳物流センター から恵庭工場に横持ち輸送した 後、ビールと クロスドッキングして配送する体制に切り替 えた。
次に九州地区での再編に着手した。
こちら も北海道地区と同様、従来はビール社の新九 州工場(日田市)と飲料品専用センターの二 カ所で在庫していたのを、新設した「日田物 流センター」に一本化した。
受注後のオペレ ーションも北海道と同じ仕組みで、酒類卸向 けは新九州工場でのクロスドッキングで対応 している。
図2 再編後の物流ネットワーク 日田物流センター 相模物流センター 葛西物流センター 上尾物流センター 千歳物流センター 仙台工場 静岡工場 北大阪DC 倉敷TC 江南TC 千葉工場 東日本ブロック 西日本ブロック 九州ブロック 北海道ブロック ※葛西物流センターは廃止予定 図1 サッポロ飲料の業績推移 2000 年度 64,956 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度 75,000 73,000 71,000 69,000 67,000 65,000 63,000 0.5 0 −0.5 −1 −1.5 −2.0 −2.5 −3.0 69,497 0.3 0.2 −0.5 −1.8 0.1 71,333 65,647 69,261 売上高 純利益率 (百万円) (%) APRIL 2006 32 翌日午前中に得意先に納品する、という仕組 みだ。
物流拠点を四カ所から三カ所に集約すると ともに、在庫の一元化を進めたことで、西日 本地区の在庫を従来に比べ約三〇%削減する ことに成功している。
倉庫料や輸送料のコス トダウンも実現した。
二〇〇六年度は西日本 地区だけで前年に比べ支払い物流費を約二億 円削減できる見通しだ。
コスト面での成果だけではない。
「ムダな 在庫を抱えないことで、フレッシュローテー ションが可能になる。
得意先から求められる 鮮度管理レベルは年々厳しく なっている。
こ うしたニーズにきちんと対応できる体制が整 うことは、販促の面でも大きなメリットとな る」と経営戦略部の荻野芳則担当部長は指摘 する。
一方、東日本地区の物流体制にはほとん ど手を加えない。
現在、同地区ではビール社 の仙台工場、千葉工場、静岡工場の三工場、 そして上尾物流センター、葛西物流センター、 相模物流センターの計六カ所から商品を出 西日本地区の在庫を三割カット 今年一月には拠点再編プロジェクトの総仕 上げとも言える西日本地区の新物流体制が動 き出した。
もともと同地区ではビール社の大 阪工場(茨木市)、東海物流センター、関西 物流センター、落合センターの計四カ所の在 庫型拠点を配置していた。
しかし、新体制で は大阪工場近くに用意した「北大阪DC」(= 大阪母船センター)に在庫を集約。
さらに倉 敷(中国エリア担当)と江南(東海エリア担 当)に設けた二カ所のTCを加えた計三拠点 から商品を供給する仕組みに改めた。
近畿エリアでは食品系卸向けの商品を北大 阪DCから出荷。
これに対して、酒類卸向け は大阪工場でビールとクロスドッキングして 配送する。
一方、中国・東海エリアにおける 食品系卸向けの受注から出荷までの作業は以 下のような流れで進めているという。
まず倉敷と江南のTCには新商品と回転率 の高いAラ ンク商品だけを在庫しておく。
受 注センターは得意先からの注文を午後一時で 締め切り、その情報を両TCに転送。
両TC は注文情報とセンター内の在庫を引き当てし て、不足分を出荷するよう北大阪DCに指示 する。
北大阪DCは出荷指示に従って午後四 時までに商品をトータルピッキングした後、 両TCに横持ち輸送。
両TCでは午後七〜八 時に到着した商品を得意先別に仕分けして出 荷する。
配送には貸し切り便や路線便を使い、 経営戦略部の荻野芳則担当部長 図3 西日本地区の物流体制 東海物流センター 大阪工場 関西物流センター 落合センター 従来 新体制 卸・小売り 一括 物流センター 卸・小売り 一括 物流センター 大阪母船センター ビールと共配 ビールと共配&単独配送 一部在庫品と クロスドッキング 江南TC 倉敷TC パッカー 物流拠点 得意先 パッカー 物流拠点 得意先 DC型 DC型 (今年1月〜) 33 APRIL 2006 荷しているが、このうち閉鎖を予定している のは葛西物流センターだけ。
残りの五カ所は いずれも在庫型拠点として機能させていく方 針だ。
サッポロ飲料にとって東日本地区は最も売 り上げの大きいマーケットである。
そのため、 「これ以上、物流センターの数は減らせない だろう。
ただし、例えば東北の一部地域につ いては、新たなコスト削減策として、自社便 によるルート配送ではなく、既存の物流業者 が提供している共同配送のパッケージサービ スを利用することも検討している」(加藤副 課長)という。
SCMの成否が業績回復のカギ サプライチェーンの川上部分では生産体制 の見直しを進めている。
まず昨年一〇月に唯 一の自社工場であった神奈川工場を閉鎖。
同 時に製造委託先であるパッカーの集約にも着 手した。
昨年は全国で計四四社のパッカーを 利用したが、これを今年はすでに三四社に絞 り込んでいる。
さらに来年は商品アイテムの 削減を計画しており、それに合わせてパッカ ーの数を最終的には三〇社程度に減らす意向 だ。
パッカーの集約はスケールメリットによ る製造コストの引き下げを目的としている。
受注情報などを処理する基幹系システムの 再構築も進めている。
ビールは上旬、中旬と い った旬単位で出荷を管理するのに対し、飲 料は日付管理が求められるなど両製品は管理 基準が異なっているにもかかわらず、従来は ビールの基幹系システムで飲料も処理してい た。
これを改め、飲料専用のシステムを新た に用意することで、得意先のニーズに的確に 対応できる体制を整える。
情報システムではこのほかにSCP(サプ ライチェーンプランニング)ソフトの導入も 検討している。
需給調整の精度を高めるのが 狙いだ。
現在、サプライチェーンマネジメン ト部が中心となって需給システムの中心エン ジンとなるパッケージソフトの選定作業など を進めているという。
現在、サッポロ飲料ではこうした改革 を推 進する一方で、ロジスティクスの概念を社内 に浸透させる活動にも力を入れている。
物流 拠点やパッカーの集約によるコストダウンに は限界があると見ているからだ。
むしろ重視しているのは「受注の締め切り 時間や最低注文ロットといった取引のルール をきちんと守っていくこと。
そうした日々の 努力の積み重ねがコスト削減につながる。
た だ商品を売ればいいわけではない。
常にロジ スティクスを意識しながらビジネスができる 社員を一人でも多く増やせるかどうかでSC M改革の成否は決まってくるだろう」と荻野 担当部長は力説する。
サッポロ飲料では 物流拠点の再編、パッカ ーの集約、さらに社員の意識改革といった一 連の取り組みを通じて、トータル一〇億円の コスト削減を目指す。
同社の業績はここ数年 厳しい状況が続いている。
二〇〇五年度(二 〇〇五年十二月期、速報ベース)も売上高六 三八億円に対して六億円の営業損失の計上を余儀なくされたという。
それだけにこの目標 を達成することが経営に与えるインパクトは 大きい。
今年二月に発表された「サッポログループ 新中期経営計画」(二〇〇六〜二〇〇八年) では、飲料事業における最重要課題の一つに 「SCM体制の整備・確立」が掲げられた。
飲 料 水のマーケットは今後も緩やかな成長が続 くと目されている。
グループ内では、飲料社 がSCMによって市場での競争力を高め、業 績の早期回復を実現することに大きな期待が 寄せられている。
(刈屋大輔) 在庫削減と拠点集約によって輸送費など支払い物流費の大幅カ ットを目指している

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